病理3


病理2

1.腺種と腺癌の病理学的鑑別、特に胃を例にとり欧米と日本との見方の違いを述べよ。(7点) 腺腫は腺上皮由来の良性腫瘍のことで、粘膜表面はポリープ状に増殖した異型腺管で覆われる。上皮を構成する細胞は異型性が低く、その配列および極性は比較的保たれ、核は基底膜側に位置した状態で増殖する(膨張性増殖)。一方腺癌は腺上皮由来の悪性腫瘍で、腺管構造を保つもの(高分化腺癌)から腺管構造がみられないもの(低分化腺癌)まであるが、細胞の異型性は強く核の形状は不整で、細胞の配列は乱れ、基底膜を破壊して増殖している(浸潤性増殖)像がみられる。後半は分かりません。

2.次の事項について略述せよ。(各4点) 1)ヤ一ヌス 二重体(重複奇形)のうち2個体が頭部および胸部で癒合したものを頭胸結合体というが、なかでも顔が前面と後面の両方にある二対称性頭胸結合体をヤーヌス体という。ローマ神話に登場する頭の前後に顔を持った守護神の名に由来する。

2)Pericryptal fibroblast 大腸粘膜上皮の基底膜下に沿って存在する紡錘形の細胞をいう。Adenoma由来の癌にはPCFが多く存在し、do novo carcinomaにはPCFが少ないというデータから癌の発生由来が特定できると考えられている。

3)癌抑制遺伝子 癌形質の発現を抑える働きをする遺伝子を癌抑制遺伝子という。RB遺伝子やp53遺伝子などが知られており、それらの遺伝子産物は細胞周期や転写などの制御に関わるタンパク質で、これらの失活が細胞増殖のブレーキに異常をきたし、発癌へのステップを進ませると考えられている。

4)腹膜播種 体腔表層に達した癌が直接腔内に散らばり、新しい癌巣を形成する転移の様式を播種といい、特に腹腔に転移するものを腹膜播種という。例えば胃癌からの播種により卵巣に転移するKrukenberg腫瘍がある。

5)腫瘍における宿主反応 腫瘍免疫の機構は病原体などの外来抗原に対する免疫機構と同じように機能すると考えられている。すなわち癌細胞が発する癌抗原に対し体液性免疫、細胞性免疫が機能する。しかしながら癌細胞はこうした免疫監視機構から免れる機構を有しており、必ずしも癌細胞が排除されるとは限らない。組織学的にみた腫瘍に対する間質反応にはリンパ球浸潤を特徴とする滲出性間質反応と、結合組織とくに線維芽細胞の増殖を特徴とする増殖性間質反応がある。 また所属リンパ節においても宿主反応が起こり、洞組織球症、濾胞性過形成など様々な症状を示す。

6)消化管アミロイドーシス アミロイドタンパクが血管、組織の細胞間隙に沈着した状態をアミロイドーシスという。消化管では十二指腸で好発し、AAタンパクが粘膜固有層の血管周囲に沈着すると吸収障害を起こす。また固有筋層にALタンパクが沈着すると運動障害により便秘症状をみる。

7)消耗性萎縮 悪性腫瘍や慢性疾患あるいは飢餓状態で栄養吸収が低下することにより生ずる全身性の萎縮。まず脂肪組織、骨格筋が萎縮し、引き続き心・肝・脾が萎縮していく。脳や骨に萎縮はみられない。