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 アルベール・カミュ(1913-1960)はフランスの作家。新聞記者の傍ら、小説『異邦人』(1942)を発表して、大きな注目を受けることになる。その後も、戯曲『カリギュラ』(1945)、小説『ペスト』(1947)などを発表する。エッセイ『反抗的人間』(1952)では、共産主義に内在する全体主義的傾向を暗示して、サルトルとの論争に発展する。1957年にノーベル文学賞。1960年に自動車事故で急死した。

 コリン・ウィルソンは『アウトサイダー』第二章「無価値の世界」で『異邦人』を取り上げ、非現実感に悩まされないアウトサイダーとして位置づけている。ちなみに、『異邦人』の英訳のタイトルは「アウトサイダー」。

 現在、日本で活躍するセイン・カミュはアルベールの甥。

アルベール・カミュの作品は、以下のように大別できる。
0.初期作品(アルジェリアで過ごした青春期に書かれた生命の讃歌を主題とする作品)…小説『幸福な死』、エッセイ『夏』・『結婚』
I.不条理の系列(人生の不条理を主題とする作品。カミュは不条理を見つめていながら、ぎりぎりのところで超越を図る実存主義的思考を批判し、不条理を直視し、緊張関係のなかで生きることに、生の悦びを見出す。哲学的には、個人的な美徳であるキリスト教の神を否定し、自殺の否定する立場。)…小説『異邦人』、哲学的エッセイ『シーシュポスの神話』、戯曲『カリギュラ』・『誤解』
II.反抗の系列(第二次世界大戦期のレジスタンスの経験から、不条理に対抗するための集団的反抗が重視されるようになり、連帯性の必要性が説かれるようになる。一方、中庸を守った人間中心主義的反抗の立場から、ニヒリスティックで全体主義的なマルクス主義的な革命を批判するに至り、ジャン=ポール・サルトルやフランシス・ジャンソンとの論争に発展するようになる。哲学的には、集団的な美徳であるマルクス主義の歴史観を否定し、戦争・革命・死刑などの人為的な殺人を正当化する思想を否定する立場。この時期、カミュの脳裏にあったのは、シーシュポスではなく、プロメテウスであった。)…小説『ペスト』、哲学的エッセイ『反抗的人間』、戯曲『戒厳令』・『正義の人々』
III.晩年の作品(均衡のとれた正午の思想=中庸の思想の立場から、ニヒリズムや人為的な死を正当化する思想を批判し、アンドレ・ブルトンやサルトルとの論争を行ったカミュは、しばらく沈黙を守るが、再び審判や、幼い時に死別した父をテーマにして書き始めた作品群。対独協力者への粛清に賛成したかつての自分への批判や、自身の正義を疑わないパリの知識人への批判がみられる。この時期、カミュの脳裏にあったのは、ネメシスである。)…『追放と王国』・『転落』・『最初の人間』
こうして、自身の世界の再生を図ろうとしたカミュだったが、交通事故という不条理な死が遅い、その生は突然断ち切られることになる。

主要著作

新潮社版『カミュ全集』
第一巻 キリスト教形而上学とネオプラトニズム/アストゥリアスの反乱/裏と表/結婚/地中海に寄せる詩/世界をのぞむ家
第二巻 異邦人(→新潮文庫)/シーシュポスの神話(→新潮文庫)/選ばれた者の肖 像/理知と断頭台/無意味について/ペストのなかの追放者たち
第三巻 カリギュラ(→『カリギュラ・誤解』新潮文庫・絶版/『アルベール・カミュ1 カリギュラ』ハヤカワ演劇文庫)/誤解(→『カリギュラ・誤解』新潮文庫)/ドイツ人の友への手紙/反抗に関する考察/ニューヨークの雨/国際政治への考察/選択の迷い/知性の擁護/自由の証人
第四巻 ペスト(→新潮文庫)
第五巻 戒厳令/正義の人びと/アンドレ・ジッドとの出合い/正義と憎悪/日本の作 家への手紙/パリの沈黙
第六巻 反抗的人間
第七巻 十字架への献身/精霊たち/夏/ハーマン・メルヴィル/牢獄の芸術家/創 造と自由/コルドの魅力
第八巻 ある臨床例/転落(→『転落・追放と王国』新潮文庫)/砂漠について/ロジェ・マルタン・デュ・ガール/テロリズムと弾圧
第九巻 オルメドの騎士/尼僧への鎮魂歌/スウェーデンでの受賞演説/ギロチン/ アルジェリアの記録
第十巻 追放と王国(→『転落・追放と王国』新潮文庫)/悪霊/ルネ・シャール/われらの友ロブレス/アルジェリアの友への手紙
『最初の人間』(新潮社)
『革命か反抗か』(新潮文庫・サルトルおよびジャンソンとの論争記録)
『幸福な死』(新潮文庫)
『直観』(新潮社)
『アメリカ・南米紀行』(新潮社)
『手帖[全]』(新潮社)
『カミュ=グルニエ往復書簡集』(国文社)
『太陽の讃歌〜カミュの手帖(1)』(新潮文庫・絶版)
『反抗の論理〜カミュの手帖(2)』(新潮文庫・絶版) 『ギロチン』(紀伊國屋書店・絶版)
『不条理と反抗』(人文書院)
『スウェーデンの演説』(木内孝訳・神無書房・絶版)
『自由の証人』(新潮社・絶版)
『アクチュアル[時事論集] II』(新潮社・絶版)
(2005.1.1 T.Harada)