行政法 / 行政救済法


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行政救済法のかたち

 行政救済法は以下の形をとる

  • 行政救済
    • 行政訴訟:処分取消
      • 行政不服申立(行政庁あて)
      • 行政事件訴訟(裁判所あて)
    • 国家補償:金銭賠償
      • 国家賠償
      • 損失補償

 行政不服申立と行政事件訴訟の差異

行政不服申立行政事件訴訟
目的具体的事件について、国民の申立に基づいて、これを審理判断し、国民の権利救済を図る
申立方法審査請求、異議申立、再審査請求訴えによる
立法趣旨行政権自体の作用として行政の適正な運営の確保
⇒スピード重視となり行政行為の公定力を原則尊重
司法権の作用として、法治主義の保障手段としての
意義をもつ
⇒国民の権利救済に、より配慮して実質的な
 事実認定を行うが、行政行為に対する迅速な
 要請や公定力とのバランスも考慮して一般の訴訟より
 類型が細分化され、出訴期間も短縮されている
判断機関行政機関司法裁判所
手続簡易かつ迅速な審理手続慎重かつ公正な審理手続
審理対象行政庁の処分その他公権力の行使の適法・違法
のみならず、当・不当をも問題とすることができる
行政庁の処分その他公権力の行使の
適法・違法しか問題としえない
救済制度に
おける位置
法律問題に関しては前審としてのみ認められる
(憲法76条3項)
終局的な判断を下し、確定判決が下った後は、
同じ事件を争えない
両者の関係【原則】
不服を有する者は、原則として、行政不服申立または行政事件訴訟のどちらか一方、
もしくはこの双方を自由に提起しうる
【例外】
法律に定めがある場合には、当該処分についての審理請求に対する裁決を経た後でなければ
 処分の取消の訴えを提起することができない(審査請求前置主義)
,両豺腓任癲⊃該裟禅瓩あった日から3ヶ月を経過しても裁決がない場合は
 処分訴えを提起することができる
審理の建前/Ω⊆腟
 審理・証拠方法等の進行に関する権限が全て
 審査庁の裁量に属する
⊃獲の書面主義
 審理は、当事者が主張を書面に記載し、審査庁が
 双方の書面を付き合わせることによって行う
‥事者主義
 証拠方法、立証方法、主張内容等の選択は当事者の
 自由裁量に属する
⊃獲の口頭弁論主義
 主張は裁判所の面前で当事者が弁論によってなす
 ※但し、証拠の認定や期日の指定などの権能は
  裁判所の職権に属する

行政不服審査法

申立の対象と種類

一般概括主義

 行政不服審査法は、処分であれば原則として不服申立の対象となるとしつつ(一般概括主義)、例外的に対象とならない事項について特に列挙している。

 以下が適用除外事項となる

  1. 国会の両院もしくは一院または議会の議決によって行われる処分
  2. 裁判所もしくは裁判官の裁判によりまたは裁判の執行として行われる処分
  3. 国会の両院もしくは一院もしくは議会の議決を経て、またはこれらの同意もしくは承認を得た上で行われるべきものとされる処分
  4. 検査官会議で決すべきものとされている処分
  5. 当事者間の法律関係を確認し、または形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
  6. 刑事事件に関する法令に基づき、検察官、検察事務官または司法警察職員が行う処分
  7. 国税または地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む)に基づき、国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏、税関庁、税関職員または徴税吏員(他の法令の規定に基づき、これらの職員の職務を行う者を含む)が行う処分
  8. 学校、講習所、訓練所または研修所において、教育、公衆、訓練または研修の目的を訓練生または研修生に対して行われる処分
  9. 刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所または婦人補導院において、収容の目的を達成するために、被収用者に対して行われる処分
  10. 外国人の出入国または帰化に関する処分
  11. もっぱら人の学識技能に関する試験または検定の結果についての処分
  • 上記適用除外事項の根拠
    • 1〜4
      • 一般行政庁とは性格が異なる機関が独自の手続で処分したものであるため、不服申立を認めることが不適当であるため
    • 5〜7
      • 行政不服審査法よりも慎重な手続によって、この不服を処理することとされているため
        5:行政事件訴訟 6:刑事事件訴訟 7:国税不服審判
    • 8〜11
      • 処分庁の高度の専門技術・政策的な判断に基づく処分のため、行政不服審査法の手続による不服申立を認めることが適当でないため

申立ての種類

  1. 異議申立て
     異議申立てとは、行政庁の処分または不作為について、当該処分庁または不作為庁に対してする不服申立てをいう。
  2. 審査請求
     審査請求とは、行政庁の処分または不作為について処分庁または不作為庁以外の行政庁に対して行う不服申立をいう。多くの場合、当該行政処分を行った行政庁(もしくは不作為庁)の上級行政庁や第三者機関に対して行うことになる。
  3. 再審査請求
     再審査請求とは、処分について審査請求の裁決を経た後に、さらにこの裁決に対して不服がある場合に、法定の行政庁に対してなす審査請求をいう。法律で認められている場合にのみ行うことができるため、一般的にどのような審査請求の結果に対しても再審査請求が可能なわけではない。

異議申立てと審査請求の関係(処分についての不服申立て)

 処分に対する審査請求と異議申立ては選択的関係となっており、国民の側は1つの処分にたいしては、いずれかを選んで不服申立てを行うこととされている。ただし、この選択は国民が自由に選択できる訳では無く、一定のルールに従って選択することになる。

  1. 処分に対する不服申立は、原則として審査請求を行うこととされている<5条、審査請求中心主義>
    • 処分庁自身が審査を行う異議申立てよりも、処分庁以外の行政庁が審査を行う審査請求の方が、より中立的で公平な判断が期待できるという趣旨から
    • このため、処分庁に上級行政行がある場合には、元徳として審査請求によるべきことを規定し、かつ上級行政庁がない場合でも法律等に審査請求ができる旨の定めがあるときは、審査請求に寄るべきとしている
  2. 審査請求ができない場合は、異議申立てを行うことになる<6条>
    具体的には以下のような場合が挙げられる
    1. 処分庁に行政庁政庁が無く、かつ法律等で審査請求ができる旨の定めが無いとき
    2. 処分庁が主任の大臣または宮内庁長官もしくは外局もしくはこれに置かれる庁の長であるとき
    3. 上記2項目に該当しない場合であって(つまり審査請求が可能であるが)、法律に異議申立をすることができる旨の定めがあるとき
      • この場合には、法律が異議申立てを行うべき旨を定めたことから、異議申立てを行った後でなければ審査請求を行うことができないとしている<20条、異議申立前置主義>

異議申立てと審査請求の関係(不作為についての不服申立て)

 処分に対する不服申立てと異なり、不作為においては、審査請求と異議申立てが双方とも可能な場合には、自由に選択できる(自由選択主義)。
 但し、不作為庁が主任の大臣または宮内庁長官もしくは外局もしくはこれに置かれる庁の長であるときは、これらにも上級行政庁は存在するが、権限庁の独立性を尊重して異議申立てのみが可能とされている。

不服申立てまとめ

処分に対する不服申立不作為に対する不服申立
方法【原則】
審査請求中心主義
⇒審査請求
【例外】
1. 異議申立前置主義
 異議申立と審査請求双方ができると法律または
 条例で定められているとき
2. 異議申立のみ可能なとき
 ‐綉藕埓庁が不存在
 ⊇菠庁が主任大臣または外局、庁の長
 K[Г泙燭肋鯲磴膨蠅瓩ある場合
【原則】
自由選択主義
⇒異議申立または審査請求のいずれか
【例外】
不作為庁が主任大臣または外局
もしくはこれにおかれる庁の長であるときは
異議申立のみできる




期間ありなし

申立ての要件

処分または不作為の存在

  • 処分または不作為の存在については、一般概括主義に基づき、除外事由に該当しないことが必要とされる
    • また、行政不服審査法に基づく処分(=裁決・決定)は処分に含まれない
  • 処分の前に不服を申し立てたり、申請を行わずに不作為の不服申立てを行うことはできない

正当な当事者

  • 当事者能力・当事者適格
    • 正当な当事者の要件とは、不服申立てを行う者に、当事者能力および当事者適格が必要であるということとなる
      • 当事者能力とは、自己の名前で不服申立てができる一般的な能力であり、実態法上の権利能力を有する者は、自然人であると法人であるとを問わず、当事者能力を有し、現行法上は、権利能力なき社団・財団でも代表者の定めがあれば当事者能力を認める
      • 当事者適格とは、特定の争訟において、当事者として承認される具体的な地位ないし資格をいう。一般的に、不服申立ての場合、違法または不当な行政処分を取り消すことによって侵害された自己の権利利益の回復が得られる者(不服申立ての利益を有する者)に当事者適格が認められるとされている
  • 総代
    • 多人数が共同して不服申立てをしようとする場合、3人を越えない総代を互選することができる。多人数がそれぞれ銘々に各自で手続をすることは煩雑であるために認められた規定である
      • したがって、総代を選任した場合には、共同不服申立人は総代を通じてのみ行動できるし、行政庁も通知などの行為は総代の一人に対して行えば足りるとされている
      • なお、この総代の資格は書面で証明しなければならないとされており、総代の資格を失った場合も書面でその旨を行政庁に届け出る必要があるとされている
  • 代理人
    • 不服申立ては代理人によって行うことも可能となっている。代理人は不服申立ての一切の行為を行えるが、不服申立ての取り下げだけは特別の委任が必要となる
    • 代理人の資格も書面で証明する必要があり、まだ総代と同じく資格を失ったときもその旨を行政庁に届け出る必要がある

適切な行政庁に申し立てること

  • 異議申立てであれば、処分庁または不作為庁に対して行う
  • 審査請求は、法律に特別の定めがある場合を除いては、原則として直近の上級行政庁に対して行う
  • 再審査請求については、法律の定める行政庁に対して行う

適法な期間内に申し立てること

  • 適法な期間内とは、いわゆる不服申立期間のことを指し、これを経過すると不服申立てができなくなる
  • 処分についての不服申立てと不作為に対する不服申立てとで、不服申立期間が異なる
    • 処分についての不服申立て:60日以内
    • 不作為についての不服申立て:期間なし

適法な形式と手続により申し立てること

  • 書面提出主義
    • 不服申立ては、他の法律や条例に口頭で行う旨の規定がある場合を除き、所定の事項を記載した書面を提出して行う(不服申立書の提出、書面提出主義)
      • 不服申立の存在や論点を明確にし、かつ手続を慎重に進めるため
    • 書面は、原則として正副2通を提出する(異議申立ての場合は1通で足りる)
      • 審査請求の場合には、審査庁と処分庁の2箇所が関係するが、異議申立ての場合には、関係するのが処分庁の1箇所だけであるため
  • 不服申立書の記載事項
    • 不服申立書の記載事項は、法定されている<15条>
      • 例えば、審査請求人の氏名および年齢または名称並びに住所、審査請求に係る処分、審査請求に係る処分があったことを知った年月日、審査請求の趣旨および理由、処分庁の教示の有無およびその内容、審査請求の年月日など
  • 補正と却下
    • 不服申立書の記載について、不備があっても、補正が可能である場合には、行政庁側は相当の期間を定めてその補正を命じる必要がある
      • ただし、補正ができない場合や申立人が補正命令に従わない場合には、申立を却下することができる

審理手続


審理の準備

  1. 審査請求を受けた審査庁は、審査請求書の副本を処分庁に送付し、その後、処分庁に弁明書の提出を請求する
    • もし弁明書が提出される場合には、弁明書は正副2通提出されなければならない
  2. 弁明書が提出された場合には、審査庁は審査請求の全部を容認する場合を除いて、弁明書の副本を審査請求人に送付しなければならない<22条>
  3. 弁明書の副本を受け取った審査請求人は、必要があれば反論書を提出することができる<23条>

参加人

 利害関係人は、審査庁の許可を得て、参加人として審査請求に参加することができる。また、審査庁の職権により手続への参加を求められることもある<24条>。
 ここでいう利害関係人とは、広く審査請求の結果によって、直接自己の権利利益に実質的な不利益をこうむる全ての者を含むと理解されている。

書面審理主義

  • 審査請求の本案審理は、書面審理主義をとり<25条>、原則として審査庁が職権で進行する
    • 審査庁は申立人の主張にとらわれず申立人の主張しない事実についても審査して解決することも可能
  • 証拠調べについても審査庁の職権で行うことができ、審査庁は、職権により参考人の陳述および鑑定を要求し、書類や物件などの提出を要求し、審査請求人や参加人の審尋も可能
    • 審査請求人からも証拠の提出や口頭での意見陳述を求めることは可能とされている<25条1項但書>
    • 処分庁からも書類や証拠を提出することができ、この提出された物件は審査請求人や参加人は閲覧を請求することができる<33条>

申立書受理後の攻撃防御

弁明書・反論書の提出

  • 行政庁の防御
    • 弁明書の提出
       審査庁は、審査請求を受理したときは、審査請求書の副本または審査請求録取書の写しを処分庁に送付し、相当の期間を定めて、弁明書の提出を求めることができる。
       ⇒処分庁が弁明書を出すか否かは任意的であり、出さなくても良い
    • 弁明書の様式
      1. 弁明書は正副2通を提出しなければならない
      2. 情報通信技術利用法第3条第1項の規定により、同項に規定する電子情報処理組織(要するにPCを使ったシステム)を使用して弁明がされた場合には、弁明書の正副2通が提出されたものとみなす
      3. 処分庁から弁明書の提出があったときは、審査庁は、その副本を審査請求人に送付しなければならない。ただし審査請求の全部を容認すべきときはこの限りではない
  • 申立人の再攻撃
    • 反論書の提出
       審査請求人は、弁明書の副本の送付を受けたときは、これに対する反論書を提出することができる。
  • 方式
     申立書と同一で良い。
  • 期間
     審査庁が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、この期間内に提出しなければならない

執行不停止

執行不停止の原則

  • 原則
     不服申立があっても不服の対象たる行政処分の執行は中断しない
     ⇒行政の円滑な執行のため、行政行為の公定力を極力維持する
  • 例外(執行停止)
    • 誰が
      1. 処分庁の上級行政庁である審査庁
      2. 処分庁の上級行政庁以外の審査庁
  • いつ
     必要があると認めるとき
  • 方法
    1. 処分庁の上級行政庁が審査庁の場合は、申立てまたは職権により
    2. 処分庁の上級行政庁以外が審査庁の場合は、申立てにより処分庁の意見を聴取した上で
  • 効果
    1. 処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止その他の措置をすることができる。これを執行停止という。
       但し、行政庁の上級行政庁以外が審査庁の場合は、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止以外の措置をすることはできない
    2. 処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは審査庁は執行停止をしなければならない
  • 例外の例外
     審査庁は執行を停止した場合でも、次の場合には審査庁の判断において執行の停止自体を取り消すことができる
    1. 公共の福祉に重大な影響を及ぼすとき
    2. 執行停止を取り消しても執行が不可能であることが明らかなとき
    3. その他事情が変わったとき

教示制度

内容

  1. 行政庁は、審査請求、異議申立て、他の法令に基づく不服申立をすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき次の事項を教示しなければならない
    1. 不服申立てをすることができる旨
    2. 不服申立てをすべき行政庁
    3. 不服申立てをすることができる期間
  2. 行政庁は、利害関係人から、次の事項を訪ねられたら当該事項を教示しなければならない(書面による通知を求められなければ、口頭でも可)
    1. 当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか
    2. その場合における不服申立をすべき行政庁
    3. 不服申立をすることができる期間
  3. 行政庁が1、2に基づく教示をしなかったときは、当該処分について不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる
  4. 上記1、2は、地方公共団体その他の公共団体に対する処分で、当該公共団体がその固有の資格において処分の相手方となるものについては適用されない

誤った教示に対する救済

  1. 審査請求に対する誤った教示
    1. 審査請求をすることができる処分(異議申立てをすることもできる処分を除く)につき、処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、すみやかに、審査請求書の正本および副本を処分庁または審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
    2. i の規定により処分庁に審査請求書の正本および副本が送付されたときは、処分庁は、すみやかに、その正本を審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない
    3. i の規定につき、処分庁が誤って異議申立てをすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に異議申立てがされたときは、処分庁は、すみやかに、異議申立書または異議申立録取書を審査庁に送付し、かつ、その旨を異議申立人に通知しなければならない。
    4. i,ii,iii の規定により審査請求書の正本または異議申立書もしくは異議申立録取書が審査庁に送付されたときは、はじめから審査庁に審査請求がされたものとみなす。
    5. 処分庁が誤って法定の期間よりも長い期間をいsnさせ胃吸気管として教示した場合において、その教示された期間内に審査請求がされたときは、当該審査請求は、法定の審査請求期間内にされたものとみなす。
  2. 異議申立てに対する誤った教示
    1. 次のいずれかの場合には、その教示された行政庁に書面で審査請求がなされたときは、当該行政庁は、すみやかに、審査請求書を当該処分庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
      1. 異議申立てをすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示した場合
      2. 審査請求をすることもできる処分につき、処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合
    2. 1 の規定により審査請求書が処分庁に送付されたときは、はじめから処分庁に異議申立がされたものとみなす。
  3. 適用除外
     誤った教示に関する規定は、不作為に関する不服申立と再審査請求には適用されない

手続の併合・分離・承継

手続の併合・分離

 審査庁は、必要があると認めるときは、数個の審査請求を併合し、または併合された数個の審査請求を分離することができる

手続の承継

  • 承継人
    1. 死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する
    2. 審査請求人について合併があったときは、合併後存続することとなった、あるいは、合併によって設立された、法人・社団・財団が審査請求人の地位を承継する
    3. 審査請求について分割があったときは、分割により当該権利を承継した法人が審査請求人の地位を承継する
  • 承継人に関する諸規定
    1. 審査請求人の地位を承継した者は書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。この場合は、権利承継の事実を証する書面を添付しなければならない。
    2. i の規定による届出がされるまでの間において、被承継者にあててされた通知その他の行為が、地位の承継人に到達したときは、その者に対する通知その他の行為としての効力を有する
    3. 死亡による相続の場合において、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者が2人以上あるときは、その1人に対する通知その他の行為は、全員に対してされたものとみなす
    4. 審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者(要するに特定承継)は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる

審査庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置

  1. 審査庁が審査請求を受理した後法令の改廃により当該審査請求につき裁決をする権限を有しなくなったときは、当該行政庁は、審査請求書または審査請求録取書および関係書類その他の物件を新たに当該審査請求につき裁決をする権限を有することになった行政庁に引き継がなければならない
  2. 1 の引き継ぎがあった場合においては、その引き継ぎを受けた行政庁は、すみやかに、その旨を審査請求人および参加人に通知しなければならない。

行政不服審査法上の期間

日数場合
2週間審査庁の掲示場に掲示を始めた日の翌日から起算して左の期間を経過したときに、
裁決書の謄本の送付があったものとみなされる。
20日不作為についての異議申立てがあったとき、異議申立てがあった日の翌日から起
算して左の期間内に、申請に対する何らかの行為をするか、書面で不作為の理由を
示さなければならない。
30日^杁朕塾てに対する「決定」があったことを知った翌日から起算して左の期間内に
 審査請求をしなければならない。
⊃該裟禅瓩紡个垢襦嶌朷茵廚あったことを知った日の翌日から起算して左の期間内
 に再審査請求をしなければならない。
60日 崕菠」があったことを知った日の翌日から起算して左の期間内に審査請求を
 しなければならない。
 崕菠」があったことを知った日の翌日から起算して左の期間内に異議申立てを
 しなければならない。
3ヶ月異議申立てをした日の翌日から起算して左の期間を経過しても、処分庁が異議申
立てについて決定をしないとき、審査請求できる。
1年「処分」のあった日の翌日から起算して左の期間を経過すると審査請求および異議申
立てができない。

審理の終結 - 各当事者の権能による審理の終結

申立人による終結

  • 申立の取下
    1. 申立人は、裁決、決定があるまでは、いつでも申立の取り下げができる
    2. 取下げは書面でしなければならない

行政機関による終結

  • 審査請求の場合
    • 審査請求、再審査請求に対する最終的判断を「裁決」という
  • 異議申立ての場合
    • 異議申立に対する最終的判断を「決定」という

一般的効力

 裁決・決定は行政行為の一種であるので、それが当然無効と認められる場合を除いて一般の行政行為と同様、拘束力、公定力、不可争力、不可変更力、自力執行力を有する。

審理の終結 - 審理の結果

不作為についての不服申立(審査請求・異議申立て)に対する審理結果

  • 却下
    1. 不作為についての審査請求が不適法であるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する
    2. 不作為についての異議申立てが不適法であるときは、不作為庁は、決定で、当該異議申立てを却下する
  • 棄却
     不作為についての審査請求が理由が無いときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。
     ※不作為の異議申立てには棄却決定はなく、却下以外は同一の扱いとなる
  • 認容
     不作為についての審査請求に理由があるとき、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請に対する何らかの行為をすべきことを命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
     ※不作為の異議申立てには棄却決定はなく、却下以外は同一の扱いとなる
  • 不作為に対する応答義務 ※不作為に対しての異議申立てにのみある
     不作為についての異議申立てが却下以外の結論であるとき、不作為庁は、不作為についてなんらかの異議申立てがあった日の翌日から起算して20日以内に、申請に対するなんらかの行為をするか、または書面で不作為の理由を示さなければならない。

処分に対する不服申立(審査請求・異議申立て)に対する審理結果

  • 却下
    1. 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する
    2. 処分についての異議申立てが法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるときは、審査庁は、決定で、当該審査請求を却下する
  • 棄却
    1. 処分についての審査請求が理由が無いときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する
    2. 処分についての異議申立てが理由が無いときは、審査庁は、決定で、当該審査請求を棄却する
  • 事情裁決・決定
    • 意義
      • 本来は「認容」であるが、公益保護のために「棄却」とするもの
      • 処分についての不服申立てに対してのみなされる。
    • 要件
      1. 処分が違法または不当であるが、これを取り消しまたは撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止の程度および方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分を取り消しまたは撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁(処分庁)は、裁決(決定)で当該審査請求を棄却することができる
    1. 事情裁決(決定)をするには、審査庁(処分庁)は、裁決(決定)で、当該処分が違法または不当であることを宣言しなければならない
       ⇒申立人の請求を最小限尊重
  • 認容
    1. 処分についての審査請求に理由があるとき
      1. 事実行為を除く処分についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、裁決で、当該処分の全部または一部を取り消す
      2. 事実行為についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、処分庁に対し当該事実行為の全部または一部を撤廃すべきことを命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する
      3. a,b の場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、裁決で当該処分を変更し、または処分庁に対し当該事実行為を変更すべきことを命ずるとともに裁決でその旨を宣言することもできる
      4. c の審査庁の裁決による原処分(当初の処分または事実行為)の取消または変更裁決をする場合には、審査請求人の不利益に当該処分または当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできない(不利益変更禁止の原則)。
    2. 処分についての異議申立てに理由があるとき
      1. 事実行為を除く処分についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、決定で、当該処分の全部もしくは一部を取消し、またはこれを変更する。
        但し、当該処分が法令に基づく審査会その他の合議制の行政機関の答申に基づいてされたものであるときは、さらに当該行政機関に諮問し、その答申に基づかなければ、当該処分の全部もしくは一部を取消し、またはこれを変更することができない。
      2. 事実行為についての異議申立てに理由があるときは、処分庁は、当該事実行為の全部もしくは一部を撤廃し、またはこれを変更するとともに、決定で、その旨を宣言する
      3. a,b の決定により原処分(当初の処分または事実行為)を取消しまたは変更する場合でも、処分庁は意義申立人の不利益に当該処分または当該事実行為を変更することはできない(不利益変更禁止の原則

裁決・決定の効力およびその他の処理

裁決・決定の方式

  1. 裁決・決定は書面で行い、かつ、理由を附し、審査庁・処分庁がこれに記名押印をしなければならない
  2. 処分庁は、審査請求もすることもできる処分に係る異議申立てについて決定をする場合には、意義申立人が当該処分につき既に審査請求をしている場合を除き、決定書に、次の事項を記載して、これを教示しなければならない
    1. 審査請求をすることができる旨
    2. 審査庁
    3. 審査請求期間
  3. 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に次の事項を記載してこれを教示しなければならない
    1. 再審査請求をすることができる旨
    2. 再審査庁
    3. 再審査請求期間

効力発生要件

  1. 裁決は、申立人および利害関係人に送達することによって、その効力を生ずる
  2. 裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによって行う。ただし、送達を受けるべき者の所在が知れないとき、その他裁決書の謄本を送付することができないときは、公示の方法によってすることができる
  3. 公示の方法による送達は、審査庁が裁決書・決定書の謄本を保管し、いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨を当該審査庁の掲示場に掲示し、かつ、その旨を官報その他の公報または新聞史に少なくとも1回掲載してするものとする。この場合においては、その掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過したときに裁決書・決定書面の謄本の送付があったものとみなす。
  4. 審査庁は、裁決書の謄本を参加人および処分庁に送付しなければならない【審査請求に対する裁決のみにある要件】

処分に対して為された審査請求にのみ認められた裁決の拘束力

  • 意義
    1. 本効力は異議申立に基づく決定と、不作為に基づく不服申立の決定・裁決には適用されない
    2. 再審査請求の裁決には適用される
  • 内容
    1. 裁決は、関係行政庁を拘束する
    2. 認容議決によって処分が取消されたとき、または、再審査請求の認容議決で最初の不服申立申請を却下・棄却した処分が裁決で取消されたときは、処分庁は、議決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない
       ⇒不利益変更はできないが、最初と異なる処分をすればよく、必ずしも希望通りの処分とは限らない
    3. 法令の規定により公示された処分が議決で取消され、または変更されたときは、処分庁は、当該処分が取消され、または変更された旨を公示しなければならない
    4. 法令の規定により処分の相手方以外の利害関係人に通知された処分が裁決で取消され、または変更されたときは、処分庁は、その通知を受けた者に、当該処分が取消され、または変更された旨を通知しなければならない

証拠書類等の返還

 審査庁・処分庁は、裁決をしたときは、すみやかに、申立のために提出された証拠書類・証拠物や、審査庁・処分庁の提出要求に応じて提出された書類その他の物件をその提出人に返還しなければならない。

行政事件訴訟法

総論

行政訴訟の種類

  • 主観訴訟
    • 国民の権利・利益の保護を目的とする訴訟
    • 抗告訴訟および当事者訴訟が該当する
  • 客観訴訟
    • 個人の権利や利益とは別に、行政活動の適法性の確保、および客観的な法秩序の維持を目的とする訴訟
    • 民衆訴訟と機関訴訟が該当する
行政訴訟主観訴訟抗告訴訟取消訴訟処分の取消の訴え
裁決の取消の訴え
その他の抗告訴訟無効等確認の訴え
不作為の違法確認の訴え
義務付けの訴え
差止めの訴え
当事者訴訟形式的当事者訴訟
実質的当事者訴訟
客観訴訟機関訴訟
民衆訴訟

取消訴訟と不服申立ての関係

 取消訴訟と不服申立ての両者が提起可能であるときは、原則として、自由選択主義が採用されている<8条1項>が、例外として、審査請求前置主義が取られている場合がある<8条1項但書>。
 つまり、個別の法律に、処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができない旨の定めがある場合には、まず審査請求を行うべきとされる(但し、例外有り)<8条2項>。
 また、国民が自由選択主義に基づき、取消訴訟と審査請求を同時に申し立てた場合には、裁判所は審査請求に対する裁決があるまでは訴訟手続を中断できる<8条3項>。この間に審査請求が通り裁決で処分が取り消されれば、処分の訴えは、最早必要がないこととなり、裁判所は却下できる。なお、逆に裁判所が中断せずに審理を進め、審査請求の裁決よりも早く処分取消の判決が下され確定すれば、行政庁はこれに拘束されることになる。

取消訴訟

 抗告訴訟の一つである取消訴訟は、取消の対象に応じて「処分の取消の訴え」と「裁決の取消の訴え」に分かれる。前者は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消を求める訴訟で、後者は、審査請求・異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消を求める訴訟をいう。

処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟との関係

 行政処分の違法性を主張して、審査請求で行政庁と争ったがそれが棄却された場合に、国民としては、そもそもの行政処分(原処分)の違法性について争う方法(原処分の取消訴訟)と、その審査請求の裁決が違法であると争う方法(裁決の取消訴訟)と、どちらを選択するべきかという問題がある。

 この場合に、原処分の取消訴訟によるべきという考え方を原処分主義といい、棄却裁決の取消訴訟によるべきという考え方を「裁決主義」という。
 行政事件訴訟法は、この点について、10条2項で「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない」と規定している。
 つまり、原処分に内在する違法性を主張する場合には、処分の取消の訴えを主張すべき(原処分主義)であるとし、裁決の取消の訴えは、裁決固有の瑕疵を主張して裁決のやり直しを求める場合に主張すべきとしている
 また、特別法で裁決主義のみを採用している場合(選挙関係に関する訴訟等)にも裁決の取消の訴えによることになる。

取消訴訟の要件

  • 必然性
     訴訟要件としては、まず処分性の要件が必要となる。
     行政事件訴訟法は、取消訴訟の対象を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と規定しているため、例えば行政指導のような行為は、行政庁の処分とは言えないようなことから取消訴訟の対象とはならないとされている。
  • 原告適格
     取消訴訟は、当該処分または裁決の取消を求めるにつき、法律上の利益がある者のみが提起できるとされ、この資格を原告適格とよぶ。
     原告適格の有無の判断に当たっては、以下の基準が適用される。
    1. 当該法令の趣旨および目的
    2. 当該処分において考慮されるべき利益の内容および性質
    3. 当該法令と目的を共通にする関係法令の趣旨および目的
    4. 当該処分または裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることになる利益の内容および性質ならびにこれが侵害される様態および程度
  • 被告適格
     被告適格とは、訴えの相手方を誰にすべきかという問題であり、行政事件訴訟法では、原則として、処分の取消の訴えは、処分をした行政庁の所属する国または公共団体を、裁決の取消の訴えは、裁決をした行政庁の所属する国または公共団体を被告とすべきと定めている
     ※国民には行政組織が明白でないため、分かりやすく「国」「公共団体」と、処分庁が所属する最大単位を被告としている
  • 訴えの利益
     訴えの利益とは、当事者の救済の可能性や必要性のことであり、取消訴訟によって、侵害されていた権利や地位が回復されるようなものでなければ、そもそも訴えを起こす実益がないし、裁判所も裁判を却下することになる。
     たとえば、ある建物に建築確認がなされ、その建物の建築工事も完了したところ、近隣住民が、当該建築確認の取消を求めて訴訟を起こしたというケースで、判例は、そもそも建築確認とは、それがなければ公示ができないという意味にすぎないとして、本件のような既に工事が終了した場合には、もはや建築確認を取り消すべき訴えの利益はないとしている(最判昭59.10.26)。

 なお、行政事件訴訟法は、9条1項の括弧書きの中で、訴えの利益は「処分または裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分または裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有する者を含む」としている。
 例えば、運転免許の取消処分を受けた者が、その免許の有効期間が経過しても、その取消処分の取消を求める訴えの利益が失われないとされたもの(最判昭40.8.20)などがこれに該当する。

  • 出訴期間
     取消訴訟は、処分または裁決があったことを知った日から6ヶ月以内に提起しなければならない。また、処分または裁決の日から1年を経過した場合には、もはや提起することができない(但し、正当な理由があれば可能)。
  • 管轄
     原則として、被告の所在地を管轄する地方裁判所となる。ただし、国民の出訴を容易にし、証拠調べ等の便宜を資するために、次の特例がある。
    1. 土地の収用、鉱業権の設定その他不動産または特定の場所にかかる処分・裁決については、その不動産・場所を管轄する地方裁判所にも提起できる
    2. 処分・裁決に関し事案の処理に当たった下級行政機関がある場合には、その下級行政機関の所在地を管轄する地方裁判所にも提起できる
    3. 国を被告とする取消訴訟では、原告所在地を管轄する高等裁判所が所在地を管轄する地方裁判所にも提起できる。

取消訴訟の審理

要件審理と本件審理

  1. 取消訴訟が提起されると、裁判所は、まず訴えが訴訟要件を充足しているかどうかを審理する(要件審理)
    • もし訴訟要件を欠いている訴えである場合には、却下の判決が下される
  2. 訴訟要件が充足していると認められれば、裁判所は処分の取消を求める請求が妥当かどうかについての審理を行う(本件審理)

審理の方式

 行政事件訴訟法は民事訴訟と同様に、対審による口頭審理方式を採用する。
 また、民事訴訟と同じく、当事者の意思を尊重して、できるだけ紛争を当事者の自主的な解決に委ねるべきとの発想から、裁判所としては、事案の解明も当事者の弁論に表れた主張と証拠のみに基づいて審理を行うべきであるとされている。このような手続上の原則を弁論主義と呼ぶ。ただ、行政事件では、訴訟の対象が民事訴訟と異なり、公益により密接に関わる部分が多く、当事者間での解決があれば十分であるとは言えないため、行政事件訴訟法では民事訴訟にはない「釈明処分の特則」と「職権証拠調べ」の2つの特則を設けている

釈明処分の特則

 行政事件訴訟でも民事訴訟と同じく、裁判所は当事者が提出した主張や証拠のみに基づいて審理を行うべきであるとの原則(弁論主義)が妥当であるが、行政事件訴訟の場合には、当事者の情報収集能力などの点で、行政庁と国民との間に大きな較差が存在する場合が多々あり、弁論主義による場合には、十分な審理が尽くせないという事態が考えられる。
 そこで、行政事件訴訟法では、一般の民事訴訟における「釈明権」を強化して、裁判所による一層の働きかけを定めている。そもそも釈明権とは、裁判所が、当事者に質問をしたり、必要な資料の提出を求める権能をいい、このような釈明権を認めることで、弁論主義の補完を図り、より公正な審理の実現が期待できる。
 行政事件訴訟法では、訴訟関係を明瞭にする必要がある場合には、裁判所は、通常の釈明権はもちろんであるが、さらに被告である国や公共団体に所属する行政庁に対して、その保有する資料などの提出を求めることができるとされている<23条の2>

職権証拠調べ

 弁論主義の原則から、裁判所は当事者の提出した主張と証拠のみを審理することになるが、行政事件訴訟法は「裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる」として、これを修正している<24条>。具体的には、争点となっている証拠の有無などについて、当事者の立証が不十分であるような場合で、公正な心証を得ることができないような場合には、裁判所は当事者の申立てを待たず、自ら証人の喚問や物証の提出、現場検証などを行うことができるとしている。
 但し、裁判所が独自に証拠調べを行うことによって、裁判所の専断が懸念されるため、裁判所はその証拠調べの結果について、当事者の意見を聞かなければならないとされている<24条但書>。
 なお、裁判所が争点そのものを提出することは許されず、当事者が提出した争点についての証拠調べを職権で行うことができるに過ぎないということに注意。

訴訟参加、訴えの併合・変更

訴訟参加

 訴訟参加とは、既に裁判所に係属している裁判について、重大な利害関係を有する第三者が、その裁判に新たに参加することをいう。
 この訴訟参加には、第三者の訴訟参加<22条>と、行政庁の訴訟参加<23条>の二種類がある。

第三者の訴訟参加

 裁判所は、訴訟の結果により権利を侵害される第三者がある場合には、当事者もしくはその第三者の申立てにより、または職権でその第三者を訴訟に参加させることができる<22条> とした。
 これによって、利害関係を有する第三者も訴訟で主張等を行うことができるようになっている。

行政庁の訴訟参加

 裁判所は、必要があると認める場合には、被告となっている行政庁以外の行政庁(当該処分について豊富な資料を有するような行政庁)について、当事者または参加すべき行政庁の申立てにより、または職権で訴訟参加させることができる<23条>とした。
 被告となっている行政庁以外の行政庁でも、例えば行政不服審査を行った審査庁などは豊富に資料を有している場合もあり、これによって、より訴訟の公正な審理が実現できるといえる。

訴えの併合・変更

 例えばABとの間に、複数の紛争がある場合に、それぞれの紛争を別々に訴訟することも可能であるが、相互に関連する紛争については別々に訴訟するよりも、同一の訴訟手続内で審理する方が、審理の重複も防げるし相互の裁判の矛盾の発生も防げるため、法では、一つの訴訟で複数の請求を審査できる「訴えの併合」や、ある訴訟を違う訴訟に変換する「訴えの変更」という制度を設けている。

 なお、訴えの併合や変更についての規定は、取消訴訟のみならず、他の抗告訴訟についても準用されている<38条>。

訴えの併合

 訴えの併合は、複数の紛争を一度に審理するものであるため、あまり関係が無いものを合わせると、かえって審理がまとまりを欠き、訴訟が遅延するおそれがあるため、行政事件訴訟法では、訴えが併合できる訴訟を限定して、その限定列挙された訴えのみが併合できるとしている。この限定列挙されたものを関連請求とよぶ。

訴えの変更

 訴えの変更とは、訴訟の係属中に、当初からの手続を維持しつつ、当初の審判対象を変更することをいう。
 訴えの変更については、行政事件訴訟法は、ある処分の取消請求を、その処分をした国または公共団体に対する損害賠償や、その他の請求に変更することができると規定している<21条>。
 これは、いままで審理してきた請求の取消が、その後の事情で扶養となり、本来であれば訴訟を取り下げるなどして、改めて国等への損害賠償請求を提起するべきところを、同じ紛争について、わざわざ再度の訴訟提起をさせるのは迂遠であるという観点から、訴えの内容を処分の取消から、賠償請求に変更することを認めたものとなっている。
 なお、この訴えの変更が認められるためには、「請求の基礎に変更がないこと」が必要とされる。これは、要するに変更前と変更後とで、審理の内容の基本的な部分に共通性があるということとなっている。

執行不停止

執行不停止の原則

  • 原則
     処分・裁決取消しの訴えの提起は、処分の効力・執行または手続の続行を妨げない
  • 例外
    • 執行の停止
      1. 処分の取消の訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立により、決定をもって、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止をすることができる
      2. 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、または本案について理由がないとみえるときは、することができない
      3. 執行停止の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見を聞かなければならない
      4. 執行停止の申し立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる
    • 執行停止決定の効力
      1. 執行停止の決定の効力は第三者に対しても効力を有する(対世効)
      2. 執行の停止決定は、その事件について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する
  • 例外の例外
    • 事情変更による執行停止の取消し(つまり原則に戻り執行が継続される)
       執行停止の決定が確定した後であっても次の事情があれば、裁判所は、相手方(執行者側)の申立てにより、決定をもって執行停止の決定を取り消すことができる
  • 特殊制度
    • 内閣総理大臣の異議
      1. 執行停止を求める申立があった場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。
      2. 執行停止の決定があった後においても、内閣総理大臣はa の異議を述べ得る。
      3. 異議を為すには、内閣総理大臣は理由を附さなければならず、この理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力存続・処分執行・手続続行をしなければ、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。
      4. 執行停止後に述べる異議は、執行停止の決定をした裁判所に対して述べなければならない。ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所に対して述べなければならない。
      5. 内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、a の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。
  • 内閣総理大臣の異議の効力
     内閣総理大臣の異議があったときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない。
  • その他
    • 執行停止申立の管轄裁判所
       執行停止またはその決定の取消しの申立ての管轄裁判所は、本案の継続する裁判所とする。
  • 裁量処分の取消
     行政庁の裁量処分については裁量権の範囲をこえ、またはその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

訴訟の終結 - 当事者による終結

当事者の意思による終結

 民事訴訟法に基づく当事者の意思表示による裁判の終結

  1. 訴えの取下
    1. 訴えは、判決が確定するまで、その全部または一部を取り下げることができる
    2. 訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論等の期日においては、口頭ですることができる
  2. 請求の放棄
     請求が理由のないことを認める原告の意思表示
     ⇒取り下げとの違いは、取り下げは再度同じ争いをすることが可能であるのに対し、放棄は、もうその争いはできなくなるという違いがある
  3. 請求の承諾
     請求が理由のあることを認めるとの被告の意思表示
     ⇒勝訴判決を得たのと同様
  4. 訴訟上の和解
     訴訟係属中に両当事者が法律関係をめぐる主張につき、相互に譲歩することによって訴訟の全部または一部終了させる旨の期日における合意

訴訟の終結 - 裁判所による判決

判決の種類

  • 却下判決
     訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる
     ※明文規定は民事訴訟法140条となる
  • 棄却判決
     裁判所は、原告の請求に理由が無く、原告の求める法律関係が認められない場合には請求を棄却する判決をすることができる
     ※明文規定は民事訴訟法上も行政事件訴訟法上も存在しない
  • 認容判決
     裁判所は、原告の請求に理由があり、原告の求める法律関係・法律効果の全部もしくは一部が認められる場合は、原告の全部もしくは一部を認める判決をすることができる
     ※明文規定は民事訴訟法上も行政事件訴訟法上も存在しない  

特別の事情による請求棄却(事情判決)

  1. 取消訴訟については、処分または裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償または防止の程度および方法その他一切の事情を考慮した上、処分または裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分または裁決が違法であることを宣言しなければならない。
  2. 訴訟費用(弁護士費用は原則除く)は、行政庁が負担する。

訴訟の終結 - 判決の効力

行政法上の効力

  • 対世効
     処分または裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する
  • 拘束力
    1. 処分または裁決を取り消す判定は、その事件について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する
    2. 処分・裁決が判定により取り消されたときは、その処分・裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分または審査請求に対する裁決をしなければならない
      • あくまで内容を決めるのは行政庁

民法上の効力

  • 既判力<民訴114条>
     確定した終局判決の判断に与えられた一般的な社会通用性のことをいう。同一事件が再度争われても、当事者はこれに反する主張をして事件を争うことが許されず、裁判所もこれと抵触する判断をすることができないということになる。
  • 形成力
    1. 取消訴訟の場合、判決の確定により、当該処分・裁決は遡及的に消滅する
    2. 無効確認、社会一般的に当該処分・裁決の無効が確定する

訴訟の終結 - 判決後の救済措置等

第三者の最新の訴え

  1. 処分または裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃または防御の方法を提出することができなかったものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、最新の訴えをもって、不服の申立てをすることができる。
  2. 1 の訴えは、確定判決を知ったときから30日以内に提起しなければならない。この30日の機関は不変期間とする。
  3. 1 の訴えは、判決が確定した日から1年を経過したときは、提起することができない。

訴訟費用の裁判の効力

 国または公共団体に所属する行政庁が当事者または参加人である訴訟における確定した訴訟費用の裁判は、当該行政庁が所属する国また公共団体に対し、またはそれらの者のために、効力を有する。
 ここでいう裁判とは、民事訴訟用語としての裁判であり、判決・決定・命令のことを指す。つまり、訴訟に関する費用は裁判所が判決や決定によって確定し、その効力は、その裁判の当事者もしくは参加人であった行政機関たる行政庁の行為の効果帰属主体である行政主体に帰属する、ということ

無効等確認の訴え、不作為の違法確認訴訟

無効等確認の訴え

 無効等確認の訴えとは、行政庁の処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無の確認を訴える訴訟をいう<3条4項>。取消訴訟と異なり、出訴期間の制約を受けない。

  • 補充性の原則
     ある行政処分が不存在または無効であれば、その処分には、そもそも公定力が認められないことになり、無効な処分をされた国民は、この処分が無効であることを前提として自己の権利を主張・実現すればよく、わざわざ訴訟を起こす必要が無い。つまり、通常の場合には、公定力がない行政処分について、わざわざ訴訟を起こして無効を確認する実益が乏しいということになる。
     行政事件訴訟法は、このことを考慮して、無効等確認の訴えは、法律が定める特別の場合にのみ提起できるものとしている<36条、補充性>。
  • 例外的に無効確認等の訴えが提起できる場合
    1. 予防的無効確認訴訟
       原告が当該処分または裁決に続く処分によって損害を受けるおそれがある場合をいう。例えば、建物の除去命令が無効であるにも関わらず、その強制執行が予想されるような場合などがこれに当たる。
    2. 補充的無効確認訴訟
       処分または採決の無効の確認を求めるにつき法律上の利益がある場合であって、当該処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達成できない場合をいう。
       例えば、ある地域に既存の公衆浴場が存在するにもかかわらず、その距離制限内に他の公衆浴場が新設されるという許可がなされた場合のように、原告(既存の公衆浴場の事業主)に処分の無効確認を求める法律上の利益は存在するものの、その利益を通常の民事訴訟や当事者訴訟で権利構成するのが難しいような場合がこれに当たる。

不作為の違法確認訴訟

 不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分または裁決をすべきにも関わらず、これをしないことについて違法の確認を求める訴訟をいう<3条5項>。

 不作為の違法確認訴訟を提起できるのは、実際には、現実に「処分または裁決についての申請をした者」に限られる。また、行政庁の不作為という事柄の性質上、出訴期間の制限は無い。
 なお、不作為が違法であるとの判決があった後も、行政庁が不作為を続けていたとしても、判決を強制することができず、そのような意味で、不作為の違法確認訴訟は、場合に因ってはなんらの実効性も有しない訴訟に陥る可能性もある。

義務付けの訴え

 義務づけの訴えとは、行政庁に、一定の処分または裁決をせよとの判決を求める訴訟をいい、大きく分けて、1号義務付け訴訟(非申請型)と2号義務付け訴訟(申請型)の2種類に分かれる(3条6項が、義務付け訴訟の類型を1号と2号に分けて規定していることから1号義務付け訴訟、2号義務付け訴訟とよばれる)。

1号義務付け訴訟

 1号義務付け訴訟とは、行政庁が一定の処分をするべきにも関わらず、これが為されない場合に提起できる義務付け訴訟をいう。例えば、行政が悪質な産業廃棄物の排出事業者に行政規制権限を発動すべき時に、行政がこれを怠っているような場合に、周辺住民がこの義務付け訴訟により行政に何らかの処分を求めるような場合などがこれに当たる。

  • 訴訟の形式的要件
    1. 一定の処分が為されないと、重大な損害が生じるおそれがあり、かつ他にはその損害を回避する方法がないこと
    2. 原告について処分の発動について法律上の利益があること
  • 訴訟の実質的要件
     以下のどちらかを満たせば、裁判所は行政庁に処分の義務付け判決を下すことになる
    1. 求められている処分をすべきことが法令に照らして明白であること
    2. 当該処分をしないことが、行政庁の裁量の範囲を超えているかもしくは濫用に該当していること

2号義務付け訴訟

 2号義務付け訴訟とは、国民からの法令上の申請に基づいて行政庁が一定の処分(裁決)をすべきであるにも関わらずこれをしないときに処分(裁決)の発動を求めて提起する訴訟をいう。場面としては、国民からの申請を拒否する場合と、申請に応答がないような場合がある。

  • 訴訟の形式的要件
    1. 行政庁が申請を拒否したような場合には、その拒否という処分(裁決)が取消・無効・不存在というような瑕疵があるものであること
    2. 行政庁が応答しない(虫)ような場合には、相当の期間を過ぎてもなんらの処分(裁決)が為されないこと
    3. 原告が法令に基づく申請または審査請求を為した者であること
  • 訴訟の手続的要件
    • 2号義務付け訴訟を提起する場合には、必ず申請に対する不作為の違法確認訴訟ないし申請を拒否した処分の取消訴訟(または無効等確認訴訟)と一緒に合わせて提起すること
  • 訴訟の実質的要件
     以下のどちらかを満たせば、裁判所は行政庁に処分の義務付け判決を下すことになる
    1. 行政庁が一定の処分(裁決)をすべきことが法令上明白である場合
    2. 当該処分をしないことが裁量権の範囲を超えもしくは濫用にあたる場合

義務付けの訴えまとめ

  1. 非申請型
    • 「行政庁が一定の処分をすべきであるにも関わらず、これがなされないとき」→義務づけの訴えを単独で提起
  2. 申請型(不作為型)
    • 「申請または審査請求に対し、相当の期間内に何らの処分または裁決がされないとき」→義務づけの訴えおよび不作為の違法確認の訴えを併合提起
  3. 申請型(処分拒否型)
    • 「審査または審査請求を却下しまたは棄却する旨の処分または裁決がされ、それが取り消されるべきものであり、または無効もしくは不存在であるとき」→義務づけの訴えおよび取消訴訟または無効等確認の訴えを併合提起

差止めの訴え

 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分または裁定をすべきではないにも関わらず、これが為されようとしている場合に認められる訴訟をいう<3条7項>。

  • 訴訟の形式的要件
    1. 一定の処分または裁決がなされることにより、重大な損害が生じる恐れがあり、かつその損害を回避するほかに適当な方法がないこと
    2. 行政庁が一定の処分または裁決をしてはならない旨を命じることについて原告に法律上の利益があること
  • 訴訟の実質的要件
     以下のどちらかを満たせば、裁判所は行政庁に差止め判決を下すことになる
    1. 行政庁が一定の処分(裁決)をすべきでないことが法令上明白である場合
    2. 当該処分をすることが裁量権の範囲を超えもしくは濫用に当たる場合

仮の義務付け、仮の差止め

 義務付け訴訟・差止め追証における判決をまっていたのでは、申請者が必要なときに必要な処分を受けることができない(もしくは既に処分がなされて手遅れ)というような場合のために、仮の救済処分として、それぞれ「仮の義務付け」「仮の差止め」という制度が認められている<37条の5>

仮の義務付け

 例えば、生活保護の認定などの申請が却下された場合、義務付け訴訟を利用しても、判決が為されるまでは生活費は給付されないので、困窮者の保護は図られないことになる。
 そこで、以下の要件を充たす場合には、裁判所は当事者の申立てにより、判決が出るまでの間、行政庁に、仮にその処分または裁決をすべきことを決定で命じることができるとしている。

  1. 償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること
  2. 公共の福祉に重大な影響を及ぼさないこと
  3. 原告の主張が理由が無いものとはいえないこと

仮の差し止め

 例えば、行政が再生処分を行う場合にその制裁を公表すると信用が損なわれるようなものについて、例え後で差止めの判決が出ても、一度出てしまうと風評被害なども考えられ、事後的な救済では間に合わないようなことが考えられる。
 そこで、以下の要件を満たす場合には、裁判所は、当事者の申立てにより、判決が出るまでの間、行政庁に、仮にその処分または裁決をしないことを決定で命じることができるとした。

  1. 償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること
  2. 執行停止によって公共の福祉に重大な影響を及ぼさないこと
  3. 原告の主張が理由が無いものとは言えないこと

当事者訴訟

 当事者訴訟とは、当事者の法律関係を確認し、または形成する処分または裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)、および後方上の法律関係に関する確認の訴えその他の後方上尾法律関係に関する訴訟をいう(実質的当事者訴訟)。
 当事者訴訟は、権利主体が対等な立場で権利関係を争う「権利訴訟」であり、民事訴訟と本質的には変わらないが、審理の対象が後方上の法律関係であることから、行政事件訴訟法の規定(職権証拠調べ)が多少適用される特徴がある。

形式的当事者訴訟

 形式的当事者訴訟とは、当事者の法律関係を確認し、または形成する処分または裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものをいう。
 具体例としては、土地収用法の損失補償に関する規定があり、例えば土地収用に関しては収用委員会が決めた補償金の額につき起業者または土地所有者に不服がある場合に、本来は収用委員会の行為なので収用委員会を相手に抗告訴訟を提起すべきところを、法令によってこの際の相手方は起業者または土地所有者(相手方当事者)とすべきとしている。
 このように、本来は当事者間の権利関係に関する訴訟ではないにも関わらず、法令の規定によって当事者間の権利関係に関する訴訟とされたので、このような場合を「形式的」当事者訴訟と呼ぶ。

実質的当事者訴訟

 実質的当事者訴訟とは、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
 例えば、公務員の地位確認訴訟や、給与などの公法上の金銭債権の支払い請求など(≠行政処分)がこれに該当する。内容は民事訴訟と異ならないが、対象が公法上の法律関係なので、純粋な民事訴訟ではなく、行政事件訴訟法の規定が適用される。

機関訴訟、民衆訴訟

機関訴訟

 機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟をいう。例えば、国の関与に関する地方公共団体の機関による取消訴訟などがこれにあたる。
 この訴訟は一般には提起することができず、法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができる。

民衆訴訟

 民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益に関わらない資格で提起するものをいう。具体的には、選挙効力訴訟や住民訴訟などがある。
 この訴訟は一般には提起することができず、法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができる。