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来生たかお大百科 >『夢の途中』←自作曲→『Ordinary

※原則的に、来生たかおは“来生”に省略、来生えつこは“来生えつこ”と表記。

概要

1982年にリリースされた8枚目のオリジナルアルバムである。

来生は、ヒット作『夢の途中』以来のアルバム故に好い加減な物は作れないというプレッシャーを感じ、曲作りは難航したが*1、多忙な時期だからこそ自分を見失わないように慎重に取り組んだと述べている*2。同年にヒットした「ねじれたハートで」や「夢の途中」は、どちらかと言えば歌謡曲だが、もっと質の高いものを目指したという*3

多少地味でも音楽性の高いものを作ろうと思い、冒頭に7分を超える「High Noon」を収録するなど珍しく我を通したが*4、その事が取っ付き難い要素になったのか、難しいアルバムという感想も多かったという*5。ただ、「High Noon」が出来てからは、アルバムの全体像や本来の自分の姿が見え始め、制作はスムーズに進んだと語っている*6

来生の意向が反映されたジャケット写真は、自身の散歩コースでもある緑豊かな東京都の小金井公園で撮影され*7、コートとハンチング帽を掛けたポールハンガーを傍らに配したアップライトピアノに来生がぼんやり凭れている光景は、敬愛するギルバート・オサリヴァンの「Alone Again(Naturally)」のジャケットを意識したと思われる。なお、本アルバムに収録された第13弾オリジナルシングル疑惑」のジャケットには、アップライトピアノの上で胡坐を掻いた写真が使われており、更に似通った物になっている。

来生が前々から組んでみたかったという坂本龍一が、編曲及び演奏で参加している*8。来生は、YMOの事は余り知らなかったが、南佳孝の「モンロー・ウォーク」等*9、坂本のオーソドックスな編曲が好きだった為*10、依頼をしたという*11。本アルバムの特色として、星勝だけでなく坂本にも編曲を任せた点を挙げ、お蔭でとてもシンプルに仕上がり、満足していると述べている*12。これが縁で、来生が美空ひばりに提供した「笑ってよムーンライト」「まなざしの彼方」「あなたでなければ」の編曲も坂本が担っている*13

来生としては、自分と同じくザ・ビートルズ世代の坂本が参加している事もあり、本作をザ・ビートルズの楽曲で言えば『Strawberry Fields Forever/ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』のようなイメージがあったという*14

オリコンの順位予想を乞われた際、本アルバムと同日に松田聖子もアルバムをリリースする事や、中森明菜さだまさし、松山千春等も競合する為、来生は「ベスト10に入るかどうか」と答えている*15(結果はオリコン最高12位)。

一方の来生えつこは、世間が前作のオリジナルアルバム夢の途中』のイメージしか持ってくれない事に抵抗を感じ、相当の準備期間を設けて制作に当たったが、それが思い入れ過多の要因になり、エンタテインメントの部分が足りなくなったと回顧している*16。また、弟はプレッシャーを感じて考え込んでおり、時間があった割には曲作りは遅かったと述べている*17

来生が同年8月10日までにレコーディングを終わらせて夏休みを取れなければ、夫人が実家に帰ると言ったというエピソードが残っている*18

LP版の帯では、既出のオリジナルアルバムベストアルバム(『BIOGRAPHY II』は写真入り)が宣伝されている。

本アルバムの購入予約特典として、ポスター、栞、ブックカヴァー等が制作された。

なお、本アルバム名を冠したコンサートツアーは行われていないが、翌年に開催された『来生たかお Concert Tour '83 ミディアム気分で…』において収録曲の幾つかが披露されている。

松田聖子がDJを務めたFM東京『松田聖子ひとつぶの青春』(1982年12月5日放送分)内のワンコーナー「聖子のベストセレクション」(話題のアーティストや音楽性の高い内外のアルバムの中から3曲を選曲する企画)において本アルバムが取り上げられ、「渚のほのめき」「坂道の天使」「Midnight Step」が選ばれた。

収録曲

トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間
LP/CTCDLPCTCDLP/CTCDLPCTCD
SideA-11High Noon来生えつこ来生たかお坂本龍一/矢倉銀7:4220:217:42SideB-16疑惑来生えつこ来生たかお星勝4:2321:024:21
SideA-22蜜月来生えつこ来生たかお坂本龍一4:224:22SideB-27坂道の天使来生えつこ来生たかお坂本龍一3:523:52
SideA-33渚のほのめき来生えつこ来生たかお坂本龍一4:084:09SideB-38(わだかま)来生えつこ来生たかお星勝4:004:00
SideA-44Midnight Step来生えつこ来生たかお坂本龍一4:094:08SideB-49テレフォン・ララバイ来生えつこ来生たかお矢倉銀4:124:12
SideB-510スローナイト来生えつこ来生たかお星勝4:354:37

参加ミュージシャン

  • Keyboards:野力奏一 (SideA-1/SideB-1,4)、坂本龍一 (SideA-2,3,4/SideB-2)、中西康晴(SideB-3,5)
  • Casiotone HT-400:来生たかお(SideA-1/SideB-4)
  • Electric Piano:松田真人(SideB-4)
  • Electric Guitar:鈴木茂(SideA-1)、大村憲司(SideA-3,4/SideB-2)、松原正樹(SideA-4)、芳野藤丸(SideB-1)、椎名和夫(SideB-1)、長井充(SideB-3,5)
  • Acoustic Guitar:大村憲司(SideB-2)
  • Electric Bass:ミッキー・長岡(SideA-1/SideB-1)、富倉安生(SideA-3,4)、岡沢章(SideB-2)、高水健司(SideB-3,5)、伊藤広規(SideB-4)
  • Drums:菊池丈夫(SideA-1/SideB-4)、上原豊(SideA-3,4/SideB-1)、坂本龍一(SideB-2)、田中清(SideB-3,5)
  • Latin Percussions:中島御(SideA-1/SideB-1,3,4,5)、浜口茂外也(SideA-3,4)
  • Chorus:山川恵津子(SideA-1/SideB-4)、鳴海寛(SideA-1/SideB-4)、松田真人(SideA-1/SideB-4)、伊集加代子(SideB-3,5)、和田かよ子(SideB-3,5)、鈴木ひろ子(SideB-3,5)
  • Strings:加藤グループ(SideA-1,2/SideB-2,3,5)
  • Synthesizer & Emulator:坂本龍一(SideA-1)
  • Flute:衛藤幸雄(SideA-1)
  • French Horn:山口弘治(SideA-1)
  • Flügel Horn:中沢健次(SideA-1)、数原晋(SideB-5)
  • Marinba:金山功(SideB-1/SideB-5)
  • Trumpet:数原晋(SideB-1)
  • Saxophone:村岡健(SideB-1)、沢井原兒(SideB-1)
  • Trombone:新井英治(SideB-1)
  • Linn Real Drum:坂本龍一(SideB-2)
  • Synthesizer:坂本龍一(SideB-2)、川島裕二(SideB-3/SideB-5)
  • Harp:入江愛子(SideB-5)
  • All Instruments(except Strings):坂本龍一(SideA-2)

参加スタッフ

  • PRODUCER……多賀英典
  • Director……本間一泰
  • Recording & Remix Engineer……高城賢
  • Assistant Engineer……平良昌弘
  • Recorded at……KRSレコーディング・スタジオ(東京)
  • Remixed at……ポリドール伊豆スタジオ(静岡)
    1982年 7月3日〜10月10日
  • All Songs Written by……来生たかお、来生えつこ
  • Cover Concept……来生たかお
  • Design……宮川隆(工作舎)
  • Photography……佐々木渉(工作舎)
  • Stylist……加藤悦、玉岡淳子
  • Cordination……加藤博(工作舎)
  • A & R……岩瀬貞行、井上彬
  • Production Management……キティアーティスト
  • Special Thanks……石谷仁、丸山好信、Staff of “ヨロシタ ミュージック”、The House of 1999、BARBICHE, MEN'S BUGI, SOUL TRIP

録音

  • 1982.07.03-10.10/KRSレコーディングスタジオ、ポリドール伊豆スタジオ(リミックス)

初出 & 復刻

発売年月日メディア:規格品番発売元/レーベル備考
1982.11.10LP:28MS-0020キティレコード○LP:オリコン最高12位(売上累計72,180枚)/CT:オリコン最高22位(売上累計30,340枚)
CT:28CS-0020
1983.03.16CD:3133-2キティレコード○初のオリジナルCDアルバム
1991.04.25CD:KTCR-1051キティレコード
1995.07.21CD:KTCR-1563キティエンタープライズ/キティレコード○歌手デビュー20周年に際し、高城賢によるデジタルリマスター
○帯に「20th anniversary」の記載
○Q盤CD選書シリーズの1枚
2007.03.21CD:UPCY-6362ユニバーサルミュージック○21枚組CD-BOX『来生たかお大全集』に1995年版を収録
○帯なし
2019.01.30CD:UPCY-9885ユニバーサルミュージック○限定
○ボーナストラックに「時よ ゆっくり」を収録
○紙ジャケット仕様
○デジタルリマスター
○SHM-CD

パッケージの体裁

  • オリジナル版CD:ジュエルケースに2つ折りのカード(及び、歌詞カード)を挿入
  • 1991年版CD:ジュエルケースに2つ折りのカード(及び、オリジナル版CDのものを基調とした歌詞カード〈ジャケットの内側にも歌詞の記載あり〉)を挿入
  • 1995年版CD:ジュエルケースに2つ折りのカード(及び、LP版のものを基調とした歌詞カード・既出オリジナルアルバムのディスコグラフィー)を挿入
  • 2007年版CD:ジュエルケースに2つ折りのカード(及び、LP版のものを基調とした歌詞カード)を挿入(厚紙製収納ケース付き)
  • 2019年版CD:紙製ケースにLP版のものを基調とした歌詞カード(及び、ボーナストラック分の別紙歌詞カード)を挿入

帯のコピー

  • LP:「夢の途中」につづく、来生たかおオリジナル・アルバムは、星勝、坂本龍一らを編曲陣に迎えた一年がかりのファンタジー・ポップ。
  • オリジナル版CD:?
  • 1991年版CD:※記載なし
  • 1995年版CD:シックなトーンが全編を彩る、ファンタジー・ポップ 「High Noon」、「坂道の天使」を含む、8thアルバム。
  • 2019年版CD(復刻LP版コピー/新版コピー):「夢の途中」につづく、来生たかおオリジナル・アルバムは、星勝、坂本龍一らを編曲陣に迎えた一年がかりのファンタジー・ポップ。来生たかおオリジナルアルバム18タイトル 紙ジャケット・コレクション 『夢の途中』につづく、来生たかおオリジナル・アルバムは、星勝、坂本龍一らを編曲陣に迎えた一年がかりのファンタジー・ポップ。 High Noon 蜜月 疑惑 (わだかま)り スローナイト ほか全9曲 ボーナス・トラック「時よ ゆっくり」収録

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*1 『FM STATION』1982年11月22日号"話題のアーティスト WHO'S WHO 来生たかお 朝、目をさましたら、シンガーとしても作曲家としても超売れっ子に。ハード・スケジュールとプレッシャーの中で、でも、彼は昔のまま…。"(ダイヤモンド社/1982.11.22)
*2 来生たかお 20th Anniversary Concert Tour '95〜'96 夢より遠くへ』のツアーパンフレット
*3 『|KEYBOARD LAND』1983年3月号“|来・生・た・か・お イイ曲が少ないのはアレンジに甘えているから”(リットーミュージック/1983.03.01)
*4 「キティサークル」の総合機関誌『HEAD ROCK』VOL.63“TAKAO CLUB VOL.34(キティ・ミュージック・コーポレーション/1986.08.25)
*5 『ARENA37℃』1983年5月号“HOT-TIME 「音楽やってる人間は、音楽だけやってなきゃダメ」 他人の仕事が多かった来生たかおが、今年は自分の活動に力がはいってる!”(音楽専科社/1983.05.10)
*6 『FM STATION』1982年11月22日号"話題のアーティスト WHO'S WHO 来生たかお 朝、目をさましたら、シンガーとしても作曲家としても超売れっ子に。ハード・スケジュールとプレッシャーの中で、でも、彼は昔のまま…。"(ダイヤモンド社/1982.11.22)
*7 ファンクラブ「TAKAO CLUB」のダイジェスト会報『DECADE』(1985)
*8 『FM STATION』1982年11月22日号"話題のアーティスト WHO'S WHO 来生たかお 朝、目をさましたら、シンガーとしても作曲家としても超売れっ子に。ハード・スケジュールとプレッシャーの中で、でも、彼は昔のまま…。"(ダイヤモンド社/1982.11.22)
*9 『Hot・Dog press』1982年12月25日号“HUMAN HOT INTERVIEW 内弁慶メロディ・メーカーはオリコンを毎週愛読しているのだった。”(講談社/1982.12.25)
*10 『FM STATION』1982年11月22日号"話題のアーティスト WHO'S WHO 来生たかお 朝、目をさましたら、シンガーとしても作曲家としても超売れっ子に。ハード・スケジュールとプレッシャーの中で、でも、彼は昔のまま…。"(ダイヤモンド社/1982.11.22)
*11 NHK‐FM『SOUND MUSEUM』(2010.12.19)
*12 『FM STATION』1982年11月22日号"話題のアーティスト WHO'S WHO 来生たかお 朝、目をさましたら、シンガーとしても作曲家としても超売れっ子に。ハード・スケジュールとプレッシャーの中で、でも、彼は昔のまま…。"(ダイヤモンド社/1982.11.22)
*13 NHK‐FM『SOUND MUSEUM』(2010.12.19)
*14 『ARENA37℃』1983年5月号“HOT-TIME 「音楽やってる人間は、音楽だけやってなきゃダメ」 他人の仕事が多かった来生たかおが、今年は自分の活動に力がはいってる!”(音楽専科社/1983.05.10)
*15 『Hot・Dog press』1982年12月25日号“HUMAN HOT INTERVIEW 内弁慶メロディ・メーカーはオリコンを毎週愛読しているのだった。”(講談社/1982.12.25)
*16 来生たかお Concert Tour '83 ミディアム気分で…』のツアーパンフレット
*17 来生たかお Concert Tour '83 ミディアム気分で…』のツアーパンフレット
*18 フジテレビ系『夜のヒットスタジオ』(1982.07.26)