メンテナンス


概要

主要基板(片面スルーホール)は3枚しかない上、受信部しかない(そりゃそうだ)。電源の構成もシンプルだ(電源部の怪参照)。

HF機をいじったことがあるアマチュアにとっては、大半の能動部品・コイル類・表示部が無事であれば、メンテナンスは容易いだろう。

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定期的な調整を要する箇所。

ズレると受信機として致命的なのは、以下。 いずれも周波数カウンタ・テスタ・RFプローブ程度であれば調整可能なので、数年に1回ぐらいは確認・調整しておいたほうがよい。

定期メンテポイントの大半は、ボトムカバーを外すと出現する。

PLL1-4の調整(PLL UNIT)

基本的には、適正な周波数と電波型式にしたうえで、PLL基板のTPのDC電圧や周波数を読みながら規定値に調整しておけばOK。

  • PLL1はL5, PLL2はL16, PLL3はTC1, PLL4はL25が調整ポイントだ。
  • なおTC1は基準周波数(18.000,000MHz)の調整。信用に足る周波数カウンターはそうはないので、BTM(5MHzか10MHzの)を使ってゼロビートを取るのが容易で確実である。

言うまでもないが、コア調整用ドライバを必ず使用のこと。下手に精密ドライバーのマイナスでいじってコアを割ったら、そこで試合終了だ。

4つのVCO(RF UNIT)

適正な周波数と電波型式にしたうえで、RF UNITのTP((7)-2と(7)-3)でDC電圧を読み、規定電圧に収まっているか確認。 必要に応じL56(0-7.5MHz用VCO), L58(同7.5-14.5MHz), L60(同14.5-21.5MHz), L62(同21.5-30MHz)のコアを動かす。

IF SHIFT周辺 (SW UNIT B/8およびIF UNIT)

モードをUSB、SHIFT VRをセンタークリック位置にしたうえで、制御電圧と中心周波数を確認・調整。

  • SW UNIT B/8の(8)-4ピンの電圧を読み、同基板上のVR6を回して1.1Vに調整。
  • IF UNIT R139*1のリード線側で周波数を読みながら、SW UNIT B/8基板上のVR6を回して8831.5kHz(USBのBFO周波数)に合わせる。

R-5000のアキレス腱・VCO。

R-5000や同時代のTS-440Sは共通の弱点を持っている。

PLLに使われるVCOが樹脂(接着剤)で包埋されており、この樹脂が30年の時を経て高周波特性をおかしくしたり、部品のリード線を腐食したりする。VCOが発振しなくなったり極度に出力が弱くなることで、PLLがアンロックを起こしR-5000が不動品となるのである。

メンテポイント

は、上掲RF UNITでL56, 58, 60, 62(4バンド分のVCO)が収まっているシールド部分である。

  • シールドの内側を確認してみて、白いロウが流し込まれているのはセーフだ。後期ロットか、ケンウッドでその症状が修理されたもの推測される。
  • 赤茶色の樹脂が敷き詰められている場合はハズレ。運悪く接着剤で埋まってる場合でも、アンロック症状が発生する確率が高いというだけで、もし無難に動作しているならそのまま使った方がいい。すでに動作がおかしい場合は、ケンウッドにメンテを依頼するか、ご自身で樹脂の除去に挑戦するのもいいだろう。

除去方法に王道はない。 軽いチョンボでサドンデス。

シールド缶の中にネチョネチョ付着する樹脂をきれいにポロっと取る方法はないので、ピンセットの先などで慎重にほじくりだす。家主は自力で樹脂の除去+VCOの再調整を行い無事復活した。

無論だが、全員が成功するとは限らない。家主は挑戦した方が壊そうと責任は一切持たない。 接着剤除去中、ミスで壊したパーツによっては復活できない。特に入手難のバリキャップ(ITT310TE)の破壊は致命傷。


*1 リアパネル側、端子(7)そばにあります