臨床腫瘍 / H18


平成18年度 臨床腫瘍学 本試験

○ 実施日: 2006.11.1 13:00〜15:00

○ 試験時間: 120分

○ 不合格: ?人

○ コメント: 4割過去問通りかなという感じでした。名前の書かれた封筒に問題が入ってて、1人ずつ取りに行かにゃならんという、まれに見る厳しさ。授業を担当する先生が、それぞれ10点満点の問題を作ってます。合計120点満点。

【1】腫瘍の分子機序

1、次のうち、腫瘍の発生において普遍的に重要なものはどれか?

a,染色体の異常

b,感染

c,環境因子

d,遺伝

1.a 2.c,d 3.a,b,d 4.a,c,d 5.全てて

2,がん細胞に見られる以下の生物学的特徴のうち、腫瘍の発生初期から必要とされると考えられるものはどれか。

a.局所免疫の撹乱 b.薬剤感受性の変化 c.細胞周期制御の異常 d.細胞ー細胞/細胞ー間質相互作用の異常 1.a 2.c,d 3.a,b,d 4.a,c,d 5.全てて

【2】腫瘍病理

(5)乳癌の治療方針決定のために必要な免疫組織化学染色のマーカーの組み合わせはどれか?

1.Cytokeratin

2.CEA

3.HER2

4.エストロゲンレセプター

5.プロゲステロンレセプター

a.123 b.125 c.145 d.234 e.345

【3】腫瘍の放射線治療

1.次の(  )に適切な語句を記入せよ。

最近の放射線治療の進歩は著しい。(中略)ターゲットの決定においては、理学的所見、画像所見などを総合して(1)(2)、ITV、(3)[略語で可]などを決定する。ここで、(1)とは、画像や触診で確認できる腫瘍体積であり、(2)とは、(1)と顕微鏡的な進展範囲を含む標的体積、ITV・(4)とは、(2)と呼吸性移動や消化管ガスの影響などによる体内の動きによる誤差を考慮に入れた標的体積、(3)とはITVと毎日の治療における設定誤差(set up margin)を含めた標的体積である。

治療計画とは、これらのターゲットを治療計画装置に入力し、照射方向、放射線のエネルギーなどを決定し、表示された線量分布を評価して、最適な放射線照射法を決定する。この際、(4)[略語で可]はターゲットやその他の重要なリスク臓器の照射線量を各臓器別に線量と容積の関係を示したものであり、治療計画の評価に有用である。

 こうした治療を( 5 )放射線療法という。

2.最近の新しい放射線治療法について3つ挙げ、その特徴について簡単に述べよ。

【4】小児固形腫瘍

(1)1.抗癌剤の特徴的な副作用の組み合わせで正しいものを選べ。

(1)サイクロフォスファミド:出血性膀胱炎

(2)アドリアマイシン:心筋障害

(3)ビンクリスチン:聴力障害

(4)シスプラチン:末梢神経炎

a:1,2 b:1,3 c:1,4 d:2,3 e:2,4

<解答> a

<解説>

○シクロホスファミド:アルキル化薬のナイトロジェンマスタード系に分類される抗悪性腫瘍薬。1958年に開発。肝で活性化された後、癌細胞のDNA分子内のグアニンをアルキル化する。これによりDNA鎖が架橋され、その結果、DNA合成が停止し細胞は死滅すると考えられている。急性白血病、悪性リンパ腫、固型癌、肉腫などに幅広く用いられ、他の抗癌薬との併用も有効である。抗腫瘍作用のほか免疫抑制作用を有するとされている。ペントスタチン投与中、本剤過敏症既往歴には禁忌。主な副作用は、骨髄抑制、出血性膀胱炎、排尿障害、間質性肺炎、肺線維症、心筋障害、心不全、脱毛。

○アドリアマイシン:1967年イタリアのファルミタリア研究所で発見された抗腫瘍性抗生物質であって、腫瘍細胞のDNAと複合体を形成することによって、DNAポリメラーゼ反応、RNAポリメラーゼ反応を阻害し、DNA、RNAの双方の生合成を抑制することにより抗腫瘍効果を示す。1日量、塩酸ドキソルビシンとして10mg(0.2mg/kg)を1日1回4〜6日間静脈内ワンショット投与後,、7〜10日間休薬する。この方法を1クールとし、 2〜3クール繰り返す。そのほかの方法もある。副作用の心筋障害が現れることがあるので、心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌。総投与量が500mg/m2(体表面積)を超えると、重篤な心筋障害を起こすことが多い。そのほか骨髄抑制やショックなど。

○ビンクリスチン:植物性抗悪性腫瘍薬ビンカアルカロイドの1つ。紡錘体を形成する微小管の構成蛋白であるチューブリンと結合し、分裂中期で細胞分裂を阻止する。細胞周期のS期後期およびM期に作用する。RNAの合成抑制作用もある。白血病、悪性リンパ腫、小児腫瘍に有効。小児0.05〜0.1mg/kg、成人0.02〜0.05mg/kgを週1回静脈内投与。1回量2mgを超えない。髄腔内へは禁忌。主な副作用は神経麻痺、筋麻痺、骨髄機能抑制、痙攣、錯乱、昏睡、麻痺性イレウス、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、アナフィラキシー様症状、脱毛など。用量規制因子は神経症状。中等度の筋力低下発現時は消失するまで中止。

○シスプラチン:白金錯化合物であり、DNA鎖と結合して架橋を形成、DNA合成およびそれに引き続く細胞分裂を阻害して抗癌作用を発揮する。精巣腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頸部癌、非小細胞および小細胞肺癌、食道癌、子宮頸癌、神経芽細胞腫、胃癌、骨肉腫に適応される。催吐作用が強いので5HT3拮抗薬が併用される。また、腎障害を防ぐために、水分補給と利尿薬の投与が行われる。重篤な腎障害、本剤または他の白金製剤過敏症既往歴、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には禁忌。副作用は、重篤な腎障害、骨髄抑制、聴力障害、視覚障害、脳梗塞、うっ血性心不全、強い悪心嘔吐など。

出典:医学書院 医学大辞典 CD-ROM (C) 2003 IGAKU-SHOIN Tokyo

(3)神経芽腫について正しい組み合わせ(3つ正解がある)を選べ。

1.神経芽腫は脳に最も多く、副腎がそれに次ぐ。

2.神経芽腫は自然退縮することがある。

3.神経芽腫の4S期は遠隔転移が骨髄、皮下、肝に限られる。

4.神経芽腫のマススクリーニングは尿中VMA、尿中HVAを測定する。

5.神経芽腫のマススクリーニングは現在も行われている。

【7】婦人科腫瘍

(1)子宮頸癌に関して明らかな誤りはどれか

 a.年々増加傾向にある

 b.発生には性行動が関連する

 c.ヒトパピローマウイルス16と18型が発生に関与する

 d.異型性は子宮頚部移行帯から発生する

解答

 a.× 罹患率も死亡率も減少傾向

 b.○ 初交年齢の低下と多様化でHPV感染が増加

 c.○ 

 d.○

(2)子宮頸癌に関して明らかな誤りはどれか

 a.リンパ節転移をきたし易い

 b.傍子宮結合織浸潤が骨盤に達していたら進行期は2b期である

 c.根治的放射線療法には骨盤外照射と膣内照射が併用される

 d.3−4期には化学療法併用放射線療法が行われる

解答

 a.○ 所属リンパ節は骨盤リンパ節

 b.× 骨盤には達しない

 c.○

 d.○ 

【8】消化器腫瘍

(1)正しいものの組み合わせを選べ。

(a)2004年の統計で、男性の死亡率が最も高いのは胃癌である。

(b)増加しているとされる癌には肺癌、結腸癌、子宮癌がある。(←?)

(c)膵癌は女性より男性に多い。

(d)食道癌の好発年齢は胃癌のそれより高い。

acd ab bc dのみ 全部(←?)

(5)直腸癌について正しいものを選べ

 a)Ra領域とは第二仙骨下縁から腹膜反転部までの直腸である。

 b)初期症状として下血が最も多い。

 c)Ra領域の癌では直腸温存手術が可能なことが多い。

 d)Ra領域の癌では側方よりも上方向へのリンパ節郭清が重要である。

1.a,c,d  2.a,bのみ   3.b,cのみ  4.dのみ  5.a-dすべて

解答:5

 a.○ b.○ c.○(?) d.○  

【9】呼吸器腫瘍

4、悪性中皮腫はアスベスト曝露後約(   ) 年後に発症するので、我が国では罹患率のピークが2030年頃に来るとされる。 

選択肢a 0.5〜3 b 5〜10 c 15〜20 d 30〜40 e 50〜60

【11】泌尿器腫瘍

(4)前立腺癌について正しいものを選べ。

1.前立腺癌の直腸診所見としては硬い結節として触れることが多いが、進行した症例では全体的に板状硬として触れることもある。

2.前立腺癌の代表的なマーカーとしてPSAがあるが、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがある。

3.前立腺癌は男性ホルモン依存で、進行性前立腺癌では男性ホルモンを抑えるホルモン療法が効果的である。

4.前立腺癌に対する標準的外科治療としては経尿道的前立腺摘除術(TURーP)が挙げられる。

5.ホルモン再燃癌となった場合、シスプラチン中心の癌化学療法(MーVAC療法)が選択されることが多い。

A1、2、3  B1、3、4  C1、3、5  D2、3、4  E2、3、5