エピローグ      


エピローグ 2003年11月17日 稲葉南方軍集団 野戦病院

 「やっぱり、かっこつけた俺が馬鹿だったな・・・」

 病室でバナナを咥えながら、間耶は気だるい時間を過ごしていた。
 ザトミフ包囲陣は十四日に解放され、包囲されていた稲葉軍も脱出することに成功した。
 その立役者たる間耶であったが、今は入院生活を送っている。

 「そりゃ爆発のまん前で突っ立ってたら怪我もしますよ」
 「うっせー、タコ」

 包帯で足を巻いた空軍兵士がベッドから半身を出して、間耶に話しかけた。
 幸いなことに、マンティコアのMIRVで撃墜された機のパイロットは何名か生き残ることができた。
 それも、五体満足で。
 間耶の方はと言えば、マンティコアの爆発に巻き込まれて負傷、退屈な日々を送っている。 

 「メシは不味いしベッドから出れねぇし。最低だぜ、畜生。手が二本が足が二本、体のパーツが全部揃ってるから文句言えねぇけどな」
 「元気そうだな。間耶」

 見知った相棒が病室に入ってきた。
 間耶は、表情を明るくする。

 「ああ。一日寝転がって退屈な毎日さ」
 「君に本校での教官任務が届いているぞ。あとこれを」

 間耶は一枚のプリントと、分厚い封筒を受け取った。
 封筒には、数え切れないぐらいの現金が入っている。

  「小遣いにしては多すぎだろ、これ」
 「君の功績を称えてだそうだ。いらないのか?」
 
 間耶はすぐに、封筒を懐にしまい込んだ。
 返さなくてもいい"奨学金"だ。

 「いや、ありがたくもらうぜ。実家に送るんだ。母ちゃんが五人目生むからよ」
 「教官はどうする?快適だぞ」
 「暖かいところでお昼寝するのは戦争が終わってからだ。俺なんかより適任がいるだろ」
 「わかった。まあ、一応聞いておかないとな」

 舞虎は、プリントを折りたたんでポケットへ入れた。
 
 「私が言いたいのはそれだけだ。じゃあな」
 「ああ・・・」

 病室を出る直前、舞虎は間耶の方に向き直った。

 「早く怪我を治して戻ってきてくれ。君に食事を奢ってもらいたいからな!」
  
 間耶はにっこりと笑い、舞虎に笑いかける。

 「わーってるよ、相棒!」