民法 / 親族


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総則

親族の意義

親族

 血縁や婚姻を通じて形成される一定範囲の者をいい、民法上、6親等内の血族、配偶者、3親等内の婚属がこれにあたる<725条>

血族

  • 血縁関係に当たる者を血族という
  • 相互に自然的血族関係がある者(自然血族)と、自然的血縁はないが法律上血縁関係にあると擬制された者(法定血族)がある
    • 自然血族:親子、兄弟姉妹、祖父母と孫、叔父・叔母と甥・姪など
    • 法定血族:養親およびその血族と養子

姻族

  • 婚姻によって生じた、夫婦の一方と他の血族との親族関係を姻族という
  • 夫と妻の父母、兄弟または妻と夫の父母、兄弟は互いに姻族となる

配偶者

  • 法律上の夫婦の一方を他方に対して配偶者という
  • 血族でも姻族でもなく、親等も尊属卑属の関係も生じないが、法律上は親族の中に加えられている

直系・傍系 尊属・卑属

  • 直系:父母と子、祖父母と孫などのように、世代が上下に連なる血縁者のこと
  • 傍系:同一の始祖から分かれた血族のことをいい、父母を同一の始祖とする兄弟姉妹などがこれにあたる
  • 尊属・卑属:ある者より前の世代に属する者を尊属といい、後の世代に属する者を卑属という

親等

  • 親族関係の遠近の程度を親等という
  • 親等は、親族間の世代数を数えて定める
    • 傍系親族については、その者または配偶者から同一の先祖にさかのぼり、そこから他のもに下るまでの世代数による

親族関係の発生と消滅

発生

  • 自然血族関係は、親子の血縁を基礎とするため、出生という事実によって生じる
  • 法定血族関係は、養親子関係を基礎とするため、養子縁組の成立によって生じる
  • 配偶者関係と姻族関係は、婚姻によって発生する
    • 当事者は互いの配偶者となるだけでなく、互いに相手方の血族と姻族関係に入る

消滅

  • 自然血族関係は、当事者の一方の死亡によってのみ当然に消滅する
  • 法定血族関係は、死亡と離縁によって消滅する
  • 配偶者関係は、配偶者の一方の死亡、離婚および婚姻の取消によって消滅する
    • 婚姻によって生じた姻族関係も、離婚及び婚姻の取消によって終了する
    • 夫婦の一方の死亡によって配偶者関係が消滅した場合には、姻族関係は当然には消滅しない
      • この場合には、生存配偶者は、姻族関係終了の意思表示をすることによって、いつでも姻族関係を消滅させることができるとされる
      • 逆に、死亡配偶者の血族の側から生存配偶者との姻族関係を消滅させる方法はない

婚姻

婚姻の意義と成立要件

意義

 終生の共同生活を目的とする男女の法的結合関係のことであり、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する。

成立要件

 婚姻が有効に成立するためには、実質的要件と形式的要件が必要となる

  • 実質的要件
    1. 婚姻意思の合致があること
    2. 婚姻の障害事由がないこと
  • 形式的要件
    1. 有効な婚姻の届出があること

婚姻の実質的要件

婚姻意思

 民法は、婚姻の要件として婚姻意思の合致を要求している。
 ここでの婚姻意思とは、判例によると、「社会通念に従い、客観的に夫婦と見られる共同生活体の創設を真に欲する効果意思」とされる(最判昭44.10.31)。また、婚姻意思には、その性質上期限や条件を付すことはできないとされる。

婚姻意思の存在

 婚姻意思は、婚姻成立時である婚姻届の受理されるときに存在することが必要となる。
 従って、例えば、適式な婚姻届を作成後、その届出前に当事者の一方が死亡したような場合には、婚姻は無効となる。
 さらに、成年被後見人であっても、本人が婚姻について判断する能力が回復していれば、成年後見人の同意を得ることなく、単独で有効に婚姻をすることができる<738条>。

婚姻の障害事由

  1. 婚姻適齢<731条>
    • 男は18歳、女は16歳にならなければ、婚姻をすることができない
  2. 重婚の禁止<732条>
    • 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない(一夫一妻制の原則)
  3. 女が再婚禁止期間を経過していること<733条>
    • 女は、善根の解消または取消の日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない
      • 前婚と後婚があまりに接近すると、再婚後に産んだ子の父が前夫であるか、後夫であるかが不明となり、血統が混乱するのを防止する趣旨
    • 従って、前婚の解消または取消の前から懐胎していた子を出産してしまえば、再婚禁止期間を設ける必要がなくなり、出産の日から再婚禁止の制限はなくなる
  4. 近親婚の禁止<734条>
    • 直系血族または三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない
      • ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りではない
  5. 未成年者の婚姻と父母の同意<737条>
    • 婚姻適齢に達した未成年者が婚姻するには、父母の同意を得なければならない

婚姻の効力

 婚姻には、夫婦の氏の同一や同居・協力義務などの他に、成年擬制や夫婦の契約についての取消権の特則が認められる


成年擬制

  • 民法上は、未成年者が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなされる
    • その結果、婚姻した未成年者は、独立して財産上の法律行為をすることができ、法定代理人の同意は不要となる
    • 婚姻による成年擬制によって、未成年者が成年に達したものとみなされるのは、私法上の行為についてだけであって、刑法や公職選挙法などの公法上の行為については、成年者として扱われることはない
  • 一度、婚姻擬制があると、その未成年者が、その後成年に達する前に婚姻が解消されたとしても、その効果は失われない。

夫婦間の契約取消権

  • 民法は、夫婦間の問題は厳格な法理念にそぐわないと考え、夫婦間で契約をしたときは、その契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができることとした
    • なお、夫婦間の契約の取消によっても、第三者の権利を害することは許されないとされている

婚姻の無効・取消

無効原因

 婚姻は、以下の二つの場合に限って無効となる

  1. 婚姻意思の不存在
    • 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻する意思がないとき、有効に作成された婚姻届が、当事者の一方に受理された場合、または当事者の一方あるいは双方の知らない間に届出がなされた場合など
  2. 届出の懈怠
    • 届出を怠っていること

無効の効果

 婚姻が無効の場合には、婚姻に伴う権利変動は、当初から効力を生じなかったことになる(遡及効)
 ⇒夫婦とされていた者の間に生まれた子供は嫡出子とはならない


婚姻の取消自由

 婚姻の取消事由は、民法の定める事由の以下の事由に限って認められる。

  1. 不適齢婚
  2. 重婚
  3. 再婚禁止期間中の婚姻
  4. 違法な近親婚
  5. 婚姻が詐欺・強迫によってなされた場合

 なお、父母の同意をえないでなされた未成年者の婚姻は、届出が受理されれば有効に成立し、取り消すことはできない。

取消の制限

 民法上の取消事由に該当しても、以下のような場合には、取消をすることができない。

  1. 不適齢婚において、その後、不適齢者が適齢に達したとき
  2. 再婚禁止期間中の婚姻において、前婚の解消もしくは取消の日から6ヶ月を経過したとき、または女が再婚後に懐胎したとき
  3. 詐欺・強迫による婚姻において、当事者が詐欺を発見し、もしくは強迫を免れてから3ヶ月を経過、または追認をしたとき

取消権の行使

 婚姻の取消は、民法の定めるものだけが、家庭裁判所に請求することができる。

  • 不適齢婚、重婚、再婚禁止期間中の再婚、違法な近親婚を理由とする取消
    • 各当事者の他に、その親族および公共の代表者として検察官も取消権を有する
      • 検察官は当事者の一方が死亡した後は、取消を請求することができない
    • 重婚の場合には当事者の配偶者も取消権を有する
    • 再婚禁止期間中の婚姻については、当事者の全配偶者も取消権を有する
  • 詐欺・強迫を理由とする取消
    • 詐欺・強迫を受けたもののみが取消権を有する

 なお、これらの婚姻の取消は、相手方に対する意思表示ではなく、必ず家庭裁判所に対して請求しなければならない。

取消の効果

  • 婚姻の取消は、将来に向かってのも胃その効力を生ずる(将来効)
    • 婚姻の取消がなされても、子が嫡出子たる身分を失うことはない
  • 婚姻のときにおいて、その取消原因について善意の当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならず、逆に、婚姻のときにおいて、その取消原因について悪意の当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない
    • この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害賠償する責任を負う
  • 婚姻の取消には離婚に関する規定が準用されており、離婚による復氏の規定、財産分与の規定などが準用されている。

夫婦別産制

 法律上では、夫婦財産契約によって、婚姻中の財産の帰属等を定めることもでき、これを定めない場合には、法定財産制が適用される。


夫婦財産契約

 夫婦財産契約とは、これから夫婦になろうとする者が、婚姻中の夫婦の財産の帰属、その管理方法、管理費用の負担等について、法定財産制と異なる契約を予め定めておくことをいう。

 この夫婦財産契約は、婚姻の届出前に締結することを養子、婚姻の届出までにその胸の登記をしておかなければ、これを夫婦の承継人および第三者に対抗することができない。また、いったん夫婦財産契約が締結されると、婚姻の届出後は、原則としてこれを変更することができない。

法定財産制

 民法では、原則として、夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中に自己の名で得た財産は、その物の特有財産となると定め、その物が財産の管理権および収益権を有するとする夫婦別産制を採用した。

 ただし、夫婦の共同生活中には、いずれに属するか不明の財産が生じることもあるので、そのような財産は夫婦の共有に属するものと推定している。

 次に、夫婦は、生活費、子の教育費、医療費等については、その試算、収人その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担するとされる。

 さらに、夫婦には、日常家事債務の連帯責任がある。これは、日常の家事に関して第三者と法律行為をし、それによって債務を負担したときは、他の一方も、連帯してその責めに任じなければならないということとなる。

離婚

協議上の離婚

 夫婦が、その協議により離婚することを協議上の離婚という。

要件

 協議離婚が成立するためには、実質的要件と形式的要件の双方を満たす必要がある。

  • 実質的要件
    1. 当事者間に離婚意思の合致があること
    2. 夫婦間に未成年の子があるときは、親権者を定めること
  • 形式的要件
    1. 戸籍法の定める届出

離婚意思の合致

 離婚が成立するためには、当事者間に離婚意思の合致があることが必要とされている。判例では、離婚意思について、婚姻意思の場合とは異なり、法律上の夫婦関係を解消する意思の合致があれば足りるとして、仮装の協議離婚届を提出した場合など、虚偽の離婚届でもいずれも有効としている(最判昭38.11.28)。

 協議離婚をする者は、協議離婚がいかなるものかについて判断する能力があれば、単独で有効に協議離婚をすることができるため、成年被後見人も本心に復していれば、成年後見人の同意を得ることなく、協議離婚をすることができる。

協議離婚の無効

 民法には規定はないが、一方が他方に無断で離婚届を提出した場合など、当事者の意思に基づかない離婚届は、離婚意思を欠くものとして、無効である。また、詐欺または強迫によって離婚した者は、その離婚の取消を裁判所に請求することができる。

親権者の定め

 離婚によって、父母の共同親権が終了し、子は単独親権に服することになる。そのため、未成年の子を有する父母が、協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

効果

 離婚が有効に成立すると、婚姻関係は解消し、婚姻から生じる一切の身分上・財産上の権利義務は、将来に向かって消滅する。また、姻族関係も当然に消滅する。

 また、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、原則として、離婚によって婚姻前の氏に復する

 さらに、離婚した者の一方は、相手方に対して財産分与請求ができる。財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた財産を清算分配し、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものである。

財産分与

 財産分与の有無、その額、方法については、まず、当事者の協議で定める。

 当事者間で、協議が調わないか、協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。なお、分与請求者が、離婚により精神的に苦痛を被った場合には、財産分与とは別に相手方に対して慰謝料を請求することもできる。

裁判上の離婚

 夫婦の一方は、法律上定められている原因に基づき、他方を相手として裁判所に離婚の訴えを提起することができ、この訴えが認められると離婚が成立する。
 裁判上の離婚は、相手方の意思に反しても一方的に離婚を成立させるものであり、強制離婚ともいう。

法定の離婚原因

  1. 不貞行為
    • 配偶者以外の者と、性的関係を結ぶこと
  2. 悪意の遺棄
    • 正統な理由が無いのに、同居・協力・扶助の義務を履行せず、夫婦生活を継続する意思が見られないこと
      • この場合の悪意とは、単に事実上の認識があるだけでなく、さらに積極的に氏の結果を意欲し、もしくは認容し、社会的倫理的非難に値するものであることを要する
  3. 3年以上の生死不明
    • 3年以上にわたって、生存も死亡も証明できない状態が継続していること
      • 3年の期間の起算点は、最後に消息が確認されたときであり、生死不明の原因ないし過失は問わない
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
    • 配偶者が、強度の精神病にかかり、しかも回復の見込みのない場合
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由
    • 婚姻関係が申告に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合
      • いかなる事情がこれに該当するかについては、個別的事案に応じて裁判所が判断する

裁判上の離婚請求

 具体的な離婚原因に該当する場合でも、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

 なお、判例は、離婚原因を自ら作り出した、いわゆる有責配偶者からの離婚請求の可否について、以前は否定的であったが、現在は離婚請求を認めることが著しく社会正義に反すると認められないような場合に限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚請求が許されないとすることはできないとして(最判昭62.9.2)、有責配偶者からの離婚請求も緩やかに解する傾向にある。

裁判上の離婚の効果

 民法771条は、裁判上の離婚の効果については、協議上の離婚の効果に関する規定を準用するとしている。

内縁

 内縁とは、婚姻意思を持って共同生活を営み、社会的・習俗的には夫婦と見られる実質を有しながら、婚姻の届出をしないため、法律上の夫婦と認められない男女の関係をいう。

 内縁については、明文の規定を欠くが、判例は、これを準婚関係と構成し、できるだけ婚姻に準じた取り扱いをしようとするとともに、その不当破棄についても、不法行為を理由として損害賠償を求めることができるものとしている(最判昭33.4.11)

内縁の成立

 内縁は、事実的な夫婦関係であるから、男女が婚姻意思、またはすくなくとも内縁関係を結ぶ意思を持って共同生活を営み、社会的・習俗的には夫婦と認められる事実状態を形成することによって成立する。

内縁の効果

 法律上の婚姻届を欠くことから、戸籍制度上の効果は無く、夫婦同氏の原則、婚姻による成年擬制、配偶者の相続権といった効果は認められない。

 しかし、内縁は準婚関係であることから、以下のような効果は認められる。

  1. 同居・協力・扶助の義務
  2. 守操義務
  3. 婚姻費用の分担義務
  4. 日常家事債務の連帯責任

内縁の夫婦間に生まれた子

 内縁の夫婦間に生まれた子は、法律上の婚姻の成立を前提とする嫡出推定の適用がないため、非嫡出子として扱われる。
 したがって、その子は母の氏を称し、母の単独親権に服し、法律上の父子関係を形成するには、父の認知が必要になる。

内縁の解消

 当事者の一方の死亡による解消内縁関係は、当事者の一方の死亡により当然に解消する。この場合、内縁の配偶者は、法律上の配偶者ではないことから、原則として相続権は認められない。また、他に相続人がいない場合に限り、居住用建物の賃借権を承継することもできる。

 また、内縁の当事者は理由のいかんを問わず、その合意(協議)によって、内縁を解消することができるし、一方的に内縁を解消することもできる。

親子(実子)

 実子とは、親との間に生理的な血のつながりがあると法律上認められる子をいい、嫡出子非嫡出子がある。

嫡出子(推定される嫡出子)

 嫡出子とは、法律上正当な婚姻関係にある父母の間で懐胎・出生した子のことを言い、以下の3要件が必要となる。

  1. 母が妻たる身分を有したこと
  2. 婚姻の継続中に懐胎したものであること
  3. 夫の子であること

 この要件についてhあ、民法は、まず妻が婚姻中に懐胎した子は夫のこと推定するとし、かつ婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定している<722条>。この嫡出推定の及ぶ子を、推定される嫡出子という。

推定の及ばない子

 例えば婚姻中に妻が生んだ子でも、その父子間に自然血縁関係の可能性が明白に存在しないときは、その子は推定の及ばない子として、嫡出推定を受けない嫡出子として取り扱われることになる。

推定されない嫡出子

 推定されない嫡出子とは、婚姻前に懐胎され、婚姻成立後200日が経過しないうちに生まれた子など、民法によって嫡出子たる推定を受けないが、嫡出子たる身分を有する子をいう。

 しかし、戸籍実務上は、婚姻成立後の出生しであれば、一律に嫡出子としての出生届が受理されることになっている。

非嫡出子と認知

 非嫡出子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子(婚外子)のことをいい、認知とは、嫡出でない子と父(または母)との間に、意思表示または裁判によって法的な親子関係を発生させる制度である。

 父が認知届を出すことによって行う任意認知と任意認知がなされない場合に子から父に対して行う強制認知がある。任意認知の効力は、この出生のときに遡ってその効力を生じ、認知者と被認知者との間に法的な父子関係が発生する。

準正

 準正とは、父母の婚姻を原因として、非嫡出子に嫡出子たる身分を取得させる制度のことで、以下の2つの要件が具備されることによって生じる。

  1. 子とその父母の間に法的親子関係が生じること
  2. 父母が婚姻すること

 すなわち、父が認知した子は、その父母の婚姻によって、嫡出子の身分を取得する(婚姻準正)。また、婚姻中父母がが認知した子は、その婚姻のときから嫡出子の身分を取得する(認知準正)。

子の氏

 民法は、夫婦同氏の原則とともに、親子同氏の原則を採用している。
 これにより、民法は、嫡出子は出生のときの父母の氏を称するとしている。ただし、その子が出生前に父母が離婚している場合は、離婚の時の父母の氏を称する。

 なお、非嫡出子は、母の氏を称する。

親子(養子)

総論

意義と成立要件

 養子とは、自然血縁による親子関係のない者の間に、法的に親子関係を創設する制度である。

 養子が成立するためには以下の要件が必要となる。

  • 実質的要件
    1. 縁組意思の合致
    2. 縁組障害のないこと
  • 形式的要件
    1. 戸籍法の定めるところによる届出

養子縁組の障害事由

 縁組の成立には以下の縁組障害のないことが必要となり、縁組障害に反してなされた縁組は、縁組の取消事由となる。

  1. 養親となる者が成年者であること
  2. 養子となる者が尊属・年長者でないこと
    • つまり、自己の直系尊属や自己の弟妹を養子とすることはできる
  3. 後見人が成年被後見人または未成年被後見人を養子とする場合には、家庭裁判所の許可をとること
  4. 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、夫婦共同で縁組をすること
  5. 配偶者の一方が縁組をするには、他方配偶者の同意を得ること
  6. 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、養子となる者に代わって縁組の承諾(代諾)をすること
  7. 養子となる者が未成年者である場合には、家庭裁判所の許可を得ること

養子縁組効力と離縁

養子縁組の効力

  • 養子は、縁組届出の日から、養親の嫡出子となり、養親の氏を称することになる
  • また、養子は、養子が未成年のときは養親の親権に服することになり、相続権、扶養義務等が養親と養子との間に発生する
  • さらに、縁組の日から養子と養親の血族との間においては、血族間における同一親族関係(法定血族関係)が生じる
    • なお、縁組があっても、養子と実親および実方親族との関係に何ら影響せず、養子は、実方と養方の双方と親族関係に立つことになる

離縁(縁組の解消)

 離縁(縁組の解消)とは、いったん有効に成立した縁組の効果を、縁組後に生じた事由に基づき将来に向かって消滅することをいい、民法上は、縁組を解消する原因は離縁のみとされている

 離縁には、協議離縁裁判離縁がある。
 縁組当事者は、その協議によって離縁することができる(協議離縁)。離縁原因となるべき事由のあることは必要でなく、当事者間に離縁の意思があれば足りる。
 次に、離縁当事者は、法定離縁原因がある場合には、相手方に対する離縁の訴えを提訴することができる(裁判離縁)。法定離縁の原因は以下の3つとなる。

  1. 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  2. 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  3. その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

 なお、上記の事由があっても、裁判所は一切の事情を考慮シテ縁組の継続を相当と認めるときは、離縁の請求を棄却することができる。

離縁の効果

 離縁があると、まず法定嫡出親子関係が消滅する。
 また、養親子間のみならず、養子と養親の法定血族関係、姻族関係も消滅する。
 さらに、養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。なお、縁組の日から7年を経過した後に離縁によって縁組前の氏に復したときは、3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。

特別養子

 普通の養子縁組は、養子と実方の血族との親族関係には影響を及ぼさないが、場合に因っては、養子と実方の親族との法律関係を消滅させることの方が望ましい場合もあり、このような場合に、養子と実方の親族との法律関係を消滅させるのが、特別養子縁組の制度である。

成立要件

 特別養子縁組は、家庭裁判所が、一定の場合に、原則として6ヶ月以上の試験養育を行った上で、審判により成立する。

養親となる者の要件

  • 原則として夫婦であって、かつ共に縁組をすることが必要となる
    • 例外的に、夫婦の一方が他の一方の嫡出子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く)の養親となる場合は子の限りではない
  • 原則として夫婦共に25歳以上であることが必要とされる
    • 例外として、夫婦の一方が25歳以上の場合、他方は20歳以上であれば足りる

養子となる者の要件

  • 原則として、審判請求時に6歳未満であることが必要となる
    • 例外として、8歳未満の子で6歳未満から養親となる者に継続して看護されている場合は許される
  • 養子となる者の父母の同意が必要となる

効果

 特別養子縁組が成立すると、普通養子縁組の場合と同様、縁組の日から特別養子は養親の嫡出子たる身分を取得し、養子と養親およびその血族との間に親族関係が生じ、養子は養親の氏をしょうすることになる。

 また、特別養子縁組特有の効果として、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は終了することになる。

終了

 特別養子縁組は、原則として離縁によって終了しない。
 したがって、養親子間がうまくいかなくなったときは、親権喪失宣言再縁組により対処されることになるが、特に必要があると認められるときは、家庭裁判所は、養子、実父母、検察官の申立により、審判をもって特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。

親権

 未成年者は、社会的に未成熟な者として、その身上の監護および財産の保護をする者が必要となり、その役割を担うのが第一に親権者、すなわち父母・養親となる。

 親権に服するのは、「成年に達しない子」すなわち未成年に限られ、未成年者であれば、実子、養子、非嫡出子を問わない。ただし、未成年者も、婚姻することによって成年に達したものとみなされるから、この場合は親権に服さなくなる。

 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。したがって、父母の一方が単独で子の財産に関してなした行為は無効となる。

効力

  • 親権を行う者は、子の監護および教育をする権利を有し、義務を負う
    • この監護教育権の具体的な内容として、民法では、居所指定権、懲戒権、職業許可権を定めている
  • さらに、民法上は子の財産に関する財産管理権を有する
    • 自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない<827条>

親権の喪失

 父母の行状がその目的から見て親権者として相当でない場合、あるいは管理が失当であったことにより子の財産を危うくした場合には、その意思に反してでも、親権あるいは財産管理権を喪失させる必要があり、家庭裁判所は、子の親族または検察官の請求によってその親権あるいは財産管理権を剥奪することができる<834、835条>。

 また、親権は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、辞することができる<836条>。

後見・保佐・補助

後見

 後見は、親権による保護を受けることの出来ない未成年者や成年被後見人のために、国家的監督のもとにその身上および財産上の保護を行うことを目的とする制度のこと。
 このうち、未成年のための者を未成年後見、成年被後見人のものを成年後見という。

 未成年後見は、その未成年者に親権者がいないとき、あるいは親権者が親権を喪失したり管理権を喪失することによって、未成年者を保護することができない場合に限って、例外的に開始する。

 成年後見は、心神喪失の常況にある者として家庭裁判所によって後見開始の審判がなされた者には、その者の財産管理、および療養看護をするための保護者として後見人が付され、開始される。

保佐

 保佐は、被保佐人の保護のために設けられた制度であり、制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度と趣旨を同じくする。

 保佐は、保佐開始の審判がなされることにより開始され、保佐の機関としては、執行機関としての保佐人があり、監督機関としては保佐監督人がある。保佐人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用される。

補助

 補助は、被補助人の保護のために設けられた制度であり、制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度および保佐制度と趣旨を同じくする。

 補助は、補助開始の審判がなされることにより開始され、補助の機関としては、執行機関としての補助人があり、監督機関としては補助監督人がある。補助人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用される。

扶養

 扶養とは、肉体的、精神的、社会的事情によって自己の資産・労力によって生活できない者の生活を維持するために、その者と一定の親族的身分関係にある者が必要な生活資料を与える制度で、扶養義務には以下の2つのものがある。

  1. 生活保持の義務
     夫婦相互間および親の未成熟の子に対する扶養であり、この扶養義務は、相手方の生活を自己の生活の一部として維持することであって、自己と同程度の生活を相手方に保障することを意味する。
  2. 生活扶助の義務
     夫婦あるいは親と未成熟子間以外の親族の扶養であり、義務者が自己の地位相応の生活をしていてなお余裕がある場合に、その限りにおいて相手方を援助すること。通常、扶養という場合にはこちらを指す。