新たなる力


第一話

とあるゲームセンターにて。
ゾイドの箇体のまわりに人だかりが出来ている。稀に見る対戦ムードだ。
そのうち1つの席に、黒いジャケットの男が一人GOを駆り、連勝を重ねていた。

「あの黒いの、強いな〜」
「だな。今これ見てる人間のほとんどが挑んでるのに、全然勝てないもんなぁ」

ギャラリーは、男のCPU戦を研究する者が大半になってしまい、ついに挑戦者が一人
も来なくなってしまった。4台の内2台は依然対戦ムードであるにもかかわらず、だ。
男は尊敬と敵意とその他色々な視線を背中に受けつつ、溜息混じりにつぶやいた。

「・・・・つまらん」

PNをアグレスと名乗るその男は、すでに 地元では敵無しと恐れられ
より強い相手との対戦を渇望していた。
そして、 遠征先に希望を託し、この場所に来ていた。
しかし、この場所にもそれは無かった。

「まったく……。いつになったら現れるんだ。俺の渇きを満たす奴は」

椅子に浅く座り、いかにもダルそうにCPU戦をこなしていくアグレスは、
ついにUS戦まで進んでいた。

「さて、次は何処のゲーセンに行こうか…」

そうつぶやいた矢先、突如ブラックアウトする画面。
その中心に浮かぶ白い文字。