フロントエンド †
フロントエンドのLCフィルター †
- 10バンド分割のフィルターが入っている。これはアマチュア機の普及機よりも多分割であり、コストがかかっている。1.6MHz未満はLPF、1.6MHz以上はBPF。
- BC帯(0.5-1.6MHz)以外のバンドでは、常にBC帯用のトラップフィルタ―が3段掛かっている。
- BC帯(0.5-1.6MHz)のフィルターには-20dBのπ型ATTがかかるようになっている(R9, R10, R11)。
受信用BPFの出力が高インピーダンスで吐かれる方式は、アマチュア用ではあまり見られない気がする。
BPF直後の初段 †
ゲートで(ハイインピーダンス)で受ける2SK125x2のカスケードアンプに叩き込まれる。
下図のゲイン配分に記載の通り、このカスケードアンプにはさほどゲインはなく(+5dB)、インピーダンスを均すことが主目的なのかもしれない*1。
受信のIF構成 †
FMを除く全電波型式において、R-5000の周波数構成は「58.1125MHz(ルーフィングフィルタ)→8.83MHz(2nd IF)」のデュアルコンバージョンだ。
- デュアルコンバージョンという点ではTS-430Sに近いが、構成はあまり似ていない。*2
- 一方、フロントパネルがそっくりなTS-440Sには、8.83MHzをIFにしていること以外に構成上の共通点は少ない。TS-440Sの場合は、45.05MHz(ルーフィング)→8.83MHz→455kHz(セラミックフィルタ)のトリプルコンバージョンだった。
- 余談だが、440の音は非常にかたかった。その音を主に決めていたのは3rd IFの455kHzセラフィルだったようだが。
Serial connectionタイプのフィルター構成 †
R-5000の実用性を高めているのが、SSB/CW/FSK/AMで8.83MHz帯のIFフィルターを複数内蔵でき、ロータリースイッチで帯域を可変できる機能である。
これは、アマチュア用小型HF機で初めて複数のオプションフィルタ―を積めるようにすることで実戦的なHF機を謳った、TS-440S譲りである*3。
ただ興味深いのが、フィルタ方式としてserial connection方式採用している点。8.83MHz IF(2nd)は帯域が広いものから狭いものへと、直列(serial)に配置されている。並列に並べたフィルターをどれか選択するように切り替えるのではなく、「直列」である。
- MCF(or YK-88A-1(オプション), 6kHz/-6dB)
- YK-88S(標準装備, 2.4kHz/-6dB)
- YK-88SN(オプション, 1.8kHz/-6dB)
- YK-88C or YK-88CN(オプション, 500Hz or 270Hz/-6dB)
が順にぶら下がっている。それをダイオードスイッチでオンオフさせることで、同一周波数で多段のフィルターを通過させている*4。
つまりフィルタ―フル実装のR-5000では、常にAMフィルター(YK-88A-1)でこそぎ落された信号が、選択した一番狭い帯域までの全フィルタを通った上で復調される。
- SELECTIVITY W(AM)では「YK-88A-1のみ」
- SELECTIVITY M2 (SSBワイド/AMナロー)では「YK-88A-1→YK-88S」のデュアルフィルタ
- SELECTIVITY M1 (SSBナロー)では「YK-88A-1→YK-88S→YK-88SN」のトリプルフィルタ
- SELECTIVITY N (CW)では「YK-88A-1→YK-88S→YK-88SN→YK-88C/CN」のクアドラプルフィルタ
となる。回路が送受共用ではできない芸当ではある。
同一IFの多段フィルタは、受信性能にはどのように影響しているのだろうか? †
「ルーフィング→8〜9MHz帯→455kHz」のトリプルコンバージョンは、80-90年代アナログ受信機で定番の構成だった。
普及機でもトリプルコンバージョンとしてるリグは結構あったが、コスト上仕方ないとはいえ455kHzの特性ヘボなセラフィルを重ねることになり、たいてい受信音がひどいことになっていた。
一方で、R-5000の受信音は素直で豊かである。AM/SSB/CWとも受信フィーリングはとても良好だ。
455kHzとは違い、高いIF(8.83MHz)のフィルターではシャープな特性を得にくい。
もし群遅延特性・帯域内のフラットネスが悪いフィルタ―を複数重ねようものなら、どんどん復調音が悪くなりそうなものだが、R-5000では全然そのような印象がない。
それどころか、R-5000でローバンドのSSBやCWを聞いていると、強力な近接信号の影響が小さく妙に静かなのだ。多段フィルタで順次削ぎ落されているからなのだろうか。
- さて、歪む原因となるミキサーが増えるトリプルコンバージョンと、R-5000独自の多段フィルタ。受信機としてはどっちがいいのだろうか。*5
- R-5000はトリプルコンバージョン採用による高コスト化を避け、苦肉の策として同一IF多段フィルタ―にしたのか?それともシンプルなデュアルコンバージョンこそが、設計者の狙いだったのだろうか?
復調とAFの処理 †
- AM検波はTr。SSB/CWの復調はミキサICやFETミキサではなく、ダイオードミキサー(リングダイオード)が採用されている。PLL基板からキャリア周波数が供給される。
- SSB/CW復調およびAM検波出力はそれぞれ、「RC LPF→OPアンプ(IC1, 4558/2) による軽いプリアンプ*6」を通る。
- 以降、付加回路である「ノッチ/APF回路→SSBスケルチ」を通り、最後に「トーンバランスアンプ(IC12, 4558によるHPF→LPF各1素子)」で音を均して、オーディアンプ(IC13, MB3713)に供給される。
ということで、R5000のAF特性に納得がいかない方は、トーンバランスアンプ(IC12, 4558)のRC定数をいじればいいのかも?
ゲイン配分 †
R-5000が通常のHF機よりも高感度であることは、感度とSメーターの項に述べた。
受信のレベル配分をTS-440と比較すると受信機らしさがわかる。
各々のサービスマニュアルには、LEVEL DIAGRAMの記載がある。
R-5000 †
入力-6dBuで(IF OUTで110dBu) AF 0.63V/8Ω
TS-440S †
入力0dBuで(IF OUT 107dB) AF0.68V/8Ω。
ということで、R-5000の方が総合利得が高くなっている(ともに14.20MHz)。
ざっくり「無線機で常時プリアンプが+10dB入った状態と見ていい。
(無線機ではなく)受信機として、簡単なアンテナがつながることを前提に、快適に受信できるよう、高感度気味に設計されているのだろうか。
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