・虚血 局所に流入する動脈血が減少した状態 組織は血液量減少の為蒼白に 動脈が狭窄・閉塞時に生じる 器質的‐動脈粥状硬化症や血栓・塞栓による 機能的‐動脈攣縮など 虚血が生じると組織は低酸素状態となり、細胞が傷害される 強い虚血状態が続くと細胞が壊死し、長期に軽度の虚血が生じると組織の萎縮や繊維化が起こる
・充血 局所に流入する動脈血が増加している状態 細動脈が機能的に広がることにより生じる 運動時に筋肉内に流入量が多くなったり、温度上昇や炎症反応の際などに生じる
・うっ血 局所からの静脈還流低下することにより血液が貯留する 暗赤色を呈する(チアノーゼ) うっ血が生じると毛細血管圧が上昇するため浮腫が生じる 1)静脈の狭窄・閉塞 静脈が血栓により狭窄・閉塞することがある。下肢の深部静脈閉塞による下肢うっ血が生じる。 2)うっ血性心不全 心不全により静脈還流量低下 左心不全‐血流が戻りにくくなるため肺にうっ血 急性肺うっ血 肺胞中隔の毛細血管が拡張し、血液が充満する また液成分が肺胞内に貯留する 慢性肺うっ血 毛細血管拡張、中隔に膠原線維が増加する 肺胞内にヘモジリデン顆粒を持つマクロファージが見られる 肺は線維化のため硬化、ヘモグロビンが変性したヘモジリデン沈着のため褐色を呈し、褐色硬化と呼ばれる 右心不全‐体循環にうっ血 肺以外の全身にうっ血が生じ、浮腫となる 肝臓では類洞拡張、血液が停滞するため酸素不足となる。これにより肝細胞の脂肪化が起こり、ナツメグ様のニクズク肝となる ・側副循環 門脈圧亢進症では門脈域の血液が門脈を裂けて大静脈方向に流入し、このバイパス経路を側副循環という。大量の血液が流入するため静脈は拡張し静脈瘤を形成する。 食道静脈瘤‐粘膜下に存在し、しばしば破裂して大出血を起こす 肝硬変時の死因のひとつである 腹壁‐メズサの頭と呼ばれる静脈瘤が現れる
・出血 赤血球を含む血液の全成分が血管外に出ることを出血という。 組織の外に出ることもあるが、組織内にとどまることもある。これを血腫という(青痣など)。 出血の分類として破綻性出血、漏出性出血に分けられる。 破綻性‐血管壁の損傷による 外傷のほか潰瘍性や血管壁の炎症により起こる 漏出性‐毛細血管レベルで内皮細胞間の結合が緩み、細胞間を通って血液が血管外に出るもの
出血が起こると血管が収縮し、血小板凝集の後血液凝固により止血が起こる。 また、弱い力でも出血を起こしやすい状況を出血傾向という。 これは血小板異常や凝固因子異常、血管壁の脆弱性による。
・血栓症 生体内での血液凝固が進行して血管が閉塞し、うっ血や虚血状態になったもの 血栓が形成される原因としてウィルヒョウ3原則が知られている。 1)内皮細胞の障害 内皮細胞が傷害され内皮下の細胞外基質が露出すると露出部位に血小板が凝集する。 2)血流の変化 血流が緩徐・停滞により、また渦流により凝固しやすくなる 血流の遅い静脈では動脈よりも血栓ができやすい。 下肢では深部静脈の還流に筋の収縮進展が関係しているため、長時間の臥床状態では血栓が形成されやすい 3)血液凝固性の亢進 抗凝固因子と凝固因子とのバランスが崩れ、血栓ができやすくなる。 悪性腫瘍の全身転移や遺伝子の突然変化などによる。
血栓が小さいと融解して焼消失するが、ある程度大きいと器質化する。 血管壁に付着した部分から肉芽組織が進入し血栓全体が肉芽組織で置換される。これは毛細血管の形成により再びもとの血管と交通する(再疎通)ようになる。
血栓は白色血栓・赤色血栓に分けられる。 赤色血栓‐フィブリン網と赤血球を含めた血球全成分とからなる。短い期間で作られたり、血流の緩やかな静脈で作られたりした場合。 白色血栓‐赤血球を取り込まず血小板とフィブリン網からなる。 また、白色と赤色が交互に入り混じった混合血栓が血栓の成長時に見られる。
・栓塞症 血管内を遊離物(主に血栓)が流れ、それよりも細い径の血管を閉塞した場合を栓塞という。 血栓性栓塞症:太い動脈や心臓内でできた血栓が遊離して末梢の細い動脈を閉塞する。左心房にできた血栓からの脳梗塞や下半身深部静脈でできた血栓による肺血栓性栓塞症など。 脂肪栓塞症:静脈に脂肪が流入、肺の細動脈や毛細血管を閉塞 空気・ガス栓塞症:胸部外傷による肺空気栓塞や減圧症による酸素・二酸化炭素ガスによる栓塞 羊水栓塞症:分娩時 腫瘍栓塞症:小血管にがん細胞からなる栓塞を形成。癌転移のしての意義。
・梗塞 終動脈の閉塞により、その支配域全体が虚血性の壊死に陥ること 梗塞の形態は動脈の支配領域を示す。 貧血性梗塞:通常の梗塞では虚血により梗塞部は蒼白な貧血性となる。 梗塞部と正常部境界部には周囲から血液が流れ込み、逆に赤く充血し境界明瞭となる。 脳以外の梗塞では凝固壊死が、脳での梗塞は融解壊死である。 再生能力の高い部位の梗塞では後に肉芽組織に置き換わるが、低い部位では瘢痕組織となる。 出血性梗塞:血管の二重支配がある部位で特殊な状況下で梗塞が起こると暗赤色の出血性となる出血性梗塞を形成する。 敗血症性梗塞:感染性心内膜炎の時には弁に細菌を含んだ血栓が形成され、全身に感染生の血栓性栓塞ができる。 4.炎症の成り立ちと転帰について
炎症・・・何らかの刺激、侵襲に対し生体が示す局所的な反応 外因 熱、冷却、外傷、紫外線、放射能 強酸、強アルカリ、蛇毒 細胞、ウィルス、寄生虫 内因 免疫複合体によるアレルギー性炎症 代謝異常 主役は白血球、組織急、肥満細胞‐炎症細胞と呼ばれる 好中球は急性期に、単核球は慢性相に
1組織の変性・壊死(退行性変化) 2循環障害と滲出機転 3組織増殖
1さまざまな原因により組織が傷害されると、それが放出するセロニンやヒスタミンなどの化学物質が炎症の引き金となる。 2通常では微小循環が閉じており主要経路のみが働くが、炎症では細動脈拡張により充血状態となる。 血漿成分は血管外に出て(滲出)浮腫状となる。他、タンパク質や多核白血球など多数の浮遊細胞がみられる。 フィブリノーゲンが析出してフィブリンが析出することもある 炎症刺激から30分まで・・・ヒスタミン関与:弱い反応 30分後‐2〜5時間がピーク‐8時間後・・・バゾエキシン関与:強い反応 血漿淡白は細胞間隙を通る。化学物質により内皮細胞が収縮し、接合部が開き血管外へ
白血球・・・層状血流の中心部を流れるが炎症時は辺縁部を流れる。 内皮を転がり、接着し、偽足を使って基底膜を通過、原因組織に集合する。 またマクロファージにより処理し切れなかったものを処理する。 後期ではリンパ球と形質細胞が主となる。 3除去 化学物質に対する制御因子によりフィードバック、炎症の収束 組織の増殖により損傷が修復される。 肉芽組織、線維芽細胞の働きによる。 組織の修復が進むに連れ白血球、毛細血管が減少し繊維化する。