臨床腫瘍 / H17


[1]次の記述について正しいものに○、誤りに×をつけよ(14点) 編集 1.染色体による表現では遺伝子座は交差が起きる最小単位の領域にはさまれた部分であり、分子生物学的には遺伝子座は一塩基である。 2.3つの遺伝子座A,B,Cがこの順に並んでおり、A-B,B-C間の組み換え割合がθ1,θ2の時、A-C間の組み換え割合はθ1×θ2である。 3.単一遺伝病の原因遺伝子を同定するためには、まずパラメータの設定を要しないノンパラメトリック連鎖解析を実施し、候補染色体領域を得る。 4.遺伝マーカーとして一塩基多型(SNP)を利用することがあるが、マイクロサテライトマーカーに比べて変異率が高いため、連鎖解析には用いない。 5.多因子疾患の連鎖解析には罹患同胞解析が行われることが多い。 6.相関解析では健康人集団と患者集団において対立する遺伝子頻度や遺伝子頻度の差を検定し、連鎖解析と比べて遺伝子的相対危険度の低い遺伝要因を同定することができる。 7.相関解析の結果、ある遺伝マーカーにおいて有意差を認めた場合、その遺伝マーカー多型が病気の原因であることが多い。

解答 1. 2.× 3. 4.× 5. 6.○ 7.×

1. 2.×A-C間の組み換え割合はθ1+θ2。 3. 4.×SNPのほうがマイクロサテライト多型よりも変異率が低い。 5. 6.○ 7.×遺伝マーカーのすぐ周辺にあると考えるべき。連鎖しているために遺伝マーカーにおいて有意差が認められる。 [2]正しいものを7つ選べ。(14点) 編集 1.常染色体優性遺伝病では発端者の同胞が罹患する確率は50%である。 2.常染色体劣性遺伝病では発端者の同胞が罹患する確率は50%である。 3.機能喪失変異は、常染色体優性遺伝病よりも常染色体劣性遺伝病で見られる。 4.サラセミアはグロビン合成の質的異常に基づく遺伝性貧血症である。 5.サラセミアは地中海、アフリカ、中東、インド、中国、東南アジアなどに高頻度に見られるがこれはマラリアに対する抵抗性に関係がある。 6.βサラセミアの症状は正球性低色素性貧血であり、重症例では肝脾腫を伴う。 7.βサラセミアではHbA及びHbA2の低下が見られる。 8.Hb H病では倍数体あたりの正常なαグロビン遺伝子数は2個である。 9.αサラセミアで最も重篤な病型は胎児水腫であり、胎児は死亡する。 10.αサラセミアを合併したβサラセミアはβサラセミアだけに比べ軽症にとどまるが、これはα/β鎖の産生比がある程度是正されたためと考えられる。 11.αサラセミアの多くは点変異により起こる。 12.βサラセミアの多くは欠失により起こる。 13.プロモーター領域の点変異をホモで持つ場合、βサラセミアメジャーをきたす。 14.βサラセミア遺伝子のIVS−1,110位のG→A置換ではスプライシング異常をきたすが、これは受容部位に変異が…云々。 15.βサラセミア遺伝子のIVS−1,110位のG→A置換ではスプライシング異常をきたすが、稀に正常なスプライシングが行われることがある。 16.イントロン内の変異でナンセンス変異を来たすことがある。 17.フレームシフト変異は2の倍数以外の数の塩基の挿入・欠失で起きる。 18.3'非翻訳領域の点変異によりpoly(A)の付加に異常を来たすことがある。 19.3'非翻訳領域の点変異によりスプライシングに異常を来たすことがある。 20.βサラセミアの治療は主に輸血やキレート剤の投与であり遺伝子治療が行われることもある。

解答 1,3,5,9,10,14,15,18(8個になっちゃった) 1.○ 2.×50%→25% 3.○優性遺伝病で多いのは優性阻害変異。劣性遺伝病で多いのは機能喪失変異。 4.×サラセミアはグロビン合成の量的異常。 5.○ 6.×正球性ではなく小球性低色素性貧血。 7.×βサラセミアではHbAは減少、HbA2,HbFは増加。 8.×Hb Hは1個。2個はαサラセミアトレイト。 9.○ 10.○ 11.×αサラセミアは欠失が多い。 12.×βサラセミアは点変異が多い。 13.×プロモーター領域の変異は合成低下をおこし、ホモではβサラセミアインターメディア。 14.○受容部位が本来よりも上流になり、翻訳領域が長くなる。 15.○ほとんどが異常なβ鎖だが、わずかに正常なスプライシングがおきる。 16.×ナンセンス変異はエクソン内の塩基の変異でおこる。 17.×フレームシフト変異は3の倍数以外の数の塩基の挿入・欠失でおこる。 18.○ 19.×3'非翻訳領域の点変異で知られているのはpoly(A)の付加の異常か、mRNAの安定性の変異。 20.×(?)遺伝子治療はあるのかな? [3] 編集 問2.造血幹細胞を標的おした遺伝子治療について正しいものを2つ選べ。 1)遺伝子導入はexvivo法で行われる。 2)ヒトの多能性造血幹細胞の大部分は細胞周期上のGI期にある。 3)Graft Versus Host Disease(GVHD)のリスクが少ない 4)造血幹細胞への遺伝子導入効率が高いことが不可欠である。 5)体内で増殖する能力を持つウイルスベクターが用いられる。

[4] 編集 (2)(B) 1)ターナー症候群の代表的な核型は45Xである 2)ターナー症候群の症状の一つは低身長である 3)クラインフェルター症候群の代表的な核型は47XXYである 4)クラインフェルター症候群の症状の一つは男性不妊である a)1,3,4のみ b)1,2のみ c)2,3のみ d)4のみ e)1-4すべて 答え:e

[6]以下の遺伝子治療に関連した問いに対して答えなさい。 編集 1)以下の中で正しいものを(1)から(5)より選択せよ。 a)臨床研究を行う場合に遵守すべき重要なことはヘルシンキ宣言である b)臨床研究の第2相研究とは安全性のみを検討する研究である c)遺伝子治療は多くがまだ臨床研究の段階であるが、中国では実際の薬剤になっている d)遺伝子治療のベクターの安全性はまだ十分には明らかになっていない e)遺伝子治療臨床研究の対象患者は癌患者だけである (1)abc (2)abd (3)bce (4)acd (5)abcd

解答 4)

a)○そのとおり b)×第1相研究が安全性のみ。第2相研究は安全性と有効性を検討する。 c)○選択枝的に正しい d)○染色体DNAにランダムに組み込まれるので白血病をおこしている。 e)×癌患者だけでなく、SCID-X1、ADA欠損症、慢性肉芽腫症、白血球接着異常症でも行われた。 [7]遺伝子多型Polymorphismとは何か、そしてその生体における意義は何かについて述べよ。(14点)  ※この大問で解答用紙1枚。 編集 解答 一般集団中で対立遺伝子の頻度が1%をこえるものを遺伝子多型という。 プリントには、遺伝子多型がもたらすものとして、 ・外見の違い ・疾患への感受性の違い ・薬剤に対する反応性の違い が挙げてあります。あとはテーラーメイド・ドラッグなど、医療の個別化について適当に書けばよろしいかと。

最終更新時間:2006年02月02日 16時08分31秒 アクセス数: 73701