「消費弾数は50%に制限、ホバーカーゴのサイドパネル上からバーニングビックバンだ。残りはイェーガーに換装後、各個撃破だ!いいな!!」 通信モニターを通してリチャード大尉の指示が出る。だがアースは自分の耳を疑った。 「50%・・・冗談はやめてください!!あれだけの数を50%の消費で処理できるわけないですよ!!」 消費弾数50%、つまり使用可能な弾数を半分だけにされてしまったのだ。これだけの数を相手にするなら全弾発射でも足りないくらいだ。 「今俺たちが置かれている状況を考えろ!!戦闘はこれで終わりじゃないんだ!!」 ホバーカーゴのカタパルトが開き、リチャード大尉のシャドーフォックスが発射準備を完了する。 「作戦は先程話したとおりだ。全員覚悟を決めろ!!リチャード大尉、シャドーフォックス!発進する!!」 カタパルトにより勢いよく飛び出していくシャドーフォックス。 「やるしかない・・・。ガウリィ、サイドパネル開けてくれ!!」 「了解。アース、振り落とされるなよ!」 荒野をまっすぐに前進していくホバーカーゴのサイドパネルが開き、CASパンツァーに換装したライガーゼロが姿を現す。 「こちらアース、消費弾数を50%に設定完了しました。」 「了解した。ホバーカーゴはその位置で停止、パイルバンカーを打ち込め。バーニングビックバンの衝撃に備えろ。」 「こちらガウリィ、ホバーカーゴ停止。角度修正後、パイルバンカー打ち込みます!!」 停止したホバーカーゴは、敵大隊の方に向きを変え、パイルバンカーを打ち込む。 「パイルバンカー異常なし!!ホバーカーゴ、固定完了!!」 「ゼル、バーニングビックバン後すぐにイェーガーへの換装だ。準備しとけよ!!」 「CASイェーガーは準備完了してる。いつでもいけるよ!!」 「アース、目標を捕捉しろ。大丈夫だ、落ち着いて撃てばそれでいい。」 目標補足用の補助モニターが敵大隊をロックしたことを教えていた。ライガーゼロパンツァーは前後の足を開き、身を沈めて発射体制になっていた。 「目標を捕捉、安全装置・・・解除。」 アースは操縦桿についている安全装置を解除する。 「・・・これから、お前らに今回の戦闘での最優先事項を伝える。全員生き残れ!!いいな!!!」 「ハイッ!!!」 厳しくも優しさのあるリチャード大尉の言葉に三人が元気よく答える。 「よし、アース。いつでもいい、お前のタイミングで撃て!!」 「・・・了解。」 操縦桿を握るアースの手が震えていた。消費弾数が50%とはいえBBBの発射は初めての体験だ、緊張するのは無理もない。 「ガオォォォ・・・」 LZPAが咆哮をあげる。まるでアースを励ますように。 「あぁ・・・そうだな。分かってるよライガー、俺はお前を信じてる。」 軽く深呼吸をするアース。 「・・・いくぞライガー!!!バーニング!!!ビックバン!!!」 パンツァーユニットが大量のミサイルを打ち上げ、ハイブリットキャノンが火を噴く。凄まじい轟音で大気が揺れた・・・。
話は数日前にさかのぼる・・・。 朝の早い時間、ホバーカーゴのミーティングルームに集まる男達の姿があった。 30台後半と思われる男が口を開く。 「ホバーカーゴ操縦担当ガウリィ准尉、CASの換装担当ゼル准尉、そしてLZのパイロット、アース准尉。」 「ハイ!!」 名前を呼ばれた三人が元気よく返事をする。 「俺の名はリチャード、階級は大尉。今回の[ライガーゼロCAS換装模擬戦闘]の演習指揮をとることになった。よろしく頼む。」 「よろしくお願いします!!」 「もう説明は受けているとは思うが、今回の演習について説明しておく。 今回の演習はLZを使った模擬戦闘だ。アースには私の乗るシャドーフォックスと戦ってもらう。 もちろん戦闘評価もするが今回はそれだけではない。ガウリィのホバーカーゴ操縦評価、ゼルのCAS換装評価等、 すべてを同時におこなう。・・・もっとも、君たちは講習を受けているし問題ないだろう。期待してるぞ。がんばってくれ。」 「はい!!」 「移動は開始しているが演習予定地まではまだ時間がある。到着前に演習の準備と休憩を済ませておけ、いいな。」 そう言い残しホバーカーゴのミーティングルームから出て行くリチャード大尉。三人はそれを敬礼して見送った。 「フゥ、自己紹介がまだだよね。ボクは今回の演習でCASの換装を担当するゼル。演習ではCASの換装だけだけど、 普段はゾイドや武器の整備を担当してる。」 明るい口調でフレンドリーに話してくるゼル。 「ホバーカーゴに乗り込んだ全員が集まったのは初めてだからな。俺はホバーカーゴの操縦担当、ガウリィだ。 通常なら物資の輸送が仕事だが、今回は演習だからな。ホバーカーゴの操縦だけでいいそうだ、楽な仕事だ。」 三人は年齢も階級も変わらない、所属部隊だけが違う。 「二人ともよろしく頼むよ。俺はアース、LZのパイロットだ。ところで演習予定地まではどれくらいかかるんですか?」 アースはガウリィのほうを見ながら質問する。 「そうだな・・・、今ホバーカーゴはオート操縦になっている。このままのペースでいけば今夜中には到着できるだろう。 ゼル、整備や演習の準備にどれくらいかかる?」 「う〜ん、今日中で終わらせろって言われても正直無理だね。ボク一人じゃとてもじゃないけど終われないよ。」 「一人でゾイドを二体、他にCAS三種整備じゃ仕方ないな。分かった、速度を調整して到着時間を引き延ばす。 アース、お前はゼルの手伝いをしてやれ。」 「えぇっ!?なんで俺が。大体整備なんてやったことないし、俺には無理ですよ。」 「アース、今回の演習はとっくに始まっているんだ。リチャード大尉も言っていただろう、 この演習の評価はすべてを同時におこなうと。お前の戦闘評価だけじゃないんだ。誰かのミスが全員の評価を下げることになる。」 「ガウリィの言うとおりだ、整備のやり方はボクが教える。頼むよアース。」 「あ、はい。それなら大丈夫だと思いますけど。」 アースの言葉を聞いたガウリィが口を開く。 「それじゃ決まりだな、俺も手があいたらすぐに手伝いに行く。そのときは頼むぞ、ゼル。」 「任せてよガウリィ。それじゃ行こうかアース、キミが乗るライガーゼロにもまだ会っていないんだろ?」 「わかったよゼル。ガウリィ、また後で。」 「あぁ、三人でいい成績たたきだそうぜ。」 「おうっ!」 そしてアースとゼルは格納庫へ、ガウリィはホバーカーゴの操縦席へと向かった。
格納庫へと向かう通路を歩くアースとゼル。 歩きながらゼルが話しかけてくる。 「アースが乗るLZなんだけどさ、結構変わってるんだ。多分すぐ分かると思うけど。」 「結構変わってる・・・どういうことだよそれ?」 「会えば分かるよ、フフフッ・・・。」 意味深に笑うゼル。 「なんだよそれ、でも面白そうだな。」 そんなことを話しながら格納庫へと到着した。 目の前の大きな扉が開くと、アースの目には白いアーマーを装備したライガーゼロの姿が映った。 「これが・・・ライガーゼロ・・・。なんて迫力だ、力強さを感じるよ。」 アースは興奮していた。 「ライガーゼロを見たのはこれがはじめてかい?」 「あぁ、写真や資料で見ただけだ。これに・・・俺が乗るのか、上手く出来るかな・・・。」 そう話した瞬間、LZが急に動き出した。 「ガオォ。」 「え・・・?」 次の瞬間、アースの目に映ったのは、自分を押しつぶそうとするLZの前足だった。 「うわぁぁぁ!!!」 あわてて横へ飛んで逃げるアース。 「あははは!!!」 お腹を押さえて大笑いしているゼル。 アースは腰が抜けてしまい、尻餅をついたまま動けないでいた。 「ゼ、ゼル・・・た、た、助けて・・・。」 必死に助けを求めたアースだったが、笑っているだけでなにもしようとしないゼル。 動けないアースをめがけてさらにLZの前足が襲い掛かる。 「う、うわぁぁぁ!!!」 アースはそのまま目を閉じてしまう。 目を閉じたアースが死を覚悟したそのとき、自分の体をツンツンとつついてくるような感じをうけた。 恐る恐る目を開けるアース。そこには自分の体をつついて遊んでいるLZの姿があった。 「ガオォ。」 「うわっ!!」 LZの咆哮に思わず体を縮めるアース。 「大丈夫だよアース。」 そんなアースに近づきながら話しかけるゼル。 「大丈夫って・・・どこが大丈夫なんだよ!!めちゃくちゃ凶暴なゾイドじゃないか!!」 震える手でLZを指差しながら叫ぶアース。 「凶暴って・・・、ちょっとじゃれてるだけじゃないか。」 「ちょっと・・・じゃれてる・・・?」 「そう、このライガーゼロはすっごく人懐っこいんだ。普通は気性が荒いことで有名なんだけどね。どう?変わってるでしょ?」 「人懐っこい・・・ライガーゼロ・・・。これが俺の相棒になるゾイドなのか。」 「ガオ〜。」 咆哮をあげるLZだが、アースには最初に見たときのような力強さは感じることが出来なかった。 「ハァ・・・、大丈夫かなぁ?こんなんで・・・。」 ため息混じりにそうつぶやくアース。 これがアースとLZとの最初の出会いだった。
アースはハッチを開けたままコックピットに座り各部の調整をおこなっていた。 ふと演習での対戦相手、リチャード大尉とシャドーフォックスが気になった。 「なぁゼル。」 「ん〜?なに?」 LZの足元をチョコマカと忙しそうに走り回っているゼル。その姿をコックピットから見下ろしながらアースは話を続ける。 「リチャード大尉とシャドーフォックス、どれくらい強いのかな?」 この質問を聞いたゼルの作業がピタリと止まる。 「まさかアース、知らないの!?リチャード大尉のこと。」 「え、ああ。全然知らないよ。」 顔を手で覆いながらため息をつくゼル。 「ハァ・・・、でも今のうちに知っておけてよかったと思うべきか。」 「ふ〜ん?」 緊張感のない声を出すアース。 「いいかいアース。リチャード大尉といえば共和国のなかでも伝説級の人だよ。リチャード大尉が前線で戦っていた頃の話なんだけど、 戦場でたった一人、帝国の地域に孤立してしまったことがあるんだ。当然、帝国側もそれを知って追撃部隊で襲ってきた。 その数なんと40体以上。そのとき大尉が乗っていた機体はコマンドウルフだった。」 「コマンドウルフって・・・えぇ!?」 「そう、リチャード大尉はたった一匹のコマンドウルフで40体以上のゾイドと渡り合った。そして無事に共和国へと帰ってきたんだ。」 ゴクリと唾を飲み込むアース。 「そ、そんな人と俺が戦うの・・・?勝ち目なんてあるかな・・・。」 「普通に考えればまず無理だろうね、アースとリチャード大尉の腕の差は歴然。大尉は当時のコマンドウルフ以上に強力なシャドーフォックスに乗っている。」 あっけらかんと話すゼル、その言葉にアースはがっくりと肩を落とす。 「・・・その大尉のシャドーフォックスなんだけど、少し気になることがあるんだ。」 「気になる・・・こと?」 「うん、見た目は全然ノーマルなんだ。特別な改造は一切してない。でも一箇所だけ・・・ノーマルじゃない部分があるんだ。」 「一箇所だけノーマルじゃない部分・・・?どこだよそれ。」 「シャドーフォックスの背中に装備されてるメイン武装、AZ30mm徹甲レーザーバルカン・・・。」 「ま、まさか威力が上昇する改造をしているとか・・・?」 首を横に降るゼル。 「・・・その逆、口径を小さくしているんだよ。」 「・・・へ?」
「最初に見たときから違和感があって、気になって調べてみたんだ。そしたら30mmのはずの口径が25mmになっていたんだ。」 「なぁゼル、それって攻撃力が小さくなるんじゃ・・・。」 「そう、攻撃力が小さくなるんだ。でもメリットはちゃんとあるんだよ。 発射時の衝撃を小さく出来るから隙を小さく出来るし、機体自体の軽量化にもなるね。 それに口径が小さくなることによる貫通力向上ってとこかな。」 「だからって・・・威力を犠牲にしてまでやることなのかな〜・・・?」 アースのこの言葉にゼルも考え込んでしまう。 「う〜ん、戦闘スタイルとかにもよると思うけど・・・。」 「二人とも手が止まっているようだが・・・?」 二人が話しているところへ急にリチャード大尉の声が響く。 驚いて声がしたほうを振り向く二人。そこにはリチャード大尉の姿があった。慌てて敬礼するアースとゼル。 「アース・・・そんなに俺のシャドーフォックスが気になるのか?」 「・・・はい、どうしてわざと威力を落とすような改造をするんですか?武器とは敵を倒すための物、威力を上げたほうがいいと思うんですけど。」 アースは自分の考えを素直に言う。 「威力を上げたほうがいい・・・か。ゼル、君はこの星で一番威力の高い武器は何だと思う?」 「は、はいっ。帝国軍が使用している荷電粒子砲だと思います!」 体をまっすぐに伸ばし、大きな声で答えるゼル。 「それじゃぁ少し質問を変えよう、一番強い武器はなんだと思う?」 「え?それは・・・その状況によって変わると思います。」 ゼルは自信がなさそうに答える。 リチャード大尉の視線がLZのコックピットに座っているアースのほうへいく。 「アース、君はどう思う?一番強い武器について。」 「えぇと・・・。」 アースは答えることが出来なかった。アースの頭に真っ先に浮かんだのは荷電粒子砲だった。 荷電粒子砲は確かに威力は最強クラス、でもリロードには時間がかかるし発射の際の隙も大きく命中力も特別良いわけではない。 デメリットばかりが浮かんできた。 「ゼルが言っていた荷電粒子砲は極端すぎるが・・・、まぁ俺が言いたいのは威力が高い武器 =(イコール) 強い武器とは限らないということだ。」 「は、はぁ・・・。でも大尉、それじゃ一番強い武器ってなんなんですか?」 「ハハハ、確かに今の話じゃ分かんないよな。よし、これは宿題にしよう。 自分が考える一番強い武器について。期限は・・・そうだな、演習予定地に到着するまで。ガウリィにも伝えておいてくれよ。」 そういってリチャード大尉はどこかへ行ってしまった。 アースとゼルはお互いに[分かんない]のジェスチャーをだして顔を見合わせていた。
ホバーカーゴの食堂で三人が昼食をとっていた。 「一番強い武器・・・か。さすがリチャード大尉、すごく奥が深い問題だよ。」 この宿題を聞いたガウリィも少し考え込む。 「へへ。実はボクには予想がついてるんだ。」 「あぁ、俺も予想がついた。なんとなく・・・だけどな。」 答えが出てないのはアースだけだった。 「えぇ〜、なんだよ一番強い武器って。二人とも教えてよ〜。」 「アース、こういうのは自分で考えないとだめだろ?」 「そうそう、自分で答えを出さないとね♪」 二人ともそういうと食事を済ませてさっさと片付けをはじめてしまった。 「ま、待ってよ二人とも!」 いそいで食事をたいらげ、アースも片付けを始めたが、ガウリィもゼルも先に食堂を出て行ってしまった。 整備の続きをするために一人、格納庫へと向かうアース。 「俺が考える一番強い武器・・・俺が考える一番強い武・・・」 そこまでつぶやいた瞬間、急に非常事態を告げるアラームが鳴り響いた。 すぐにガウリィの声が流れる。 「0時の方向より所属不明のゾイドが五体、こちらへ向かってきてます。パイロットは至急ゾイドへ乗り込みコックピットで待機をお願いします。繰り返します・・・」 それを聞いたアースはすぐにLZのもとへと向かった。 アースはコックピットへ乗り込むと、すぐガウリィとの通信をはじめた。 「ガウリィ、敵襲なのか?」 「そうとも限らない、ゾイド乗りが偶然通りかかっただけかも。でも戦闘の準備はしておいてくれ。」 二人の会話に割り込むようにしてリチャード大尉が話しかけてくる。 「ガウリィ。五体のゾイド、種類はわかるか?」 「はい、大尉。バーサークフューラーシュトゥルム、シールドライガー、セイバータイガー、レドラー、コマンドウルフです。」 「ゾイドに統一性がないな、傭兵かなにかだろう。アース、戦闘になるかどうかは分からんが心の準備はしておけよ。」 「・・・わかりました。」 緊張した声でアースが答える。 少しの間全員が沈黙する。 「・・・バーサークフューラーシュトゥルムがここから約8kmの位置で停止しました、他の四体はこちらへ近づいてきます。」 「ガウリィ、ホバーカーゴを停止させろ。それと、いつでもEシールドを展開できる準備をしておけ。」 「はい・・・。」 リチャード大尉の指示を受けたガウリィの声にも緊張が見られる。 「ガオォ!」 急にライガーゼロが咆哮をあげた。 「どうしたんだライガー?」 すぐ非常事態を告げるアラームが鳴り響いた。 「荷電粒子接近!!目標ホバーカーゴ!!」 ガウリィが叫ぶ。 「すぐにEシールドを展開しろ!!」 リチャード大尉が指示を出す。ホバーカーゴは荷電粒子砲が命中するギリギリのところでEシールドを展開した。 激しい衝撃がホバーカーゴを襲うが、ホバーカーゴのEシールドは荷電粒子砲に耐えることが出来た。 「どうたらあちらさんは俺達に用があるらしい。ガウリィ、荷電粒子砲のリロード中にシャドーフォックスとライガーゼロを発進させる。カタパルト準備!!」 ホバーカーゴの揺れが収まったのを確認してエライ大尉の指示が出る。 「了解しました。Eシールド解除・・・カタパルト、準備完了しました。発進どうぞ!!」 Eシールドが消え去り、カタパルトにシャドーフォックスが待機する。 「リチャード大尉、シャドーフォックス発進する!!」 リチャード大尉が乗るシャドーフォックスが勢いよく飛び出していく。 「アース、ライガーゼロ。発進します!!」 シャドーフォックスに続いてライガーゼロが発進した。 「いくぞ!!ライガー!!!」 「ガオォォォ!!!」
地面に降り立つライガーゼロとシャドーフォックス。 目の前には四体のゾイドの姿があった。 「どうしていきなり撃ってくるんだ!?何者なんだお前らは!!」 しかしアースの質問に答えるものはいなかった。 「どうやら話をするつもりもないらしいな、戦うしかないぞ。」 リチャード大尉がアースに話しかける。その瞬間にシールドライガーが展開ミサイルを発射してきた。 コックピット内に警告音が鳴り響く。 「くそっ・・・。」 それぞれ左右にステップして展開ミサイルを回避するライガーゼロとシャドーフォックス。 展開ミサイルはホバーカーゴにも向かって飛んでいったが、Eシールドを展開することでこれを防いだ。 ステップしたシャドーフォックスに向けて、追い討ちをかけるようにレドラーが対地ミサイルを発射する。 「そんなもの、俺のシャドーフォックスには当たらんよ!!」 シャドーフォックスはレドラーの放った対地ミサイルをあっさりと回避し、敵ゾイドへと向かっていく。 近づいてくるシャドーフォックスに対して、シールドライガーとコマンドウルフはミサイルを発射し、セイバータイガーはウェポンバインダーを発射してきた。 シャドーフォックスの限界速度で前へ前へと進みながらも、攻撃をすべて回避していくリチャード大尉。 その姿を見ていたアースに、熱いものがこみ上げてくる。 「ライガー、俺達も行くぞ。リチャード大尉の援護をするんだ!!」 「ガオォォォ!!」 LZはスタビライザーを左右に展開し、ブースターを点火した。走り出したLZは一気に加速していった。 ミサイルや弾丸が降り注ぐ中を突き進んでいくシャドーフォックス。背中の徹甲レーザーバルカンが正面にいるコマンドウルフに照準を合わせていた。 コマンドウルフがミサイルの発射をやめて背中の二連装ビーム砲を発射してくる。 シャドーフォックスはそれをステップで回避する、と同時に徹甲レーザーバルカンを単発で発射し、コマンドウルフの前足を撃ち抜いた。 撃ち抜かれた前足では自らの体を支えることが出来ず、コマンドウルフは前のめりに倒れこんでしまう。 なんとか起き上がろうとするコマンドウルフだが、バランスがとれず立ち上がることができない。 尚も距離を詰めるシャドーフォックスは爪が輝かせながら力強くコマンドウルフめがけて飛んだ。 「ストライク!!レーザークロォォォオ!!!」 シャドーフォックスの光る爪がコマンドウルフを切り裂いた。黒煙を上げて動かなくなるコマンドウルフ。 着地後も止まることなく走り続けるシャドーフォックスだが、それを後ろから追いかけるレドラーの姿があった。
低空飛行でシャドーフォックスの後ろから迫るレドラー。切断翼が鈍い光を放っていた。 「フン・・・。」 逃げるシャドーフォックスにレドラーが追いつきそうになる、その瞬間シャドーフォックスはスモークディスチャージャーを発動。 レドラーの視界を奪うと、尻尾に収納されている電磁ネット砲を発射する。 電磁ネット砲は翼に命中し、レドラーはバランスを崩し速度を大きく落としてしまった。 リチャード大尉はその一瞬を見逃すことなく、進行方向を向いていた徹甲レーザーバルカンの砲身を180度回転させ連射した。 バランスを崩していたレドラーは避けることが出来ず、徹甲レーザーバルカンに何箇所も打ち抜かれた。 レドラーはそのまま落下し黒煙を上げて動かなくなった。 「す、すごい。もう二体のゾイドを撃破してしまった。飛行ゾイドもあっさりと・・・。」 ホバーカーゴから戦闘の様子を見ていたガウリィはリチャード大尉の戦いぶりに見とれていた。 レドラーの撃墜を確認したリチャード大尉は、砲身をシールドライガーに向け徹甲レーザーバルカンをばら撒きながら走り続けた。 徹甲レーザーバルカンの砲台は走り続けるシャドーフォックスの背中で回転し、シールドライガーを捕らえ続ける。 シールドライガーは攻撃を止め、Eシールドを展開した。徹甲レーザバルカンはEシールドにはじかれる。だがリチャード大尉は徹甲レーザーバルカンを止めず撃ち続けた。 「いけ!!アース!!!」 リチャード大尉が叫ぶ。 Eシールドを展開しているシールドライガーの後方、そこには強烈な光を爪に帯びたアースの乗るライガーゼロの姿があった。 「ライガー!!ストライク・・・レーザークロー!!!」 Eシールドを展開しているシールドライガーは後ろから迫るライガーゼロへ反撃する手段がなかった。 かといってEシールドを解除すれば徹甲レーザーバルカンの餌食になるだろう。 「ガオォォオ!!!」 ライガーゼロの強力な一撃がシールドライガーを吹き飛ばす。 シャドーフォックスはライガーゼロの攻撃がヒットする瞬間に徹甲レーザーバルカンの発射を止めてセイバータイガーへと向かっていった。 「やったぜライガー!!」 「ガオォォォ!!!」 ライガーゼロがうれしそうに勝利の咆哮をあげる。 「アース!!避けろ!!!」 突然のリチャード大尉の声。アースが振り向くとそこにはLRパルスレーザーライフルをこちらに向けて走ってくるセイバータイガーの姿があった。 「し、しまっ・・・!!!」 アースが気づいたときにはライガーゼロに向かってLRパルスレーザーライフルが発射されていた。
次回へ続く