腸管出血性大腸菌


各論

5.腸管出血性大腸菌について 戸田新p552 1) 腸管上皮細胞への定着方式を説明せよ

attaching and effacing lesion を形成して定着する。まず、束形成線毛によるゆるい接着をしたのち、type3 secretion systemによりエフェクター分子を送り込み上皮の微繊毛を消失させ、台座を形成して、菌体表面に発現するintiminにより強い接着を起こす。(戸田新p550)

2) ベロ毒素の細胞レベルでのメカニズムを説明せよ (戸田新にはあまり載っていませんね)

ベロ毒素は志賀赤痢菌の産生する毒素とほぼ同一もしくは類似している。毒素の略称もVTおよびStxがある。(以下Stxを使用する。) StxにはStx 1 (VT 1)及びStx 2 (VT 2)の2種がある。Stx 1は志賀毒素とほぼ同一であるが、Stx 2はかなり異なっており、共通抗原性はほぼない。ただし、両方の毒素の蛋白立体構造・作用機序はほとんど同じである。Stxの毒素本体(ホロ毒素)は1個のAサブユニットと5個のBサブユニットから構成されており、Aが毒性を、Bが細胞付着機能を持つ。 Stxの作用機序は蛋白合成阻害作用である。まず、Bサブユニットが細胞表面のスフィンゴ糖脂質であるGb3 (globotriaosylceramide) に結合し、毒素全体が細胞内に取り込まれる。その後、種々の過程を経て、Aサブユニットが遊離し、リボソームに結合し、RNA N-グルコシダーゼ活性により28S リボソームRNAの特定のアデニンを加水分解し、遊離させる。これによりアミノアシル tRNAがリボソームに結合できなくなり、蛋白合成が阻害されて細胞は死に至る。

3) 臨床症状

一定の潜伏期の後、下痢、吐き気、嘔吐、 腹痛などの症状で始まる。(悪寒、発熱さらに上気道感染症状を伴うなどの症状で始まることもある。)やがて鮮血様の血便が出て、少し遅れて溶血性尿毒症症候群 (HUS)や血栓性血小板減少性紫斑病、さらに痙攣や意識障害など、脳症を呈する例も、死に至ることもある。

ほとんどの牛牧場に存在すると言われている。先進国では特に多い菌である。牛肉や便で汚染された野菜などを経口接取することによって感染する。疑いのある食物は食べないようにすることが感染予防に役立つ。

(2) 腸管出血性大腸菌(EHEC) 戸田新p552

  1982年のアメリカでの原因食はマクドナルドのハンバーグであった。ウシの感染が多く、牛肉や便で汚染された野菜など(その他給食など)が感染源となる。ほとんどの牛牧場に生息し、先進国に多い菌だと考えられている。病原因子は志賀毒素と同じ作用をもつベロ毒素である。