法医学 / 過去問


法医学H17 本試 従来は記述式でしたが、今年からは国試形式にするとのことでした。今年で最後かもしれないそうです。 指定の教科書は持込可。隣を見るのは構わないが、それが正解とは限らない。 1 問2.5 点が30 問、出席点が25 点。 問題は持ち帰り可。解答と正答率は後日掲示されたもの。不合格者13 人。 1、異状死体に該当しないのはどれか a 肺癌で入院中の患者が病院の屋上から飛び降り自殺した b 午前中風邪で外来診療した患者が同日夜自宅で死亡した c 血管造影検査直後に患者が容体急変して死亡した d 最終診療から数時間後に患者が加療中の心疾患で在宅死した e 救急搬送された心肺停止状態の患者がそのまま死亡確認された 解答 d 2、医師が交付する証明書について正しい組合せはどれか a 診療中の患者が診ていた疾患で在宅死・・・・・・死体検案書 b 救急受診した患者が1時間後に心筋梗塞で死亡・・死亡診断書 c 屋外で発見された嬰児死体を検案・・・・・・・・死産証書 d 死産児の娩出に立ち会った・・・・・・・・・・・死胎検案書 e 警察からの依頼で異状死体を検案・・・・・・・・死亡診断書 解答 b ・a. ×最後の診察から24 時間以内なら死亡診断書 ・b. ○ ・c. ×死んだ状態で産まれたのか、生きたまま産まれてその後死んだのか分からないので、死胎検案書 ・d. ×死産証書 ・e. ×死体検案書 3、挫裂創が最も生じやすい部位はどこか a 頭部 b 胸部 c 腹部 d 上腕部 e 大腿部 解答 a 4、ピンク歯について誤っているのはどれか a 着色は血色素に関係している b 死因とはほとんど無関係である c 水中死体にみられやすい d 骨にも同様の着色が生じうる e 土中死体では生じない 解答 e 5、乳幼児の死因の判断について正しいのはどれか a 解剖しなくても乳幼児突然死症候群と診断できる b 剖検死因として「不詳」は不適切である c 頭皮に損傷のない外傷性頭蓋内血腫がある d 気道内に少しでも乳汁があれば窒息死と判断する e 剖検所見のみで死因を診断すべきである 解答 c 6、胎嬰児死体について正しいのはどれか a 殺人罪は娩出後の生産児に対してのみ適用される 1 b 肺浮遊試験が陰性であれば死産児と判断してよい c 浸軟の原因は腐敗である d 生産児の臍帯は血色素浸潤で赤色調を帯びる e 分娩開始前に死亡した胎児には産瘤がみられない 解答 e ・産瘤は胎児が産道をとおるときにできる。 7、lCD-10 の分類による性嗜好の障害でないのはどれか a フェティシズム b 窃視症 c 小児性愛 d マゾヒズム e 性転換症 解答 e 8、白骨死体を検案するときにまず行うべきことはどれか a 男女別・身長・年齢・死後経過時間の推定 b 骨検査を行い重複の有無を確認 c 血液型判定用・中毒検査用試料採取 d 肋骨骨折部と頭蓋骨骨折部の精査 e 歯牙の治療痕とピンク歯の精査 解答 b ( 正答率18%) ・1 人からの骨とわからなければ、検体によって性別・身長なども、血液型なども異なることになるし、精査の意味もなくなる。 9、交通外傷について正しいのはどれか a バンパーによる打撲損傷としてMesserer 骨折がある b 後方からの衝突による下腿骨骨折は時速100km 以上の速度が必要である c デコルマンがあればその部が轢過されたと考えてよい d タイヤ痕は礫過損傷に必ず見られる e 自動車事故被害者で外表損傷と内部損傷の軽重は通常ほぼ一致している 解答 a ・c. × d. ×礫過とは車がタイヤで踏むことなく、上を通り過ぎていくことである。 ・e. ×宙吊りの内臓が車とあたった衝撃やその後地面や物にぶつかっておこる衝撃によって損傷を受けるので一致しない。逆に引 きずられるぐらいなら内部損傷が軽いこともありえる。 10、切創について誤っているのはどれか a 創口の長さに比べて創洞が浅いことが多い b 弁状や面状の創を形成することがある c 創端は両側とも尖っている d 成傷器の推定は比較的容易である e 逡巡創のみで死因となることは少ない 解答 d 11、ライフル銃における射創についての記述で誤っているのはどれか a 頭蓋骨の射出口は内板側が外板側より小さい b 射入口の形状は射入角度によって異なる c 射出口は挫滅輪を伴う d 遠射では射入口は弾丸の直径よりも小さい e 射創管は必ずしも直線状とはならない 解答 c 12、ヘビースモーカーに一般的に認められる血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度について正しいのはどれ 2 か a 1% 未満 b 1 〜 5% c 5 〜 10% d 10 〜 15% e 15 〜 20% 解答 c ( 正答率33%) 13、3ヵ月, 男児.6500g. アパートで22 歳の父親,19 歳の母親と3 人暮らし. 午前2 時頃, ミルク180ml を飲んで寝たという. 朝7 時に母親が起きると, 布団の中でおかしくなっていたという. 救急隊到着時は 心肺停止状態であり, 蘇生しなかった. 母子手帳の記載事項に特に問題はない. 母親の話では特に風邪気味ではなかったという. 頸 部に特に異状を認めず, その他の部位にも特に損傷を認めない. 顔面には うっ血・皮膚点状出血はなく, 眼瞼・眼球結膜に溢血点はない. 外表所見からみて正しいのはどれか. a 鼻口部圧迫による窒息は否定できる b 虐待は否定できる c 感染症は否定できる d 絞頸は否定できる e SIDS と診断できる 解答 d ・a. ×顔面に跡が残りにくいのが特徴。 ・b. ×母親が虐待していれば母親は嘘をつくので、母親の話はあてにならない。 ・c. ×診察も受けてないのに感染症を否定するのはいささか早すぎるのでは。 ・d. ○絞頸では椎骨動脈がしまらず、顔面にうっ血・皮膚点状出血や眼瞼・眼球結膜に溢血点が生じるのでこの例では否定できる。 ・e. ×解剖もしないで決められない。 14、強姦罪が成立するのはどれか a 口腔内への陰茎挿入と射精 b 乳房への陰茎接触 C 膣内への手指の挿入 d 膣内への射精を伴わない陰茎の挿入 e 肛門への陰茎挿入と射精 解答 d ・射精の有無を問わず、膣内に陰茎を挿入しただけで強姦罪は成立する。(陰茎が性器に触れただけで強姦罪は成立したよう な・・・) 15、鮮紅色あるいは紅色死斑がPDFJ::Text=HASH(0x17267c0) のはどれか a 失火による家屋火災での死亡 b 塩酸中毒 c 凍死 d 車両内で練炭を用いた死亡 e 冷蔵保存された死体 解答 b ・a. × d. × COHb により、鮮紅色死斑 ・c. × e. ×寒いとHbO2 の解離が悪いので紅色死斑 16、異状死体はどれか (1) 癌末期で入院中にベット上で縊頸した (2) 肝硬変で入院中にトイレで吐血し窒息した (3) 前日に上気道炎と診断した乳幼児が救急搬送されたてきたが蘇生しなかった (4)CPAOA 患者をCT 検査した結果, 病的くも膜下出血であった (5) 喘息発作により窒息死した a(1),(2) b(1),(3) c(2),(3) d(1),(4) 3 e(2),(5) 解答 b ・(1) ○診療中ではあるが、その病気とは直接関係がないことで死亡しているので異状死体である。 ・(2) ×肝硬変による胃・食道静脈瘤破裂と考えられるので、異状死体ではない。 ・(3) ○診療中といっても上気道炎および関連疾患で死ぬことは考えにくいので異状死体である。 ・(4) × ・(5) ×喘息発作で呼吸困難におちいり、しまいには窒息死することはありえるので異状死体ではない。 17、自動車同士の正面衝突で生じる損傷で, 運転していたことの参考となるのはどれか a 心臓の挫滅, 肋骨・胸骨の骨折を伴う胸部の打撲傷 b 頭蓋骨骨折とくも膜下出血を伴う前頭部の打撲傷 c 前面ガラスの破片による顔と手の切創 d 左右の膝蓋部の擦過打撲傷 e 骨盤骨折 解答 a ・ハンドル外傷は運転手にしかおきない。 18、鋭器損傷の性状として正しいのはどれか a 創縁には表皮剥脱を伴わない b 創洞に架橋状組織がない c 両創角( 創端) ともに鋭となる d 創口の形状より成傷器の推定が容易である e 刺入口と刺出口の鑑別は容易である 解答 b ( 正答率35%) 19、正しいのはどれか a 縊頸は絞頸・扼頸に比べて溢血点の発現頻度が高い b 胸郭圧迫による窒息では多数の溢血点が見られることが多い c 酸素欠乏による窒息では死毅が鮮紅色を呈することが多い d 顔面に損傷がなければ鼻口部閉塞による窒息は否定できる e 喉頭部に多量の食物残渣があれば窒息死と確定診断できる 解答 b ・a. ×縊頸は基本的に椎骨動脈がしまるので溢血点は出ない。 ・b. ○循環は保たれているので溢血点が生じる。 ・c. ×酸素がないとHbO2 は減るので赤くならない。 ・d. ×顔面の損傷を必要としないのが鼻口部閉塞による窒息の特徴。 ・e. ×死因の候補にあげることはできても確定はできない。 20、縊死について正しいのはどれか.2 つ選べ a 縊死では死因の種類が<6 窒息> となることはない b 腎部が接地している場合は縊死とは考えにくい c 非定型的縊死はまれである d 一般に定型的縊死では顔面が蒼白である e 本邦での自殺手段として最も多い 解答 d,e 21、絞死について正しいのはどれか a 顔面が蒼白であることはほとんどない b 革皮様化した索溝が必ず認められる c すべて他殺である d 死斑は強く発現しないことが多い e 手で絞められた場合も絞死という 解答 a 4 ・a. ○椎骨動脈がしまらないので顔面はうっ血する。 ・b. ×必ずではない。 ・c. ×すべて他殺なのは扼死。 ・d. ×そんな理由はない。 ・e. ×索状物でしめられるのが絞死の条件。手では扼死。 22、トライエージでスクリーニングができないのはどれか a ベンゾジアゼピン誘導体 b バルビツール酸誘導体 c フェノチアジン誘導体 d メタンフェタミン e アヘンアルカロイド 解答 c ( 正答率30%) 23、焼死体の生活反応( 生前火災遭遇) として正しいのはどれか a 炭化した四肢の骨折 b 頭蓋内の燃焼血腫 c 高度火傷皮膚面の亀裂 d 食道・胃内の煤の存在 e 炭化皮膚と健常皮膚との境界の帯状変色部 解答 d ・食道・胃内の煤の存在は火災時に呼吸があったことの証拠。 24、フェティシズムとはPDFJ::Text=HASH(0x18f6f90) 対象物はどれか a パンティー b バイブレーター c ストッキング d ブラジャー e ブーツ 解答 b 25,75 歳の男性. 午前3 時, 病棟ベッドの柵に寝間着の紐をかけ縊頚しているのを発見された. 直ちに紐を外し, 当直医が呼ばれたが, 既に死後硬直が発現し, 死亡確認にとどまった. なおこの医師は前日の午後3 時に同人を回 診しているが, 死にたいような言動があったという. 同人には身寄りはなく, 同人からは, 万が一の時には福祉の世話になりたい, と言われていた. この医師の対応で正しいのはどれか a 死亡診断書を発行した b 病理解剖の手続きをした c 死因を心不全とした d 事件性がないので警察には届けなかった e 検案を行った 解答 e ・診療中の疾患およびその関連疾患で死亡したのではないので、異状死体であり、24 時間以内に警察に届け出る義務があり、病理 解剖よりもさきに検案すべきである。 26、異状死届け出に関する主治医の判断で最もPDFJ::Text=HASH(0x19697b0) のはどれか a 遺族が表沙汰になることを拒んだが, 過誤による死亡の可能性があるため届け出た b 明らかな過誤による死亡であったが, 憲法に自己に不利益な供述は強要されないと調われていることから届け出なかった c 診療上特に過誤はなかったが, 治療直後の予期せぬ原因不明の急死であったため届け出た d 救急搬送患者が死亡したが, 食道静脈瘤破裂による失血死と診断できたため届け出なかった e 救急搬送患者がCPA のまま死亡し, 既往歴から虚血性心疾患が考えられたが, 死因が特定できなかったことから届け出た 解答 b ・異状死体が出たら24 時間以内に管轄の警察署に届け出る義務がある。 5 27、窒息の死体所見について正しいものを選べ. a 窒息により死亡した場合、肺は虚脱して小さくなっているのが普通である b 解剖時、気道内に食物塊を見い出した場合、直接死因は窒息となる c 口腔粘膜に溢血点はみられない d 心内血液は流動性である場合が多い e 失禁は必ずみられる所見である 解答 d ・死亡直前に線溶系が活性化されるので、心内血液は流動性である場合が多い。 28、窒息死の場合に、溢血点が出現しやすい臓器はどれか a 肝臓 b 膵臓 c 大脳 d 脾臓 e 心臓 解答 e 29、定型的縊頸の必要条件として正しいのはどれか a 開放係蹄である b 硬性索条が使用されている c 支点は後頸部正中線上である d 体の一部が接地している e 結膜に多数の溢血点が発現している 解答 c ・a. ×椎骨動脈がしまらない。 ・b. ×椎骨動脈は近くに骨にあるのでやわらかくないときちんとフィットしてしまらない。 ・c. ○両側の椎骨動脈、頸動脈がしまるには必要。 ・d. ×体の一部が接地していると絞頸となる。 ・e. ×椎骨動脈もしまっているので溢血点は出ない。 30、酸素欠乏による死亡について正しいのはどれか a 不慮の事故では死因の種類は<8 その他> である b 眼瞼結膜が蒼白である c ビニール袋をかぶって死亡すると袋内面に水滴が生じる d 死後早期より体温降下が顕著である e 空気中酸素濃度が15% 以下になると短時間内に死亡する 解答 c ・b. ×絞殺・扼殺のときは溢血点が出る。 ・c. ○呼気に含まれる水蒸気が結露する。 ・d. ×死亡直前に体温は上昇するので死後の体温降下は遅い。 6