呼吸器 / 呼吸器科 / 05概説


呼吸器/呼吸器科

呼吸器科 【1】60才の女性が肺炎を生じた。膿性の喀痰を伴っている。喀痰グラム染色をしたところ、青紫色の双球菌の好中球貪食像が認められた。以下の原因菌で最も考慮が必要なものはどれか。 a.Streptcoccus pneumoniae b.Legionella pneumophila c.Pseudomonas aeruginosa d.Mycoplasma pneumoniae e.Haemophilus influenzae 解答)a グラム陽性双球菌を選ぶ。bはG(−)桿菌。cは院内肺炎の原因となるG(−)桿菌。dは健康な小児〜成人の肺炎の主原因の一つ。頑固な乾性咳嗽(痰を伴わない咳)が見られる。eは小型のG(−)球桿菌で多形性が強い。 I. 呼吸器 I - 33 I - 33 【2】25歳の健康成人がマイコプラズマ肺炎を生じた。βラクタム系抗菌剤を使用したが、効果が認められず、急速に進行し呼吸不全を生じた。以下の原因で最も考慮が必要なものを一つ選べ。 A)βラクタム系抗菌剤の投与時間が短い。 B)βラクタム系抗菌剤の投与量が少ない。 C)細胞壁を持たず、細胞壁合成阻害剤には効果を示さない。 D)PBP(ペニシリン結合蛋白)が変異し、βラクタム系抗菌剤に耐性である。 E)βラクタマーゼを産生し、βラクタム系抗菌剤に耐性である。 解答)C βラクタム系抗菌剤は細菌細胞壁のペニシリン結合蛋白に結合し、細胞壁の代謝を阻害する。マイコプラズマ肺炎にはエリスロマイシン、クラリスロマイシン等のマクロライド系やテトラサイクリンが用いられる。 【3】結核について正しい記述を選べ。 A)約2週間抗結核剤を服用するのが標準的治療法である。 B)日本全体の肺結核症の死亡者数は千人に満たない。 C)肺結核菌は放置するとほぼ全員が死亡する。 D)結核菌のコロニー検出には約2日間の培養が必要となる。 E)喀痰培養で1コロニーでも見つかれば確定診断が得られる。 解答)E A)×標準的治療は最初にINH(イソニアジド)、RFP(リファンピシン)、PZA(ピラジナマイド)とSM(ストレプトマイシン)orEB(エタンブトール)を2ヶ月投与し、その後4ヶ月INH,RFPの2剤(又はEBと3剤)を投与する。 B)×2300人程度 C)×無治療では50%が5年以内に死亡し、25%は慢性排菌患者となる。 D)×小川培地では4〜8週かかる。MGIT法(Micobacteria Growth Indicator)という液体培地では2週間かかる。 【4】免疫不全患者にアスペルギルス症の早期発現に有用なのはどれか。 A)tree in bud appearance B)? C)Crazy powng apperance D)Halo sign E)Kerley line 解答)? 免疫不全患者に起こるアスペルギルス症は侵襲型と呼ばれ、予後不良。 【5】正しい組み合わせを一つ選べ。 A)異所性PTH-rP産生腫瘍:低Ca血症 B)異所性ACTH産生腫瘍:低血糖 C)抗利尿ホルモン異常分泌症候群(SIADH):低Na血症 D)肥大性肺骨関節症:多発性骨髄腫 E)Lanbert-Eaton症候群:ジャクソン型けいれん 解答)C小細胞癌に多い。 A)×扁平上皮癌に多い。高Ca血症となる。 B)×小細胞癌に多い。Cushing症候群となり高血糖、色素沈着、多毛、高血圧 D)×長管骨の骨膜増生や骨膜の不整肥厚、上下肢の腫脹疼痛、関節痛とばち指を主症状とする症候群。扁平上皮癌、腺癌に合併することが多い。E)×小細胞癌に多い。筋無力症候群で筋電図でwaxingを示す。 【6】正しいものを一つ選べ。 a、野生型p53は細胞周期を止める b、野生型p53はアポトーシスを抑制する c、ras遺伝子は細胞増殖を抑制する d、EGF受容体は核内に存在する e、VEGFは腫瘍増殖を抑制する 解答)a p53はG1からS期への移行を阻止している。 b×アポトーシスを誘導する。 c×ras遺伝子はoncogeneであり細胞増殖を促進する。 d×EGF(上皮増殖因子)は細胞膜に存在する。 e×VEGF(血管内皮細胞増殖因子)は血管新生を促進する。 【7】肺癌とその腫瘍マーカーの組み合わせで正しいものを一つ選べ A:CYFRA:腺癌 B:NSE:腺癌 C:CEA:扁平上皮癌 D:proGRP:小細胞癌 E:SCC:大細胞癌 I. 呼吸器 I - 34 I - 34 解答)D A、Eは扁平上皮癌 B,Dが小細胞癌 Cが腺癌のマーカー CYFRA:cytokeratin fragment NSE:neuron specific enolase proGRP:pro gastrin releasing peptide 特にSCC、NSEは陽性率が60%であり特異的なマーカーである。【9】気管支喘息における病態について、正しい組み合わせを選べ。 1)気管支粘膜に好酸球の浸潤を伴う炎症がみられる。 2)β2受容体遮断薬の服用により、1秒量が増加する。 3)気管支粘膜に浸潤しているリンパ球はTh1細胞が主である。 4)気道閉塞は可逆性の病変である。 A.1.3.4 B.1.2 C.2.3 E.4のみ D.1〜4すべて 解答)なし 1)〇好酸球の浸潤と粘膜上皮の剥離 2)×β2受容体刺激剤吸入後にFEV1.0が改善する。3) ×Th2が主でIL-4,IL-5を分泌し好酸球の気道粘膜への走化などに関与している。 4)〇 【10】気管支喘息大発作の治療で正しいものはどれか。 1)酸素投与 2)コリンエステラーゼ阻害薬投与 3)β受容体刺激薬吸入 4)副腎皮質ステロイドの点滴静注 A.1.3.4 B.1.2 C.2.3 E.4のみ D.1〜4すべて 解答)A 急性発作時は充分な酸素投与、血管確保を行い、短時間作用型のβ2刺激薬を吸入する。さらに副腎皮質ステロイドの短期間の全身投与も行う。また重症発作時には抗コリン剤を吸入する。 【11】気管支喘息について、正しいものを選べ。 1)アトピー型は高齢者に多い。 2)人口の5〜10%にみられる。 3)肥満細胞が関与する。 4)症状では左心不全との鑑別は困難である。 5)アスピリンは発作を誘発することはあるが、他の消炎鎮痛薬は安全である。 a)1.2.3 b)1.2.5 c)1.4.5 d)2.3.4 e)3.4.5 解答)d)? 1)×小児に多い。 2)罹患率は3〜5%だが… 3)〇 4)〇重症例では呼吸困難、起坐呼吸となり左心不全との鑑別が重要。 5)×NSAIDsのどれでも起こりえる。 【12】慢性閉塞性肺疾患について正しいのはどれか (1) 肺気腫ではHRCT画像でlow attenuation areaみられない (2) 一秒率が低下する (3) 喫煙は重要な発生因子である (4) わが国では欧米に比較して発生頻度は低い (5) わが国ではα1アンチトリプシン欠損症によるものが多い A(1),(2) B(1),(5) C(2),(3) D(3),(4) E(4),(5) 解答)C (1)大小の無構造低吸収域(LAA)の広汎な分布が認められる。 (2)〇 (3)〇 (4)×米国ではCOPDは主要死因の第4位を占めている。本邦の患者数は500万人以上。 (5)×欧米の肺気腫患者の1〜5%を占める。α1-AT欠損症は喫煙しなければ発症しない。 【13】慢性閉塞性肺疾患に関して正しいものを選べ。 1)気管支拡張薬投与では呼吸困難は改善しない。 2)高炭酸ガス血症があれば酸素投与は禁忌である。 3)喫煙を止めても長期間にわたる肺機能低下は軽減しない。 4)呼吸リハビリテーションは運動耐性能を改善する。 5)低酸素血症を有する患者では在宅酸素療法が生命予後を改善する。 A(1),(2) B(2),(3) C(3),(4) D(4),(5) E(1),(5) 解答)D 1)×薬物療法は症状及び合併症の軽減の目的で行う。長期間にわたる肺機能低下に対する効果はない。 2)×PaCO2↑↑の時はIPPB(間欠的陽圧呼吸)を行う。 3)×禁煙が最も重要 4)〇下肢筋の訓練が有 I. 呼吸器 I - 35 I - 35 効。呼吸不全への進展や急性増悪を防ぐためにも重要 5)〇在宅酸素症例のうちCOPDが基礎疾患として最も多い。 【14】呼吸生理と肺機能検査に関して正しいものはどれか。 1.健康人では換気・血流不均等は無視しうる程度である。 2.肺胞低換気があるとPaCO2は必ず上昇する。 3.肺活量が予測値の80%未満の場合、拘束性障害と呼ぶ。 4.1秒量が予測値の70%未満の場合、閉塞性障害と呼ぶ。 5.健常人の解剖学的死腔はおよそ500mlである。 A:1.2 B:2.3 C:3.4 D:1.4.5 E:全て 解答)B 1)×正常では換気・血流比はほぼ0.8。肺内の部位により値は変化し、肺尖部で高く、肺底部で低い。 2)〇PaCO2と肺胞換気量は反比例する。 3)〇 4)×1秒率(1秒量を努力性肺活量で割ったもの)が70%未満 5)×約150ml【15】胸水について正しいものを選べ。 1)ヒアルロン酸は膿胸で上昇することが多い。 2)心不全では滲出性胸水が認められる。 3)結核性胸水ではADA(adenosine deaminase)が高値となることが多い。 4)浸出性胸水の基準にLDH値が用いられる。 5)細胞診検査の目的は癌細胞の検出である。 A(1),(2) B(2),(3) C(3),(4) D(4),(5) E(1),(5) ←選択肢は自信ない・・ 解答)C 1)×ヒアルロン酸100μg/ml以上は悪性胸膜中皮腫 2)×漏出性胸水となる。漏出性胸水は静水圧、膠質浸透圧の異常。滲出性胸水は胸膜、血管の損傷による毛細血管透過性↑やリンパ液環流量↓。 3)〇ADA↑、糖↓(30〜50mg/dl程度に低下) 4)〇 以下のうち一つでも満たせば滲出液と判断する。胸水/血清総蛋白>0.5胸水/血清LDH>0.6胸水LDH>血清LDHの正常上限値×2/3 5)×胸水中でどの細胞が優位であるかを調べる。例えば好酸球優位であれば、アレルギー性疾患、寄生虫を考える。 【16】急性肺血栓塞栓症についての記述で正しい組み合わせを選べ。 1)急性肺血栓塞栓症では肺内シャントのため100%換気でも低酸素血症の改善が見られないのが特徴である。 2)急性肺血栓塞栓症の原因の80〜90%は、下肢深部静脈である。 3)胸部CTかMRIで肺動脈内血栓像が見られ、血流シンチレーションで肺血流が欠損しているのが見られる。 4)肺梗塞により、必ず胸部X線画像上異常が見られる。 5)凝固亢進を示す徴候としてDdimerやFDPの減少が見られる。 解答)2)、3) 1)×この特徴があるのは肺動静脈瘻 2)〇 3)〇 4)×胸写は非特異的で正常なことも多い。 5)×FDP,Dダイマー↑ 【20】誤っているものを1つ選べ。 A.急性好酸球性肺炎はステロイド療法に対する反応は良好で、再燃は稀である。 B.慢性好酸球性肺炎は全ての年齢層に発症しうるが、特に中年女性に多い。 C.好酸球増多症候群はステロイド療法に抵抗性で、予後不良の転帰をとることが多い。 D.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療はステロイド内服が第一選択である。 E.アレルギー性肉芽腫性血管炎では、気管支喘息が先行することが多い。 解答)C半数はステロイドによく反応する。5生率は80% D〇抗真菌薬は無効といわれていたが、最近の研究ではステロイドの減量効果があるという。【22】慢性閉塞性肺疾患で正しいものはどれか? (1)肺気腫ではHRCT画像でlow attenuation areaがみられない (2)一秒率が低下する (3)喫煙は重要な発生因子である (4)我が国では患者数は減少傾向にある (5)我が国ではα1アンチトリプシン欠損症によるものが多い A(12) B(15) C(23) D(34) E(45) 解答)C(1)×HRCT(ヘリカルCT)でのLAA(低吸収域、他の所よりCT値が低い、つまり色が抜けて見える)はCOPDの特徴 (4)欧米では禁煙政策が進み、現在になって減少傾向に転じたが、日本ではむしろ増加傾向にあり、今後も増加すると考えられている。 (5)この酵素の欠損も欧米に多く、日本は少ないので喫煙がやはり一番問題となる。 【23】正しい組合せを選べ 1.肺胞性陰影の特徴はエアーブロンコグラムである 2.肺胞性陰影を呈する疾患の経過は慢性である 3.スリガラス状陰影は肺胞性陰影である 4.間質性陰影は葉、区域にそった陰影を呈する 5.間質性陰影の特徴は線状、粒状、綱状陰影である。 選択肢A12 B23 C34 D45 E15 解答)E air bronchogram:通常気管支内のガスを肺胞内のガスと区別することはできないが、肺胞内に水濃度を来たす病態で、気管支内ガスの透過性と周囲の肺胞とのコントラストが生じて気管支が透瞭像として浮き上がる状態。 2.×肺胞性パターンを示す疾患は肺炎、肺水腫、肺出血、肺胞蛋白症、肺胞上皮癌があり、決して慢性経過を辿るものばかりではない。 3.×間質性陰影である。 4.×間質性パターンは気管支、血管周囲間質、肺胞隔壁、小葉間隔壁を示す。 【24】気管支肺胞洗浄(BAL)と経気管支的肺生検(TBLB)について正しいものを選べ。 1)BALによって肺胞蛋白症を診断できる。 2)BALでは好酸球増多は過敏性肺臓炎の特徴である。 3)BALではTリンパ球のCD4+/CD8+の値はサルコイドーシスで低下する。 4)TBLBによって特発性間質性肺炎の病理分類を決めることができる。 5)TBLBは感染症において診断意義がある。 A(1),(2) B(2),(3) C(3),(4) D(4),(5) E(1),(5) 解答)E 1)〇BAL,TBLBを行うと、PAS陽性物質を実際に見ることができ、確定診断に至る。 2)×好酸球性肺炎の特徴。過敏性肺臓炎ではCD4<CD8となる。 3)×CD4>CD8となるため値は上昇する。 4)×TBLBは切片が小さすぎて確実な診断が得られない。他の疾患を否定するためには有用。胸腔鏡下肺生検が確定診断には有用。 5)〇カリニ肺炎、肺結核、肺癌、サルコイドーシスなどで有用。 【26】以下の原因不明の間質性肺炎のうち、斑状分布(pathcy)かつ気道中心性に病変が存在するものを1つ選べ。 A. Idiopathic pulmonary fibrosis B. Nonspecific interstitial pneumonia C. Cryptogenic organizing pneumonia D. Acute interstitial pneumonia E. Lymphoid interstitial pneumonia 解答)C Aは特発性肺線維症。予後不良で発症年齢は高齢。病巣は斑状、小葉辺縁性に分布する。 Bは非特異的間質性肺炎。以前はIPFとして扱われていた例が多いがIPFよりも予後がよい。線維性病変の旧さが比較的均一であることが特徴。 Cは特発性器質化肺炎。斑状の分布。肺胞道から肺胞にかけての末梢気腔にポリープ状の肉芽組織が存在する。 Dは急性間質性肺炎。線維化はdiffuseで肺胞隔壁が水腫状に肥厚する。 Eはリンパ球性間質性肺炎。MALTリンパ腫と似ている。【27】以下の原因不明の間質性肺炎のうち、新旧の線維化病変が混在するものを1つ選べ。 A. Idiopathic pulmonary fibrosis B. Nonspecific interstitial pneumonia C. Cryptogenic organizing pneumonia D. Acute interstitial pneumonia E. Lymphoid interstitial pneumonia 解答)A病変分布が小葉辺縁性、かつ斑状であり、線維化病巣は新しい線維化と古い線維化を混じているのが特徴 【28】呼吸管理について正しい組み合わせを選べ。 1 人工呼吸器を離脱する際CMVmodeよりSIMVmodeを使うことの方が多い。 2 在宅酸素療法の適応はPaO2 が90Torr以上である。 3 非侵襲的陽圧呼吸は気管内挿管が必要である。 4 ベンチュリーマスクは酸素濃度を調整できない。 5 経鼻カニューレの酸素投与はFiO2は50%以上には上げられない。 選択肢は1(1)(2) 2(2)(3) 3(3)(4) 4(4)(5) 5(5)(1) 解答)5 1.〇CMV:continuous mandatory ventilation 持続的強制換気 SIMV:synchronized intermittent mandatory ventilation 同期的間欠的強制的換気。患者の吸気努力をトリガして設定した換気回数分だけ、自発呼吸と同調して強制換気が開始される。2.×在宅酸素療法の適応はPaO255Torr未満。3.×気管内挿管や気管切開をせずに陽圧換気をする方法のことで鼻あるいは顔マスクを用いる。4.×比較的一定濃度の酸素を投与できる。COPDの治療に用いられる。慢性閉塞性肺疾患の場合、不用意に高濃度の酸素を投与するとCO2ナルコーシスを起こす恐れがあるのでベンチュリーマスクで酸素濃度を決めて投与する。5.〇酸素流量を1L/分増加させる毎に吸入酸素濃度は4%ずつ上昇する。つまり経鼻カニューれ3L/分で酸素を投与した場合、予想される吸入酸素濃度は 大気酸素濃度20%+3L/分 x 4%=32%となる。経鼻カニュ−レでは、1〜6L/分(24〜44%)の酸素投与が可能である。これ以上酸素流量を増加させても、鼻腔の乾燥をきたし、有効ではない。