憲法 / 基本的人権


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基本的人権の原則

国民の用件 (10条)

日本国民たる用件は、法律<国籍法>でこれを定める

基本的人権の不可侵性(11条)

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保証する基本的人権は侵すことの出来ない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる

自由・権利の保持義務、濫用の禁止 (12条)

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う

憲法の人権保障の範囲についての問題点


外国人にも人権が及ぶか

  • 問題の所在
    日本国憲法の人権保障規定が外国人にも及ぶか
  • 基本的な考え
     日本国憲法の規定する基本的人権の保障は、権利の性質上、日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも等しく及ぶ(マクリーン事件 最大判昭53.10.4)
  • 個別の事例
    • 外国人指紋押捺制度
       外国人登録法の指紋押捺制度(平成11年廃止)は外国人の居住関係及び身分関係を明確にするための最も確実な制度であり、立法目的に合理性・必要性があり、強制にも過度の苦痛を伴うことがないために違憲とはいえない(最判平7.12.15)
  • 外国人の国政選挙の選挙権・被選挙権
    • 国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法の規定は憲法14条、15条に違反せず合憲(最判平5.2.26)
    • 外国人の国政選挙の被選挙権を認めない公職選挙法の規定も憲法15条及び国際人権規範に違反しない(最判平10.3.13)
  • 在留外国人の地方選挙の選挙権
     憲法93条2項の住民とは、地方公共団体の中に住所を有する日本国民を言うので、在留外国人に選挙権を保障するものでは無いが、在留外国人でも永住者であることやその他の事情によりその地方公共団体に密接な関係がある場合は、立法措置によりその議会の議員等の選挙権を付与する立法措置は憲法上禁止されるものではない(最判平7.2.28)

法人に人権が及ぶか

  • 基本的な考え方
     基本的人権の保障は、性質上可能な限り内国の法人にも適用される物と解するべき(八幡製鉄事件 最大判昭45.6.24)
  • 個別の事例
    • 会社の政治献金
       会社は自然人である国民と同様に、ある政党を支持するなどの政治的活動を行う自由があるとした
    • 南九州税理士会事件
       強制加入団体である税理士会が政党などの政治団体に寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為を目的とする物であり、無効とする(最判平8.3.19)

憲法の私人間効力

  • 基本的な考え方
     憲法の規定は、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。私人間の関係は私的自治に委ねられ、その侵害等については立法措置や民法1条、90条などの規定によって調整を図るべきである。(三菱樹脂事件 最大判昭48.12.12)
     つまり憲法を直接適用して解決するのではなく、私法の一般法である民法の公序良俗や信義則規定を活用して解決を図るべきとされる(民法を経由して憲法を活用する間接適用説)
  • 個別の事例
    • 日産自動車事件
       女性の定年年齢を男性よりも低く設定している就業規則は性別による不合理な差別を定めたものであり、民法90条により無効である(最大判56.3.24)
  • 昭和女子大事件
     学生が政治活動を行う場合には学校の許可が必要であるという校則に違反した場合に、この違反した学生を退学とすることが公序良俗に違反しないかが争われたが、判例は退学処分は学校側が有する懲戒権の裁量内であるとして違法ではないとした(最判昭49.7.19)

国と特別な関係にある者の人権保障

  • 問題の所在
     公務員や受刑者にも一般人と同様に表現の自由や政治的活動の自由を認めても良いのかという問題
  • 基本的な考え方
     従来は、このような特別権力関係にある者を一つのグループとして捉え、このような関係にある者には人権は認められない等の考え方があった。
     しかし、最近では公務員や受刑者を一緒のカテゴリーに入れて全部を一緒にして考えることは無理があるという考え方が通説である。
  • 公務員の人権保障
    • 公務員の労働基本法
       公務員も憲法28条に定める勤労者である以上、原則として労働基本権の保障を受けるが、私企業の労働者とは異なり、その担当する職務の内容に応じて合理性の認められる一定の制約を受ける(全逓東京中郵事件 最大判昭41.10.26)
  • 公務員の政治的活動の自由
     国家公務員法及び人事院規定において公務員の政治的行為の禁止を定めることも違憲ではない。すなわち、行政の中立性が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは国民全体の重要な利益に他ならず、従って公務員の政治的中立が損なわれる恐れがある政治活動を禁止することは、合理的で必要やむを得ない場合には違憲ではない(猿払事件 最大判昭49.11.6)
  • 受刑者の人権保障
    • 閲読の自由
       拘留されている受刑者が私費で新聞を定期購読していたところ、東京拘置所の所長は「よど号」乗っ取り事件に関する記事を塗りつぶして新聞を渡したという事案に於いて、このような措置も合憲であるとした。すなわち、未決拘禁者については逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的のためのほか、監獄内の規律及び秩序の維持上放置することの出来ない程度の障害が生じる相当の蓋然性があると認められ、かつ障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限りで一定の制限を受けるとした。(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件 最大判昭58.6.22)
  • 喫煙の自由
     公金の目的に照らし、必要な限度で被拘禁者の自由に対して合理的制限を加えられるが、その制限が必要かつ合理的かどうかは制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、具体的制限の様態の衡量によって決せられる。喫煙を許すと、罪証隠滅、火災発生の恐れがあり、他面、たばこは嗜好品に過ぎないので、その制限は必要かつ合理的なものである。(喫煙禁止違憲訴訟 最大判昭45.9.16)

包括的基本権


幸福追求権(13条)

条文

 すべて国民は、個人として尊重される。姓名、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

特徴

  • 人権は、14条以下の人権規定の総則的規定
  • 14条以下で規定されている以外の人権(新しい人権)の根拠となる規定でもある

判例

  • 何人も、その承諾なしに、みだりに容貌を撮影されない自由(肖像権・人格権)を有する。警察官が正当な理由も無いのに、個人の容貌を撮影することは、本条に違反するが、公共の福祉のために必要な場合には許される場合がある。(京都府学連事件 最判昭44.12.24)
  • 市区町村長が弁護士法23条の2に基づく紹介に応じて、前科等について報告をした行為が憲法13条に違反するか否かが争われた事例で、判例は前科等は人の名誉信用に関わる事項であり、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有しており、漫然と前科等を報告した市区町村長の行為は公権力の違法な公使にあたるとしている(最判昭56.4.14)
  • 大阪市営高速地下鉄道における商業宣伝放送によって、乗車中は拘束された乗客が聞きたくない音の聴取を強制されることになったとしても、人格権を侵害したとは言えず、本件商業宣伝放送を違法と言うことは出来ない(とらわれの聴衆事件 最判昭63.12.20)
  • 酒税法上は、酒類の製造には免許が必要であるが、無免許で自己消費だけの目的で「どぶろく」を製造していた者を取り締まった事案おいて、判例は、酒税法は酒税の徴収を確保するため、製造目的の如何を問わず、酒類製造を一律に免許の対象とした上、無免許で酒類を製造した者を処罰することとしたものである。これにより自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとは言えず、13条に違反するものではないとした(最判平元.12.14)
  • 私人がその意志に反して、自らの私生活における精神的平穏を害するような事実を公表されることのない利益(プライバシー)は、いわゆる人格権として法的保護の対象となる(石に泳ぐ魚事件 最判平14.9.24)
  • 患者が輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意志を有している場合、これを無視して輸血する行為は意思決定をする権利という患者の人格権を侵害した者として、患者がこれによって被った精神的苦痛の賠償責任の対象となる(エホバの証人輸血拒否事件 最判平12.2.29)

判例で争われた新しい人権

  • 人権として認められたと解釈できるもの
    • プライバシーの権利
    • 肖像権(人格権)
    • 名誉権
  • 認められていないもの
    • 環境権
    • 平和的生存権
    • 喫煙の自由、嫌煙権、日照権

法の下の平等(14条)

  1. すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない
    (ただし、差別自体が合理的なものであれば認められる)
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない
  3. 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、または将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する
  • 判例
    • 旧刑法には尊属を殺害した場合の特別規定があり、その刑罰が無期または死刑のみであった。この規定が平等原則に反するものではないかとして争われた事例に於いて、判例は尊属を保護するために刑を加重しても直ちに合理的根拠を欠くものではないが、刑法200条の尊属殺人罪は必要限度をはるかに越えており、199条の普通殺人罪の法定刑に比し著しく不合理な差別的取り扱いであり、本条1項に反し無効であるとした。(尊属殺重罰規定違憲判決 最判昭48.4.4)
      • 尊属殺の差別化は違憲ではないが、無期懲役または死刑のみという刑罰の規定を違憲とした
  • 憲法が地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別が生ずることは当然予期されることであるから、各条例で取締りに差異が生じても違憲ではない(売春等取締条例違反被告事件 最判昭33.10.15)
  • 事業取得者に必要経費の全額控除を認めながら、給与所得者にはこれを認めず、代わりに給与所得控除によって必要経費の概算控除を行う税法の課税規定は合理的なものである(サラリーマン税金訴訟 最判昭60.3.27)
  • 男子の定年年齢を55歳、女子の定年年齢を50歳と定める就業規則は、女子であることのみを理由として差別するものであり、性別による不合理な差別がある(日産自動車事件 最判昭56.3.24)
  • 民法733条が定める女性の再婚禁止期間が憲法14条に違反しないかについて、判例は、再婚禁止期間は、父性の推定の重複を避けるためや、父子関係の紛争を予防するためにあるところ、このために再婚禁止期間を定めることが14条に反するとまでは言えないとした(最判平7.12.5)

家族生活における個人の尊厳と両性の平等(24条)

  1. 婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互協力により維持されなければならない
  2. 配偶者の選択、財産権、相続、住人の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない

精神的自由権

思想・良心の自由(19条)

条文

 思想及び良心の自由はこれを侵してはならない
 ※この保障は絶対的であり、公共の福祉による制約は認められない
 ただし、あくまで内心の自由に限った話である


判例

  • 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものであれば19条に違反しないとした(謝罪広告請求事件 最判昭31.7.4)
  • 企業が特定の思想、信条を有する者をそれゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることができない(三菱樹脂事件 最判昭48.12.12)
  • 中学校の内申書の思想信条記載欄に「全共闘を名乗り、文化祭粉砕を叫んで校内に乱入し、ビラまきを行った。等」と記載があるが、これをして子供の思想信条を了知しうるものでは無く、その思想信条を高校の入学選抜の資料としたと解されないので、この内申書の記載は憲法19条に違反しないとした(麹町中学内申書事件 最判昭63.7.15)
  • ポストノーティス命令による「深く陳謝する」旨の意思表示は、同種の行為をくり返さない約束を強調する意味を有するに過ぎず、これを命じられた者の反対の意思を無理に要求するものではないので憲法19条に違反しない(ポストノーティス事件 最判平2.3.6)
ポストノーティス
ある者に不当な行為をしたものが、これを再び繰り返さず、また、謝意を表明するために、皆が見やすい場所に反省や謝罪文を掲示すること。ポストノーティス命令とは裁判所が不当行為者にポストノーティスすることを命令すること。

信教の自由(20,89条)

条文

  1. 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない
  2. 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されない
  3. 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない
  4. 公金その他の公の財産は、宗教上の組織、若しくは団体の仕様、便益若しくは維持のため、これを支出し、またはその利用に供してはならない(89条)

内容

  1. 信教をする自由
  2. 心境を共用されない自由
  3. 宗教結社の自由

趣旨

  1. 信教の自由
  2. 政教分離の原則

判例

  1. 信教の自由
    1. 宗教行為として為されたものであったとしても、他人の生命、身体等に危険を及ぼす違法な有形力の行使であり、これによって信者を死に至らしめた場合には、これは著しく反社会的な行為であることは否定できず、信教の自由による保障の対象ではない(最判昭38.5.15)
    2. 宗教法人解散制度は法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合には解散命令もやむを得ないものであり、裁判所が命令を発することとされており手続的保障もあるので信教の自由を侵害しない(宗教法人オウム真理教解散命令事件 最判平8.1.30)
  2. 政教分離
    1. 20条3項が禁止する国およびその機関の「宗教的活動」とは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助・助長または圧迫・干渉となるような行為を言う(目的効果基準)。津市が主催した市立体育館の起工式に神式行事を採用したことは、専ら世俗的なものと認められ、その行為が神道を援助、助長、促進し、または他の宗教に圧迫、干渉を加えるものではないから違憲ではない。(津地鎮祭事件 最判昭52.7.13)
      ⇒国家が宗教と関わり合いを持つことを全く許さない趣旨ではないとされた
    2. 例大祭・慰霊大祭が神式中心の祭儀であり、玉串料奉納が神前に奉納するという意義を持つことからすると、愛媛県が靖国神社または護国神社の挙行した例大祭に際して玉串料を公金から支出して奉納した行為は宗教的意義を持ち、その効果は特定宗教の援助、助長、促進に繋がるため政教分離に違反する(愛媛玉串料訴訟判決 最判平9.4.2)

表現の自由・検閲の禁止・通信の秘密(21条)

条文

  1. 集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。
  2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

判例

積極的な表現に関する判例

  1. 報道の自由
    1. テレビの取材源と証拠押収
      1. 報道機関の報道は、国民が国政に関与するに付き、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものであるから、報道の自由も21条の保障の下にあり取材の自由も21条の精神に照らし十分に尊重に値する。しかし、公正な刑事裁判の審理のために報道機関の取材活動によって得られたものが証拠として必要な場合には、取材の自由が制約を受けることもやむを得ない。(博多駅取材フィルム提出命令事件 最判昭44.11.26)
      2. 報道の自由は適正迅速な捜査の遂行のためには一定の制約を受け、具体的には“蛤瓩寮質⊂攀魏礎有J麁擦亮由への影響等の事情を比較衡量して、制約が許されるか判断する(日本テレビビデオテープ押収事件 最判平元.1.30 制約=取材源の差押えが許される用件を示した。また、本件における検察事務官のビデオテープ押収は合憲とした)
      3. 「公正な刑事裁判」を実現するための不可欠である適正迅速な捜査遂行の要請がある場合には、取材の自由がある程度制約されてもやむを得ない。私法警察官によるビデオテープの差し押さえは、報道・取材の自由を侵害しない。(最判平2.7.9)
    2. 報道の自由の前提となる取材の自由
      1. 報道機関のする報道のための取材の自由も、21条で尊重される。しかし、昭和46年の沖縄返還協定に際し、外務省の秘密電文の漏洩を新聞記者が同省の事務官をそそのかしたのは、取材の方法、手段が刑罰法令に触れ、また、法秩序全体に照らし社会観念上是認できないものであり、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる(外務省秘密電文漏洩事件 最判省53.5.31)
      2. 21条の保障は言いたいことを言わせることであり、新聞記者の取材源について公共の福祉のため最も重要な司法権の公正な発動に付き、必要不可欠な証言の義務をも犠牲にして、証言拒絶の権利までも保障したものと到底解することは出来ない。取材の自由を理由に取材源の秘匿することは保障されていない。(石井記者事件 最判昭27.8.6)
      3. 傍聴人が法廷に於いてメモを取ることは権利として保障されているものではないが、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきである。(レペタ法廷メモ訴訟 最判平元.3.8)
    3. アクセス権・反論権
      1. サンケイ新聞への無料反論文掲載請求について、21条等の自由権的基本権の保障規定は国または地方公共団体の統治行動に対して基本的な個人の自由と平等を保障することを目的としており、私人相互間には直接適用されず、21条から直接に反論文無料掲載の請求権を生ずるとは言えない。(サンケイ新聞反論文掲載請求事件 最判昭62.4.24)
  2. 猥褻表現
    1. 文書の猥褻制の判断にあたっては、当該文書を全体としてみた時に、主として読者の好色的興味に訴えられるものと認められるか否かなどの書店を検討することが必要であり、これらの事情を総合して、その時代の健全な社会通念に照らして、それが「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と言えるか否かを決すべきである。(四畳半襖の下張事件 最判昭55.11.28)
    2. 条例で指定図書である有害図書の自販機による販売を禁じても、青少年の健全な育成を阻害する有害環境浄化のためのやむを得ない規制であるので、憲法21条に違反しない(最判平元.9.19)

表現の自由と法令等の規制に関する判例

  1. 個人の行為の規制
    1. 屋外広告物の展示場所および方法を制限することは、それが都市の美観風致を維持する目的である場合、必ずしも違憲ではない(屋外広告物条例判決 再犯昭43.12.18)
    2. 軽犯罪法1条33号は、他人の家屋等に関する財産権、管理権を保護するため、みだりにビラ貼り行為を規制している。この程度の規則は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限であって、21条2項に違反するとは言えない。(最判昭45.6.17)
    3. 行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、現行法による一般職公務員の政治行為の禁止は違憲ではない(猿払事件 最判昭49.11.6)
  2. 集団行為を規制する法令等
    1. 集団行動による思想等の表現は、単なる言論等と異なって、一種の物理力により支持され、一瞬にして暴徒化する危険が存在する。したがって、事前規制である検閲が21条2項によって禁止されているにもかかわらず、地方公共団体が公安条例で、集団行動等の表現の自由を事前に許可制をもって必要かつ最小限の規制をすることは、公共の秩序維持からやむを得ない。(東京都公安条例事件 最判昭35.7.20)
    2. 皇居外苑の管理者は、その公共福祉財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、もしその行使を誤り国民の利益を妨げるに於いては、違法たるを免れない。本件(メーデー会場としての使用申請)不許可の処分は、公園の管理保存に著しい支障があるとか、他の国民の利用が妨げられる等の理由によって為されたものであり、適正な運営を誤ったとは認められない。(皇居前広場事件 最判昭28.12.23)
    3. 地方公共団体の制定する公安条例が、行列進行または公衆の集団示威運動につき、単なる届出制を定めることは格別、一般的な許可制を定めてこれを事前に抑制することは憲法の趣旨に反するが、公共の秩序を保持し、または公共の福祉が著しく侵されることを防止するため、特定の場所または方法につき、合理的かつ明確な基準の下に、これらの行動をなすにつき予め許可を受けしめ、または届出をなさしめて、このような場所にはこれを禁止することができる旨の規定を設けて、これらの行動について公共の安全に対し明らかに差し迫った危険を及ぼすことが予見されるときは、これを許可せずまたは禁止することができる旨の規定を設けても、これをもって直ちに憲法に違反すると言うことはできない。(新潟県公安条例事件 最判昭29.11.24)
    4. 公の施設は、施設の利用目的に反しない限りその利用は原則的に認められるべきであり、管理者が正当の理由も無く利用を拒否する時は、憲法の保障する集会の自由を不当に侵害する。本件の不許可処分を決める前提となった条例第6条1項1号は、「会館の管理上の支障が生じる事態が、許可権者の主観のみならず客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合」に初めて本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解釈される。また、施設利用反対者の妨害を理由に拒否できるのは、警察の警備によってもなお混乱が防止することができない特別の事情がある場合に限られる。本件はこれらの客観的事情は認められないため、不許可処分は違法なものである。(上尾市福祉会館事件 最判平8.3.15)
  3. 情報公開に関する判例
     大阪府情報公開条例に基づいて府知事の交際費に関する資料の提供を求めた住人の請求に対する非公開処分は、交際費の支出に関する資料の提供によって、その相手方との信頼関係や友好関係を損なうおそれがあり、また、知事の適正な交際費の支出を差し控えさせるなど、交際事務を適切に行うことに著しい支障が生じるおそれがある。また、相手方私人も交際費に要した金額までは一般的に知られたくないと望むものであり、その希望は正当なものであるから、これらの事情は情報公開条例の予定する非開示文書に該当し、本件処分は憲法に違反しない(最判平6.1.27)

表現に対する事前抑制に関する判例

  1. 検閲事前差し止めについて
    1. 検閲の概念
      1. 検閲とは、行政権が主体となり、表現物を対象として網羅的一般的にその発表前にその内容を審査した上、不適当とするものの発表を禁止することで、検閲は絶対的に禁止される。しかし、税関検査は検閲に該当しない。なぜなら、税関検査により輸入が禁止される表現物は国外に於いて発表済みのもので事前発表を禁止するものでなく、思想内容等それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とせず、また税関庁の通知がされた時は司法審査の機会が与えられており、行政権の判断が最終的なものでないからである。(税関検査訴訟事件 最判昭59.12.12)
      2. 普通教育では、児童生徒にいまだ授業内容を批判する十分な能力が備わっておらず、学校、教師を選択する余地も乏しく、教育の機会均等を図る必要があることから、教育内容が正確かつ中立、公正で全国一定の水準にあることが要請される。教科書検定もこの要請を実現するために実施されるもので、その審査基準もその目的のために必要かつ合理的な範囲を超えているとは言えない。また、教科書検定は、発表禁止目的や発表前の審査ではないから、検閲にあたらず、一般図書としての発行を妨げるものでないから、表現の自由を制限するものではない。(第一次家永教科書事件 最判平5.3.16)
  1. 裁判所の事前差し止め
     北海道知事選挙候補予定者の名誉を傷つける内容の雑誌記事に対する裁判所がする仮処分による事前差し止めは、最大判昭59.12.12の判示から検閲にあたらない。しかし、裁判所のする表現行為に対する事前抑制(仮処分による事前差し止め)は、21条の趣旨から厳格かつ明確な用件によって許容されるものであり、表現行為の対象が公職選挙の候補予定者という私人の名誉権に優先する社会的価値を含む場合には、原則として事前抑制は許されない。しかし、表現内容が真実でなく、またはそれが専ら公益を図ることを目的とせず、かつ、被害者に重大で回復困難な損害を及ぼす恐れがあるときは例外的に事前抑制が許される。(北方ジャーナル事件 最判昭61.6.11)
検閲の要件
行政権が思想内容等の表現物の発表前にその内容を審査した上、不適当と認められるものの発表を禁止すること

学問の自由(23条)


条文

学問の自由はこれを保障する

内容

  • 学問研究の自由
  • 研究内容の自由
  • 教授の自由
  • 大学の自治(大学内の人事権、学生・施設の管理権)

※学問の自由の享有主体は原則、教授、准教授、教員等大学のスタッフであり、学生は二次的な要素に過ぎない

判例

 学生の集会が実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の許可があっても大学の有する特別の学問の自由と自治を享有せず、警察官が立ち入っても、大学の自治を侵すものではない。(ポポロ事件 最判昭38.5.22)

経済的自由権

職業の選択の自由(22条)

条文

何人も、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する
※この自由には、選択した職業を営む自由(営業の自由)も含む

判例

  1. 小売商業特別措置法は、小売市場と小売市場の間には一定の距離を空けなければならないと定めているが、この距離制限が営業の自由を侵害しているとして争われた事例に於いて、判例は、小売商業特別措置法の小売市場の距離規制は、中小企業保護の観点から執られた措置であり、目的に於いて一応の合理性が認められ、また、規制の手段・様態も著しく不合理であることの明白な場合と認められないから、本条1項に反しないとした。(最判昭47.11.22)
  2. 薬事法の薬局開設距離制限の規制が争われた事件で、最高裁は消極目的の規制については規制の必要性・合理性の審査と、よりゆるやかな規制手段でおなじ目的が達成できるかどうかの検討が必要であるとし、薬事法の距離制限は国民の生命・健康に対する危険の防止という消極的目的のものであると認定し、「薬局開設の自由→薬局の偏在→競争激化→一部薬局の経営の不安定→不良医薬品の供給の危険性」という因果関係は、立法事実(立法の必要性・合理性を支える社会的・経済的な事実)によって合理的に裏付けることはできないとし、また、立法目的は行政上の取締の強化によっても十分に達成できるとして距離制限を違憲とした。(薬事法違憲判決 最判昭50.4.30)
  3. 公衆浴場法による適正配置規制は、利用者の範囲が地域特定で企業としての弾力性に乏しく、自家風呂の普及により公衆浴場経営が困難になっていることから、公衆浴場を確保しようとする制限であり、社会政策および経済政策上の積極的な規制であるから、その規制については立法府の広い裁量に委ねられており、当該規定が著しく不合理でない限りは憲法に違反しない。(公衆浴場距離制限規定事件 最判平元.3.7)
  4. 国産の生糸関係の産業保護のために、輸入生糸を制限する法律が定められたところ、織物業者が、原料である生糸の仕入れ値が高騰したことによって損害を受けたとして争った事案において、判例は、国産の生糸輸出増進と養蚕業の経営安定を目的とした、外国産生糸輸入規制の立法は、積極的な社会経済政策の実施の一手段として、個人の経済活動に対し、一定の合理的規制を講ずることは、憲法が予定し許容するところであり、立法府がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限ってこれを違憲とすべきであるとして、当該輸入規制法は違憲でないと判断した。(西陣ネクタイ訴訟 最判平2.2.6)
  5. 酒税法に規定する、酒類販売業許可拒否事由は、租税法は立法府の政策的、技術的な判断に委ねるほか無く、基本的には立法府の裁量的判断を尊重すべきである。(租税法に基づく)国家財政目的のための職業の許可制については、その必要性と合理性について立法府の判断が、政策的・技術的な裁量を逸脱し、著しく不合理な場合に違憲となる。(最判平4.12.15)
二重の基準
社会的、経済的弱者保護を目的とした積極目的規制には明白性の原理、国民の生命・健康に対する危険の防止を目的とした消極目的規制には厳格な合理性の基準が適用される

財産権(29条)

条文

  1. 財産権は、これを侵してはならない
  2. 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  3. 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
    (原則的には完全補償)

判例

  1. 以前からため池の堤とう部分をしようして、竹木や農作物を植えてきたという地域で、その堤とう部分の使用を禁止する条例が定められたところ、この条例が財産権の侵害であるとして争われた事件。この事件について、判例は、ため池けっかいの原因となる堤とうの使用行為は、憲法・民法の補償する財産権の行為のらち外であり、そのような行為については条例によって規制し得、たとえこれによって財産権行使がほとんど全面的に禁止されたとしても、これは財産権に内在する当然の制約であり、公共の福祉のために当然に受忍しなければならず、かかる収用による補償は不要である。(奈良県ため池条例事件 最判昭38.6.26)
  2. 自作農創設特別措置法に基づいて市場価格より大幅に安く農地を買収したとしても、29条3項の「正当な補償」とは、合理的に算出された相当額をいうため憲法に違反しない。(最判昭28.12.23)
  3. 土地収用法における損失の補償は、特別の犠牲の回復を目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、被収容者が近傍において被収用地と同等の代替地を取得することを得るに足りる補償を言う。(最判昭48.10.18)
  4. 財産権の種類、性質等は多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策および経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。したがって、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項という公共の福祉に適合する者として是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質および制限の程度等を比較考量して決すべきものであるが、森林法186条の規定は、必要限度を超えて厳格な禁止であるから、憲法に違反する。(森林法違憲判決 最小判62.4.22)
  5. 河川法に基づく宮城県の河川附近地制限令で、砂利採取に許可を取ることは、特定の人に対し、特別の財産上の犠牲を強いるものではないから、損失補償の規定を欠いていても29条3項に違反するものとはいえない。もっとも、その財産上の犠牲が一般的に受忍限度の範囲を超え、特別の犠牲を科したものとみる余地が無いわけではなく、損失補償の規定が無いと言っても、一切の損失補償を否定する趣旨ではなく、直接29条3項を根拠に補償請求を認めうる余地がある。(河川附近地制限令事件 最判昭43.11.27)
     河川附近地制限令が(結果的に)特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものであり、この制限に対しての正当な補償をすべきであるものの、該当令は補償の規定がなく違憲であるとする訴訟。該当令は違憲では無いが、損失の補償は憲法29条3項を根拠にして請求することができると解することができるとした。

居住移転の自由(22条1項)

何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転の自由を有する。

外国移住の自由・国籍離脱の自由(22条2項)

条文

何人も外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。

判例

  • 外国へ移住する自由には外国へ一時旅行する自由を含むが、これも無制限に認められるわけではなく、公共の福祉による合理的制限に服する(帆足計事件 最判昭33.9.10)
    • 判例において、「移住」の中に一時旅行の自由も含まれるものとした。つまり、海外旅行は人権であり、かつ、憲法22条2項で保障されている

身体的自由権

 奴隷拘束からの自由以外は、条文上、刑事事件手続のみを対象としていることとしているが、実際には一定程度で行政手続にもこれらの保障が及ぶとしていることに注意。

奴隷拘束からの自由(18条)

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
 ※本条は私人間に直接適用される

法定手続の保障(31条)

条文

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
 ※罪刑法定主義

判例

  1. 関税法118条1項の規定は、犯罪に関係のある船舶や貨物等が被告人以外の第三者の所有物である場合でも没収できる旨を定めていながら、その第三者に対し、告知、弁解、防衛の機会を与えるべきことを定めていないから、同項によって第三者の所有物を没収することは憲法31条・29条に違反する。(第三者所有物没収違憲事件 最判昭37.11.28)
  2. 憲法31条の保障は直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続が刑事手続ではないとの理由のみで保障の枠外にあるとするのは相当ではない。しかし、同条の保障が及ぶと解釈される場合でも、行政手続と刑事手続は性質を異にし、多種多様であるので、行政処分に対する防御の機会を常に与えなければならないものではない。(成田新法事件 最判平4.7.1)
  3. 刑罰法規が曖昧不明確のゆえに本条に違反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによって決定される。(徳島市公安条例事件 最判昭50.9.10)

逮捕の用件(33条)

条文

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

判例

 罪状の特に重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求める事を条件として被疑者の逮捕を為すこと(緊急逮捕)は憲法33条に違反するものではない。(最判昭30.12.14)

拘留・拘禁の用件(34条)

何人も理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。また、何人も、正当な理由が無ければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

住居の不可侵(35条)

  1. 何人も、その住居、書類および所持品について、新入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収するものを明示する令状がなければ、侵されない。
  2. 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令状により、これを行ふ。

拷問等の禁止(36条)

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

刑事被告人の諸権利(37条)

条文

  1. すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  2. 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与へられ、また、公費で自己のために強制的手続により承認を求める権利を有する。
  3. 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

判例

 個々の刑事事件について、現実に本条1項の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段を執ることも認められるのであり、15年余にわたって公判期日がまったく開かれなかった場合には、判決で免訴の言い渡しをすべきである。(高田事件 最判昭47.12.20)

自己に不利益な供述自白の証拠能力(38条)

条文

  1. 何人も、自己に不利益な供述は強要されない。
  2. 強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
  3. 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科されない。

判例

  1. 本条1項は何人も自己が刑事上の責任を問われる恐れがある事項について供述を強要されないことを保障したものであるから、氏名は原則として同2項にいう不利益な事項に該当しない。(最判昭32.2.20)
  2. 本条の規定は、実質上刑事責任を追及するための資料収集に結びつくのであれば行政手続にも及ぶ。(最判昭42.7.5)
  3. 道交法67条2項の規定する呼気検査は、供述を得ようとするものではないから、本条1項に違反しない。(最判平9.1.30)
  4. 道交法24条1項、同法施行令67条にいう交通事故の報告義務は、刑事責任を問われる慮のある事故の原因その他の事項までをも含めて報告を求めているものではないと解釈される。そう解する限り同法令は憲法38条に違反しない。(最判昭37.5.2)

遡及処罰の禁止・一事不再理(39条)

条文

何人も、実行の時に適法であった行為または既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問わない。

判例

 行為当時の最高裁判例に従えば無罪になる行為について、判例を変更して処罰することは、憲法39条に違反しない。(最判平8.11.18)

社会権

生存権(25条)

本条はプログラム規定に過ぎない

プログラム規定
規定されている責務は政策指針であって、法的な義務ではない

条文

  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

※これが現在の社会福祉立法の総則規定になっている。

判例

  1. 25条1項は、国の責務を宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利は、25条の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって初めて与えられる。しかし、健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であって、その認定判断は厚生大臣の合目的的な専門的技術的裁量に任されており、その判断の当不当の政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題は生じない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等の裁量権の濫用がある場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。(朝日訴訟 最判昭42.5.24)
  2. 国民年金法による障害福祉年金を受給している全盲の女性が、独力で子どもを養育しているため児童扶養手当を請求することは、社会保障法制上、同一の性格を有する2以上の公的年金の併給禁止に触れるとして、請求を拒絶されたとしても、立法政策上の裁量事項であり、25条違反とはいえない。また、障害福祉年金を受ける地位にあるものとないものとの間に、児童扶養手当の受給に冠して差別を生じても、福祉政策を総合判断して、当差別が合理的理由のない差別であるとは言えない。(堀木訴訟 最判昭57.7.7)
  3. 社会保障施策においては、外国人をどのように扱うかは、特別な条約当が存在すれば格別、国の政治的判断によって決定するのが原則であり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うにつき、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。(塩見訴訟 最判平元.3.2)

教育を受ける権利(26条)

条文

  1. すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
  2. すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

判例

  1. 憲法の義務教育は無償とするとの規定は、国が義務教育を提供するにつき対価すなわち授業料を徴収しないことを意味し、このほかに教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものではない。(教科書国庫負担金請求事件 最判昭39.2.26)
  2. 教育権は子女の親が持っていると解されるが、それは家庭教育や学校選択の自由に現れる。また、教育の教授の自由は限られた一定範囲で認められる。それ以外の領域では国が子の利益・成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要且つ相当と認められる範囲において教育内容について決定する権限を持つ。(最判昭51.5.21)

勤労の権利(27条)

  1. すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
  2. 賃金、就業時間、急速その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
  3. 児童は、これを酷使してはならない。  ※本条3項は私人間適用される

労働基本権(28条)

条文

勤労者の団結する権利、及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
 ※本条は私人間に直接適用される

判例

  1. 公務員も憲法28条にいう労働者に他ならない以上、原則的にはその保障を受ける。(全逓東京中郵事件 最判昭41.10.26)
  2. 国家公務員法が公務員の争議行為を禁止するのは、勤労者をも含めた国民全体の利益のためのやむを得ない制約であるから、憲法28条には違反しない。(全農林警職法事件 最判昭48.4.25)
     ※ここに至るまでに全逓東京中郵事件の判例の変更が行われている

受益権

※賠償と補償の文言と意味の違いに注意!

賠償
違法な行為によって生じた損害を填補するもの
補償
適法な行為によって生じた損害について損害を填補するもの

請願権(16条)

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止または改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

国家賠償請求権(17条)

条文

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
 ※これを受けて制定されたのが国家賠償法

判例

 憲法17条が規定、保障する国又は公共団体に対し損害賠償を求める権利については、法律による具体化を予定している。これは、公務員の行為の国民への関わり方には種々多様なものがあり得ることから、国又は公共団体が公務員の行為による不法行為責任を負うことを原則とした上、公務員のどのような行為によりいかなる要件で損害賠償責任を負うかを立法府の政策判断に委ねたものであって、立法府に無制限の裁量権を付与すると言った法律に対する白紙委任を認めているものではない。書留郵便物について、郵便業務従事者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に、不法行為に基づく国の損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条が立法府に付与した裁量の範囲を逸脱したものであると言わざるを得ず、同条に違反し、無効であると言うべきである。(郵便法違憲判決 最判平14.9.11)

裁判を受ける権利(32条)

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

刑事補償請求権(40条)

条文

何人も、拘留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
 ※これを受けて制定されたのが刑事訴訟法

判例

 たとえ不起訴となった事実に基づく抑留・拘禁であっても、実質上は無罪となった事実についての抑留・拘禁であると認められるときには、その部分の抑留・拘禁は本条に含まれ、刑事補償法の対象となる。(最判昭31.12.24)

参政権

参政権(15条)

条文

  1. 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  2. すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
  3. 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
  4. すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

選挙権の内容

  1. 普通選挙:身分・性別・収入等によって、選挙権において差別されない
  2. 平等選挙:選挙における投票価値は1人1票であり、価値的な差はない。
  3. 自由選挙:選挙をするかしないかは自由であり、しなくても良い。
  4. 秘密選挙:誰に投票するかの秘密は保障されなければならない。

判例

  • 立候補の自由は本条1項が直接には規定していないが同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。(三井美唄炭坑事件 最判昭43.12.4)
  • 普通選挙
    • 在留外国人のうちでも永住者等で、その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する立法措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。(最判平7.2.28)
    • 国会議員の被選挙権を日本国民に限っている公職選挙法の規定は、憲法15条に違反しない。(最判平10.3.13)
    • 以前の公職選挙法では、国外に居住する日本国民の選挙権行使の方法が定められていなかったため、国外に居住する日本国民は選挙権行使ができなかった。そこで、そのような公職選挙法が憲法に違反するとして争われた訴訟について、10年以上も在外選挙制度を何ら創設しないままに放置している点や、地球規模での通信手段の発達により国外居住の国民にも選挙権行使が物理的に不可能ではないことなどを理由として、このような定めのない公職選挙法を違憲であるとした。(最大判平17.9.14)
  • 平等選挙
    • 衆議院議員定数不均衡事件判決(最判昭51.4.14)
       各選挙人の投票の価値も憲法の要求するところであり、昭和47年12月10日に行われた衆議院議員選挙の千葉県第一区における選挙当時公職選挙法上の議員1人辺りの選挙人数の較差は、最大で1対5に達しており、憲法の選挙権平等の原則に違反する結果となっていた。しかし、選挙の効力については、選挙を全体として無効にすることによって生じる不当な結果を回避するために、行政事件訴訟法31条の定める事情判決の法理により、選挙を無効とせず違憲の宣言にとどめるのが相当である。
事情判決
処分は違法であっても、それを取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められるとき、違法を宣言して請求を却下する判決
  • 参議院議員定数不均衡事件判決(最判平8.9.11)
     平成3年の参議院議員選挙当時、公職選挙法の規定によれば各選挙区間の議員1人辺りの選挙人数の較差は1対6.59に達しており、参議院議員の選挙制度の仕組み、制度是正における技術的問題等を考慮しても違憲の状態が生じていたが、参議院議員については、議員定数の配分を長期にわたって固定し、国民の意見を安定的に国会に反映させることも合理性を有する者であり、立法権の裁量を逸脱したものと判断することは困難である。
     ※違憲状態にあるが、参議院選挙の特殊性から違憲ではないという判断

国民の義務

基本的人権に関する一般的義務(12条)

 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う

子女に教育を受けさせる義務(26条)

 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う

勤労の義務(27条)

 すべて国民は勤労の義務を負う

納税の義務(30条)

 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う