血縁や婚姻を通じて形成される一定範囲の者をいい、民法上、6親等内の血族、配偶者、3親等内の婚属がこれにあたる<725条>
終生の共同生活を目的とする男女の法的結合関係のことであり、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する。
婚姻が有効に成立するためには、実質的要件と形式的要件が必要となる
民法は、婚姻の要件として婚姻意思の合致を要求している。
ここでの婚姻意思とは、判例によると、「社会通念に従い、客観的に夫婦と見られる共同生活体の創設を真に欲する効果意思」とされる(最判昭44.10.31)。また、婚姻意思には、その性質上期限や条件を付すことはできないとされる。
婚姻意思は、婚姻成立時である婚姻届の受理されるときに存在することが必要となる。
従って、例えば、適式な婚姻届を作成後、その届出前に当事者の一方が死亡したような場合には、婚姻は無効となる。
さらに、成年被後見人であっても、本人が婚姻について判断する能力が回復していれば、成年後見人の同意を得ることなく、単独で有効に婚姻をすることができる<738条>。
婚姻には、夫婦の氏の同一や同居・協力義務などの他に、成年擬制や夫婦の契約についての取消権の特則が認められる
婚姻は、以下の二つの場合に限って無効となる
婚姻が無効の場合には、婚姻に伴う権利変動は、当初から効力を生じなかったことになる(遡及効)。
⇒夫婦とされていた者の間に生まれた子供は嫡出子とはならない
婚姻の取消事由は、民法の定める事由の以下の事由に限って認められる。
なお、父母の同意をえないでなされた未成年者の婚姻は、届出が受理されれば有効に成立し、取り消すことはできない。
民法上の取消事由に該当しても、以下のような場合には、取消をすることができない。
婚姻の取消は、民法の定めるものだけが、家庭裁判所に請求することができる。
なお、これらの婚姻の取消は、相手方に対する意思表示ではなく、必ず家庭裁判所に対して請求しなければならない。
法律上では、夫婦財産契約によって、婚姻中の財産の帰属等を定めることもでき、これを定めない場合には、法定財産制が適用される。
夫婦財産契約とは、これから夫婦になろうとする者が、婚姻中の夫婦の財産の帰属、その管理方法、管理費用の負担等について、法定財産制と異なる契約を予め定めておくことをいう。
この夫婦財産契約は、婚姻の届出前に締結することを養子、婚姻の届出までにその胸の登記をしておかなければ、これを夫婦の承継人および第三者に対抗することができない。また、いったん夫婦財産契約が締結されると、婚姻の届出後は、原則としてこれを変更することができない。
民法では、原則として、夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中に自己の名で得た財産は、その物の特有財産となると定め、その物が財産の管理権および収益権を有するとする夫婦別産制を採用した。
ただし、夫婦の共同生活中には、いずれに属するか不明の財産が生じることもあるので、そのような財産は夫婦の共有に属するものと推定している。
次に、夫婦は、生活費、子の教育費、医療費等については、その試算、収人その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担するとされる。
さらに、夫婦には、日常家事債務の連帯責任がある。これは、日常の家事に関して第三者と法律行為をし、それによって債務を負担したときは、他の一方も、連帯してその責めに任じなければならないということとなる。
夫婦が、その協議により離婚することを協議上の離婚という。
協議離婚が成立するためには、実質的要件と形式的要件の双方を満たす必要がある。
離婚が成立するためには、当事者間に離婚意思の合致があることが必要とされている。判例では、離婚意思について、婚姻意思の場合とは異なり、法律上の夫婦関係を解消する意思の合致があれば足りるとして、仮装の協議離婚届を提出した場合など、虚偽の離婚届でもいずれも有効としている(最判昭38.11.28)。
協議離婚をする者は、協議離婚がいかなるものかについて判断する能力があれば、単独で有効に協議離婚をすることができるため、成年被後見人も本心に復していれば、成年後見人の同意を得ることなく、協議離婚をすることができる。
民法には規定はないが、一方が他方に無断で離婚届を提出した場合など、当事者の意思に基づかない離婚届は、離婚意思を欠くものとして、無効である。また、詐欺または強迫によって離婚した者は、その離婚の取消を裁判所に請求することができる。
離婚によって、父母の共同親権が終了し、子は単独親権に服することになる。そのため、未成年の子を有する父母が、協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
離婚が有効に成立すると、婚姻関係は解消し、婚姻から生じる一切の身分上・財産上の権利義務は、将来に向かって消滅する。また、姻族関係も当然に消滅する。
また、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、原則として、離婚によって婚姻前の氏に復する。
さらに、離婚した者の一方は、相手方に対して財産分与請求ができる。財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた財産を清算分配し、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものである。
財産分与の有無、その額、方法については、まず、当事者の協議で定める。
当事者間で、協議が調わないか、協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。なお、分与請求者が、離婚により精神的に苦痛を被った場合には、財産分与とは別に相手方に対して慰謝料を請求することもできる。
夫婦の一方は、法律上定められている原因に基づき、他方を相手として裁判所に離婚の訴えを提起することができ、この訴えが認められると離婚が成立する。
裁判上の離婚は、相手方の意思に反しても一方的に離婚を成立させるものであり、強制離婚ともいう。
具体的な離婚原因に該当する場合でも、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
なお、判例は、離婚原因を自ら作り出した、いわゆる有責配偶者からの離婚請求の可否について、以前は否定的であったが、現在は離婚請求を認めることが著しく社会正義に反すると認められないような場合に限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚請求が許されないとすることはできないとして(最判昭62.9.2)、有責配偶者からの離婚請求も緩やかに解する傾向にある。
民法771条は、裁判上の離婚の効果については、協議上の離婚の効果に関する規定を準用するとしている。
内縁とは、婚姻意思を持って共同生活を営み、社会的・習俗的には夫婦と見られる実質を有しながら、婚姻の届出をしないため、法律上の夫婦と認められない男女の関係をいう。
内縁については、明文の規定を欠くが、判例は、これを準婚関係と構成し、できるだけ婚姻に準じた取り扱いをしようとするとともに、その不当破棄についても、不法行為を理由として損害賠償を求めることができるものとしている(最判昭33.4.11)
内縁は、事実的な夫婦関係であるから、男女が婚姻意思、またはすくなくとも内縁関係を結ぶ意思を持って共同生活を営み、社会的・習俗的には夫婦と認められる事実状態を形成することによって成立する。
法律上の婚姻届を欠くことから、戸籍制度上の効果は無く、夫婦同氏の原則、婚姻による成年擬制、配偶者の相続権といった効果は認められない。
しかし、内縁は準婚関係であることから、以下のような効果は認められる。
内縁の夫婦間に生まれた子は、法律上の婚姻の成立を前提とする嫡出推定の適用がないため、非嫡出子として扱われる。
したがって、その子は母の氏を称し、母の単独親権に服し、法律上の父子関係を形成するには、父の認知が必要になる。
当事者の一方の死亡による解消内縁関係は、当事者の一方の死亡により当然に解消する。この場合、内縁の配偶者は、法律上の配偶者ではないことから、原則として相続権は認められない。また、他に相続人がいない場合に限り、居住用建物の賃借権を承継することもできる。
また、内縁の当事者は理由のいかんを問わず、その合意(協議)によって、内縁を解消することができるし、一方的に内縁を解消することもできる。
実子とは、親との間に生理的な血のつながりがあると法律上認められる子をいい、嫡出子と非嫡出子がある。
嫡出子とは、法律上正当な婚姻関係にある父母の間で懐胎・出生した子のことを言い、以下の3要件が必要となる。
この要件についてhあ、民法は、まず妻が婚姻中に懐胎した子は夫のこと推定するとし、かつ婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定している<722条>。この嫡出推定の及ぶ子を、推定される嫡出子という。
例えば婚姻中に妻が生んだ子でも、その父子間に自然血縁関係の可能性が明白に存在しないときは、その子は推定の及ばない子として、嫡出推定を受けない嫡出子として取り扱われることになる。
推定されない嫡出子とは、婚姻前に懐胎され、婚姻成立後200日が経過しないうちに生まれた子など、民法によって嫡出子たる推定を受けないが、嫡出子たる身分を有する子をいう。
しかし、戸籍実務上は、婚姻成立後の出生しであれば、一律に嫡出子としての出生届が受理されることになっている。
非嫡出子とは、婚姻関係にない男女から生まれた子(婚外子)のことをいい、認知とは、嫡出でない子と父(または母)との間に、意思表示または裁判によって法的な親子関係を発生させる制度である。
父が認知届を出すことによって行う任意認知と任意認知がなされない場合に子から父に対して行う強制認知がある。任意認知の効力は、この出生のときに遡ってその効力を生じ、認知者と被認知者との間に法的な父子関係が発生する。
準正とは、父母の婚姻を原因として、非嫡出子に嫡出子たる身分を取得させる制度のことで、以下の2つの要件が具備されることによって生じる。
すなわち、父が認知した子は、その父母の婚姻によって、嫡出子の身分を取得する(婚姻準正)。また、婚姻中父母がが認知した子は、その婚姻のときから嫡出子の身分を取得する(認知準正)。
民法は、夫婦同氏の原則とともに、親子同氏の原則を採用している。
これにより、民法は、嫡出子は出生のときの父母の氏を称するとしている。ただし、その子が出生前に父母が離婚している場合は、離婚の時の父母の氏を称する。
なお、非嫡出子は、母の氏を称する。
養子とは、自然血縁による親子関係のない者の間に、法的に親子関係を創設する制度である。
養子が成立するためには以下の要件が必要となる。
縁組の成立には以下の縁組障害のないことが必要となり、縁組障害に反してなされた縁組は、縁組の取消事由となる。
離縁(縁組の解消)とは、いったん有効に成立した縁組の効果を、縁組後に生じた事由に基づき将来に向かって消滅することをいい、民法上は、縁組を解消する原因は離縁のみとされている
離縁には、協議離縁と裁判離縁がある。
縁組当事者は、その協議によって離縁することができる(協議離縁)。離縁原因となるべき事由のあることは必要でなく、当事者間に離縁の意思があれば足りる。
次に、離縁当事者は、法定離縁原因がある場合には、相手方に対する離縁の訴えを提訴することができる(裁判離縁)。法定離縁の原因は以下の3つとなる。
なお、上記の事由があっても、裁判所は一切の事情を考慮シテ縁組の継続を相当と認めるときは、離縁の請求を棄却することができる。
離縁があると、まず法定嫡出親子関係が消滅する。
また、養親子間のみならず、養子と養親の法定血族関係、姻族関係も消滅する。
さらに、養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。なお、縁組の日から7年を経過した後に離縁によって縁組前の氏に復したときは、3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
普通の養子縁組は、養子と実方の血族との親族関係には影響を及ぼさないが、場合に因っては、養子と実方の親族との法律関係を消滅させることの方が望ましい場合もあり、このような場合に、養子と実方の親族との法律関係を消滅させるのが、特別養子縁組の制度である。
特別養子縁組は、家庭裁判所が、一定の場合に、原則として6ヶ月以上の試験養育を行った上で、審判により成立する。
特別養子縁組が成立すると、普通養子縁組の場合と同様、縁組の日から特別養子は養親の嫡出子たる身分を取得し、養子と養親およびその血族との間に親族関係が生じ、養子は養親の氏をしょうすることになる。
また、特別養子縁組特有の効果として、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は終了することになる。
特別養子縁組は、原則として離縁によって終了しない。
したがって、養親子間がうまくいかなくなったときは、親権喪失宣言や再縁組により対処されることになるが、特に必要があると認められるときは、家庭裁判所は、養子、実父母、検察官の申立により、審判をもって特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
未成年者は、社会的に未成熟な者として、その身上の監護および財産の保護をする者が必要となり、その役割を担うのが第一に親権者、すなわち父母・養親となる。
親権に服するのは、「成年に達しない子」すなわち未成年に限られ、未成年者であれば、実子、養子、非嫡出子を問わない。ただし、未成年者も、婚姻することによって成年に達したものとみなされるから、この場合は親権に服さなくなる。
親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。したがって、父母の一方が単独で子の財産に関してなした行為は無効となる。
父母の行状がその目的から見て親権者として相当でない場合、あるいは管理が失当であったことにより子の財産を危うくした場合には、その意思に反してでも、親権あるいは財産管理権を喪失させる必要があり、家庭裁判所は、子の親族または検察官の請求によってその親権あるいは財産管理権を剥奪することができる<834、835条>。
また、親権は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、辞することができる<836条>。
後見は、親権による保護を受けることの出来ない未成年者や成年被後見人のために、国家的監督のもとにその身上および財産上の保護を行うことを目的とする制度のこと。
このうち、未成年のための者を未成年後見、成年被後見人のものを成年後見という。
未成年後見は、その未成年者に親権者がいないとき、あるいは親権者が親権を喪失したり管理権を喪失することによって、未成年者を保護することができない場合に限って、例外的に開始する。
成年後見は、心神喪失の常況にある者として家庭裁判所によって後見開始の審判がなされた者には、その者の財産管理、および療養看護をするための保護者として後見人が付され、開始される。
保佐は、被保佐人の保護のために設けられた制度であり、制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度と趣旨を同じくする。
保佐は、保佐開始の審判がなされることにより開始され、保佐の機関としては、執行機関としての保佐人があり、監督機関としては保佐監督人がある。保佐人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用される。
補助は、被補助人の保護のために設けられた制度であり、制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度および保佐制度と趣旨を同じくする。
補助は、補助開始の審判がなされることにより開始され、補助の機関としては、執行機関としての補助人があり、監督機関としては補助監督人がある。補助人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用される。
扶養とは、肉体的、精神的、社会的事情によって自己の資産・労力によって生活できない者の生活を維持するために、その者と一定の親族的身分関係にある者が必要な生活資料を与える制度で、扶養義務には以下の2つのものがある。
憲法
民法
行政法
商法
一般知識