受信のフィーリング


音質・トーン

「通信型受信機」には、高級ラジオとしての側面もあると思われる。受信音質が悪いのは致命的だろう。R-5000は基本的にはHFトランシーバーより広めの帯域を取ったハイファイ目の音になっている。

アマチュア無線の受信

  • SSBのQSOをSSBワイド(デフォルトのフィルター;YK-88S)で聞くと、柔らかで中域に芯のある、ここちよいアナログSSBの音。TS-820SやJST-135などのIF段数が少ないリグで聞くSSBの心地よさに近い。各局のSSBの変調の良しあしが良くわかる。*1
  • SSBナローフィルター(YK-88SN)でSSBを聞くと、キッチリ選択度があがる。多少音質が犠牲となるものの、聴きやすい。*2
  • CWフィルター(YK-88C/CN)で聞いたCWの受信音も、良好なトーンだ。

AM放送の受信

  • AMは非常に柔らかくいい音(YK-88A-1内蔵)であり、AM放送をアナログHF機で聞くとありがちな「硬めの(通信向きの)受信音」とは一線を画す。
  • とはいえ、AM放送リスニング用(BCL・SWLラジオ)としてのR-5000評価は当時どうだったのだろう。AMワイドの帯域幅が6kHzのみ*3である。広帯域フィルタ―への切替ができず物足りなかったのではないだろうか?*4

以上の通りR-5000は、SSB/CW/AMモード*5を凡百のアマチュア無線機以上に快適に受信できる、本格的な高性能短波受信機として作られていただろうと推測される。おそらく、AM放送リスナーは製品企画上メインの購買層としなかったのだろう。

内蔵スピーカー

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筐体に余裕があるためか上部に大口径のスピーカーが内蔵されており、外付スピーカーを使用しなくとも単体で音質はかなり良好。

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「EAS-10P411A」という、約10cm径でやけにボイスコイルがごっついスピーカーが使用されている。

お気づきの方もいると思うが、この型番はナショナル(テクニクス)のフルレンジスピーカーユニットだ。*6

AGCの時定数

AGCはFAST/SLOW切り替え可能。SSB/CW/FSKとAMで別々のSLOW/FAST時定数が設定されている。

  • FASTはCW受信にちょうどいい速さ。
  • SLOWはAM向きな感じで、AMラジオを安定に受信する場合は非常に心地よいが、SSBには少し速い感触。SSB受信中に短周期のフェージングが発生すると「ファッファッファッ」という落ち込みが普通のHF機で聞いているよりもずっときつくなる。 もしかすると、時定数を決める電解コンデンサが経年劣化で容量抜けを起こし、そういう特性になってしまっているのかもしれない。


*1 似たフロントパネルのフェイスでも、狭帯域でパリパリな受信音のTS-440Sとは似ても似つかない。
*2 TS-440SでSSBナローにすると、カチコチガサガサした音で長時間聞いていられない。
*3 SSBフィルタ―を通した状態がAMナロー相当
*4 中波放送の占有周波数帯域幅は15kHzな訳で、音質にこだわるAMリスナーを喜ばせるつもりなら、より広帯域のフィルターが用意されていてもよかったかもしれません。
*5 FM-Nモードにいたっては、VHF受信ユニットを内蔵していない場合ほぼ無用ですね。30MHz以下でFMってアマチュア用の「10m FM」しかないわけで、R-5000で29MHzを真剣に受信してた人がいたとは思えませんな・・・
*6 ”EAS-10P”なので確かに10cm径ということなのだろう。ご参考:http://audio-heritage.jp/TECHNICS/unit/index.html