【書評】 『大本営参謀の情報戦記―情報無き国家の悲劇』(堀栄三著)


 【書評】 『大本営参謀の情報戦記―情報無き国家の悲劇』(堀栄三著)

読了.

http://www.amazon.co.jp/dp/4167274027 陸軍幼年学校,陸軍士官学校(46期)と進み,騎兵として満州で討伐戦に従事したのち騎兵学校の教官をやり,その後陸大に入学して1943年に卒業(56期),戦車兵として訓練を受けたのち大本営の第2部(情報)に配属された著者の戦記.

割と有名な本なのであらすじは端折るが,一言でいうと「情報版『海上護衛戦』」.
こちらの著者のほうが10歳以上若く階級も下だが,基本的には「自分がかかわってきたことの重要性,そしてその方面に関する軍の無知・無関心を知ってほしい」という意識のもと書かれた本である.
書き方が3人称であることも共通点.

こちらは旧軍の情報戦に注目が集まっているときに要望に応える形で出したもので,また戦中に戦地へ実際に出向して勤務しているため,中央部のグダグダや適当さがわかりやすく,例として実際の任務を取り上げながら語られるため理解しやすい.
特に戦後の部分は国勢比較などの背景説明があまり入らないため情報任務に話が絞られている.

一方まだ若い戦争直後に書かれたものをベースとしており,また問題意識が非常に強いため,?と思う部分や事項の誤り
(例えば米軍が陸海の航空部隊を統合して第2次世界大戦に臨んだとするなど)
また煽っているような部分も少し見受けられるが,日本軍の情報に関する話をわかりやすく読めるという意味では,現在でも有用な本である.

個人的には著者が満州自体の集団長が著者がさらっと流す割にとても良い人に見えたのと,ルソン島のイポの司令部で退職金の話をしていて著者に怒鳴られる年寄りの大尉に同情してしまった.
書き方を見るに山下将軍に諭されても,真面目に軍人として歩んできた著者には死ぬまでこの大尉の気持ちがわからなかったのではあるまいか….
また初期自衛隊の割と下の方(例えば陸上幕僚監部第2部長)まで文官で構成されていたのに驚いた.
著者をはじめとする歴戦の部下を扱う文官の第2部長はさぞ大変だったことだろう.

980 : 979 : 2011/12/26(月) 03:54:34.39 ID:??? [949/969回発言] 書き忘れてたから追記
本の中で日本陸軍中央特種情報部(特情)が終戦前に海外放送を傍受して終戦を知り, 資料を3日かけて焼却して暗号機を破壊,暗号表は土に埋めた.
ところがアメリカによる参戦誘引をにおわせるような資料も含めて全部燃やし尽くしちゃって,東京裁判で困ったという話が載ってる.
組織利益だけ考えて,焦って焼却しちゃった話だと筆者は締める.

俺は情報関係者じゃないけど,こういう形で過去のことが分からなくなっていくのは歴史学を学ぶ者として非常に残念.

9812011/12/26(月) 11:02:48.80 ID:??? [950/969回発言] >特種情報部

特ダネ情報部! だったりして

軍事板,2011/12/26(月)
http://logsoku.com/thread/toro.2ch.net/army/1321599648/

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