腎・高血圧 / 卒試 / 腎臓・病理


腎・高血圧

<腎臓・病理> 【1】血中クレアチニン1.5mg/dl、尿中クレアチニン4.5mg/dl、1日尿量2880ml/day、体表面積1.8m2のクレアチニン.クリアランスを計算せよ。ただし標準体表面積を1.5m2とする a. 72 b. 60 c. 50 d. 36 e. 25(解答)4.5×2/1.5=6(ml/分) Ccr=尿中クレアチニン値(Pcr)×尿量(V)/血清クレアチニン値(Pcr)(Sp13) 【2】腎臓で産生されるものはどれか。 A)尿素 B)クレアチニン C)尿酸 D)アンモニア E)β2ミクログロブリン (解答) D・・近位尿細管の上皮細胞でグルタミンを材料に産生される(Sp30) 尿素・・主に肝臓に存在する尿素サイクルの最終産物(Sp47 ) クレアチニン・・肝臓で合成されたクレアチンが筋肉で代謝されたもの(Sp48) 尿酸・・プリン体の代謝産物 β2ミクログロブリン・・赤血球以外のほとんどの細胞が産生する血漿タンパク(Sp42) 【3】尿中Na排泄量が低下するものは? 1.Addison病 2.肝硬変 3.腎前性急性腎不全 4.甲状腺機能低下症 5.SIADH a 12 b 15 c 23 d 34 e 45 (解答)c 1)尿中Na排泄↑+低Na血症(D61) 2)尿中Na排泄↓+低Na血症(D20) 3)○ 4) 5)尿中Na排泄↑+低Na血症(D20) 【4】ネフローゼの診断基準について誤っているものを選べ。 A.一日尿蛋白量3.5g以上 B.血清総蛋白濃度6.0g/dl未満 C.血清アルブミン濃度3.0g/dl未満 D.血清総コレステロール濃度250mg/dl以上 E.血清クレアチニン濃度1.2mg/dl以上 <解答>E.・・血清Crは診断基準になく、もう一つは浮腫(E47) 【6】15歳女性、上気道炎後10日の症例。尿蛋白2+ 潜血2+、扁桃発赤を認める。(その他に検査データが挙げられていましたが、溶連菌感染後AGNに矛盾しない所見です。)このとき検査すべき項目は? 1.ASO 2.IgA 3.抗好中球細胞質抗体 4.抗糸球体基底膜抗体 5.血清補体価 a)1.2 b)1.5 c)2.3 d)3.4 e)4.5 (解答)b・・ASOは上昇、血清補体価は低下している(E40) 2)IgA腎症で上昇 3)特発性糸球体形成性腎症 4)急速進行性糸球体腎炎 【7】IgA腎症の予後に関わりが深いものを選べ。 1.血尿 2.蛋白尿 3.高血圧 4.血清IgA高値 a.(1,3,4) b.(1,2) c.(2,3) d.(4) e.全て (解答)b(E43) 【8】IgA腎症について正しいのはどれか 1,IgAが糸球体メサンギウム領域に沈着する 2,無症候性血尿が主要徴候である 3,血中IgAは低下する 4,ネフローゼ症候群をきたすことが多い 5,血清補体価は正常である A,123 B,125 C,145 D,234 E,345 (解答)C(E42) 3・・血清IgAは高値 4・・蛋白尿3.5gのため 【9】蛋白尿の選択性(selectivity index)を示すクリアランス比として正しいものを選べ。 A)アルブミンとβ2ミクログロブリン B)アルブミンとトランスフェリン C)IgAとIgG D)IgGとIgM E)IgGとトランスフェリン (解答)D(E8) 【10】ネフローゼ症候群を呈するのはどれか。 1.アミロイドーシス 2.HodgKin?病 3.巣状糸球体硬化症 4.全身性エリテマトーデス A.1,3,4のみ B.1,2のみ C.2,3のみ D.4のみ E.1-4すべて (解答)E(E50, 52) 続発性ネフローゼ・・糖尿病性腎症、Henoch-Schonlein紫斑病(紫斑病性腎症)etc 【11】尿細管性アシドーシスを来たすものの組み合わせを選べ。 1 Goodpasture症候群 2 Fanconi症候群 3 Sjogren症候群 4 多発性骨髄腫 5 原発性高アルドステロン症 a 1,2,3 b 1,2,5 c 1,4,5 d 2,3,4 e 3,4,5 (解答)d(E53, 54) 尿細管性アシドーシス・・typeI;H+の分泌障害:Sjogren症候群 typeII;HCO3-再吸収障害:多発性骨髄腫 1)糸球体基底膜障害で、尿細管病変(−)(I115) 2)低K血症(代謝性アルカローシス)+高血圧(D55) 【12】Alport症候群について誤ったものを選べ。 1)感音性難聴をみとめる。 2)尿異常は蛋白尿で始まる。 3)女性は男性より進行性である。4)IV型コラーゲンの異常がある。 5)電子顕微鏡で糸球体基底膜の層状の肥厚を伴う。 (解答)2)、3)(E76)(複数回答可であれば) 1)左右対称で約40%に認められる 2)小児期より顕微鏡的血尿で見つかる 3)男性の方が進行が速く、予後不良 4) IV型コラーゲンは糸球体基底膜を構成する 5)lamina densaの細劣化、網目化、層状化 【13】血清補体価が低下するのはどれか。 1)急性糸球体腎炎 2)紫斑病性腎炎 3)IgA腎症 4)膜性腎症 5)ループス腎炎 A)1、2 B)1、5 C)2、3 D)3、4 E)4、5 (解答)B(E38) 低補体血症を呈する;急性糸球体腎炎(一過性)、膜性増殖性GN、ループス腎炎 正常補体価;紫斑病性腎炎(Sp165)、IgA腎症、膜性腎症 【14】糖尿病性腎症について正しいものはどれか。 1.初期には糸球体濾過量は増加する。 2.腎不全の進行に伴いインスリン需要量は増加する。 3.アルドステロン分泌は増加している。 4.尿に赤血球円柱を認める。 5.腎不全の進行は比較的急速である。 A.1,2 B.1,5 C.2,3 D.3,4 E.4,5 (解答)B(E56、たぶん) 1)時に高値を示す 2)腎でのクリアランス↓のため必要量は減少 3)低レニン低アルドステロンで高血圧 4)血尿・円柱等は認めない 5)DM発症から15〜30年で末期腎不全になる=比較的急速!?(Sp158) 【15】60歳男性。血痰、全身倦怠感、微熱で受診した。尿蛋白(3+)、顕微鏡的血尿、血圧160/96mmHg、血清カルシウム濃度8.6mg/dl、血清リン5.4mg/dl、血清カリウム濃度5.4mg/dl、血清クレアチニン濃度5.2mg/dl、BUN76mg/dl、MPO-ANCA(抗好中球細胞質抗体)100U/l、CRP12.0mg/dl、血液ガス(pH 7.16、pO2 76mmHg、pCO2 35mmHg)、胸部X線検査にて多発性に境界不明瞭な浸潤影がみられた。 設問1.この疾患の腎組織所見で予想されるものはどれか。 A.半月体形成性糸球体腎炎 B.管内増殖性糸球体腎炎 C.膜性増殖性糸球体腎炎 D.悪性高血圧 E.巣状糸球体硬化症 (解答)A(E44,F62,E50,E51) 高血圧、P↑、K↑、Cr↑、BUN↑、抗好中球細胞質抗体とCRP(+)、胸部X線で浸潤影 →特発性半月体形成性腎炎 設問3.この疾患について正しいのは? 1)わが国では小児例が半数を占める。 2)腎臨床症候はネフローゼ症候群を呈する。 3)生命予後は、腎生存予後とも不良である。 4)生命予後に影響を与える因子の一つに肺病変の有無があげられる。 5)死を原因として感染症によるものが半数を占める。 A)123 B)125 C)145 D)234 E)345 (解答)E(E44,11/23) ←3)、5)が合っているので選択肢的に 1)急速進行性糸球体腎炎は比較的高齢者に多い 2 【16】血清クレアチニン5.0mg/dlの患者において、急性腎不全と慢性腎不全の鑑別で有用なのは? A.24時間クレアチニンクリアランス B.パラアミノ馬尿酸(PAH)クリアランス C.レノグラフィー D.腎エコー E.尿中Na濃度 解答:D(E17,12/2(3)) 急性腎不全と慢性腎不全の鑑別のポイントは既往歴(月、年単位で進行している)と腎のサイズ(急性では腫大、慢性では縮小?) 【17】急性腎不全で腎前性、腎性の鑑別に有効なのはどれか。 1)尿浸透圧 2)尿蛋白量 3)24時間尿量 4)尿中K排泄量 5)尿中Na排泄率 A(1,2) B(1,5) C(2,3) D(3,4) E(4,5) (解答)B(E21) 腎前性・・尿浸透圧500Osm/l以上、尿中Na20mEq/l以下(FENa<1.0%) 腎性・・・尿浸透圧350Osm/l以上、尿中Na40mEq/l以上(FENa1.0%) 【18】尿毒症の症候として見られるものはどれか。 1)皮膚掻痒 2)心膜炎 3)Kussmaul呼吸 4)口臭 A.134のみ B.12のみ C.23のみ D.4のみ E.1-4のすべて (解答)E(E28) 【19】高カリウム血症の治療として適当なものを選べ。 1血液透析 2生食投与 3スピロノラクトン 4インスリン、ブドウ糖投与 5陽イオン交換樹脂 A)123 B)125 C)145 D)234 E)345 (解答)C(D127)・・・血清Kが6mEq/l以上なら他にCa製剤の投与(心筋への作用を拮抗させる)、重炭酸Na投与などがある 3)K保持性利尿薬で高K血症が副作用 【20】慢性腎不全に特徴的な症候はどれか。 1)代謝性アシドーシス 2)低Ca血症 3)低Mg血症 4)低尿酸血症 5)高リン血症 A.123 B.125 C.145 D.234 E.345 (解答)B(E27) + 等張尿 1)anion gap↑、HCO3 ↓ 3)Mg,K,P↑ 4)BUN↑、Cr↑ 【22】56歳男性。38度の発熱が続いており食欲もなく臥床していた。食事、水分摂取は不良。その後次第に尿量減少、全身倦怠感、下肢の脱力を自覚し来院。母方の兄弟に3人慢性透析患者がいる。身長168cm体重68kg脈拍血圧に異常はなし。眼瞼貧血様、 口臭有り(尿臭)、皮膚粘膜に脱水所見有り。腹部に両側長径18cm横径13cmの腫瘤を 触れる。 血算 Hb 10 WBC 10800 Plt 120000 生化 Na 148 K 7.6 Cl 108 BUN 140 Cr 6.0 HbA1c 4.5 血ガス pH 7.14 HCO3- 12 PaO2 98 PCO2 16 (1) アニオンギャップを計算し最も近いものを選びなさい。(カリウムは除いて計算すること) A22 B28 C32 D36 E40 (2) この疾患について間違っているものを一つ選びなさい。 A家族歴がある。 B病変は片側性である。 C肝にも病変が見られる。 D脳動脈瘤を伴うことがある。 E腎性高血圧の原因となる。 (3)この状態を改善するために行う処置はどれか 1)血液透析 2)スピロノラクトン投与 3)輸血 4)ブドウ糖インスリン療法 5)重曹投与 A)123 B)125 C)145 D)234 E)345 (解答)(1)B(D137) (2)B (3)C(D127) (1) anion gap=[Na]-([Cl]+[HCO3]) (正常値12±2mEq/l) (2)自信ありませんが、両側に腫瘤を触知するのでこれかと・・ (3)高K血症を呈しているので 【24】人工腎臓(血液透析、腹膜還流)によって速やかな改善が期待できる病態として正しい組み合わせはどれか。 1.肺水腫 2.代謝性アシドーシス 3.高カリウム血症 4.腎性貧血 5.尿毒症性末梢神経障害 A.123 B.125 C.145 D.234 E.345 (解答)A(E29)・・貧血の原因、末梢神経障害は改善されない 【25】血液透析と腹膜透析の差異について正しい組み合わせを選ぶ。(組み合わせ不明) a.腹膜透析を行うと、社会復帰が難しい。 b.腹膜透析は血液透析に比べて、厳重なカリウム制限を必要としない。 c.腹膜透析のほうが残存機能を維持する。 d.腹膜透析と血液透析とどちらが血圧変動が小さいか。 (解答)c+d?(E31,12/5) a・・社会復帰を目指す人に適応がある b・・厳重な食塩・水の制限が必要でない c・・緩徐な透析なので残存腎機能が長期間保持されやすい d・・腹膜透析の方が血圧変動は小さいが? 【26】PTHについて正しいものを選べ a高PはPTHの分泌を促進する b高CaはPTHの分泌を抑制する cPTHは骨代謝の回転抑制させる dビタミンDはPTHの分泌を抑制する e透析患者では健常者に比べて骨のPTH感受性が低下している 1.abc 2.abe 3.ade 4.bcd 5.cde (解答)2(E35,12/5)・・腎性骨異栄養症 c・・PTHは骨代謝の回転を促進し、Caを血中へ向かわせる d・・VitD↓が血清Ca↓となり、PTHは↑ e・・無形成骨症でPTH感受性低下がみられる

2003年度卒業試験(復元) [病理]( )内に適切な語句を入れよ。 腎内に分布するすべての糸球体に病変がある場合は(1)、一部の糸球体の場合は(2)、また個々の糸球体における病変が糸球体全体に見られる場合を(3)、係蹄の一部に限局する場合を(4)という。 糸球体内皮細胞やメサンジウム増殖が主な場合を(5)増殖、(6)細胞が増殖し、半月体を形成している場合を(7)増殖と呼んで区別する。基底膜の肥厚は、内皮や上皮細胞下の沈着物や基底膜の増生により生ずるが、前者は(8)染色、後者は(9)染色により区別される。 [選択項目]A)びまん性(diffuse), B)びまん性(global), C)巣状(focal), D)局所性(local), E)管内性(endocapillary), F)管外性(extracapillary), G)メサンジウム増殖, H)Bowman嚢上皮細胞, I)内皮細胞, J)Masson-Trichrome, K)PAM, L)PAS, M)H.E. 〈解答〉(1)A (2)C (3)B (4)D (5)E (6)H (7)F (8) (9) 10.Wegener肉芽腫症について関係する3つの項目はどれか。 1)ヘマトキシリン体 2)半月体形成性糸球体腎炎 3)C-ANCA(抗Proteinase-3抗体) 4)P-ANCA(抗Myeloperoxydase抗体) 5)壊死性性炎症 A.(1,2,3)B.(1,2,4)C.(1,4,5)D.(2,3,5)E.(3,4,5) 〈解答〉D Wegener 肉芽腫症は、抗好中球細胞質抗体(C-ANCA)が高率に見られる全身性の血管炎を伴う肉芽腫形成性疾患で、特に、鼻咽腔・気管・肺・腎に進行性の壊死性血管炎と肉芽腫を生じる。腎病変では、続発性の急速進行性糸球体腎炎(病理的には糸球体に半月体形成)を生じる。ヘマトキシリン体はループス腎炎に特徴的。P-ANCAはmicroscopic PN(顕微鏡的多発血管炎)に特徴的である。 11.糖尿病に関連する項目はどれか。 1)結節性腎病変 2)メンケベルグ型動脈硬化 3)フィブリンキャップ 4)ネフローゼ症候群 A.(1,3,4) B.(1,2) C.(2,3) D.(4のみ) E.(1〜4のすべて) 〈解答〉A 1)、3)、4)は○ メンケベルグ型動脈硬化は中等大から小型の筋型動脈の中膜に起こる輪状石灰化のこと。粥状硬化症と同じ人、同じ血管に起こることが多いが、両者は解剖学的分布や臨床的に異なる。原因は不明だが、長期の血管攣縮によるものとされている。(病理学第6版 P.369) 12.IgA腎症について正しいのはどれか。 1)糸球体のIgA沈着は本症に特異的である。 2)補体C3沈着が高頻度に認められる。 3)一部の糸球体にBowman嚢癒着や半月体形成を認めることが多い。 4)血尿は稀である。 A.(1,3,4)B.(1,2)C.(2,3)D.(4のみ)E.(1〜4のすべて) 〈解答〉C IgA腎症はメザンギウム領域にIgAのびまん性沈着が見られる慢性糸球体腎炎。光顕、電顕でメザンギウム領域の増殖が見られ、ときにボーマン嚢癒着、半月体形成がみられる。蛍光抗体法でIgAの顆粒状沈着、また多くの場合にC3の沈着がある。無症候性血尿で発見されることが多い。IgAの沈着する疾患は、1.IgA腎症 2.紫斑病性腎症 3.ループス腎炎 とあり、1)のように特異的なわけでもない。 13.膜性腎症について正しいのはどれか。 1)メサンジウム細胞と基質の増生が目立つ。 2)基底膜様物質の新生に由来するスパイクを認める。 3)基底膜の変化を見るのにはPAM染色がよい。 4)蛍光抗体法でIgGや補体の線状(linear)沈着を認める。 A.(1,3,4)B.(1,2)C.(2,3)D.(4のみ)E.(1〜4のすべて) 解答〉C 膜性腎症は糸球体基底膜のびまん性肥厚と基底膜上皮側のびまん性沈着物を認める病変で、緩徐にネフローゼ症候群となる。光顕で基底膜の肥厚、PAM染色でspike lesion、 蛍光でIgG、C3が顆粒状または連珠状に沈着が見られる。メザンギウム領域の増殖は認めない。 14.ループス腎炎について正しいのはどれか。 1)ネフローゼ症候群を示すことが多い。 2)ヘマトキシリン体、血管炎の存在はSLEの活動性を示す。 3)糸球体病変はびまん性である。 4)葉間動脈の増殖性血管炎を伴う。 A.(1,3,4) B.(1,2) C.(2,3) D.(4のみ) E.(1〜4のすべて) 〈解答〉B ループス腎炎は様々な病理所見を呈し、互いに移行する。IV型は活動性病変で、びまん性にメザンギウムと内皮細胞の増殖が見られ、wire loop lesionやヘマトキシリン体が見られる。V型は膜性腎炎に類似し、難治性ネフローゼを呈す。抗DNA抗体・抗核抗体高値、血清補体価低値、血清免疫複合体価上昇は、ループス腎炎の活動性の指標となる。 2)○活動性の指標は巣状硬化、高度の増殖性変化、wire-loop lesion、硝子血栓、ヘマトキシリン体、高度の間質性炎、血管炎(病理学第6版P.686) 3)?軽微なときは巣状であることが多い。びまん性増殖性ループス腎炎でも糸球体によって変化の程度に差がある。(病理組織アトラスP.170) 4)?葉間動脈の増殖性血管炎は悪性高血圧の所見では?(病理学第6版) 15.悪性腎硬化症について正しいのはどれか。 1)腎動脈の狭窄が証明される。 2)小・細動脈の玉ねぎの皮葉肥厚を認める。 3)細動脈や係蹄血管のフィブリノイド壊死を認める。 4)硬化性萎縮は必発である。 A.(1,3,4)B.(1,2)C.(2,3)D.(4のみ)E.(1〜4のすべて) 〈解答〉C 1)× 狭窄するのは腎動脈ではなく小葉間動脈や細動脈。 2)○ 3)○ 4)× はじめから急激に発症した場合には腎は正常大のことが多い。 悪性腎硬化症…多くの場合、悪性高血圧症候群で認められる。小葉間動脈や細動脈の同心円状肥厚が著名で内腔が高度に狭窄または閉塞している。本態性または二次性高血圧から悪性高血圧に移行した場合は、良性腎硬化症、糸球体腎炎、腎盂腎炎などの病変を背景に持つ。はじめから急激に発症した場合は腎は正常大のことが多い。 [腎臓] 1.以下の所見の中でサイアザイド系利尿薬の副作用として見られる所見の組み合わせはどれか1)高尿酸血症 2)耐糖能異常 3)高カリウム血症 4)低カルシウム血症 5)低蛋白血症 a)(1,2)、 b)(1,3)、 c)(1,4)、 d)(2,3)、 e)(2,5) 〈解答〉a 1)○ 2)○ 3)× 高カリウム血症ではなく低カリウム血症となることがある。 4)× 低カルシウム血症ではなく高カルシウム血症となることがある。 5)△ サイアザイド系利尿薬の副作用として肝炎もあるが頻度は少なく、低蛋白血症が現れるのは肝機能が高度に障害された場合(肝硬変など)であるので、△。 ※サイアザイド系利尿薬…主な副作用として低K血症、高尿酸血症、耐糖能低下、血清脂質異常、インポテンツが挙げられる。 2.以下の病態の中で、高K血症をきたすのはどれか。 1)下痢 2)嘔吐 3)原発性アルドステロン症 4)インスリン過分泌状態 5)代謝性アシドーシス 〈解答〉5) 1)× 便中へのカリウム喪失により低カリウム血症になる。 2)× 代謝性アルカローシスとともに低カリウム血症を発症する。 3)× 尿中へのカリウム喪失により低カリウム血症になる。 4)× 低カリウム血症になる。カリウムが糖とともに細胞内にとりこまれることによる。 5)○ 体内のカリウム分布の異常による。 3.以下の病態の中で、低Na血症をきたさない病態はどれか。 1)高度の火傷によるthird spaceの増加 2)心不全 3)Syndrome of inappropriate secretion of ADH(SIADH) 4)ループ利尿薬投与時 5)Cushing症候群 〈解答〉5) 1)○ 2)○ 水排泄↓による。 3)○ 水排泄↓による。 4)○ 尿中への喪失による。 5)× 低カリウム血症を示す。 4.以下の病態で、血漿レニン活性が低下している病態はどれか。 1)悪性高血圧 2)Addison病 3)高度の腹水を伴う肝硬変症 4)利尿薬投与時 5)原発性アルドステロン症 〈解答〉5) 1)× 腎血流量↓によりレニン活性↑。 2)× アルドステロンの欠乏によりレニン活性↑。 3)×?循環血漿量↓により腎血流量↓し、レニン活性↑(?)。 4)× 循環血漿量↓により腎血流量↓し、レニン活性↑。 5)○ アルドステロンがレニン分泌を抑制するため。 5.溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断に有用な検査はどの組みわせか。 1)血清補体価 2)血清免疫グロブリン定量 3)尿蛋白電気泳動 4)血清ASLO価 5)咽頭ぬぐい液培養 A.(1,2,3) B.(1,2,4) C.(1,2,5) D.(1,3,5) E.(1,4,5) 解答)E 解説)血清補体値は低下する。ASLOはASOと同様、溶連菌に対する抗体。 6.以下の病態の中で、anion gapが正常のacidosisはどれか。 1)乳酸性アシドーシス 2)糖尿病性ケトアシドーシス 3)尿毒症性アシドーシス 4)急性アセチルサリチル酸中毒 5)尿細管性アシドーシス 解答)5) 解説)乳酸性は乳酸が上昇してanion gapが変化する。同様に2)3)4)もケトン体や代謝物によって変化がおきるが、5)は高cl性アシドーシスで、重炭酸イオンの再吸収障害をclが補正して変化なし。 7.ネフローゼ症候群について記述した文章を示す。最も可能性がある組織学的診断を下の選択肢の中から選択せよ。 1)尿蛋白の選択性が高く、蛍光抗体法(FM)では全て陰性である。 2)高齢者で、徐々に浮腫が増強し、FMでIgGと補体C3が糸球体基底膜に顆粒状に沈着する。 3)自己抗体陰性で、持続的な低補体血漿を呈し、糸球体病変は分葉状増殖を示す。 4)低選択性の蛋白尿を呈し、糸球体の係蹄の一部に分節性の硬化病変を示す。 5)リウマチ様関節炎の患者で、蛋白尿(血尿は軽微)と著明な浮腫を呈した。 [選択肢](1)膜性増殖性糸球体腎炎、 (2)微小変化群、 (3)ループス腎炎、 (4)糖尿病性腎症、 (5)紫斑病性糸球体腎炎、 (6)増殖性糸球体腎炎(IgA腎症)、 (7)巣状糸球体硬化症、 (8)悪性腎硬化症、 (9)膜性腎症、 (10)腎アミロイドーシス 解答 1)(2) 2)(9) 3)(1) 4)(7) 5)(10) 8.以下の糸球体腎炎ないしは腎症の中で低補体血症を特徴とするのはどれか。 1)膜性腎症 2)溶連菌感染後急性糸球体腎炎 3)IgA腎症 4)巣状糸球体硬化症 5)糖尿病性腎症 解答) 2) 9.急性腎不全についての以下の記述の中で、正しい組み合わせはどれか。 1)腎後性急性腎不全では、腎生検が有力な診断方法である。 2)腎性急性腎不全では、尿浸透圧は等張となる。 3)腎前性急性腎不全では、尿浸透圧が低下する。 4)腎性急性腎不全では、病理学的に巣状糸球体硬化症が特徴的である。 5)腎前性急性腎不全では、FENaは1未満である。 a)(1,2)、 b)(1,3) c)(1,4) d)(2,3) e)(2,5) 解答)e) 解説)1)腎後性でしても意味がない。 3)尿浸透圧は上昇する。 5)FENaはNa再吸収率のこと。 10.慢性腎不全に伴う高血圧に関する以下の記述で、正しい組み合わせはどれか。 1)高血圧の重症度と腎機能障害進展の程度には関連がない。 2)降圧薬の代謝・排泄経路が問題になる。 3)腎機能障害の進展とともに高血圧の合併頻度が高くなる。 4)サイアザイド系利尿薬が第一選択薬である。 5)ループ利尿薬の副作用は高カリウム血症である。 a)(1,2)、 b)(1,3) c)(1,4) d)(2,3) e)(2,5) (解答) d 1)× 関連する。 2)○ 3)○ 4)× 腎機能がかなり落ちていてもループは使える。 5)× 高Kではなく、低K。他に高血糖、高尿酸、低血圧、聾がある。 11.人工腎臓(血液透析、腹幕還流)によって速やかな改善が期待できる病態として正しい組み合わせはどれか。 1)肺水腫 2)代謝性アシドーシス 3)高カリウム血症 4)腎性貧血 5)尿毒症性抹消神経障害 A.(1,2,3)B.(1,2,5)C.(1,4,5)D.(2,3,4)E.(3,4,5) (解答) a 1回の透析で腎の内分泌機能は代替できない。エリスロポエチン産生低下による腎性貧血、Vit.D活性化障害による腎性骨異栄養他、末梢神経障害の改善も望めない。 12.蛋白尿・血尿を主訴とした患者で腎生検を施行した。糸球体に以下の所見を認めた。(1)PAS染色で、メサンギウム領域の拡大、管内性・管外性の細胞増殖と分葉傾向、(2)蛍光抗体法で、IgG、IgA、IgM、C3、C1qが陽性、(3)電子顕微鏡で、メサンギウム領域、基底膜内皮下に高度のdense depositを認めた。この所見で最も考えられる臨床診断は次のうちどれか。 1)IgA腎症 2)Systemic Lupus Erythematosus 3)原発性膜性増殖性糸球体腎炎 4)糖尿病性腎症 5)アミロイド腎 〈解答〉3) 1)× dense depositは認めない。(問題文中(1)については×?、(2)は×?、(3)について×) IgA腎症…蛍光抗体法によりメサンギウム領域のIgAを主体とする原発性糸球体腎炎で、高率に補体C3の沈着を伴う。原因は不明。 2)× SLEは腎にループス腎炎を引き起こす。((1)については×?、(2)は〇?、(3)について×) ループス腎炎…抗核抗体(特に抗DNA抗体)や免疫複合体の存在、血清補体価の低値などを特徴とする。 3)○ 問題文中(1)、(2)、(3)のとおりの所見を認める。 4)× 問題文中(2)、(3)の様な所見は認めない。((1)については×?)糖尿病性腎症…糖尿病における全身性の炭水化物代謝障害の反映である微小血管障害の一環として発生。 5)× (1)については○?、(2)(3)は× アミロイド腎…多くは中年に発祥し、蛋白尿が高度で、しばしばネフローゼ症候群を示す。アミロイドの沈着は糸球体ではメサンギウム領域、上皮下および内皮下係蹄壁にあり、メサンギウムの結節状拡大や毛細血管壁の肥厚が生じる。 13.高齢者の腎疾患について正しい記述はどの組み合わせか。 1)半月体形成性腎炎の頻度が高い。 2)急性腎不全の死亡率が高い。 3)ネフローゼ症候群の原因疾患として膜性腎症の頻度が高い。 4)電解質異常では、低Na血症の頻度が高い。 5)血清クレアチニン値が、見かけ上低値である頻度が高い。 a)(1,2)、b)(2,3)c)(3,4)d)(4,5)e)(すべて) (解答) e (授業プリントより「加齢と腎臓」) 1)○:本症の大部分(60%以上)は60歳以上。60歳未満4%に対し60歳以上16.5%。 2)○:術後、多因子の合併、腎予備能の低下、感染症、薬剤、抗がん剤などによる 3)○:原発性(一次性)ネフローゼ症候群の約半数(46%) 4)○:近位尿細管Na/K ATP aseの減少→Na保持能の低下 5) ×?:平均血清Cr値は若年0.81に対し高齢者0.84(有意差なし) 14.次の症候群の特徴を表す適切な事項を選択肢の中から選択せよ。 1)Barter症候群 2)Gitelman症候群 3)Fanconi症候群 4)Liddle症候群 5)Gordon症候群 [選択肢](1)低K血症、高Ca血症、正常血圧 (2)低K血症、若年発症高血圧、代謝性アルカローシス (3)低Ca血症、低Mg血症、正常血圧 (4)高Cl性アシドーシス、高血圧、高K血症 (5)アミノ酸尿、糖尿、発育不全 解答)1)−(1)、2)−(3)、3)−(5)、4)−(2)、5)−(4) 15.次の症例で、腎不全の原因を究明する上で行う優先すべき検査はどれか。 【症例】75歳、男性。主訴:腰痛、体重減少 検尿:尿蛋白;テステープ法(−)、ズルホサルチル酸法(+)。尿潜血反応(−) 血液生化学検査:血清クレアチニン;3.8mg/dl,BUN;68 mg/dl,Ca;12.3 mg/dl 頭蓋骨写:punched-out像(+) 1)腎生検 2)骨髄穿刺 3)尿中Na濃度測定 4)血清ビタミンD測定 5)副甲状腺ホルモン測定 〈解答〉 2) 蛋白尿、血清クレアチニン値↑、BUN↑、Ca↑、頭蓋写真でpunched-out像(+)より多発性骨髄腫を疑う。多発性骨髄腫では骨髄穿刺あるいは髄外腫瘤の生検によって形質細胞の腫瘍性増殖を証明することで確定診断となる。 16.肝不全の患者で低Na血症(118mEq/L)を有し、輸液治療で、低Na血症の補正を試みた。翌日、血清Na濃度は165mEq/Lと上昇し、意識障害が発現した。適切な臨床診断は次のうちどれか。 1)急性硬膜下血腫、 2)脳出血、 3)橋中心髄鞘崩壊症 4)クモ膜下出血、 5)多発性硬化症 (解答) 3 慢性低Na血症の治療では、補正の速度は重要である。腎不全、心不全、肝硬変などの慢性の希釈による低Na血症の場合、現疾患の治療とともに水の摂取制限を、またループの投与を行う。 17.次の症例の第一選択薬はどれか。 【症例】60歳、男性。血痰、全身倦怠感、微熱、蛋白尿(3+)、顕微鏡的血尿、血圧160/96mmHg、血清カルシウム8.6 mg/dl、血清リン5.4 mg/dl、血清カリウム5.4 mEq/L、血清クレアチニン5.2 mg/dl、BUN72 mg/dl、C-ANCA(抗好中球細胞質抗体)100EU、血液ガス(pH7.358、pO256 mmHg、pCO235 mmHg)胸部X線撮影で多発性の境界不明瞭な浸潤影。 (1)活性型ビタミンD (2)経口活性炭吸着薬 (3)副腎皮質ステロイド (4)カリウム保持性利尿薬 (5)ループ利尿薬 解答:(3) 解説:C-ANCAが陽性であり、又肺、腎症状が見られることからWegener肉芽腫と考えられます。(ただWegener肉芽腫の肺は結節状陰影と書いてあるのが気になりますが、、) (1):慢性腎不全の時の腎性骨異栄養症などで用いられます。 (2):薬物服用による中毒など? (3):正解。ステロイド、免疫抑制剤、抗凝固療法の3剤併用が第一選択らしいです。 (4):Kが高いので禁忌でしょう。 (5):使えるとは思いますが第一選択では無いと思います。 18.次のような病歴、現症、入院時検査所見を示した例で腎生検を行った。予測される組織像としてどれが最も考えられるか。 【症例】38歳、女性。主訴:嘔気、食欲不振。既往・家族・生活歴に特記事項なし。 【現病歴】6月中旬、上気道炎(発熱39度)罹患。近医で抗生物質と解熱薬を投与され軽快。7月3日、尿蛋白(±)、血清クレアチニン値1.6mg/dl。7月5日、血清クレアチニン値3.6mg/dlと上昇し、腎機能の精査を目的に入院。 入院時現症:血圧144/86mmHg、脈拍72/分、皮疹・浮腫・リンパ節腫脹なし 入院時検査所見: 検尿;蛋白(±)、血尿(±)、糖(+)、尿沈渣(好酸球+)。検血;赤血球415万/μl、Hb12.0g/dl、白血球;9300/μl、血小板23.2万/μl血液生化学的検査;TP6.8g/dl(Alb3.5g/dl)、BUN54mg/dl、Creat4.5mg/dl、Na139mEq/L、K4.6mEq/L、Cl111mEq/L 血清学的検査;CRP1.2mg/dl、CH50 31、ANF(-),ANCA(-) 腎径(腎エコー)右13cm、左13.5cm、水腎症なし、 Gaシンチグラフィー:両腎に有意のRIの取り込み像を認める。 (1)半月体形成性腎炎 (2)急性間質性腎炎 (3)膜性増殖性糸球体腎炎 (4)糖尿病性腎症 (5)微小変化群 解答)(2) 解説)(1)や(3)になるほど重篤ではない。(腎機能もそれほど悪くなく、電解質も正常範囲)(4)は病歴にDMの既往などなく、(5)はネフローゼの時に多い。薬剤投与歴を考えて、間質性腎炎になる。 19.次のような患者が救急車で搬入された。病歴と主な緊急検査所見を提示する。以下の設問に答えよ。 【患者】56歳、男性 【家族歴】父が尿毒症で死亡。兄弟3人が慢性透析療法を施行中。 【現病歴】5年前に腎臓が悪いと言われた。この3年間で腹部の腫瘤が増大し、最近、食後の腹部膨満感が高度になってきた。10日前より風邪を引き食欲が低下し、水も飲まず家で寝ていた。この2〜3日は尿量も減ってきた。 ある日、姉が訪ねていったとき、呼びかけにも応じなかったので、すぐに救急車を呼び搬送されてきた。 外来受診時の緊急検査所見:末梢血;Hb11 g/dl、Ht34%、WBC10800 /μl、血小板12万/μl 動脈血ガス;pH7.14、HCO3- 6 mEq/L、PO2 98 mmHg、PCO2 17 mmHg、 電解質;Na156 mEq/L、K6.2 mEq/L、Cl118 mEq/L 血液生化学;BUN140 mg/dl、クレアチニン6 mg/dl。HbA1c4.5% (問1) アニオンギャップ(mEq/L)を計算し、以下の選択肢から最も近い値を選べ。 (1)15、 (2) 25、 (3) 35、 (4) 45、 (5) 55 (問2) 本例の酸塩基平衡異常の主体は、以下の選択肢のどれに相当するか。 (1)代謝性アシドーシス (2)呼吸性アシドーシス (3)代謝性アルカローシス (4)呼吸性アルカローシス (5)尿細管性アシドーシス (問3)本例の慢性腎不全の原因疾患としては、どれが最も考えられるか。 (1)本態性高血圧 (2)IgA腎症 (3)腎アミロイドーシス (4)多発性嚢胞腎 (5)糖尿病性腎症 (解答)(問1) Na−(Cl+HCO3)=156-(118+6)=32 (問2)(1) pH7.14。アニオンギャップ増加は不揮発性の酸が蓄積する代謝性アシドーシスでみられる。 (問3)(4) 父、兄弟に腎疾患(+)と家族歴があること、腹部腫瘤の増大、Creat.高値などから。