寄生虫 / その他


赤痢アメーバ

(1) 本症の感染は、経口的、経皮的、昆虫ベクターの3つのうちどれによって起こるか。 (2) 栄養型の核の数および成熟嚢子の核の数はいくつか。 (3) どの段階(ステージ)の虫体より感染が起こるか。 (4) 腸アメーバ症の場合栄養型は主としてどの部位に寄生しているか。 (5) 腸管外アメーバ症で最も発症の頻度が大きい臓器は何か。 <解答> (1)経口的(ヒトは飲料水や食品に混じった成熟嚢子を経口摂取して感染する。) (2)栄養型:1核、 成熟嚢子:4核 (3)嚢子(型)(栄養型を飲み込んでも胃液で殺されるので感染しない) (4)大腸 (5)肝臓(門脈を通じて転移するから)

(1) 肝蛭メタセルカリアを経口摂取して感染した場合、小腸で脱嚢した幼虫は一旦腹腔に出た後肝臓の表面から侵入し肝臓内を経て胆管に到達する。 (2) 日本住血吸虫の成虫が産卵する場所は中心静脈である。 (3) マラリアはハマダラカ属の蚊によって媒介される。 (4) アニサキス症で、もっとも多くみられる種は Anisakis simplex (Anisakis type I) である。 (5) 妊娠中の母体がトキソプラズマの初感染を受けると虫体が胎児に移行し先天性トキソプラズマ症を起こすが、母体は無症状に経過する。 (6) ランブル鞭毛虫のヒトでの寄生場所は盲腸である。 (7) ビルハルツ住血吸虫の成虫は主として膀胱の静脈叢に寄生している。 (8) バンクロフト糸状虫はヒトに感染すると主としてリンパ系に寄生し、象皮病などの原因になる。 <解答> (1)○ (2)○(門脈系に寄生している) (3)○ (4)○ (5)○ (6)×(寄生場所は十二指腸) (7)○(日本住血吸虫やマンソン住血吸虫はヒトの門脈枝内に寄生) (8)○(他に陰嚢水腫、乳糜尿を起こす)

包虫症(エキノコッカス症)

(1)北海道でみられる包虫症の病原虫(成虫)の和名を記せ。 (2)北海道における最も重要な本虫の固有宿主(終宿主)を1つ記せ。 (3)北海道における本虫の中間宿主は何か。生活史の中で重要な役割を果たすものを1つ記せ。 (4)ヒトはどのようにして包虫症に感染するか。 (5)単包虫症と多包虫症の病理像(特に包虫の成長過程)の差を記せ。 解答: (1) 多包条虫 (2) キタキツネ (3) エゾヤチネズミ (4) キタキツネ、イヌとの接触、キツネの皮との接触、汚染された飲み水(雪、氷)、イチゴ、キノコなどの野生植物から起こる。 (5) 単包条虫の原頭節は母胞嚢の包虫液中に包虫砂として浮遊しているが、多包条虫の胞嚢は壊れて原頭節が血流によって他臓器に運ばれることもある。そのため多包虫症では末期になると浸潤・転移が起こる。肺に転移すると、咳、痰、血痰などを発し、時に包虫を喀出する。脳に転移すると痙攣など種々の神経症状を起こす。

住血吸虫および住血吸虫症

(1)日本住血吸虫の日本での第一中間宿主を和名で記せ。    宮入貝 (2)住血吸虫のヒトに感染する病原虫は生活史のどの段階の幼虫か。    セルカリア (3)そのヒトヘの感染方法を記せ。    ヒトが宮入貝の生息する川や湖に接触するとき皮膚から感染する。 (4)日本住血吸虫の成虫はヒトのどの部分に寄生しているか。    門脈系統の諸静脈 (5) 慢性期の日本住血吸虫において最も病変の著しいのはどの臓器か。    肝臓 (6) 最も普通に用いられる住血吸虫症の治療薬の名を記せ。    プラジカンテル

マラリア

1.アフリカのタンザニアで重症交通外傷による敗血症を起こしていたので、抗生剤、抗真菌剤を投与して様態が落ち着いた。しかし帰国後、再発熱、頭痛が生じ、CRP上昇、DIC、腎機能障害が見られる寄生虫感染であることが分かった。(20点) (1)すぐに考えられる寄生虫病名は何か? (2)その寄生虫の検査法(方法、材料) (3)顕微鏡で見られる輪状体と生殖母体をかけ。(←ちょっと日本語が足りない) (4)対処法と治療法を書け。 * 1)熱帯熱マラリア:三日熱マラリアと卵形マラリア原虫は若い赤血球を好み、四日熱マラリア原虫は老赤血球を好むのに対し、熱帯熱マラリア原虫は老若を問わず攻撃するので破壊される赤血球が多くなり、感染した赤血球が凝固して脳や腎臓など重要臓器の細血管を閉塞しその組織の酸素欠乏・変性・壊死などを起こす。そのため熱帯熱マラリアは腎障害、DIC、全身出血などマラリアの中で症状が最も重いため悪性マラリアと呼ばれる。 2)末梢血の塗抹標本をギムザ染色して鏡検する。 4)赤内型原虫をファンシダール錠、クロロキン、硫酸キニーネのいずれかを内服して殺滅する。薬剤耐性を獲得した熱帯熱マラリアでは抗生物質や前述の薬を併用する。予防法としてはハマダラカの活動時間帯に素肌を出さない、予防内服(流行地を訪れる際赤内型を殺す薬を服用して現地での発病を抑え、帰国後発病した場合は前述の根治療法を実施する)を行うなど。

2.左のA〜Eに関連する言葉を、右のa〜eと線で結べ。(10点) A.チクレロ潰瘍            a.ガンビアトリパノソーマ B.ウィンターボトム症候群       b.バンクロフト糸状虫 C.乳糜尿               c.オンコセルカ D.河川盲目症             d.シャーガス病 E.ロマーニャ徴候           e.リーシュマニア

*A-e:チクレロ潰瘍は皮膚リーシュマニアの別名でゴム園で働く労働者に外耳の潰瘍が多く見られることから使われるようになった言葉である(チクレとはゴムの木のこと)。  B-a:ツェツェバエの刺咬によりガンビアトリパノソーマが感染し、中期の病状に肝脾腫、リンパ節、特に項部リンパ節腫大を特徴とするウィンターボトム徴候が見られる。  C-b:バンクロフト糸状虫感染症の主症状の一つに乳糜尿がある。主症状としては急性の熱発作、慢性期の陰嚢水腫、象皮病、乳糜尿がある。  D-c:回旋糸状虫による感染症をオンコセルカ症または河川盲目症という。通常成虫は皮下のいわゆるオンコセルカ腫瘤のなかにとぐろを巻いて寄生している。そのため成虫そのものはたいした障害を起こさないが、産出された仔虫(ミクロフィラリア)が皮膚、眼球に侵入・集積し病害をもたらす。  E-d:クルーズ・トリパノソーマの侵入部分は媒介昆虫であるサシガメが好んで吸血する眼瞼部分が多く、眼瞼浮腫(特に片側性)初期症状として出現する頻度が高い。これは、ロマーニャ徴候とよばれ、シャーガス病の初期診断に役立つ。

5.最近北海道全体で、条虫症の一種である多包条虫症の患者が多数見られるようになった。多包条虫は成虫とならず幼生生殖をし、その病態の影響は甚大である。(20点) (1)多包条虫の生活史を書け(終宿主、中間宿主、ヒトへの感染経路を含めて) (2)ヒトへの病態(感染から発症まで、体内増殖、転移など)を説明せよ。 (3)この病気の予後は不良である。予防法について知るところを述べよ。 (1) 外界に排泄された虫卵が何らかのルートで中間宿主であるノネズミなどに摂食されると、六鉤幼虫は大部分が肝臓で包虫となり、分裂増殖する。ノネズミは終宿主であるキタキツネに捕食され、ヒトへの感染はキタキツネ、キツネの皮との接触や糞便中の虫卵が口に入ることによって起こる。 (2) ヒトが虫卵を摂取すると六鉤幼虫が腸壁に侵入し、門脈系により肝に定着して増殖する。またこれが壊れて原頭節が血流によって他臓器(肺、脳、腎、骨など)に運ばれ増殖することもある。肝包虫症では10年前後の潜伏期を経た後肝腫大が著明になり、肝機能障害を起こすようになる。その後、全身状態が悪化し、浮腫、高度黄疸、多くは悪液質に陥り、肝性昏睡で死亡する。 (3) キタキツネやネズミとの接触を避けて感染を防ぐ。あるいは集団検便をして早期発見に努めるなど。

6.日本住血吸虫は雌雄異体であり、常に雄が雌を抱くような形で門脈・腸管腔静脈内に寄生虫として感染する。雌は腸静脈内に産卵するが、成虫による病害より、虫卵による病害の方が程度がひどい。(10点) (1)肝臓における病害を軽症から重症まで説明せよ。 (2)血管中に排泄された虫卵がどのようにして糞便中に排泄されるかを説明せよ。 (1) 軽症はまず虫卵が細動脈を塞栓することによって起こる。塞栓した虫卵の周囲には炎症細胞浸潤が起こり、肉芽腫(虫卵結節という)が形成されて肝臓は腫大する。重症になると虫卵結節を中心に組織の繊維化が起こり、肝硬変へと移行して肝機能の低下をきたす。 (2) 産卵部位周辺の粘膜は壊死に陥り、潰瘍が形成されて腸管壁が脱落して粘血便などとして糞便中に排泄される。

3.症状をもたらす寄生虫を選択肢より選ぶ問題。5年くらい前の問題と同じらしいですロマーニャ徴候 クルーズ・トリパノソーマ(シャーガス病) ウィンターボトム症候群 ガンビアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病) チクレロ潰瘍 メキシコリーシュマニア 肝硬変 日本住血吸虫 肝吸虫 悪性貧血 広節裂頭条虫 裂頭条虫性貧血と呼ばれる悪性貧血 乳糜尿 バンクロフト糸状虫  血尿 ビルハルツ住血吸虫  ジャクソン型てんかん 単包虫・多包虫 ウェステルマン肺吸虫の脳肺吸虫症 異味症 鉤虫(ズヒニ鉤虫、アメリカ鉤虫) 盲目症 広東住血線虫 重症患者で視力障害、失明 新興寄生虫病 クリプトスポリジウム、アカントアメーバ、旋尾線虫など

もどる 寄生虫名   人に感染する直前の宿主(それがない場合には感染の様式) 寄生部位 症状・病変 マラリア ハマダラカ 経皮感染 血液、肝、脾 発熱、脾腫、貧血 トキソプラズマ ブタ、ヒツジ 経口感染 血液、リンパ管 先天性トキソプラズマ、全身性トキソプラズマ症、急性心筋炎 エキノコックス キツネ、イヌ 経皮感染 肝、肺 肝包虫症、肺包虫症 クリプトスポリジウム オーシストの経口感染 小腸 下痢 広東住血線虫 ナメクジ、エビ 経口感染 脳 好酸球性髄膜炎 アニサキス サバ、スルメイカ 経口感染 胃・小腸 アニサキス症 赤痢アメーバ 嚢子の経口感染 消化管 アメーバ赤痢、アメーバ性肝膿瘍 回虫 幼虫包蔵卵の経口感染 消化管 腹痛、レフレル症候群 有鉤条虫 ブタ、イノシシ 経口感染 消化管 脳嚢虫症、眼嚢虫症、皮下嚢虫症 オンコセルカ ブユ 経皮感染 皮下 オンコセルカ腫瘤、河川盲目症