ふぇんりる氏 第十章:「黒旋風」


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Another story of ZI 第十章:「黒旋風」(1) 空路マトリクスドラゴンに牽引されてきた白いブレードライガーが、永久雪原 ストラスの外れに設営されたヘリック共和国軍の仮設駐屯地に到着すると、 建物から30歳絡みの男が駆け寄る。着地と同時に牽引ケーブルが外れ、 ブレードライガーは「伏せ」の体勢を取り、コクピットを地表に近づける。 コクピットから搭乗用の梯子と共に白い短衣に赤い乗馬ズボンをはいた女性が 降りる。年齢は10代後半か、まだ幼さが残る。 「アンジェリーナ様、ご無事で何よりです!!」  男が手を差し出し、アンジェリーナ=ワトソンの手を取ろうとした。 アンジェリーナは一瞥し、 「いらないわよ、ラング」  手を取らずに飛び降りる。だが、足元は解けた氷の水が溜まっており、 ものの見事に滑って尻餅をついた。 「きゃっ!!冷た〜い」 「アンジェリーナ様!大丈夫ですか?」 しょうがないと言う表情をし、ラング=ハーベイが再度手を差し伸べるが、 アンジェリーナは頬を膨らませ、手を払うと、そくさくと建物に向かった。 ラングはため息をつく。 「あの方はきまぐれです。御気になさらないように」  マトリクスドラゴンから降りてきたゴードン=ホールデンがラングを気の毒と ばかり、声をかける。 「ハ、ハハ・・・、気にはしていませんから・・・」  ラングは肩を落としつつ、死人の表情でアンジェリーナの後を追いかけた。

 風切り音がした。その音はブレイズ=ドレッセルの意識を引き戻す。 「!!こ、ここは!」  気が付くと氷の上に彼の機体―イクスver.XBが傷だらけの姿のまま倒れていた。 あのことは夢か幻覚だったのか、現実的な証拠のない彼には確かめようがなかった。 時計を見ると戦闘から丸1日が経っていた。意識がはっきりすると共に、空腹感が 襲ってきた。索敵レーダーを稼動させ、敵影がない事を確認し、体を固定している 5点式のベルトを外す。座席後部に備え付けのサバイバルキットから携行用の レーションを取り出し、口にほおばる。同時にサブモニターで兵装のチェックを 行い、ナビゲーションシステムを起動させ、現在位置の特定をさせる。 [小型スプレッドボマー残弾11発、エレクトロンドライバー使用不能、 カッターフェアリング使用不能、右スタンブレード使用不能、左スタンブレード ブレードアタックのみ可能]  更に使用不能武装の原因をモニターリングする。 [コンデンサー部分浸水、漏電の為、部品交換のみ修復可能。右スタンブレード 部品交換のみ修復可能。]  データを見て、ブレイズは舌打ちした。ビー、という機械音とともに ナビゲーションシステムが現在位置の特定を完了した事を知らせた。 現在位置は勢力下ではないものガイロス軍勢力地域の近くだった。 ほとんどの武装が使えない。まして修復は工場での部品交換が必要と言うことは、 ここからその状態で帰還しなくてはならない。ブレイズは十分に暖気運転が済んだ イクスver.XBを立ち上がらせ、移動を開始した。何も見当たらない氷原を ナビゲーションシステムを頼りに進む。しかし、間もなく索敵センサーが警報を 発する。見るとヘリック軍所属の大型ゾイドが3機こちらに向かってくるようだ。 「まずいな・・・」  ブレイズは戦闘の準備をし始めたが、嫌な汗が、首筋を伝わった。すぐに視界に ロングレンジバスターキャノン、4連ショックキャノン、8連ミサイルと2本の レーザー砲を装備したゴジュラス・ジ・オーガ2機が姿を現す。

Another story of ZI 第十章:「黒旋風」(2) 「何ですって!!テンルー少佐が勝手に飛び出したの!!まして実験機まで出す なんて!!あれは、まだ不安定だから調整が必要なのに・・・」  濡れた乗馬ズボンをタイトスカートに着替えた、アンジェリーナが烈火の如く 怒る。静々と、 「アンジェリーナ様・・・私が行きましょうか?」  ラングが逆鱗を更に逆なでしないように聞く。アンジェリーナは、きっ、と睨む。 しかし、冷静さを装って命じる。 「じゃあ、ラング、お願いね」  しかし、目は笑っていなかった。だが、ラングは、 「喜んで!!」  と、出て行く。彼を見てゴードンは同情のため息を付くのだったが、ラングは 気がついていなかった。

 2機のゴジュラス・ジ・オーガの更に後方から頭のかなり大型の恐竜型ゾイドが 現れる。背後にはロングレンジキャノン、脚部には8連ミサイルを、尾の付け根 にはウエポンバィンダーを付けている。ブレイズの記憶にない型なので、データを 照合する。すぐに画面に[GOJULAS GIGA]の表示が出た。しかし、スペックなどは [unknown]と出る。 「テスト機か、データがないのか・・・、どう戦う」  ブレイズが悩んでいると、前方のゴジュラスギガから外部音声にて呼びかけと 言うか、宣言が始まった。 『俺様はロブ=テンルー!「蒼いイクス」!!貴様は我が母国ヘリックに敵対する 仇敵ぞ!この場で始末してやる。正々堂々勝負しろ!!』  と、同時に3機がイクスver.XBに向かう。正々堂々、1対3でか、ブレイズは 毒つきながらも先頭を切って、こちらに向かってくるギガの足元に向けて 小型スプレッドボマーを撃ち込む。小爆発が動きを止めた。しかし、返礼は8連 ミサイルの雨だった。周囲を抉る爆風に四肢を踏ん張って耐える。そのうちにも、 ウエポンバィンダーや4連ショックキャノンなどを撒きつつ3機のゴジュラスは 近づいてくる。 『ふはは、どうだ、だが、まだこれからだ!!』 ロブが外部音声のまま、勝ち誇ったように喋っている。ブレイズは対抗策を 考えていた。今のままでは確実にやられる。それならば・・・。ブレイズは黄色と 黒の縞に囲まれた保護カバー付きのスイッチに手を伸ばす。左側で何かが光った。 先頭を来るギガのロングレンジキャノンの付け根をビームが貫通し、誘爆を引き 起こす。 『ぐわっ、何だ!!』 ギガは、火を噴くロングレンジキャノンを強制パージする。そのうちに黒い竜巻が 通過し、その軌道上の2機のゴジュラス・ジ・オーガを吹き飛ばした。黒い竜巻は ある程度の距離で一機の黒い獅子型のゾイドに姿を変えた。そして、右前足に装備 されているガトリング砲から細かいビーム弾を撃ち出し、倒れたゴジュラス・ジ・ オーガとギガに更なるダメージを与えた。ゴジュラス・ジ・オーガは耐え切れずに 爆発、四散した。 『き、き、貴様!!不意打ちとは、卑怯な!!』  ロブが喚く。黒いゾイドは、ギガに振り向くと、こちらも外部音声で答えた。 『満身創痍の1機に3機がかりとは卑怯じゃないのかね?そんな奴は気に 食わないな。このエクゼトが相手をしてやる』  エクゼトのゾイドは、イクスver.XBに向き、 『「蒼雷」生きていたか・・・。貴様の腕はまたの機会に見せてもらおう』 それだけいうと、再び、ギガの方に踏み出す。

Another story of ZI 第十章:「黒旋風」(3) 『エクゼトだと・・・、まさか「黒旋風」か!!あ、わわ、助けて!!』  ギガは背を向けて逃げ出す。ゼネバスの「銀騎士」こと、カジム=ハイターは 他国でも高名なゾイド乗りだが、最近、それ以上の実力と噂されるのが「黒旋風」 だった。皇帝直属の親衛隊に所属し、黒いゾイドを操ると言うことだったが・・・、 まさか、こいつか?機体データの照合をするが、「該当機無し」と表示される。 ブレイズは再度直視する。 『愚かな、戦士として背後を見せることは「死」を意味する!!このエナジー ライガーBW(ブラック・ウィンド)の餌食だ!!』  ダッシュをして少し加速すると、機体を回転させ加速して、黒い竜巻がギガを 巻き込み、地に叩き付けた。流石に各所から煙を撒きつつ地面に衝突した。 黒い竜巻が再びエナジーライガーBWの形態に戻る。だが、着地したエナジー ライガーBWに衝撃波のようなものが撃ち込まれた。少し離れた所に ゼロシュナイダー「白兎」が立っており、ブレードスラッシュを撃った体勢だった。 エナジーライガーBWは少しぐらついたが、踏ん張り、転倒を回避する。 『ほう、「白兎」か、よかろう!テストには十分な相手だ!!行くぞ!!』  エナジーライガーBWは咆哮を上げると、ゼロシュナイダー「白兎」に向かう。 ゼロシュナイダー「白兎」は2連ショックキャノンをダッシュの合間にステップし、 撃つ。だが、エナジーライガーBWはわずかにステップして回避すると、 エナジーバルカンでダッシュ中のゼロシュナイダー「白兎」を狙う。 ゼロシュナイダー「白兎」はステップでかわそうとしたが、続いて撃ち込まれた エナジーキャノンがヒットし、地面に叩きつけられる。更に接近し、転倒した ゼロシュナイダー「白兎」にエナジーライガーBWは角を叩き付けた。 ブレードの1本が宙に舞う。更に角を叩きつけるエナジーライガーBWを避け、 ゼロシュナイダー「白兎」は立ち上がりバックステップで距離を取る。エナジー ライガーBWはウイングを展開して追いかけ、発生したオーロラのエネルギー刃で 更にもう一本のブレードを叩き切る。再び、ゼロシュナイダー「白兎」は地面に 叩きつけられた。