Infinite possibility2話


FrontPage

「アース!!避けろ!!!」 突然のリチャード大尉の声。アースが振り向くとそこにはLRパルスレーザーライフルをこちらに向けて走ってくるセイバータイガーの姿があった。 「し、しまっ・・・!!!」 アースが気づいたときにはライガーゼロに向かってLRパルスレーザーライフルが発射されていた。 LRパルスに貫かれたライガーゼロは、地面に倒れてしまう。 「きさまぁぁぁ!!!」 リチャード大尉の乗るシャドーフォックスはセイバータイガーの後ろ足に噛み付くと、逃げようともがくセイバータイガーを徹甲レーザーバルカンで撃ち抜いた。 セイバータイガーは倒れてそのまま動かなくなった。 「ガウリィ!!残りの一体は!?」 「どんどん離れていきます、もうじきレーダーの圏外です。」 「よし、はやくアースとライガーゼロを回収!すぐに手当て・・・」 そこまで話したリチャード大尉の目には、何事もなかったように立ち上がっているライガーゼロがうつった。 「・・・聞こえるかアース、無事なのか?」 「は、はい。ブースターを破壊されてしまいましたが、歩くことは出来ます。」 「被害箇所はブースターだけなのか?他に異常はないのか?」 「はい、特にないです。」 「そうか、わかった。だが一応ゼルに見てもらうんだ。小さなダメージでも放っておくと致命傷になる。」 「わかりました!」 歩いてホバーカーゴへと戻っていくライガーゼロをだまって見つめるリチャード大尉。 「さっきのLRパルスレーザーライフル、俺の目に狂いがなければ直撃コースだった。・・・それがブースターの破損だけで済んだというのか・・・。」 リチャード大尉はそう呟くと、シャドーフォックスもホバーカーゴへと向かって歩き出した。

「[キメラ]が全滅しましたわ、お父様。戦力はシャドーフォックスとライガーゼロの二体だけ、私一人でも充分ですわ。」 「いいや。ルナ、すぐに戻って来るんだ。」 「お父様!ライガーゼロは既に手負いです!今戦えば確実に倒せますわ!」 「ルナ、私の[夢]のために尽くしてくれるのはありがたい。私の[夢]も大事だが・・・、それ以上に娘のお前が心配なんだ。わかってくれるな?」 「・・・わかりました、お父様。」 赤いアーマーを装備したバーサークフューラーシュトゥルムがホバーリングをはじめる。 「・・・あのシャドーフォックス、絶対に許さない!行くわよ、テスタロッサ。」 テスタロッサと呼ばれたバーサークフューラーシュトゥルムはブースターを開くと、どこかへと飛んでいった。

「うーん、ブースターが壊されちゃってるね。」 破損したブースターを眺めながらゼルが言う。 「なんとか直せないかな?」 首を横に振るゼル。 「今のホバーカーゴじゃ修理は不可能、設備もパーツも足りないよ。でも素体は無傷だから、CASの付け替えでなんとかなるよ。」 そういわれたアースはライガーゼロを見上げた。 「ガオォォ・・・」 「ごめんな、ライガー。もしお前が避けてくれなかったら、もっとダメージが大きかったはずだ。・・・そもそも俺が油断なんかしなければ。」 アースがそこまで言うと、ライガーゼロが前足でつついてきた。 「ライガー・・・励ましてくれてるのか?」 「ガオォォ!」 「ありがとな、ライガー。」 格納庫の扉が開きリチャード大尉が入ってきた。 「ゼル、ライガーゼロの具合いはどうだ?動けそうか?」 リチャード大尉に敬礼するゼル。 「はい、リチャード大尉。CASゼロのブースターが大破、現状では修理不可能です。素体は無傷なのでCASの換装で対処いたします。」 「今すぐ使えるCASは?」 「CASパンツァーのみです。もうじきイェーガーも完成します。」 「よし、わかった。すぐにパンツァーに換装だ。」 リチャード大尉の言葉にアースがすぐに反応する。 「・・・すぐに戦闘になると、そういうことですか?」 「・・・詳しくはミーティングルームで話そう。すぐに来てくれ。」

ミーティングルームに全員が揃い、重い雰囲気が漂う中、リチャード大尉が口を開く。 「我々は、今回行う予定だった模擬戦闘の中止を決定した。既にロムルス基地(仮名)に進路を変えて進行中だ。」 リチャード大尉の言葉を黙って聞く三人。 「中止の理由は言わなくてもわかっていると思うが、正体不明の敵が、再び襲ってくる可能性があるからだ。撃破した機体を俺とガウリィで確認したんだが、 パイロットは乗っていなかった・・・いや、乗っていた形跡も無かった。」 「まさか、野性ゾイドだったんですか?」 アースが質問する。リチャード大尉は首を横に振りながら答えた。 「いや、それにしては統率がとられていた。何か仕掛けがあるのかもしれん。それに逃げた一機も何らかの形で関与しているだろう。 やつらの目的を含め、詳しいことは残念ながらまだ不明だ。」 全員が黙り込んだ。 「・・・それと、もし再び襲われた場合だが、こちらが一方的に不利になる可能性がある。」 「どういうことですか?」 再びアースが質問する。 「もともとこのホバーカーゴは模擬戦闘で使う必要最低限の荷物しか積んでいない。・・・弾薬なんかの補充は一切出来ないということだ。 つまり長期戦になったと想定すると・・・。」 勝ち目がない、ということはここにいる全員がわかっていた。 「・・・リチャード大尉、もし持久戦になったとき・・・有効な作戦はありませんか?」 珍しくガウリィが質問する。 「・・・最後の最後まで諦めないことだ。例え弾薬が尽きようと、まだ爪や牙がある。戦う力があるうちから諦めないことが大事なんだ。 この気持ちがゾイド乗りの最強の武器となるんだ。わかったか!!」 「はいっ!!」 三人の元気な声がミーティングルームに響いた。 「おっと、宿題の答えを言ってしまったな。まぁ、襲ってくるかどうかわからないうえに、仮に襲って来ても持久戦とは限らん。 だが戦場では常に最悪の事態に備えておくことが大事だ。頭の片隅にでも覚えておくように。ゼル、残りのCASの整備を急いでくれ。」 「わかりました!」 ゼルは敬礼しながら答えた。 「話は以上だ、事後の行動にかかれ。」 「はいっ!!」 三人は敬礼すると、それぞれの持ち場へと向かっていった。 一人ミーティングルームに残ったリチャード大尉は、窓の外を静かに眺めはじめた。 「・・・いい月夜だな。」 景色を眺めるリチャード大尉。その姿からは想像もつかないが、リチャード大尉の頭の中には、最悪のシナリオが出来上がっていた。 「・・・こちらの戦力はもうバレた。もし俺が相手の指揮官なら長期戦で仕掛けるだろう・・・。」 リチャード大尉が見つめる月が、静かに輝いていた。

バーサークフューラーシュトゥルムテスタロッサ[略称BSTR](長)について補足説明を。 赤いBSというと、シュトゥルムテュランが浮かぶかもしれませんが、テュランとは別物です。 テスタロッサは素体がノーマルと同じ黒。その他のアーマーが赤という機体です。 そのほかノーマルとは違った部分もありますが、今回は外見の説明のみとさせていただきます。 ちなみに「テスタロッサ」とは「赤色の頭」の意味です。 一部の車好きな方なんかだと元ネタ(?)を知ってる人もいらっしゃるかと思います。