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「よーっし、今日こそライガーブレードをゲットするぞ!」 そう意気込んで席に座るのは友人の司郎。仲間内でも「永遠のシールド乗り」と言われている彼は、BPが1000に届きそうだ。 「諦めてずっとシールド乗りでいいんじゃないか?」 「俺はブレードライガーが好きなんだ、絶対にブレード乗りになる!」 そう言ってコインを入れる司郎、カードの絵柄がシールドライガーとコマンドウルフなのが少し笑える。 このゲーセンにある∞の台は全部で4台、平日の昼間ということもあってか人も少なく対戦ムードでもなかった。 俺は司郎の隣から、プレイを見守ることにした。ライガーブレードを求めてどれだけの月日が経っただろうか・・。 さすがにそろそろかわいそうになってくる。 ランダム戦を少し進み、レオンの赤いBLが対戦相手として表示された。ライガーブレードのチャンスに司郎は少し興奮気味だ。 「よーし、ついに来た決戦のときだ・・・」 ・・・少しノドが渇いてきた。 「俺、飲み物買ってくるよ。」 「あぁわかったよ、戻ってくる頃にはブレードライガーだな!」 「はいはい・・・」 俺はあきれ気味に答えながら自販機へと向かう。 少し離れたところにある自販機で、俺はペプシコーラを購入した。 「ゴク、ゴク、ゴク・・・フゥ、やっぱペプシは最高だな・・・」と自分の世界に入り込む俺。 2〜3分は経っただろうか、俺はペプシを飲み干していた。 「さて、司郎はブレードライガーになれたかな・・・?」 正直、それは絶対にない・・・とは思ってはいたが。 空き缶をゴミ箱へ捨て、あまり期待せずにゾイドの台へ向かうとそこには衝撃的な光景が広がっていた。 「ブ、ブレードライガーになってる!?」 画面にはBLがCPUと戦っている映像が映し出されていた。 驚きを隠せない俺に司郎が話しかけてくる。 「おかえり〜・・・」 声が沈んでいる。 「まさかとは思ったけど、プレイしてるのは別人か。」 よく見るとBLが映っている台は、友人がプレイしていた台の隣だ。 「なぁ〜頼むよ、仇をとってくれよ〜。」 どうやらこのBLに乱入されて負けたらしい。 「そりゃいいけど、勝てるかどうかは分かんないよ。」 「最近は連勝中だろ?今回も勝つって!」 「またそんな根拠のないことを・・・」 「お願いしますよ〜。」 「まったく、司郎はいつもそんな調子だよな・・・仕方ないな、がんばってみるよ。」 愛用のカードケースからカードを取り出しコインを用意する。 「対戦、いいですか?」 と声をかけると、 「えぇ、どうぞ。よろしく。」 と快く承諾してくれた、感じのいいお兄さんだ。 座席に座りカードとコインをいれると横から俺の座っている台の画面を見ていた司郎が話しかけてきた。 「それじゃ京介様!よろしくっ!」 「はいはい・・・わかりましたよ〜」 お互いの機体が表示されたとき、BLのプレイヤーがこちらをチラッと見てきたのに気づいた。 「やっぱ珍しいのかな・・・でも俺にはお前が最高の相棒だ、さぁ行こうか、バーサークフューラー!!」 そういえば自己紹介がまだだった、俺は京介、BF乗りの京介だ!

「それにしてもさ、なんで京介ってあんなに強いんだよ?」 チーズバーガーを食べながら司郎が聞いてくる。 「俺が強いんじゃないよ、相手が弱いってわけでもないけどさ。」 フライドポテトをくわえて俺は続ける。 「ブレードライガーってさ、格闘が強いけど結構距離が離れちゃうと攻撃パターンが8連ミサイルかショックカノンかハイデンシティに  限られちゃうだろ?フューラーの性能ならどれも割と楽に避けられるからね。」 そう言ってビックマックに手を伸ばす俺。 「俺のときはブレードアタックを何回も使ってきてたのにさ、お前と戦ってるときはあんまり使ってなかったよな、あの人。  フューラーだからって手を抜かれてたのかもしれないぜ?」 マックシェイクを飲み終えた俺は答えた。 「それはないよ、俺はブレードを出せない位置をキープしてたからね。」 「えっなんだよそれ?どういうことだよ?」 「んーっとな、ブレードアタックって基本的にはブレードライガーの正面へ向かって走っていくだろ。  だからブレードライガーの正面にいなければブレードアタックを出せないのさ。  たとえステップ旋回をくりかえしてもそこに目標がなければいつまで経ってもブレード展開できないからね、  さっきの人は、終盤であせって出してたからかえってダメージとりやすくなったよ。」 「その隙に投げて追い討ち拡散荷電、合計約3600ダメージってか、弱い弱いって言われてるフューラーとは思えないよ、まったく・・・」 「フューラーってどの間合いでも平均的に戦えるしな、俺の理論に間違いはない・・・、  とまでは行かないと思うけど。結構いいセンいってるんじゃないかな。」 「あぁ、ほんとまいるよな〜、ブレードに乗り換えても京介には勝てそうにないなぁ・・・」 「俺に勝てるようになるころには、ゾイド∞は撤去されてるなきっと。」 「京介、それは言いすぎだ・・・」 「ははは」 俺は笑いながらてりやきマックバーガーを手に取る、やはりマックはいい・・・俺の空腹を満たしてくれる。 「ところで京介、その自慢の理論でコマンドウルフ対策は完成したのか?」 「うぐっ、痛いところをついてくるな・・・」 司郎はニヤニヤと笑いだした。 「コマンドウルフはきつい・・・どう攻めていいのかさっぱりなんだ。あの機体は俺の想像と理解を遥かに超えてるよ・・・」 それを聞いた司郎が笑い出した。 「ははははは!!!ゴジュラスギガすら恐れないヤツが実はコマンドウルフを一番怖がってるなんてな!!!」 「声が大きいって司郎、もしここにゾイドやってるやつがいたらやられちまう・・・」 ・・・確かに俺はコマンドウルフがすごく苦手だ、さすがに初心者なんかには負けないとは思うが、 ある程度の使い手には負けてしまうのだ。ここだけの話、コマンドウルフに限って勝率が3割に届いていない。 「コマンドウルフ・・・ウネンや8連ミサイルなんかで遠・中距離でフューラーは有利にはなれない・・・、かといって近距離でも  格闘の発生が早いからあまり有利にはなれない・・・、ステップ、速度共にランクが高い・・・、  狙うとしたらEN回復中とか・・・いや、ダメか・・・」 ハァ・・・と大きなため息をつく俺。 「そんなに落ち込むなって。あれから結構時間経ったし、そろそろ対戦ムードになってるかもしれないぜ?ゲーセンいってみよう。」 「そうだな、コマンドウルフ対策もしっかり考えないとな。」 「はは・・・コマンドウルフなんて深く考えなくても勝てるんだけどな〜・・・」 「うらやましい限りだよ・・・」 そう言って、二人でゲーセンへと向かった。

ゲーセンに到着すると二人とも真っ先にゾイド∞へと向かった。 「お、やってるやってる!」 司郎の言うとおり、人だかりが出来ている。対戦ムードのようだ。 ・・・その中に一人だけ、他の連中とは違う雰囲気を持っている男がいた。 どう表現すればいいのだろう。とにかく、何か圧倒的な力強さを感じた。 「今プレイしてるあの人誰だ?はじめてみる人だけど。」 俺は気になって司郎に聞いてみた。 「俺も知らないな〜、遠征者とかそんなんじゃないかな?」 「そっか・・・今対戦中だな、観戦しよう。」 「お、おい京介!さっき戦ったブレードライガーだ!相手はゴジュラス・ジ・オーガだ!」 確かにそこで黒いGTOと戦っているのはさっき対戦したBLのお兄さんだった。 残り時間も20秒程とあまり多くはないが、二機のHPを比べればどちらが強いかというのはすぐに分かった。 間も無くGTOの発射したLRBCでBLは沈黙してしまった。GTOの残りHPは8500程、圧倒的だった。 カードが排出され、BL使いのお兄さんはそれを受け取りゲーセンを後にしていった。 「さっきのブレードのお兄さんだけどさ、普通に強いんだよ。」 「京介、何をいきなり?」 司郎が不思議そうにこっちを見ている。 「正統派のブレードライガーっていうのかな、多段ブレードに頼ることもしない、射撃も格闘もセンスのいい人でさ。  そんなあの人がこんなに簡単に負けているんだよ、しかもあの黒いGTOは多分本気で戦っていないぜ。」 「本気で戦っていない・・・って、なんで分かるんだよ?」 「さっきマックで話したろ、BLは近距離で強いって。あの黒いGTOは、BLと常に近距離で戦っていた、相手に有利な間合いで戦っているんだ。」 「でもGTOの近距離も強いぜ?0距離キャノンとか尻尾とか。」 「確かにそうだけど、ブレードライガーにはEシールドがあるし、機動力もGTO以上だ。さっきのブレードライガー使いならきっと対処できてたはずだ。」 「・・・なのに圧倒的に負けた・・・ってことかよ?」 「あぁ・・・並みのGTO使いじゃないぜ、それに・・・」 「それに?」 「いや、なんでもないよ。」 (それに・・・これだけの気迫、間違いなく・・・あの人は"本物"だ・・・) CPU戦を進めていく、黒いジャケットの男、PNは「アグレス」と書いてある。 黒いGTOを使い乱入してくる相手を次々と倒していたのだった。 恥ずかしい話だが、俺は威圧感を感じていた。席が空いていたのを見て、愛用のカードケースからBFのカードを取り出した。 「対戦、いいですか?」 と声をかけると、PNをアグレスという男はこちらをじっと見て、答えた。 「・・・好きにしろ。」 俺は座席にすわり、カードを台へ入れようとした。 その時、遠くからBFの咆哮が聞こえたような気がした。 他のゾイドの台を見たが、BFを使っているプレイヤーはいない。 「どうした?はやくしろ。」 アグレスに言われてカードとコインを入れた。 不思議と、アグレスの気迫が気にならなくなっていた。リラックスしているのが自分でもよく分かる。 「雰囲気に呑まれたままじゃ、まともなバトルにならなかったよな。サンキュー、フューラー。」 冷静になればおかしいかもしれない、けど俺はフューラーが助けてくれたと思うことにした。

対戦する二機が表示され、フィールドが表示される。 レムス基地だ。 ゾイドの咆哮が響き渡りバトルがスタートする。 「GTOはステップが小さいから、開始直後の二連ショックカノンは避けにくいはずだ。」 戦闘開始とほぼ同時にBFは二連ショックカノンを発射する。二連ショックカノンは命中するがGTOはダメージをものともせずに距離を縮め、リニアレーザーガンで反撃する。 BFは右へステップ旋回してこれを避け、そのまま近くのコンテナの裏へHBで滑り込み、185丱咫璽爛ャノンを発射し、これも命中させた。 「ここなら反撃されずに攻撃できる。」 コンテナ裏でGTOの様子を伺っている京介に対して、GTOは止まることなくさらに距離を縮め、コンテナ越しにLRBCを狙っていた。 「これで十分にダメージは取り返せる、くらえっ」 「そう簡単にはやらせないっ」 GTOがHBをしている瞬間、コンテナ越しにBFの格闘が決まった。GTOはLRBCを発射することなくダウンしてしまう。 「LRBCは入力してもすぐには発射されない、他の武装はコンテナで阻まれているからBFには当たらない。  LRBCしか撃てない状況ならリーチが長くて発生の早いBFの格闘が勝つ!!」 追い討ちすることなく離れていくBF。格闘を決めたBFの右方向にあるコンテナへ向かっていく。 「残りは大体、6800か。うらやましい硬さだな。」 離れていくBFに対し、起き上がったGTOは8連装ミサイルを発射しながら距離を詰めるが、 BFはHBの慣性を利用し、再びコンテナ裏へと隠れた。GTOが発射したミサイルがコンテナでかき消されてしまう。 「その場所のコンテナ裏にはすぐ傾斜がある、傾斜とコンテナの間にきれいに隠れるのは難しいはずだが。  こんなにあっさりときめられると簡単な事のように見えるな。」 コンテナの裏からBFの185丱咫璽爛ャノンが発射され、これも命中した。 ダメージを食らってもさらに距離を詰めようとするアグレス。 「・・・確かにお前にコンテナ越しLRBCはきかないみたいだがな、俺を甘く見るなよ。」 GTOはコンテナの前、BFの格闘レンジに入らない位置でHBした。その距離はコンテナ越しLRBCが狙える距離ではなかった。 「この距離はLRBCじゃない・・・格闘がくる!!」 コンテナを貫通してGTOの尻尾が飛んできた。京介はとっさにレバーを内側に倒し、BFをガード体勢にする。 「これでもう逃げられないだろう。」 尻尾をガードしたBFだったが、その直後にGTOはLRBCを発射した。ガード体勢だったBFは避けることは出来なかった。 「尻尾は囮だ・・・ガードしたんじゃなく、ガードさせられてしまった・・・」 LRBCで吹き飛ばしたBFに追い討ちを決め、倒れているBFの後ろで待機するGTO。 起き上がったBFはブーストとステップを繰り返して振り切ろうとした。 GTOは逃げようとするBFを追いかけながらミサイルやビームを発射するが当てることができない。 「あのステップ距離はフィーネか。うまいな、攻撃が当たらない。  ステップやブースト、間合いの取り方、まるでお手本だな。」 「ゴジュラス系は逃げられるときついって、ゾイド∞が登場したころから言われていたよな。カッコ悪いけど、俺はこの勝負に勝ちたい!」 移動速度は僅かにBFのほうが速い。距離が開いたのを確認して、BFはステップ旋回やHBをして、二連ショックカノンや全方位ミサイルで攻撃するが、 アグレスもその一瞬に狙いを定めて反撃してくる。ステップ性能が悪いGTOだが反撃のタイミングが絶妙で、BFに攻撃の機会を与えなかった。 GTOに僅かなダメージはあるがどれも決定打にはならない。 「あのアグレスって人、すごい使い手だ。これ以上攻撃に転じようとすると確実に反撃を食らってしまう・・・。  でもHPは俺のほうが多いんだ。落ち着け・・・有利なのは俺のほうだ!」 ステップを繰り返すBFを冷めた目線で見るアグレス、HP残量で負け、攻撃も当たらない。そんな状況で恐ろしいほどの冷静さを見せている。 「フン・・・見えたぜお前の弱点。」

京介がレーダーを見ると、思っていたよりGTOが離れていない。が、HBしても安全と思える距離はあった。丁度ステージの真ん中、障害物も特にない区域だ。 左へステップ旋回してそのまま慣性を利用してHB、GTOを正面に捕らえて攻撃に転じようとした。 だが、HBしたとき画面に映っていたのはBFのすぐ目の前に立つGTOの姿だった。 「やはり左へ飛んだな、くらえっ」 GTOは四連ショックを発射しながらLRBCを発射した。0距離による発射のため、京介がとっさに入力したステップも効果なく、吹き飛ばされるBF。 アグレスは容赦なく追い討ちのミサイルと格闘を入れた。 「くっ・・・」 京介がダメージを確認すると、約4700も削られていた。残り時間は20秒ちょっとだ。 BFの残りHPは約2500、GTOはまだ4000程残していた。 「形勢逆転だな。」 「時間はある!戦いはまだ終わってない!」 京介はスティックをすごい勢いで回転させ、BFを起き上がらせた。 「キャノンのリロードが終わっていないはずだっ!」 BFは起き上がると同時にHBし、無敵時間のうちにGTOに一直線に突っ込んだ。 アグレスはミサイルと四連ショックで反撃するが、ミサイルは無敵時間でかき消され、四連ショック分のダメージしか通らなかった。 対してBFは二連ショックを発射し、格闘間合いへ。そのまま格闘を決めようとした。 「甘いな。」 GTOは二連ショックをくらったが、格闘はガードした。そしてすぐに右格闘で反撃してくる。京介も即座にレバーを内側へ倒しガードする。 「GTOの右格闘・・・すぐにダッシュされるとフューラーの格闘は避けられる、くそっ!!」 京介は右格闘のガードを確認してすぐにBFをダッシュさせGTOの後方へ走り出した。残り時間は10秒ほどしかない。 「残り体力は俺のほうが多いが・・・あのBFから逃げ切るのは難しいだろうな。となれば、攻めきるほうがよさそうだな。」 BFはコンテナの後ろにHBで滑り込み、スロットを切り替えて185丱咫璽爛ャノンを発射した。 だがGTOはBFを中心に円を描くようにして移動していたため当たらなかった。 「残り時間は5秒・・・今しかないっ!」 コンテナ裏から急に飛び出すBF。アグレスはとっさに8連装ミサイルと四連ショックを発射するが、 BFはGTOを横切る形でダッシュしていたため、四連ショックが1ヒットしただけだった。 「チッ、しとめ損ねたか。」 BFはHBし、すぐにステップしながら全方位ミサイルを発射した。 「全方位は確かに避けづらいが・・・避けれないわけじゃない。」 全方位をダッシュで回避するGTO、京介は二連ショックを発射するがこれも避けられてしまった。 「もう武器がないだろう、俺の勝ちだな。」 「冗談だろ、まだ最高なのが残ってるよ!」 アグレスが気づいたときにはもうBFはバスタークローを大きく開いていた。 「荷電粒子砲!?こいつまだ諦めてなかったのか!!」 避けれないと判断したアグレスはとっさにLRBCを発射した。 ほぼ同時に吹き飛ぶBFとGTO。 「おおー!!」 ギャラリーが騒ぎ出した。いつのまにかアグレスと京介の戦いを見る人だかりが出来ていたのだ。ギャラリーの誰かが言った。 「ドロー・・・なのか?」 「いや・・・」 BFは黒煙をあげていたが、GTOは起き上がった。残り時間は後01秒、GTOの体力は465だった。GTOの勝利の咆哮がゲームセンターに響き渡る。 だが予想外のBFの活躍にギャラリーは沸きあがった。 「BFがGTOの連勝を止めちまうぞ!」 「GTOがBFに負けたら笑いものだな。」 「BFの兄ちゃん、ここにいるみんなの敵討ち、頼んだぞ!」 ギャラリーは盛り上がっていたが、京介本人はうつむいたまま、何の反応もなかった。 「京介、2ラウンド始まるぞ?」 そう言って肩を叩く司郎。その肩は微かに震えていた。 「京介・・・震えている・・・?」 「はは・・・とんでもないのに勝負挑んじゃったな・・・」 「え?」 「いや、なんでもない・・・全力でいくよ。」

2ラウンドが開始される。 BFはバスタークローを力強く振り回し、GTOは力強い咆哮で己の力を誇示する。 「このアグレスって人は強い・・・たった一度戦っただけで分かってしまった・・・」 「腕は悪くない、戦術も考えられている。ここで戦ったやつの中では一番だろう。だがそれでも、俺の渇きを潤すことはできないんだな。」 戦闘開始と同時にBFは二連ショックを発射したが、ダッシュで移動するGTOには当たらなかった。 「この俺に同じ手は通用しない。」 「だろうな、でも全方位まで撃たれると厳しいだろう?」 1ラウンド目とは違い、逃げることなくGTOへ近づいていくBFは全方位ミサイルを発射した。だがその全方位もカス当たり程度でしかなかった。 尚もブーストとステップで近づいていくBFだが、アグレス程のGTO使いに突っ込むのは無謀である。それは京介にも分かっていることだ。 京介のその行動の意味が司朗には分からなかった。 「何をやっているんだ京介、いつものお前ならそんなムチャな戦術は・・・」 司郎だけじゃない、ギャラリーも同じ疑問を持った。 「フン、気づいていたのか。苦肉の策だな。」 誰もが首をかしげる中ただ一人、アグレスはその行動の意味が分かっていた。 GTOは8連装ミサイルを発射するが、BFはステップでそれを回避する。だが、着地の瞬間を狙ってダッシュし、0距離LRBCを命中させた。 「くそっ・・・」 追い討ちのダメージをしっかりと決め、BFの後ろへ回り込むGTO。 「そうだ、お前は気づいている。どうしても俺に後ろを取られたくなかった。だから1ラウンド目のような戦術はできないんだ。」 「くっ・・・」 BFは起き上がり、GTOを振り切ろうとブーストを吹かした。 「ハッタリだ、あれはただの偶然。そうであってくれ!」 京介の脳裏に1ラウンド目の光景が鮮明によみがえる。一度に約4700ものダメージを奪ったあの場面が。 「あの時俺のステップする方向が読まれていた・・・いや、そんなはずはない。偶然だ!」 ステップを使わずブーストと旋回を繰り返すだけのBFのENゲージはどんどん減っていく。後ろから追いかけてくるGTOはミサイルや四連ショックを発射している。 かろうじてBFにあたりはしていなものの、このままではBFがシステムダウンしてしまう。 「ジャンプは使えない、キャノンに狙い撃ちされる・・・。ステップしかない・・・。」 BFのENゲージは1/3以下にまで減っていた。ENの回復のためにもステップは必要だ。 「飛べ、フューラー!!お前のステップなら行けるはずだ!!」 BFは右へ左へ飛ぶようにステップを繰り返す。 「俺にはお前の飛ぶ方向が読める。ゆえに距離を詰めるのも簡単だ。」 BFがステップするたびにその方向へショートカットしながら移動するGTOは、BFとの距離を確実に縮めていた。 「やっぱり・・・読まれている・・・?」 GTOに接近され、LRBCで吹き飛ばされてしまうBF。 ・・・こうなると一方的な試合だった。 攻撃を避けることのできないBFは攻撃のタイミングをつかむことが出来ず、そのままGTOが勝利した。 BFの健闘に盛り上がっていたギャラリーも、静かになってしまった。 結果を見るとGTOはHPを8000程残し、タイムは20秒残っていた。

俺は排出されたカードを受け取り、アグレスという男の元へ向かった。 「教えてくれ、なぜ俺のステップする方向が読めたんだ・・・それも・・・正確に。」 CPUを相手にしながらアグレスはゆっくりと口を開いた。 「・・・ステップをする直前、ほんの一瞬だがステップする方向に頭が動く。」 「え?」 「スティックを倒すタイミングが左右で微妙に違うんだろう、結果としてフューラーはステップする前にステップする方向へ頭を向ける。  要するにお前がヘタクソだからフューラーが負けたんだ。」 このアグレスの言葉はギャラリーも聞いていた。 「GTOなんか使って相手をヘタクソって言うのかよ。」 「キャノンの性能で勝ってるんじゃないか。」 と、アグレスにも聞こえるような音量でヤジが飛ぶ。だがアグレスが睨みつけると黙り込んでしまった。 「頭の向き、か・・・そんな一瞬を・・・」 俺の想像を遥かに超えていた答えだった。時間にして0.2、3秒足らずのその一瞬をこの男は正確に見極めていたのだ。 俺は黙って、その場を去る事しか出来なかった。 「待ってくれよ、京介!!今日はお前の車で来てるんだから!!おーい!!」 「あぁ、悪い、忘れてた・・・」 「ったく、あんなに強いGTOといい勝負するなんて、さすが京介だよな!」 「いい勝負・・・か、対戦している俺にはハッキリと分かったよ。間違いなく俺の完敗だった。」 そう話をしながら、店の外の駐車場に向かう二人。そしてその二人とすれ違うようにして店へ向かう男がいた。 その風体は、ジーパンに白いTシャツ。背も高くなく、子供のような容姿だ。ひときわ目を引いたのが迷彩柄の野球帽だ。

黒い2ドアの車に乗り込む俺と司郎。キーをまわしてエンジンをかけると、少しうるさい直6サウンドが駐車場に響く。 「相手はGTOなんだしさ、仕方ないよ。実際BFじゃきついって。ギャラリーだってそう思ってたさ。だから気にするなよな。」 「気にするさ・・・、うれしいんだ、あれだけ強い人に認めてもらえたような気がしてさ。」 「なんだよそれ?どういうことだよ?」 司郎は不思議そうに俺を見ている。 「アグレスって人、言っただろ?お前がヘタクソだからフューラーが負けたんだ、ってさ。」 「言ってたけど、それがどうしたんだよ?」 「それって、フューラーは強いけど俺が弱い。つまり俺がもっと強くなればいいセンいってるってことだろ?」 「おいおい、それって無理やりすぎだろ。」 司郎は失笑しながらシートにもたれかかり、シートベルトを締めた。 「そうかもしれないけどさ、俺はそう思うことにするよ。」 そう言いながら、俺もシートベルトを締めた。 「そういやさ、なんでフューラーなんだよ?他の機体ならもっと楽に上を目指せるんじゃないか?」 俺がBFに乗る理由か、そういえば司郎にもまだ話したことがなかったのを思い出した。 「俺は勝ちにこだわってるからな、勝つために一番強い機体を使うのは当たり前だろ?それがBFに乗る理由さ。」 「は!?」 開いた口がふさがらない司郎を尻目に、メーターに目を向ける。 「水温OK、油圧OK、よし・・・帰るか。」 そう言って、俺は車を走らせた。 (それにしてもあの人、たった1ラウンド戦っただけで頭の向きとステップの関係を見破った・・・。  ステップの向きを読んでいたとはいえ、不規則に動くBFの後ろを正確にトレースしてくる技術、それも自分より動きが速い機体相手にだ。  LSやJAで追いかけるのとはわけが違う、とてつもなく難しいはずだ。他の人間に出来るだろうか、そんな芸当が・・・。) 夜の闇に4つ目の赤いテールランプが消えていった。

「まったく……。いつになったら現れるんだ。俺の渇きを満たす奴は」 椅子に浅く座り、いかにもダルそうにCPU戦をこなしていくアグレスは、 ついにUS戦まで進んでいた。 「さて、次は何処のゲーセンに行こうか…」 そうつぶやいた矢先、突如ブラックアウトする画面。 その中心に浮かぶ白い文字。

挑戦者が現れました

「ほう?」 先ほどの連勝を見て、まだ挑む奴がいる。その行為に少し興味を覚えたアグレスは 横に視線を移し、姿を確認しようとした。 その挑戦者は、丁度隣の席に座っていた。 その風体は、ジーパンに白いTシャツ。背も高くなく、子供のような容姿だ。 一際目を引いたのが迷彩柄の野球帽だ。あまり似合っているとも思えないそれが、 さらにその男を頼りなさげに見せていた。 お世辞にも強そうには見えない男だった。 R氏作品「新たなる力」へ続く・・・