【回答】
じゃあ,民間機と軍用機の乗り心地の違いを教えようか?
例えば,機内与圧なんかは,民間機の内部はほとんど地上と変らないけど,戦闘機のコックピットは外気圧+1/3気圧程度にしか与圧されていないんだよ.
民間機が飛んでいる高度12000での飛行の場合,酸素量は地上の半分,外気温は氷点下.
これを解決するために酸素マスクを着用し,ぶかぶかのフライトスーツを着て,狭いコックピットに押し込まれるわけだ.
もちろん,それで快適になるわけでもない.
民間線は昔,子供にコックピットの中入らせてくれて,それで見たけど(今は無理だろうなあ),広いし与圧はされているし,自動操縦装置も副パイロットもトイレある快適な空間.
仮眠だってできる.
戦闘機は与圧はあってなきが如し,しかも単独,仮眠不可.
一度でいいから,戦闘機の展示でも見て,コックピットの中のぞいてみな?
エコノミーが天国に見えるから.
戦闘機による長距離フライトでは,コパイロットなしで操縦し続ける苦痛もあるが,何回も行う空中給油ってのもかなりつらいらしい.
空母への着艦に比べれば楽だ,という表現があって,つまりけっこう集中力と技量がいるみたい.
それを何回もだからねえ.
ラダーなんか操作してれば,軍用機ではエコノミー症候群は案外起きないかも.
しかし長距離巡航で.ラダーはあまり踏まないかな.
ともあれ,他に体に悪いことはいくらでもしてるし,肥満者は身体検査で落とされるし,エコノミー症候群は問題にならないだろう.
なぜなら戦闘機そのものの設計において,人間への配慮は比較的下位に置かれるからだ.
人員の選抜でフォローするという大前提があるため.
そして性能そのものは,戦闘時に最大性能を発揮するように作られる.
つまり長距離移動は可能なれど,人員への配慮はされない航空機で実施するということだ.
航空機が最大の航続性能,巡航速度を発揮するには成層圏を飛ぶことになるが,最近の作戦機で成層圏を常用高度にしているものは少ない.
空軍の目標は地上にあり,それを阻止する側も低い高度につられていくからだ.
また,搭載燃料そのものが空中給油を受けないかぎり,3時間も持てば優秀な部類に入るという現実もある.
成層圏での快適さが後回しになるには,十分な理由である.
結果,9Gで死なずに済む装備を付けて,2時間も我慢すればよい,という前提で製造された機体で,成層圏という過酷な条件に十数時間晒されることとなる.
そしてこの長距離移動は,「作戦行動」ということも失念してはならない.
航法装置を完備しようが自動操縦装置があろうが,パイロットとしての見張りは続けなければならない.
これは平時の訓練においても同様.
戦時においても能力の発揮を保証するために訓練を行うのだから,条件を緩める意味はない.
当然,展開先でそのまま戦闘行動が可能な体力的資質が,人員には求められる.
戦闘機パイロットという職種そのものが,過度の肉体的負担を強いることは周知の事実である.
それに輪をかけるのが長距離飛行なのであるから,それが直接的原因でなくとも,日常的な訓練から来る負担から腰や頚の衰え/故障によって,「戦闘行動プラス長距離移動が無理」との医師の判断がなされ,当該任務を付与された部隊からの配置転換が行われる可能性はある.
しかし通常の配置転換の一環として,教官任務や輸送機部隊等に異動すれば,データとして顕在化することは無いと思われる.
ハンドルがブリッジより低いレーサーレプリカに(苦しいポジション)ボンデージスーツを着て(装具)真冬の雨の中を(環境)日没から夜明けまで並走するトラックから給油を受けつつ,ノンストップで(時間)制限速度の5割増しを,交通警官に見つからないように飛ばしまくった上で(要求される集中力),終わったらすぐに大規模テーマパークの名物コースターに乗りながら,ぷよぷよをクリアすれば,気分くらいは味わえるかも知れない.
あ,シートには板敷いて.
足付いたり背伸びしたらノーカウントだから.