【質問】 傭兵に比べて,国民軍などは一般人を積極的に殺害するようになっていったのでしょうか?


 【質問】
 先日,たまたま世界史の授業で,仏蘭西革命の後,いわゆる国民軍と軍隊の常設化のくだりにふれることがありました.
 そこで世界史の担任が,誰かは正確には思い出せないのですが,某かの意見として
「これによって,傭兵たちによって行われていた,ある種牧歌的な戦争がなくなって,市民などに被害が出るようになった」
みたいな意見を出して,ある種の国民軍になってから,一般人なども敵国人であるという理由で攻撃するようになったみたいなことを言って締めていました.
 しかし,私が軽くネットなどの統計資料などを当たってみたりしても,特に国民軍創設以前で民間人被害が少なかったという例もありませんし,むしろ傭兵が多く参戦している戦いほど,道々略奪などで民間人被害が多いような感想を持ちました.
 本当に傭兵に比べて,国民軍などは一般人を積極的に殺害するようになっていったのでしょうか?

 【回答】
 まず最初に,中世的な傭兵の時代とフランス革命で出現した国民軍の時代の間に,君主の私物色の強い絶対王制下の国王軍の存在がある.
 この時代,兵の育成には非常に金がかかった上に,火器の発達と普及により,戦闘での死傷率が半端なかった.
 その上に,兵のニーズはどの国でもあったので,補給体制が万全でなければ,兵や傭兵から脱走が相次いだので,軍隊とはとにかく金のかかるものだった.

 このため,君主は戦争は好んだが戦闘は好まず,最小限の実力行使で最大の効果を得るべく,戦争は補給への攻撃や,戦略的機動を用いて敵を降伏に導く,チェッカーゲームの様相をみせた.

 が,「俺たち国民の国家」の出現で,自分の国に忠誠を尽くす兵士が現れた.
 これにより安価で士気の高い兵を,徴兵で大量調達する事が可能となり,フランス以外の国家でもこぞってこれを真似たため,戦闘は一気に使い捨ての時代に入る.
 その先生が言いたかったのは,おそらくこれの事だろう.

 中世的な傭兵についてだが,彼等には給料形態の一部もしくは暗黙の権利として,村落を丸々占領しての略奪という慣習があった.
 しかもこれ,雇い主である領主や国王の取り分さえ定められてる,社会的に公認された性格の強いもの.
 というわけで,傭兵の時代=牧歌的と単純に結びつけるのは間違い.
 三十年戦争でドイツの人口が6割減(前大戦の日本でも6%)したのだって,傭兵がやりたい放題やったのが大きい.

 ロジェ・カイヨワの『戦争論』でも読め.

軍事板,2010/12/12(日)

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