公衆衛生


公衆衛生/その2

・疫学予防の戦略
1) 高危険群対策
 疾病発症のリスクが高いものに限定した予防対策。血圧の検診と高血圧者への減塩指導や服薬治療など。
2) 集団対策
集団全体への介入によって集団全体を好ましい方向へシフトさせようとする戦略。 平均値の変化が小さくても高リスク群の割合は大きく変化する。疾患り患の大部分は平均的な人々に起こっている。ワクチンの集団接種など。

・記述疫学
 病気の分布上の特徴を明確にすることが重要。地理的分部(国際比較、国内地域比較)、経時的変化、人の属性(性、年齢、人種、職業など)に注目して、疾病の発生頻度を記述。 これらの分布上の特徴を説明できる要因は何であるかを多面的に検討することにより、疑わしい要因を探すことができる。関連する要因の地域分布や経年変化をみることは要因探索の有効な方法。疾病分布の記述だけでも予防につながる確定的な証拠が得られることも。

・疾病量の指標
1)罹患率
一定期間(通常1年)に新たに発生したり患数を危険人口で除した率。危険人口としては、その年の年央人口を便宜的に使用。感染症などの短い流行期間に限定したり患率を発生率と呼ぶ。
2)有病率
ある一時点における病気であるものの数をその時点の人口で除した率。
3)死亡率
ある一定期間(通常1年)に起こった死亡数を危険人口で除した率。致命率が高い場合にはり患率を十分に反映する。

 病気の発生状況を見るためにはり患率が適している。有病数は有病期間が長くなれば、罹患率が変化しなくても増えてくる。
 特定の疾患のり患数あるいは有病数は、医療機関への受診機会の多少や診断精度の違いなどによって影響を受ける。有病数は生存率によっても影響を受ける。
 罹患率と有病期間に変化がなければ、有病率は罹患率と有病期間の積で推定される。罹患率が年間10万人対5人で、平均有病期間が20年の場合の疾患の有病率は10万人対100と推定される。

・コーホート研究 cohort study
 あらかじめ個々人の要因の有無を調査し、その後の病気の発生(死亡や罹患)を追跡
・症例対象研究 case-control study
 ある病気にり患した症例軍と健常者である対照群について、疑わしい要因への過去の暴露を調査比較しようとするもの
・横断的研究 cross-sectional study
 要因・疾病の関連(肥満度と高血圧あるいは血圧との関連など)をある一時点で調べる
 罹患ではなく、一時点における病気の有無を問題にし、有病率調査に基づいて行われる。
・縦断的研究 longitudinal study
 集団の疾病罹患を調べる研究に用いられる。血圧値や血清コレステロール値などの連続量の変化を追跡する場合も

・危険
要因  罹患率
(+)  I1 73
(−)  I¬0 7
total   I 65
相対危険 I1/I0:要因(−)群に比べて、要員(+)群の罹患率がどれくらい高いか、低いかを示す。相対危険は関連の強さを示す→73/7=10.4
寄与危険 I1-I0:罹患率の差で、要因暴露に起因する絶対的な疾病量→年間10万人対66 暴露群寄与危険 {(I1-I0)/I1}*100%:要因(+)群の疾病罹患のどれぐらいがその要因に起因しているか→(73-7)/73*100=90%
人口寄与危険 {(I-I0)/I}*100%:集団全体の疾病罹患のどれぐらいがその要因に起因しているかを示し、集団における予防可能な割合。→{(65-7)/65}*100=89%

・RCTの実施手順
 1対象選定基準:研究目的と実施の可能性を勘案して、明確に設定
 2介入・治療方法と評価項目の事前設定:あらかじめ評価項目を決めておく。結果を見てから良さそうな項目を比較すると化学的客観性を欠く。
 3無作為割り付け:乱数を用いて介入群と非介入群に割り当てる。
 4関連性の均一性:罹患や予後と関連する要因が偶然に違うことがあるので、関連要因については介入群と非介入群で違いがないことを確認する。
 5離脱とコンプライアンス:離脱者が多いと研究は成り立たない。コンプライアンスが悪ければ介入の効果は見られなくなる。
 6二重盲検:対象者も観察者も両方が対象者確認の介入・治療内容を知らされないこと。プラセボを用いることで可能に。
 7治療意図解析:離脱者やコンプライアンス不良のものを除いて解析されることがあるが、好ましくない。無作為に割りつけられた対象者全体について解析することが、厳密な比較を可能とする。

・年齢別出生率ASFRある年齢の母の産んだ子の数/その年齢の女子人口
・合計特出生率:一人の母親が一生に産む子供の数;ASFRの15~49歳に渡る総和
・総裁生産率:一人の母親が一生に産む女児数;合計の女子のみ
・純再生産率:一人の母親が次世代に残す妊娠可能な女性の数;15~49のfi*i歳になるまでの生存確率