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IT業界の儲けの仕組み

IT業界にもゼネコン業界と同じように、下請け制度があります。メーカー系(NTTデータ、日立製作所、NEC、富士通など)や大手のSierの場合、子会社やパートナー企業に受注したシステム開発案件をほとんど"丸投げ"に近い形で業務を委託します。ここで、受注金額の3割から5割程度が引かれます。 さらに子会社やパートナー企業は自社で業務をまかないきれず、下請け企業に業務を委託します。場合によってさらに下請け企業に・・・・と下請けの多層化が進んでいるのが実状です。 大きなSIerはネームバリューが営業力となりますが、中小のソフトウエア企業が仕事を得るためには、必然的にこの下請け制度に依存せざるを得ない状況が多くなっています。

偽装請負とは

IT業界で下請け企業が元請け企業と契約を結ぶ場合の形態として、一括請負契約、情報成果物作成委託契約、役務提供契約、労働者派遣法に基づく派遣契約などがあります。 偽装請負とは、契約が請負契約であるにもかかわらず、実態が派遣である状態のことをいいます。

民法上の請負と派遣の分類

民法上請負に分類されるもの

  • 一括請負契約
  • 情報成果物作成委託契約(SES契約と呼ばれる場合もあります)
  • 役務提供契約(システムのメンテナンスやサポートなど成果物があいまいな場合にこの形態となります)

民法上派遣に分類されるもの

  • 労働者派遣法に基づく一般派遣契約
  • 労働者派遣法に基づく特定派遣契約

労働局の判断

労働局はいかなる場合も実態に基づいて、請負であるか派遣であるかを判断します。 明らかに契約書面と実態が異なる場合は、偽装請負です。偽装請負は、実態が派遣ですから労働者供給事業にあたります。これは厚生労働省により労働者供給事業を認可されていない場合に、職業安定法 第四十四条(労働者供給事業の禁止)に抵触し、同じく 第六十四条 の罰則規定に基づき一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処される可能性があります。

多重派遣とは

多重派遣は、その名の通り、主として派遣労働者が派遣先から別の企業に派遣されることをいいます。また、派遣元と派遣先の間に人材紹介業者が介在して紹介料などを搾取するケースも悪質な多重派遣の一つといえます。これらは職業安定法 第四十四条の三(改善命令)に抵触し、同じく 第六十五条 の罰則規定に基づき六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処される可能性があります。

多重派遣の悪質事例

日雇い派遣大手グッドウィルが、労働者派遣法で禁じられている港湾業務への二重派遣を繰り返していたとして、事業停止命令を受けた上で、2008年1月31日に警視庁保安課に家宅捜索を受けた。

その後、2008年6月24日には、グッドウィルの複数の幹部社員が職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)で、最大100万円の罰金刑が確定し、厚労省は、グッドウィルの労働者派遣事業者の許可を取り消すことを決めた。

特定派遣とは

中小零細企業で常用雇用(正社員や契約社員として雇用)されている労働者が、大手企業やユーザ企業に派遣されることを特定派遣事業といいます。特定派遣事業を行う事業者は労働者派遣法 第十六条 の規定に基づき、厚生労働省に届け出を行う必要があります。認可を受けた事業者は、労働者派遣法ならびに職業安定法の規定に従って特定派遣事業を行うことができます。多重派遣や禁じられている業務を行わせるなど職業安定法の規定に違反した場合は、同じく 第六十五条 の罰則規定に基づき六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処される可能性があります。

偽装請負か特定派遣かで労働者に何らメリットはない

現在、偽装請負状態にある労働者が、特定派遣契約に変更されても何ら実態が変わることはなく、待遇面で得られるメリットも全くありません。特定派遣事業者となった中小零細企業は、単なる人材派遣会社と化しオフィスにパソコンがないというもの珍しくありません。ちなみに偽装請負は契約上は請負ですので、元請け企業やユーザ企業からの直接指揮命令は違法ですが、特定派遣の場合それらが合法化されるということになります。零細企業に属す正社員でありながら実態は元請け企業やユーザ企業の管理者に直接指揮命令され管理されるという何とも切ない話です。