細胞壁と抗生物質


語句問題

構造

細胞壁はペプチドグリカンから成る網目様の袋で、細胞原形質の浸透圧により細胞が膨張破壊してしまわないように、強靱な構造材として膜を支え、細胞の外形を決定する役割を果たしている。
グラム陰性菌では、ペプチドグリカン層が薄く、その代わり更にその外側に外膜と呼ばれるもう一つの細胞膜類似膜を有する。外膜も、ある種の物質に対する透過障壁となっている為、両膜に挟まれたペリプラズムと呼ばれる領域は、細胞原形質と外界との中間的な環境になっている。

細胞壁合成阻害薬

ペプチドグリカンの合成を阻害する化学療法剤
細胞壁を喪失するとプロトプラストあるいはセフェロプラストとなり水を過剰に受け入れて破裂、殺菌的
ペプチドグリカン形成→UDP−GluNAcの付与、リピド関与→細胞壁でグリカン鎖の重合とペプチド相互間の結合(架橋形成)

βラクタム系抗生物質

ペニシリン系・セファロスポリン系
架橋形成の際に働く酵素トランスペプチターゼを阻害
耐性獲得はβラクタム環を開環するβラクタマーゼの産生。ペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼ。
グラム陰性菌での薬剤透過性の低下
PBPの構造変化による薬剤への結合親和性の低下

バンコマイシン

既存の細胞壁ペプチドグリカン成長末端の伸張を阻害
比較的副作用が強い
MRSAの増加により使用頻度増加

タンパク質合成阻害


アミノ配糖体

リボソームの30Sサブユニットに結合、タンパク合成阻害
1、反応開始を阻害(ストレプトマイシン、カナマイシン)
2、ペプチド転移を阻害(ネオマイシン、カナマイシン)
3、tRNAのA位よりP位への転移を阻止(スペクチノマイシン、ゲンタマイシン)

テトラサイクリン

30Sサブユニットに結合、A位に次のaminoacyl-tRNAが結合するのを阻害
耐性はRプラスミド、くみ出し

クロラムフェニコール

一般のグラム陽性・陰性菌 広域抗生物質
50Sサブユニットに結合、ペプチド転移反応を抑制してペプチドの伸張を阻害
副作用として造血臓器の障害による再生不良性貧血、顆粒細胞減少症、血小板減少症

マクロライド系

エリスロマイシン、オレアンドマイシン グラム陽性には強く、陰性に一部に有効
50Sサブユニットに結合、アミノアシルt−RNAの転移を阻害
耐性には不活化、くみ出し、標的部位の変化