偽善について


偽善との出会い

地獄への道は善意が舗装する

 この言葉の「善意」ってやつは、文字通りの意味の「善意」で使うこともあるけれど、ほとんどの場合「偽善」であることが多いと思う。

 偽善って隠れているからわかりにくい。僕が初めてコイツら偽善だ、と思ったのは各種ボランティア団体。もちろん、ボランティア、イコール偽善と言っているのではない。その活動形態が偽善である団体がいる。

 山形浩生氏のウェブからたどって見つけたこれ。山形道場の記事。で、

「ぼくたち、こうして奴隷を買い取って解放してあげたんだよ!」という自慢のための現場写真。札束まで写ってて生々 しいでしょう。

とあるリンク先は現在では404エラーとなるが、その昔は思いっきりその通りの写真が載っていた。これはとてもわかりやすい偽善。

 それでも、「海外ではスゴイことをするなあ。日本ではそんなことはないだろうなあ」と思っていたことを白状しておく。これだけNPOやNGOが日本で浸透するとは正直思わなかったからだ。

偽善者との出会い

 これは僕の仕事柄だったんだけれど、ボランティア団体やら自然環境保護団体と接触する機会があった。この人たちの特長としては「僕たちは良いことをやっている。それを邪魔する奴らは、僕たちの活動に反対する悪人なのだ。もしくは、僕たちの活動を理解すれば賛同されて当然なのに、理解できないバカばかりだから賛同してくれない。しかも、世の中のほとんどが僕たちの活動を理解してくれない」多かれ少なかれ、こんな内面を持っている。

「ホワイトバンド」について

 ほっとけない世界の貧しさキャンペーンというのがあって、300円のホワイトバンド(リストバンドだ。)を販売している。これを見るとあたかも300円払って何かをした気にさせてくれる。まあ、ここまでは募金活動の一環として、と考えれば悪いことでもない。「僕、世界の貧しさを考えているからこのホワイトバンドをしているんだ。」と周りにアピールするという根性も気に入らないが、まあそれもファッションのうちなんだろう。

 さて、このホワイトバンドには大きな問題点があって、議論を呼んでいる。これはつまるところ募金ではないのだ。NGOの活動資金の収集のための物品販売である。そのNGOの中には問題のあるNGOも含まれており、間接的にそうした問題のあるNGOを支援することになる。もしかすると、ホワイトバンドを買うことは世界の貧しさをよりひどくするかもしれないのだ。

 「そんなの知らなかった!」という声がやはり多いものの、オフィシャルサイトや、ホワイトバンド信者たちは開き直っているように見える。「いいことをしているのになぜ非難するの?」

 さらに、ホワイトバンドギャラリーという「僕ホワイトバンド買ったよ」自慢をするページもある。みんな「自分でもできることからやっていきたい」「こんな自分でもやれることから」「貧困をなくしたい」とかいう気持ちを伝えている。まあ、それ自体は非難されるべきではない。だけれどもホワイトバンドを腕にするだけでは飽きたらず、写真まで載せて自分の善者っぷりをアッピールするっていう感覚はとても理解できないけれどもね。

 本当のボランティアなんてのは、実につまらなく、地道で目立たないものだということは覚えておくべきだ。毎日公園や河川敷を誰に言われるともなくきれいに掃除してくれるじっちゃんやばっちゃんを見たことがあるだろう。あれが本物のボランティアの基本形なのだ。

偽善NPOやNGOの作戦

 おそらく、資金集めの方法についても、NPOやNGOも知恵を絞っているのだろう。つまり、単純に作戦を変えてきたのだ。

 ホワイトバンドギャラリーを見てわかるとおり、年齢は10代〜20代の若い連中をターゲットにしている。僕の偏見がやや含まれるが、この世代は何かってえと世の中に楯突きたい世代である。今の世の中は漠然と良くないと根拠なく思っている。この世の中のために何かしたい。自己顕示欲もある。

 こうした「自分は善人ぶりたい」という若者のニーズを的確にとらえ、TV宣伝による芸能人の起用によりボランティア活動の「ダサい」イメージを払拭した。しかも金払って商品を買った側が、売り手に文句を言わせない説得力のある(ホントはないんだけれど)説明つき。とてもすばらしい集金方法だと思う。


ここまでは全然OK!問題なし!

 ここまでは、まあよいのだ。NPOなりNGOが活動資金を集めることは重要なことだ。賛否両論あるかもしれないけれど、「世界の貧しさを救う活動をしてくれよ!」とお金を渡すのは悪いことではなくむしろ良いことだ。

 それがきちんとした団体に渡れば、の話だが。

教育はやはり重要だ

 善意のお金は善意のあるNGOやNPO団体に渡る。たとえその「善意の団体」が上記の奴隷商人から奴隷を買い上げるような団体であったとしても、お金は渡る。何も知らずに何も考えずに善人ぶりたいだけで、お金を渡すのはとても良くないことなのである。きちんとした団体の活動の妨げになるのだ。

リンク

 一番下の反論は冷静で的確。単なるホワイトバンド信者の擁護論ではない。

 しかし「よって、NGOが寄付金を募ること自体にいかなる「胡散臭さ」もない。「使途不明金」が1円も出ていない段階で、「信頼性に欠ける」と断定する根拠もない」

 とあるけれども、これは一般論として正しい。しかし今回の件では、いわゆる「信頼ならないNGOにも金が渡る」ことが確定しているのだ。確かに使途不明金は出ていない。でも、使途不明金になるのはほぼ確実なんだけれどなあ。使途不明金が出るまで待ちますか。

NPO、NGOイコール善意の団体ではない

 僕が言いたいのは、なんでもかんでもNGO、NPOで一緒くたにするなよってこと。これは山形氏が警告しているし、hidex7777氏も言っている。

 ホワイトバンドの問題点は、参加NGOの中にテロリスト国家を支援する団体がいるってことだ。このへんを吟味しなかったのが最大の腐れなところ。まあみんなせいぜいがんばってくれたまえ。