視器 / 概説 / H15


視器 平成15年度概説試験 問題用紙は7枚(A4)。設問2の3までが1枚目、設問3までが2枚目。設問3までの解答欄が3枚目。あとは設問1つにつき、解答欄を兼ねた用紙が1枚ずつ。120分。 解答作成にあたっての参考文献はステップ眼科(海馬書房)、標準眼科学第4版(医学書院)、眼の組織・病理アトラス(医学書院)、眼科学改訂第2版(文光堂)、入門組織学(南江堂)、受精卵からヒトになるまで原著第4版(医歯薬出版)および授業ノート。

設問1.ヒト眼球の断面を図示し、関連する解剖学的名称を10個記せ。  解答略(過去問、ステップP3など参照)

設問2.以下の問いに答えよ。 1.神経外胚葉起源の組織はどれか。2つ選べ。 a.角膜  b.水晶体  c.硝子体  d.網膜  e.脈絡膜 解答 cとd 解説 ステップP107より 中胚葉由来…角膜実質、角膜内皮、虹彩実質、強膜、血管、外眼筋、眼窩、脈絡膜 神経外胚葉由来…虹彩色素上皮、毛様体上皮、網膜、視神経、硝子体、瞳孔筋 表皮外胚葉由来…眼瞼皮膚、結膜、角膜上皮、水晶体

2.眼杯裂閉鎖不全が原因でおこる疾患はどれか。1つ選べ。 a.単眼球  b.硝子体過形成遺残  c.先天白内障  d.ぶどう膜欠損  e.無眼球 解答 d 解説 ステップP111 虹彩、脈絡膜の欠損が起こる。眼の奇形には眼杯裂閉鎖不全が原因でおこるものが最多。 先天白内障は遺伝的要素や風疹が原因となる。

3.血液網膜柵に関係する組織はどれか。1つ選べ。 a.網膜色素上皮層  b.杆体錐体層  c.内顆粒層  d.神経節細胞層  e.内境界膜 解答 a 解説 網膜には網膜毛細血管内皮細胞と網膜色素上皮細胞との2種類のblood-retinal barrierが存在する。

4.正常網膜内にみられる細胞はどれか。 1)ミュラー細胞  2)網膜無色素上皮細胞  3)双極細胞  4)アマクリン細胞 a.(1)、(3)、(4) b.(1)、(2) c.(2)、(3) d.(4) e.(1)〜(4)のすべて 解答 a 解説 正常網膜に見られる細胞としては、視神経細胞、アマクリン(無軸索)細胞、双極細胞、ミュラー細胞、水平細胞、杆体細胞、錐体細胞、色素上皮細胞がある。

5.房水の流れについて、( )内に正しい記号を入れよ。 後房→瞳孔→前房→前房隅角→( )→房水静脈 a.視神経乳頭 b.シュワルベ線 c.シュレム管 d.チン小帯 e.テノン嚢 解答 c 解説 ステップP60 解剖を考えれば自明かと思います。シュワルベ(Schwalbe)線は角膜内皮とデスメ膜が終わった線。チン小帯は毛様体から水晶体をつるすはたらき。テノン嚢は眼球後方に存在。

設問3.空欄を下記の選択肢で埋めよ。 ・角膜は組織学的に外から上皮層、(1)、(2〉、デスメ膜、(3)の5層からなる。 ・ぶどう膜は虹彩、(4)、(5)の3つからなる。 ・網膜は外側の脈絡膜側から内側の硝子体側に数えて、網膜色素上皮層、(6)、外境界膜、(7)、(8)、内顆粒層、(9)、神経節細胞層、神経線維層、(10)からなる。 a.杆体錐体層  b.脈絡膜  c.毛様体  d.内皮層  e.ボーマン膜 f.外網状層  g.内網状層  h.外顆粒層  i.実質層  j.内境界膜

解答 1:e.ボーマン膜  2:i.実質層  3:d.内皮層  4:b.脈絡膜 5:c.毛様体  6:a.杆体錐体層  7:h.外顆粒層 8:f.外網状層  9:g.内網状層  10:j.内境界膜

設問4.以下の問いに答えよ。 1.視力に影響を与える因子を3つ以上答えよ。 ・屈折異常と調節異常 ・瞳孔径 ・物体の明るさ ・加齢 ・基質的異常 (4/6 視力・屈折の授業ノートより)

2.角膜と水晶体それぞれの屈折力の値を答えよ。 角膜 43.05D 水晶体 19.11D(無調節時) (4/6 視力・屈折の授業ノートより)

3.ヒトの正視眼での平均眼軸長を答えよ。 24mm(生下時16〜17mm、3歳で23mm) (4/6 視力・屈折の授業ノートより)

4.屈折異常の種類を列記し、それぞれについてその矯正に必要なレンズの種類を答えよ。 近視…凹レンズ 遠視…凸レンズ 乱視…円柱レンズ (4/6 視力・屈折の授業ノートより)

5.近見時の調節のメカニズムを簡潔に説明せよ。 毛様体輪状線維が収縮し、チン小帯が弛緩することによって水晶体が厚くなる。すると屈折力が強くなって焦点距離が短くなるので、近くを見ることができる。(ステップP40参照)

6.調節力の定義を式で示せ。 調節力をA(ジオプトリー)、近点距離をp(m)、遠点距離をr(m)とするとき、 A=1/p−1/r ※ 遠点…調節を全く休止したとき、網膜中心窩にちょうど結像する外界の点をいう。 ※ 近点…調節を最大限に働かせたとき、網膜中心窩にちょうど結像する外界の点をいう。(ものを近づけていったとき、明視できる最も近い距離) (4/6 視力・屈折の授業ノートより)

設問5.以下の文章の(A)〜(I)にあてはまる語句を下の1)〜13)から選べ。 全身投与された薬剤の眼内組織への移行は一般に良くない。これは(A)が薬剤の透過を妨げているからである。このため薬剤の局所投与が重要な役割を果たす。眼科領域の疾患に対する薬物の局所投与法の主なものとして点眼法がある。 結膜嚢内に点眼された薬物は、涙液と混合され、結膜や角膜と接触する。眼球内への移行は、主に(B)を通して行われる。点眼薬の濃度の(C)が前房内へ移行する。硝子体中に移行するのは(D)以下である。 眼底疾患の治療法のひとつとして光凝固が挙げられる。光凝固とは高エネルギー光源から照射されるレーザー光を利用して、主にその熱作用により組織を破壊する方法で、加齢黄斑変性や(E)などの治療に用いられる。眼底疾患以外でも(F)に対するYAGレーザーや、(G)の治療にもレーザーが行われている。 眼科領域で用いられる局所麻酔法には、眼圧測定時にも用いられる(H)や毛様神経節をブロックする(I)などがある。 1)blood-brain barrier  2)blood-ocular barrier  3)角膜  4)虹彩  5)水晶体 6)網膜  7)10〜20%  8)0.1〜0.01%  9)0.0001%  10)ヘルペス性角膜炎 11)糖尿病網膜症  12)後発白内障  13)外斜視  14)緑内障 15)硬膜外麻酔  16)瞬目麻酔  17)球後麻酔  18)点眼麻酔

解答 A:2)blood-ocular barrier  B:3)角膜  C:8)0.1〜0.01% D:9)0.0001%  E:11)糖尿病網膜症  F:12)後発白内障 G:14)緑内障  H:18)点眼麻酔  I:17)球後麻酔 解説 (4/9 眼科治療総論の授業ノートより) A:血液眼関門  F:ステップP102  G:閉鎖隅角緑内障に  I:危険を伴うので少なくなったとか

設問6.以下の疾患の治療、診断に必要と思われる眼科検査を列記せよ。(空欄を埋めよ)重複可 1.緑内障  (1)(2)(3)(4)(5) 2.白内障  (6) 3.ぶどう膜炎(7)(8)(9)(10) 4.斜視   (11)(12) 5.網膜剥離 (13)(14)(15)(16) A.細隙灯検査  B.隅角検査  C.眼圧検査  D.眼底検査  E.視野検査 F.血液検査  G.蛍光眼底撮影  H.大弱視鏡  I.プリズム検査

解答 1〜5:A.細隙灯検査、B.隅角検査、C.眼圧検査、D.眼底検査、E.視野検査 6:A.細隙灯検査 7〜10:A.細隙灯検査、D.眼底検査、F.血液検査、G.蛍光眼底撮影 11、12:H.大弱視鏡、I.プリズム検査 13〜16:A.細隙灯検査、D.眼底検査、E.視野検査、G.蛍光眼底撮影 解説 緑内障:(4/26緑内障授業プリント、ステップP193)眼圧亢進が本態であるので眼圧を測定、眼圧上昇に隅角閉鎖による房水流出障害があることがあるので隅角を検査。以上で十分な気がしますが、特有の視野障害を呈するので視野検査も。あとのふたつはよくわかりません。F、H、Iはないと思うので、AとEとしましたが…。

白内障:(4/13白内障授業ノート、ステップP187)病態は水晶体混濁。水晶体の検査できる細隙灯検査。

ぶどう膜炎:(4/21ぶどう膜炎授業ノート、ステップP152)ぶどう膜炎は全身性血管炎の1症状であることが多いため(ぶどう膜は極めて血管に富む組織)全身疾患の検索に血液検査を行うのではないかと。またぶどう膜炎の原因疾患として多い原田病では「夕焼け眼底」、サルコイドーシスでは「真珠の首飾り」という特徴的な像が見られるので細隙灯・眼底検査・蛍光眼底撮影を選びました。

斜視:(ステップP44)プリズムは確定。もう一つは細隙灯、眼底検査も悪くないと思いますが、「弱視になる」ことを強調される疾患であるので「大弱視鏡」なるどの教科書にも載ってないものを選んでみました。

網膜剥離:(4/19網膜剥離授業ノート、ステップP172)病態からいって細隙灯、眼底、蛍光眼底検査は問題ないかと。症状に視野狭窄も加わるのでもうひとつは視野検査としました。他の選択肢は不適当だと思われます。

設問7.以下の疾患の診断、治療に必要な検査を列記し、解説せよ 糖尿病網膜症 (4/20授業ノート、ステップP216) (基礎疾患として糖尿病を持つことが前提であるが、)眼底所見が最も重要である。特に初期にははっきり変化が現れないこともあるので、蛍光眼底撮影が必要である。  初めに見られるのは毛細血管瘤である。これは検眼鏡的に無変化であった部分でも蛍光眼底検査で見つかることがある。続いて点状・しみ状出血と硬性白斑がみられるようになる。(ここまでが単純網膜症)  さらに進行すると血管が閉塞し、軟性白斑、静脈異常、網膜内細小血管異常がみられるようになり、この状態を増殖前網膜症という。  続いて血管新生、増殖組織、硝子体出血、網膜剥離が認められるようになると増殖網膜症という。  単純網膜症のうちは内科的治療によって対応しうるが、増殖前、増殖網膜症では新生血管抑制を目的として光凝固を行い、硝子体出血などを伴うようになると硝子体手術を行う。 (列挙しろ、といわれても眼底検査に尽きるので他に思いつきません。またこんなに詳しく述べる必要はないと思います。)

網膜中心静脈閉塞症 (4/19授業ノート、ステップP162) 特徴的な眼底所見(壁にトマトを投げつけたような、または眼底全面に赤インクを散らしたような)を示すので眼底検査で診断できる。また黄斑が不明瞭になり、軟性白斑もみられる。蛍光眼底造影を行えば、静脈が拡張し、色素が漏出した所見や、無血管帯、血管新生が観察される。治療はウロキナーゼによる線溶療法、ヘパリンナトリウムによる抗凝固療法、網膜循環血液量減少をはかるレーザー療法などが行われる。

視神経炎 (ステップP210) 中心暗点、視力障害、色覚障害がおこる。 眼底検査:異常のないもの(球後視神経炎)とうっ血乳頭のように発赤、腫脹、静脈怒張などを認めるもの(乳頭炎)とがある。 視野検査:中心暗点が認められる。これがMariotte盲点(視神経乳頭に対応する生理的な盲点)とつながったラケット状の盲点(石津盲点)が見られることもある。 色覚検査、視力検査でも異常を認める。 ステロイドが著効を示すことがある(特に乳頭炎)ほか、ビタミンB1、B12の投与も行われる。また多発性硬化症などの原因疾患がある場合にはその治療を行う。

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