コリン・ウィルソンの殺人研究は『殺人百科』(1961)に始まる。一方では、欧米を中心とした殺人に関する百科全書を目指しながら、他方では、新実存主義の観点から殺人者の心理を解明しようとしている。
『殺人百科』P・ピットマン共著、抄訳版、大庭忠男訳、弥生書房、1977年(新装版、1993年).
『殺人の哲学?』高儀信訳、角川書店、1973年.(改版『殺人ケースブック』中村保男訳、河出文庫、1990年).
『純粋殺人者の世界』中村保男訳、新潮社、1974年.(改版『現代殺人の解剖』中村保男訳、河出文庫、1990年).
『現代殺人百科』D・シーマン共著、関口篤訳、青土社、1988年.
『世界残酷物語?』関口篤訳、青土社、1990年.
『切り裂きジャック』R・オデール共著、仁賀克雄?訳、徳間書店、1990年.
『連続殺人の心理?』D・シーマン共著、中村保男訳、河出文庫、1993年.
『コリン・ウィルソンの犯罪コレクション?』(上・下)、関口篤訳、青土社、1994年.
『殺人狂時代の幕開け?』中山元・二木麻里訳、青弓社、1994年.
『情熱の殺人?』中山元・二木麻里訳、青弓社、1994年.
『殺人の迷宮?』中山元・二木麻里訳、青弓社、1994年.
『猟奇連続殺人の系譜?』中山元・二木麻里訳、青弓社、1994年.
『狂気にあらず!? パリ人肉事件佐川一政の精神鑑定』天野哲夫・佐川一政共著、第三書館、1995年.
『饗/カニバル?』(佐川一政との共著)、柳下毅一郎訳/構成、竹書房、1996年.
『世界大犯罪劇場?』松浦俊輔他訳、青土社、1997年.
『「死体の庭」あるいは「恐怖の館」殺人事件?』鈴木晶訳、ぶんか社、1997年.
コリン・ウィルソンは、知能のある殺人者の多くがアウトサイダー的な存在者である、と考えている。だが、その短絡的な思考によって、努力を要する過程を省略して、有名になる手段として安易に殺人者となってしまう。
ヴァン・ヴォクト?の『暴力的人間』で提唱されたライトマン(正しい人)という概念を取り上げている。ライトマンは世間に出ると丁寧でありながら、家庭内では暴力的になってしまう。殺人者の一例として、ウィルソンはこのタイプに分類できる殺人者を指摘している。
ウィルソンによると、現代の殺人に特徴的なのは無目的殺人である。歴史的には、金銭を略取する目的とする殺人や、怨恨による殺人など、殺人の目的は他にあった。だが、現代の殺人では、しばしば殺人そのものが目的となることがある。
『暗黒のまつり?』(1960)、『ガラスの檻』(1966)、『スクールガール殺人事件?』(1974)など、コリン・ウィルソンは殺人事件を使って小説を多数発表している。
小田晋?や福島章?などの殺人研究者たちは、コリン・ウィルソンの分析を以前から取り入れてきた。CWは快楽殺人や無目的殺人について実存主義的な考察を行っており、犯罪者心理を分析する一つの手法を与えたのである。また、ウィルソンは日本の出版社の提案で、パリの女学生人肉殺人事件の犯人、佐川一政との対談を果たしている。この他、オウム真理教の事件についてもコメントを発表している。
※福島正章→福島章に修正。(T.Harada)
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