血液 / 卒試 / 03


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2003年度卒業試験(復元) 2. 下記の問いに答えよ。 1) 成人男性の基準範囲を赤血球、白血球、血小板について記せ。 2) 血球検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。 3) 凝固検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。 4) 血球検査・凝固検査用に採血したあと、検査をするまでの間で守らなければならない点をあげよ。 3.下記は造血系検査に関して述べたものである。カッコ内に適当な語句を入れよ。 (1)( 1 )染色は顆粒球系のgolden markerとして用いられ、FAB分類に重要である。 (2)エステラーゼ(E)染色には( 2 )E染色と( 3 )E染色があり、前者には( 4 )阻害がみられ、( 5 )系の重要なマーカーである。 (3)PAS染色は多糖類を染色し、( 6 )芽球で陽性に染まることがある。 (4)骨髄繊維症で( 7 )で、サラセミアでは( 8 )、HbSでは( 9 )、細小血管障害性溶血性貧血では( 10 )の赤血球像を認め、貧血の型を決める上で大切なヒントを与えてくれる。 <答> 1MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、2非特異的、3特異的、4NaF(フッ化ソーダ)、5単球、6赤、7涙滴赤血球、8標的赤血球、9鎌状赤血球、10破砕赤血球 4.再生不良性貧血について、正しいものには○、間違ったものに×をつけよ。 1.汎血球減少を認める。 2.血清鉄は減少する。 3.免疫抑制療法が著効することがある。 4.小球性低色素性貧血になる。 5.網状赤血球数は増加する。 6.骨髄生検では、繊維化の所見を認めることが多い。 <答> 1○ 2× 3○? 4× 5× 6× 正〜大球性正色素性、UIBC↓、フェリチン↑、網状赤血球は正常か減少、脂肪髄が見られる。 5.X-3.自己免疫性溶血性貧血で、認められる検査所見を3つ選べ。 1.LDHの上昇 2.ハプトグロビン高値 3.骨髄の赤芽球過形成 4.抗グロブリン試験陽性 5.赤血球の浸透圧抵抗の減弱 6.骨髄細胞の染色体異常 <答> 1,3,4,5が正しい? YearNote2002G-34 6.括弧内の最も適切な項目を選択せよ。 1)正常成人の体内総鉄量は(a.3〜4mg、b.3〜4g、c.10〜20g)である。 2)体内総鉄量の約70%は(a.ヘモグロビン鉄、b.トランスフェリン鉄、c.フェリチン鉄)である。 3)鉄欠乏による貧血は(a.大球性正色素性、b.正球性正色素性、c.小球性低色素性)貧血である。 4)鉄欠乏性貧血の赤血球形態異常では(a.巨赤血球、b.奇形赤血球、c.球状赤血球)が特徴的である。 5)鉄欠乏性貧血の鉄剤による治療は、原則として(a.経口投与、b.経静脈投与)で行う。 <答> 1)b 2)a 3)c 4)b 5)a 7.巨赤芽球貧血について誤っているのはどれか. a.正球性正色素性貧血に分類される. b.V.B12の吸収は回腸で行われる. c.悪性貧血では抗内因子抗体が高率に出現する. d.巨赤芽球は,核が未熟で,胞体は比較的成熟している. e.葉酸欠乏による貧血ではシリング試験陽性である. 1)a,d 2)a,e 3)b,d 4)c,e 5)d,e G. 血液 G - 21 G - 21 <答> 2) a;大球性。 d;DNA合成障害がある。 e;シリング試験は、放射性Coで標識したVit.B12を服用し、尿中の放射活性を調べる。また、内因子を同時に服用し、同様に調べる。 8.(1)穴埋め A〜J Step2 P.261 M3についての問題。15番17番染色体転座の意味。ATRA療法、その副作用 M3(APL)は豊富なアズ−ル顆粒を有する前赤芽球様の白血病細胞が増殖する疾患で、顆粒中には大量のトロンボプラスチン類似物質が含まれている。そのため逸脱したこの物質がトロンボプラスチン様の働きをし結果的にDICをきたす。M3にはRAR-α再構成という遺伝子異常を伴う。これは細胞分化をつかさどるretinoic acid recepter αをコードする遺伝子とPML遺伝子の再構成である。APLの発症に関与する。 ATRA療法…ATRA(all-trans レチノイン酸)による分化誘導療法。白血球細胞の正常分化を誘導。DICも軽快。副作用としてはレチノイン酸症候群がある。ATRA後にAPL細胞が分化し、白血球が増加する時期に一致して、発熱、呼吸困難、浮腫などcapillary leak syndromeによる症状が出現。副腎皮質ホルモンが有効。予防のため、白血球数に応じて、ATRAと化学療法を併用する。 8 (2)急性白血病に見られる予後良好な遺伝子変異を3つあげ、その遺伝学的特徴とそれを基にした治療法について書きなさい。 【解答】 講義プリント t(8;12)(q22;q22)[M2]…8q22のETO(MTG-8)遺伝子と12q22のAML-1遺伝子が転座によりAML1/ETO融合遺伝子を形成する。 t(15;17)(q22;q12)[M3]…上述。 inv(16)(p13;q22)[M4]…PEBP2β、MYH11が関与。 8 (3)急性白血病と診断された患者さんが来ました。主治医のあなたはどういう検査・処置を急いで行うか順序だてて書きなさい。(過去問通り) 8 (4) 記述 9.○×10問 10.(1)(2)記述 11.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome; MDS)について正しい記述は? (1)染色体異常を呈することが多い。 (2)高齢者に多い。 (3)好中球のペルゲル(Pelger)様核奇形や巨赤芽球様変化(megaloblastoid)などがみられる (4)WHO分類では芽球が20%以上となったら白血病と分類される。 (5)造血幹細胞のクローン性異常と考えられている。 a. 125 b. 235 c. 123 d. 4 e.すべて 【解答】 e Step2 P.263 G. 血液 G - 22 G - 22 12.以下の病態や症状のうち、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、マクログロブリネミアに当てはまるものを選べ。 (1) Bリンパ球の腫瘍であり、細胞表面にはimmunogloblinを発現していない。 (2) 白血球数が増加していることが多い。 (3) ほとんどの症例で血清中にM蛋白が上昇している。 (4) 末梢血中で大型の成熟リンパ球数が増加していることが多い。 (5) 核が偏在し、車軸核を持つ細胞が骨髄中で増加している。 (6) 眼底にソーセージ様静脈怒張が見られることがある。 (7) 骨に再生像を伴わない骨髄融解像がみられ、骨折しやすい。 (8) 血清Ca値が上昇する症例は稀ではなく、それに伴う意識障害で受診する例もある。 (9) 腎障害を生じやすい。 (10)欧米では白血病の約30%を占めるが、我が国では2〜3%とその頻度は低い。 (11)IgM産生細胞が単クローン性に増殖した疾患である。 (12)血小板数などに比し、出血傾向がみられやすい。 (13)約10%の症例でアミロイド―シスを合併する。 (14)細胞表面にCD5を発現していることが多い。 (15)若い成人には稀で、高齢者に好発する。 (16)病期が進行すると貧血、血小板減少を生じることが多い。 (17)病初期からの積極的な化学療法が予後を改善する。 (18)病期が進行すると、肝・脾腫が見られることが多い。 (19)急性白血病に比べ、経過はゆるやかであることが多い。 多発性骨髄腫…3、5、7、8、9、13、15、16 慢性リンパ球性白血病…2、10、14、15、16、18、19 マクログロブリネミア…3、5、6、11、12、15、16、18 13.以下の文章につき、正しいものには○を、間違っているものには×をつけよ。 (1)形質細胞はTリンパ球が最終分化した細胞であり、免疫グロブリンを産生する。 (2)良性M蛋白症が、多発性骨髄腫などのリンパ球系悪性腫瘍に移行する割合は、10年間で約15%程度である。 (3)多発性骨髄腫のStageIでは、抗癌剤を用いた治療のみでは治癒は困難で、経過観察することが多い。 (4)若年の多発性骨髄腫に対し、同種造血幹細胞移植の有効性が示されている。 (5)多発性骨髄腫では、末梢血で赤血球のRouleaux formationがよく見られる。 (6)Bence-Jones蛋白は、免疫グロブリンL鎖由来であり、酢酸緩衝液存在下では、56度で白濁するものの、煮沸すると再融解する。 (7)慢性リンパ球性白血病と診断した場合、病期が進行していない(Rai分類で0-II)時から治療を開始した方が予後が良い。 (8)慢性リンパ球性白血病では、脾腫はほとんど見られない。 <答> (1) ×:Bリンパ球、(2) ○、(3) 〇病期1であれば(貧血、骨病変がなく、M蛋白量も少ない)一定期間(約6か月)経過観察、(4) ○、(5) ○、(6) ○、 (7) ×、病期0・I・IIでは経過観察、IIで肝脾腫による圧迫症状あるときや、III・IVでは化学療法。 (8) ×、末梢リンパ球増加、リンパ節腫大、肝脾腫をおこす。 14.ホジキン病について正しい記述には○を,誤った記述には×を記せStep2 P.282 1)日本の悪性リンパ腫の約50%を占める。 2)リンパ節に発症し,隣接性に広がることが多い。 3)放射線感受性が高いので,進行例でも放射線照射が第1選択となる。 4)Reed-Sternberg細胞はT細胞由来である。 5)臨床病期の決定はWHO分類に沿って行われる。 G. 血液 G - 23 G - 23 【解答】 1)×10%前後 2)○ 3)× 進行例は転移があり、放射線照射は困難。ABVD(アドリアマイシン+ブレオマイシン+ビンプラスチン+ダカルバジン)など多剤併用化学療法が標準。4)×B細胞と言われている 5)×Ann Arbor分類 15.非ホジキンリンパ腫に関して正しい記述に○、誤った記述に×をつけよ。Step2 P.287〜 (1)リンパ節外に発症することは稀である。 (2)濾胞性リンパ腫はB細胞由来である。 (3)CD20抗原は主にB細胞上に発現しており、治療の標的分子となっている。 (4)成人T細胞白血病は東日本に多くHTLV−1ウイルスの感染によっておこる。 (5)びまん性大細胞リンパ腫は化学療法に反応良好であり、進行性であっても5年生存率は80%以上である。 【解答】 (1)×約1/2 (2)○ (3)○ (4)×西南部中心 (5)×進行性ではそのように良好な予後は期待できない。 16.4問 (A)小児の再生不良性貧血について正しいものを選べ。 Step2 P.203〜 (1) 骨髄異形成症候群や急性白血病に進展することはない。 →× (2) Fanconi貧血は急性骨髄性白血病を発症することがある。 →○固形腫瘍も高率に発症。 (3) 免疫抑制療法(抗リンパ球グロブリン+シクロスポリン)中はウイルス、真菌及び細菌感染に注意すべきである。(免疫抑制剤と抗リンパ球グロブリンは著効することがある。だった?) →○ (4) メチルプレドニゾロンパルス療法が最も有効な治療である。 →×ステロイドパルス療法は有効ではなくALG+シクロスポリンに必要に応じてダナゾールを追加する療法が一般的 (5) 重症例は非血縁臍帯血移植が第一選択となる。 →×生着不全が多く今のところ予後不良。 ア. 1,2 イ. 1,5 ウ. 2,3 エ. 3,4 オ. 4,5 解答ウ (1)× (2)○固形腫瘍も高率に発症。 (3)○ (4)×ステロイドパルス療法は有効ではなくALG+シクロスポリンに必要に応じてダナゾールを追加する療法が一般的 (5)×生着不全が多く今のところ予後不良。 (B)小児の出血性疾患について正しい組み合わせはどれか。 (1) 軟口蓋の出血斑は粘膜出血として注意すべき所見である。 →○ (2) 母体からの移行抗体は新生児に血小板減少を来たす。 →○ (3) 特発性血小板減少性紫斑病には少量γグロブリン療法を行う。 →× 大量 (4) 血友病A患者は全て男性である。 →○ (5) 第XIII因子欠損症患者ではPT、APTTは正常である。 →○ PTは第I、II、V、VII、X因子の、APTTは第I、II、V、X、VIII、IX、XI、XII因子の欠損により延長。 ア. 1,2,3 イ. 1,2,5 ウ. 1,4,5 エ. 2,3,4 オ. 3,4,5 解答 ?? (1) ○ (2) ○ (3) × 大量 (4)○ (5)○PTは第I、II、V、VII、X因子の、APTTは第I、II、V、X、VIII、IX、XI、XII因子の欠損により延長。 17.2問 18.GVL効果について100字以内で述べよ。 造血幹細胞移植では移植前処置を行って白血病細胞根絶をはかるが、同種移植では移植した造血幹細胞から分化した白血球が、免疫反応により残った白血病細胞を一掃することが期待される。これをGVL効果という。(98字) ※GVL=Graft-Versus-Leukemia G. 血液 G - 24 G - 24 19.輸血後の移植片対宿主病(GVHD)に関して、( )内に適当な語句を入れよ。 1)輸血後に合併することがある移植片対宿主病(GVHD)は、血液製剤中の( 1 )によって惹起される。 2)輸血後GVHDでは皮膚、肝臓、腸管の他に( 2 )も標的臓器となり、造血幹細胞移植後のGVHDと比較して発症後の( 3 )が極めて高い。 3)輸血後GVHDの予防法には、( 4 )、( 5 )などがある。 4)PT-GVHDは供血側がHLA( 6 )の時生じる。また、PT-GVHDは( 7 )( 8 )で生じやすく、輸血血液は採血後13日目でも起こった例がある。 【解答】1:Tリンパ球 2:骨髄 3:致死率 4:白血球除去フィルター 5:放射線照射 6:一方向適合 7:新鮮血 8:免疫不全者 ※PT-GVHD=post transfusion graft-versus-host disease=輸血後移植片対宿主病 ※一方向適合 例えば、血液提供者がaa、受血者がabという遺伝子型を持っているとすると、「a」を自分で持っている受血者は「aa」を排除できない。一方、提供者のT細胞は「b」を非自己とみなすので受血者の組織を攻撃する、というイメージ。 輸血後移植片対宿主病は、本来は自己の免疫系が排除するはずの輸血血液中のTリンパ球が、免疫が弱っている、HLAが類似していて異物認識されない、などの理由で排除されず、生着して受血者の組織を攻撃するために発生する。 輸血直後は無症状で、1〜2週間で発熱、紅斑により発症。肝障害、下痢、下血が続き、骨髄無形成による汎血球減少症に至る。顆粒球減少は特に顕著で、敗血症など重症合併症によりほぼ全例が死亡する。 7、8の解答は「血縁者」(HLAが類似している)や「初回輸血」でもいいかも