視器 / 概説 / H17


平成17年度 「視器」 概説試験

(1)ヒト正常網膜の断面を図示し、関連する解剖学的名称を10個記せ。

解答・解説>2004概説2参照

(2)空欄を下記の選択肢で埋めよ。

胎生第4週に、第一次眼胞の表面が陥凹して二重壁杯状となる。これを第二次眼胞または(1)という。(1)の内腔を視室、眼胞茎の部分を(2)という。(3)側では発達が遅れるために(1)の(3)側には裂け目ができる。これを(4)という。(4)から中胚葉とともに(5)が侵入する。(1)の外壁と内壁の間にある視室は徐々にせまくなり、やがて消失する。将来、(1)外壁は(6)、(1)内壁は感覚網膜となり、(2)は視神経となる。この時期に異常がおこれば、(7)や先天嚢胞眼となる。胎生第5週に(4)の両縁は発達接近してほぼ中央から接着融合し、前後におよんでほとんど閉塞される。 (1)に接する中胚葉から(8)が発生し、血管網をつくりはじめる。胎生第(9)週には(4)は完全に閉鎖するが、閉鎖不全がおきれば(10)や視神経孔形成となる。

a.腹 b.眼柄 c.眼杯 d.動脈 e.眼杯裂 f.網膜色素上皮 g.小眼球

h.脈絡膜 i.虹彩、脈絡膜欠損 j.6 k.8 l.背

解答> (1)c (2)b (3)a (4)e (5)h (6)f (7)g (8)d (9)j (10)i

解説>

(3)空欄を適語で埋めよ。

角膜は組織学的に外から上皮層、(1)、(2)、デスメ膜、(3)の5層からなる。ぶどう膜は虹彩、(4)、(5)の3つからなる。

解答・解説>2004概説4参照

(1)ボーマン膜 (2)実質層 (3)内皮層 (4)毛様体 (5)脈絡膜

(4)検査距離5mで0.4の指標を1mの距離でようやく判読できるときの視力は( )である。

解答> 0.08  2004概説5参照

(5)60歳の女性。右眼視力は0.4(1.2x+1.0D)。3年前の受診時は右眼視力0.5(1.2x-2.0D)であった。正しいのはどれか。

a.乱視が変化した。  b.近視化した。  c.遠視化した。

解答> c 2004概説6参照

(6)正常眼で最も屈折力の強いのはどれか。

a.角膜  b.前房  c.水晶体  d.硝子体

解答> a 2004概説7参照

(7)正常眼で調節時、屈折力が最も変化するのはどれか。

a.角膜  b.前房  c.水晶体  d.硝子体

解答> c 2004概説11参照

(8)以下のうち正しいのはどれか。

a.近視は年齢とともに進行する傾向があるが乱視は変化しない。

b.若年者には直乱視が多いが加齢により倒乱視が増加する傾向がある。

c.不正乱視の矯正にはハードコンタクトレンズよりが眼鏡が用いられる。

解答> b  2004概説8参照

(9)近視に伴いやすい眼底変化または合併症を三つ書け。

解答・解説> 2004概説9参照

(10)正常眼で輻湊時正しいのはどれか。

a.散瞳する b.縮瞳する c.瞳孔径に変化はない

解答> b 2004概説10参照

(11)視力が0.5(1.5x-2.0D)の眼で、裸眼での近点が10cmのとき調節力はいくらか。

解答> 8D 2004概説12参照

(12)調節についてHelmholtzの弛緩説によると、近くのものを見ようとするとき ( )中の( )筋の収縮で( )が弛緩し、( )が弾性により( )形に近づくことで屈折率が( )する。

解答>  順に、毛様体 Muller Zinn小体 水晶体 楕円 上昇

2004概説13参照

(13)調節の加齢に伴う変化および調節の異常について書け。

解答・解説>2004概説16参照

(14)緑内障治療に用いられる点眼液を2つあげ、その薬理作用について簡単に述べよ。

解答・解説> 2002卒試2参照

(15)血液眼関門(Blood-Ocular Barrier)についてその機能と種類を述べよ。

<解答・解説>2004概説21参照

(16)眼科領域において、レーザー治療の対象となる疾患を2つあげ、その目的と治療によって得られる効果を述べよ。

<解答・解説>2004概説 22参照

(17)糖尿病網膜症について、病期による分類とその代表的な眼底所見について述べよ。

解答・解説> 2004卒試2(2) 2002卒試7参照

(18)ベーチェット病について、その診断と治療について述べよ。

解答>2004卒試4参照

(19)角膜を観察するときに用いる、検査機器をあげよ。

解答> 細隙灯顕微鏡

(20)硝子体の加齢変化について説明せよ。

解答・解説>

硝子体は思春期頃から変性を始める。光学的に空であった硝子体に粗い線維が見えるようになる。部分的に硝子体ゲルの液化が起こり、ポケット状の液化腔が次第に融合・拡大(シネレシス)。液化に伴い変性凝縮した硝子体線維が浮遊し、その影が網膜面に投影されて飛蚊症を自覚することがある。硝子体の液化自体は異常ではないが、強度近視や遺伝的素因により早期に起こったり著明になったりする。

中年以降になり硝子体の液化が進行すると後部硝子体が網膜面から剥離し、硝子体ゲルが前方へ収縮する現象が起きる(後部硝子体剥離)。このとき視神経乳頭縁で強固に癒着していた線維性の輪状組織が浮遊し、飛蚊症を自覚することが多い。また、後部硝子体剥離に伴って硝子体出血が起きることがある。後部硝子体剥離自体は無害な変化であり、それだけでは治療の対象とはならない。

(21)飛蚊症について説明せよ。

解答・解説>

眼の前に異常な浮遊物が見える。硝子体に原因がある場合は混濁が目の動きとともに眼の前で舞うように動くのが特徴。硝子体の生理的混濁の他に、後部硝子体剥離・硝子体出血・ぶどう膜炎の炎症による硝子体混濁などが関係。飛蚊症が網膜剥離の前兆であることがあるので注意する。一方、混濁の場所が一定で眼の動きとともに動くときには原因は網膜にある。網膜前出血や網膜浮腫などがそれで、実性暗点ともいう。飛蚊症があるときは患者が見えるものは医師も細隙灯顕微鏡や眼底鏡で観察可能。

(22)硝子体に混濁をきたす疾患を1つあげ、診断に重要と思われる検査を説明せよ。

<解答・解説> 糖尿病網膜症・サルコイドーシス・Behcet病・網膜色素変性症など。

硝子体混濁の原因:炎症・循環障害・網膜変性・代謝異常など様々。

元来硝子体はこれに接する眼内の組織と機能的な関門を持ち、高分子量の物質や細胞の硝子体内への移行を妨げている。炎症などでこの関門が破壊されるとき硝子体混濁が生じる。

解答に示したものは毛細血管の透過性亢進により硝子体混濁をきたす。

検査法:細隙灯顕微鏡

(23)糖尿病網膜症の病期を診断するときに、必須な検査をあげ、検査の方法を簡単に説明せよ。

解答・解説>

蛍光眼底造影検査

フルオロセインNaを肘静脈から静注し、時間を計測しながら眼底を観察・撮影するので、形態観察だけでなく循環動態の評価も可能。

本検査法では(1)脈絡膜の循環動態や網膜の血管構築 (2)動静脈/毛細血管の局所の閉塞・毛細血管瘤・新生血管などの網膜血管病変 (3)網膜血管や網膜色素上皮にある血液網膜関門の異常 (4)網膜色素上皮の萎縮・欠損などの異常 を検索可能である。