憲法 / 裁判所


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裁判所の地位と性格

司法権(76条1項)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

特別裁判所の禁止(76条2項)

特別裁判所は、これを設置することができない。
 ※弾劾裁判所と議院の議員資格に関する訴訟の裁判はこの例外

行政機関による終審裁判の禁止(76条2項)

行政機関は終審として裁判を行ふことができない。
 ※行政機関が前審として裁判をすることは妨げない。(行政不服審査法などの場合)

裁判所の構成と活動方法

  • 最高裁判所
    • 長たる裁判官は内閣が指名し、天皇が任命。その他の裁判官は内閣が任命する。
    • 任期なし。国民審査あり。
  • 下級裁判所
    • 裁判官は最高裁判所が指名し、内閣が任命する
    • 任期は10年で、再任が原則。

裁判所の活動方法(82条)

  1. 裁判の対審及び判決は公開法廷でこれを行ふ
  2. 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪またはこの憲法第3章で補償する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
対審
訴訟の当事者である原告と被告を対立させて行う裁判所が行う取り調べ

※非公開とできるのは、裁判官の全員一致で公序良俗を害するおそれがあると決した場合の対審のみ

裁判所の権能

条文

最高裁判所

  • 裁判をする権利(76条1項)
     すべて司法権は最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
  • 違憲審査権
    • 条文(81条)
       最高裁判所は、一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
    • 注意点
       下級裁判所にも違憲審査権はある。(最判昭25.2.1)
    • 判例
       我が裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法令等に対する議論論争に関し、抽象的な判断を下す権限を有するものではない。(警察予備隊訴訟 最判昭27.10.8)
       ⇒事件がないと裁判ができないということ(付随的審査制)
    • 法令が違憲とされたもの
      • 尊属殺重罰規定(刑法200条)違憲判決
      • 薬事法上の薬局開設距離制限規定違憲判決
      • 議員定数不均衡(公職選挙法)違憲判決(2回)
      • 森林法共有分割規定違憲判決
      • 郵便法違憲判決
      • 在外邦人の選挙権制限違憲判決
      • 非嫡出子の国籍取得制限
  • 規則制定権
    • 条文(77条)
      1. 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
      2. 検察官は、催告裁判所の定める規則に従わなければならない。
      3. 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
  • 下級裁判所の裁判官の指名権
     下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣でこれを任命する。

下級裁判所

 裁判をする権利及び違憲審査権を有する。また、最高裁の委任があったときには規則の制定をすることができる。


司法権の行使の可否(限界)に関する判例

統治行為と司法権

  1. 条約は、高度に政治性を有するものであって、その法的判断は、その条約を締結した内閣やそれを証人した国会の高度の政治的・裁量的判断に属することが少なくない。それゆえ、違憲か否かの判断は純司法的機能を有する裁判所には馴染まず、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査の枠外である。(砂川事件 最判昭34.12.16)
  2. 直接国家統治の基本に関する高度の政治性のある国家行為はたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能であるとしても、裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して直接政治的責任を負うところの政府、国会の政治的判断に任され、最終的には国民の政治的判断に委ねられていると解すべきである。(最判昭35.6.8)
  3. 裁判所は衆参両院の自主性を尊重すべく法律制定の議事手続に関する議決手続の違法事実を審理してその有効無効を判断すべきではない。(警察法改正無効事件 最判昭37.3.7)


⇒他の国権の裁量内の行為であって、かつ、高度に政治的な問題の場合は審査不能

部分社会と司法権

  1. 自立的な法規制をもつ社会ないし団体にあっては当該規範の実現を内部規律の問題として自律的な措置に任せ、裁判に待つを相当しないものもある。本件出席停止の懲罰は正にそのような場合に当たる。もっとも、議会の除名処分は身分喪失に関する重大事項で内部的事項にとどまらず、出席停止とは趣を異にする。(最判昭35.10.19)
  2. 一般市民社会の中にあってこれとは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の係争のごときは、それが一般市民法秩序と関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるを相当とし、裁判所の司法審査の対象とはならない。単位の授与という行為は純然たる内部事項にあたり、大学の自主的、自律的判断に委ねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象とならない。(最判昭52.3.15)
  3. 政党は議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、政党には高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなし得る自由を保障しなければならない。他方、党員は自由意思で政党を結成し、それに加入した以上、自己の権利や自由に一定の制約を受けることがある。政党の自主性に鑑みると、政党の党員に対して処分が一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的事項にとどまる限り、司法権は及ばない。他方処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、処分の当否は政党が自律的に定めた規範に照らし、規範がなければ条理に基づいて、適正な手続によって為されたかによって判断すべきであり、審理もその点に限られる。(最判昭63.12.20)


⇒内部自治において処分が一般社会と関わるような場合を除いて、司法審理は及ばない

宗教問題と司法権

  1. 形式的には法律関係に関する紛争の形を取っていても、その全逓問題において宗教上の教義について判断しなければならない場合、実質において法令の適用による終局的な解決の不可能な場合であって、裁判所法3条に言う、法律上の争訟に当たらない。(板まんだら事件 最判昭56.4.7)
  2. 特定の者の宗教上の地位の存否を審理、判断するために宗教上の教義ないし信仰に立ち入って審理、判断することが不可欠な場合には、裁判所が法令の適用による終局的な解決の不可能な場合であって、裁判所法3条に言う、法律上の争訟に当たらない。(最判平5.9.7)
  3. 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、その全逓で教義、信仰の内容について判断することが不可欠である場合には、法令の適用による終局的な解決の不可能な場合であって、裁判所法3条に言う、法律上の争訟に当たらない。(蓮華寺事件 最判平元.9.8)


⇒付随的審査制のため、学術的な論争や宗教上の教義などの問題は司法審査の対象外

司法権の独立


原則

裁判所の独立

  1. 司法権の独立
    1. すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。(76条1項)
    2. 特別裁判所はこれを設置することができない。(76条2項)
    3. 行政機関は終審として裁判を行うことはできない。(76条2項)
  2. 裁判所自治
    1. 裁判所の規則制定権(77条1項)
    2. 最高裁判所の下級裁判所の裁判官氏名権(80条1項)

裁判官の独立

  1. 身分保障
    1. 罷免される場合の限定・行政機関による懲戒の禁止(78条)
       裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
    2. 任期
      1. 下級裁判所の裁判官は任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達したときは退官する。(80条1項)
      2. 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。(79条6項)
    3. 報酬の保障
      1. 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。(80条2項)
      2. 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。(79条2項)
  2. 職権の独立
     すべての裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

修正

裁判官の独善を阻止するために以下の3つの制度を設けた。

  1. 裁判の公開(82条)
  2. 裁判所の弾劾(64条)
  3. 最高裁万感の国民審査(79条2-4項)
    1. 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の国民審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
    2. 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免される。
    3. 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

指名・任命・認証まとめ

指名任命認証
内閣内閣総理大臣国会天皇-
国務大臣-内閣総理大臣天皇
裁判官最高裁判所長官内閣天皇-
最高裁判所裁判官-内閣天皇
下級裁判所裁判官最高裁判所内閣-