肝胆膵 / 卒試 / 03 / 前半


肝胆膵

問題1.A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスに関して正しい記載はどれか。 a.慢性化することがある。 b.肝炎発症時にはウイルスは体内に残っていない。 c.経口感染する。 d.日本での若年者のA型肝炎ウイルス陽性者は年々少なくなっている。 e.E型は輸入感染症のみである。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e (解答)4 (文献:内科学 朝倉書店 第8版) a.? A型は慢性化することなく完全に回復する(p1100)。E型は通常発症1ヶ月で完治する(p1107) b.× HAVは潜伏期から発症初期までごく短期間排泄される(p1099) c.○ その通り d.○ 衛生状態の改善で少ないと考える。 e. × 問題2.C型肝炎に関して正しい記載はどれか。 a.日本国内で多く認められるウイルスのセロタイプは1型である。 b.C型急性肝炎のうち約2割は自然に治癒する。 c.慢性肝炎の主たる原因は母子感染である。 d.肝硬変にまで至るとインターフェロンでウイルスが消失しても肝硬変は進行する。 e.感染のごく初期からHCV抗体が陽性化する。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e (解答)1 a.○ 1b型が70 %、2a型は20 %、2b型は10%程度 b.○ c.× 輸血(注射)、移植、傷口からの侵入が主(朝倉p1104) d.? e.× HCV抗体は感染後1〜2ヶ月で検出できる(p1105) 問題3.肝硬変に合併しやすいのはどれか。 a.血球細胞の増加 b.血中アンモニアの上昇 c.高アルドステロン血症 d.高尿酸血症 e.高アルブミン血症 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e (解答)3 (参考文献:year note2002 B-46,47) a.× 脾機能亢進のため低下 b.○ 解毒が障害されるから c.○ d.? e.× 肝細胞の合成機能障害を反映するから(y note2002 B-47) 問題4.肝硬変の合併症で一番多いのはどれか。 a.心機能亢進 b.肝肺症候群 c.膵機能亢進 d.肝腎症候群 e.門脈圧亢進症 1) a 2) b 3) c 4) d 5) e (解答)e ? d.肝腎症候群は 肝硬変の9〜11%(朝倉 p1089) 問題5.経皮的肝癌治療法はどれか。 a.PEITまたはPEI b.Radiofrequency Ablation c.Catheter Ablation d.BRTO e.EISとEVL 1)a b 2)a e 3)b c 4)c d 5)d e (解答)1 a.○ 経皮的エタノール注入療法(PEIT= percutaneous ethanol injection therapy) b.○ RFA。ラジオ波は、腹部から病巣に長さ20センチほどの針を刺し、中波ラジオと同じ周波数が生み出す強力な高熱を放射し、がんを焼き殺す c.× カテーテルアブレーション。心疾患に対して行う治療法( C-55 ) d.× BRTO= balloon-occludedretrograde transvenous obliteration of gastric varices(バルーン下逆行性 経静脈的塞栓術)門脈圧亢進症による胃静脈瘤に対して。 e. EVL= endoscopic variceal ligation(内視鏡的食道静脈瘤結紮療法)、EIS= Endoscpic Injection Sclerotherapy(内視鏡的食道静脈瘤硬化療法) B. 肝胆膵 B - 25 B - 25 問題6.自己免疫性肝炎に関して誤った記載はどれか。 a.抗核抗体が陽性となるが抗ミトコンドリア抗体は陰性である。 b.組織学的に形質細胞の浸潤を特徴とする。 c.血清γグロブリン値またはIgG値の高値を認める。 d.薬剤服用を原則として認めない。 e.急性肝炎で発症するのは稀である。 1) a 2) b 3) c 4) d 5) e (解答)5? a.○ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性は、PBC(原発性胆汁性肝硬変)で陽性(朝倉p1128) b.○ 浸潤細胞に形質細胞が認められることが特徴(朝倉p1120) c.○ γグロブリンは平均2.69g/dl、IgGは平均3351mg/dlと高値を示す(朝倉p1120) d.? 原因のことか治療のことかこの記述のみでは判断しかねる。 e.× 日本では少ないが、1/3〜1/4は急性発症型という記載あり。 問題7.図1は腹部超音波検査で得られた写真です。考えられる組み合わせはどれか。 a.B型肝炎ウイルス b.劇症肝炎 c.アルコール d.脂肪肝 e.肝癌 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e (解答)4 アルコール性肝障害と脂肪肝ともにbright liver。副腎コントラスト(+) 問題8.症例は30歳、女性。10代で発症した再生不良性貧血のため、輸血歴がある。 今回CBCでWBC 3830, RBC 202万, Hb 6.1g/dL, 血小板 5万、血液生化学検査でアルブミンが3.2g/dL, AST/ALT 56/108U/L, ALP/γ-GTP 368/55U/L, 空腹時血糖120mg/dL, HbA1c 7.2%、凝固能でプロトロンビン時間が60%と肝機能異常を指摘され、血液内科から紹介となった。添付されたCTを図2に記す。この患者で下記の設問に正しい組み合わせはどれか。 a.腹部エコーの所見では、肝臓のエコーレベルは上昇している。 b.初の輸血は10-20年前であるから、輸血によるC型肝炎の危険性も考慮する必要がある。 c.フェリチンの値は2580ng/mL(正常は5-120)である。 d.CTで観察される腹水は浸出性よりも漏出性を疑い、かつ血性腹水のrule outが必要でる。 e.糖尿病を合併しており、その病態はいわゆる肝硬変時の高インスリン血症後のインスリン感受性低下から発生した膵臓の疲弊が中心である。 1)a b 2)a e 3)b c 4)c d 5)d e (解答)3 a.? b.○ HCVは輸血などの感染が多い c.○ 造血能低下により鉄の利用障害を来し、血清鉄・フェリチンの上昇(year note2002 G28) d.? e.× 空腹時血糖120mg/dL, HbA1c 7.2%だけではDMと診断できない 問題9.現在(検査時)の肝(実質細胞)の合成能をみるのに最も適切なものはどれか。 a.アルブミン b.コリンエステラーゼ c.ヘパプラスチンテスト d.プロトロンビン時間 e.コレステロール 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e (解答)4 2004卒試と同じ 問題10.血液検査にて、総ビリルビン 3.0mg/dl、直接ビリルビン 0.9mg/dlの結果を得た。考えられる疾患はどれか。 a.Rotor症候群 b.Dubin-Johnson症候群 c.Gilbert症候群 d.Crigler-Najjar症候群 e.溶血性貧血 1)a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5) a d e B. 肝胆膵 B - 26 B - 26 (解答)3 a.× 直接型。ビリルビンの肝細胞摂取および胆汁中への排泄障害(朝倉p1139) b.× 直接型。抱合型ビリルビンの胆汁中への排泄障害(朝倉p1139) c.○ d.○ グルクロン酸(UGT1A1)活性欠如による間接ビリルビン血症(p1136) e.○ 溶血により間接ビリルビン優位に上昇 問題11.トランスアミナーゼ AST、ALTについての解釈で正しいものはどれか。なお正常値はAST 13~33U/L, ALT 6~30U/Lである。 a.ASTは肝に特異的であるのに対して、ALTは肝以外で赤血球や筋肉にも存在する。 b.急性肝炎において、(1) AST/ALT=2000/1000と(2) AST/ALT=1000/2000では、 (1)の方がさらに病状(肝炎)が悪化する可能性が強い。 c.AST、ALTの上昇は肝実質細胞(肝細胞)の破壊を意味している。 d.C型肝炎の患者でALT 60、AST 70であった。これらトランスアミナーゼの値が低いので肝硬変症は考え難い。 e.ASTの半減期は約40時間で、ALTの約16時間に比べて長い。 1)a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e 解答:3) a × ASTは心筋細胞、骨格筋、赤血球にも豊富に存在するため、心筋梗塞、心筋炎、多発性筋炎、溶血性貧血にても、上昇する。ALTは比較的肝疾患に特異的である。(STEP) b.〇 ASTは細胞質、ミトコンドリアに分布しているのに対して、ALTは細胞質に限局している。そのため、ミトコンドリアが破壊されるほど重篤な肝障害ではAST/ALT比が1を超える。急性肝炎では病初期にAST>ALTとなり、黄疸の出現とともにAST<ALTとなる。(STEP) c.〇?上述及び、選択枝より。 d.× 肝硬変でのAST,ALTの上昇は比較的軽度(year note) e.× ASTの半減期は10~20時間、ALTのが40時間(year note) 問題12.アルカリフォスファターゼ(ALP)、γ-GTPについての解釈で正しいものはどれか。 a.これらの上昇は胆管の障害・病変、胆汁うっ帯を反映している。 b.これらの酵素は薬剤性肝障害でトランスアミナーゼに比して優位に上昇してくることがある。 c.ALPのアイソザイムには、主に骨型、肝型、胎盤型、肺型がある。 d.ALPはアルコール摂取にてその合成に誘導がかかり、上昇してくる。 e.γ-GTPはアルコール摂取にてその合成に誘導がかかり、上昇してくる。 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 解答:5) a.〇 b. 〇 薬剤性肝障害には、肝細胞障害型、胆汁うっ滞型があり、後者では胆道系酵素の増加が著明である。(year note) c. × ALPのアイソザイムには、肝型、骨型、胎盤型、小腸型がある。(year note) d. × e. 〇 γ―GTPはアルコール摂取でも上昇する。(STEP) 問題13.肝炎ウイルスに関する記述で正しいものはどれか。 a.A型肝炎ウイルスは経口感染する。 b.A型肝炎既感染であっても、再感染する可能性が高い。 c.B型肝炎ウイルスは性交によっては感染しない。 d.B型肝炎ウイルスの母子感染の率は高い。 e.C型肝炎ウイルスの針刺し事故による感染は、B型肝炎ウイルスの場合よりもその率は低い。 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 解答:5) a. 〇 b. × 罹患すると、HA抗体が産生され、通常10年以上体内に存在するため、再発は稀である。(終生免疫を獲得することも多い。) (year note) B. 肝胆膵 B - 27 B - 27 c. × d. 〇 Hbe抗原陽性妊婦の児は、抗HBヒト免疫グロブリン、HBワクチンを摂取しなければ、約95%以上、HBs抗原キャリアーとなる。(year note) e. 〇 針刺し事故感染率 HBV=30%,HCV=3%,HIV=0.3% (院内感染の講義プリント、手術部甲斐先生) 気を付けましょう!! 問題14.肝細胞癌に関する記述で正しいものはどれか。 a.肝細胞癌の腫瘍マーカーとしては、αフェトプロテインとCA19-9が有用である。 b.転移性肝癌との鑑別には67Ga-citrateによる肝シンチグラフィーが有用である。 c.腹部超音波検査では2cm以下の肝細胞癌の検出率は低い。 d.ダイナミックCTにおいて、肝細胞癌は肝動脈相で造影され、門脈相では造影されない為に、いわゆるhigh→lowパターンを示す。 e.肝細胞癌の症例の多くは肝硬変を発生母地として持っている。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答:5) a.× 肝細胞癌の腫瘍マーカーはPIVKA-II、AFP(year note) b.× 転移性肝癌との鑑別には血管造影を用いる。HCCはhypervascularであり、転移性肝癌はhypovascularである。(year note) c.× エコーで1cm程の肝細胞癌の発見も可能である。(year note) d.〇 e.〇 問題15.肝性脳症について正しい記述はどれか。 a.肝性脳症II度以上では羽ばたき振戦を認めることが多い。 b.肝性脳症では、尿素回路がうまく働かないために血中アンモニアが上昇している。 c.肝性脳症ではフィッシャー比が上昇してくる。 d.肝性脳症では、アミノ酸の異常バランスを補正するために、芳香族アミノ酸の輸液を行う。 e.肝性脳症では、合成2糖類(ラクチュロース等)を経口、または注腸を行う。 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 解答:4) a. 〇 (year note) b. 〇 (year note) c. × Fischer比(分枝鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸)は肝不全が重症であるほど低い傾向にある。d. × 分枝鎖アミノ酸製剤(Fischer液)を用いる。(year note) e. 〇 腸管のpHを下げ下痢を起こさせるより腸内細菌による有害窒素化合物の生成を阻止して、高アンモニア血症を緩和する。(year note) 問題16.劇症肝炎について正しい記述はどれか。 a.血漿交換は劇症肝炎の治療において有用である。 b.劇症肝炎とは、症状発現後8週間以内に高度の肝障害に基づいて肝性脳症II度以上の脳症を来し、プロトロンビン時間40%以下を示すものである。 c.劇症肝炎で発症後10日以内に脳症を発現する急性型のほうが、それ以降に脳症が発現する亜急性型より予後が良い。 d.A型肝炎のほうがB型肝炎より、劇症化しやすい。 e.劇症肝炎は肝移植の対象とならない。 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 解答:1) a.〇 肝機能低下に伴う、T-Bil,NH3等貯留毒素の改善のため血漿交換を行う。(year note) b.〇 (year note) c.〇 生存率30%弱(急性型が50%強、亜急性型が焼く10%) (year note) d.× B型肝炎が最も劇症化しやすい。 e.× 45歳以下の亜急性型には肝移植の適応がある。 B. 肝胆膵 B - 28 B - 28 問題17.34歳の男性。10日前に39度の発熱があり、感冒と思い市販薬を服用していた。家族に黄疸を指摘され5日前に来院し入院した。入院後、全身倦怠感と食欲不振とが急激に増強してきた。昨日から昏睡状態となった。呼気にアンモニ臭がある。血清生化学所見:総ビリルビン 14mg/dl, AST 1260U/L(正常40以下), ALT1460U/L(正常35以下), プロトロンビン時間 15%(正常 80~120)。IgM型HA抗体陽性、IgG型HA抗 体陽性、HAV-RNA陰性、IgM型HBc抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、HCV-RNA陰性であった。以下の記述で正しいものはどれか。 a.劇症肝炎の急性型である。 b.劇症肝炎の亜急性型である。 c.重症肝炎であるが劇症肝炎ではない。 d.性交により感染したと考えられる。 e.経口感染したと考えられる。 1) a b 2)a e 3) b c 4) c d 5) d e 解答:2) a.〇 発病してから10日以内に脳症が発現しているので急性型である。(year note) b.× c.× 昏睡は肝性脳症IV度である。(year note) d.× e.〇IgM型HA抗体陽性、IgG型HA抗体陽性だから 問題18.64歳の男性。2ヵ月前から始まった倦怠感、食欲不振を主訴として来院した。胸部にクモ状血管腫、手掌紅斑を認めた。肝は触知しなかった。白血球3000/mm3,赤血球 350万/mm3, 血小板 6万/mm3, 総ビリルビン 1.2mg/dl, アルブミン 3.0mg/dl, AST 69U/L, ALT 48U/L, ヘパプラスチンテスト 45%(正常80以上),αフェトプロテイン 350ng/dl(正常10以下), CA19-9, CEAはともに正常範囲内、 HBs抗原陰性、HCV抗体陽性であった。腹部エコーにて肝左内側区域に直径2cmの低エコーを呈するSOL(space occupied lesion)を認めた。以下の記述で正しいものはどれか。 a.エコー上のSOLは肝血管腫である可能性が最も高い。 b.エコー上のSOLは胆管癌である可能性が最も高い。 c.エコー上のSOLは肝細胞癌である可能性が最も高い。 d.SOL以外の肝は肝硬変である。 e.SOL以外の肝は慢性肝炎である(肝硬変ではない)。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答:4 a.× 肝血管腫では、境界明瞭な高エコー像を呈する。(year note) b.× 胆管癌には特異的なエコー像は無い。(year note) c.〇 d.〇 クモ状血管腫、手掌紅斑が認められるから。(year note) e.× 問題19.28歳女性。全身倦怠感、食欲不振があり来院した。昨年までの年1度の会社検診では少なくともここ5年間AST、ALT、γGTPの異常は指摘されたことがない。家族歴として母親が肝臓病で通院している。飲酒はしない。半年前に結婚したが、配偶者の肝障害の有無は不明である。来院時の検査所見は、AST 450U/L, ALT300U/L, γGTP 100U/L, IgM-HA抗体陰性、HBs抗原陽性、HBs抗体陰性、HBe抗原陽性、HBe抗体陰性、HBc抗体陽性(200倍希釈にても陽性)、IgM-HBc抗体陰性、HCV抗体陰性、HCV-RNA陰性であった。下記のうち正しい記述はどれか。 a.B型肝炎ウイルス非キャリアーから発症したB型急性肝炎。 b.B型肝炎ウイルスキャリアーからのB型肝炎発症(急性増悪)。 c.母子感染(垂直感染)である。 d.経口感染である。 e.配偶者からの性交を介した感染である。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e 解答:3 キャリアー(母子感染) の急性憎悪 中牟田先生のノートよりヘルシーキャリアはHBsAg?(+)、HBsAb?(-)、HBeAg?(+)、HBeAb?(-)、HBVウイルス量(+++) 。キャリアーの血清の場合、HBcAb? が200倍に希釈してもまだ陽性になるくらい大量に存在。 B. 肝胆膵 B - 29 B - 29 問題20.検診にて肝機能障害とHCV抗体陽性を指摘された患者が来院した。自覚、他覚症状ともにない。当院での検査結果はAST 80IU/L, ALT 60IU/L, ALP 380U/L(正常115-359), γ-GTP 50, 総蛋白 8.0g/dl, アルブミン3.6g/dl, ヘパプラスチンテスト 60%(正常80%以上), 血小板 7万/mm3, AFP 350ng/mlであった。今後進めていくべき検査はどれか。 a.脳波検査 b.腹部エコー検査 c.腹部CT検査 d.上部消化管内視鏡検査 e.心電図検査 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 解答:2) a.× 肝性脳症の徴候が認められないから。 b.〇 肝臓の萎縮、変形を見るために行う。(step) c.〇 肝細胞癌の探索(step) d.〇 食道胃静脈瘤の精査のために行う。(step) e.× 問題21.62歳の男性。倦怠感、食欲不振、腹部膨満を主訴として来院した。総ビリルビン 3.2mg/dl, アルブミン 2.8g/dl, AST 49U/L, ALT 38U/L, ヘパプラスチンテスト 35%(正常80以上), HBs抗原陰性、HCV抗体陽性であった。図3左に腹部エコー(右肋間操作)を、図3右に腹部CTを示す。以下の記述で正しいものはどれか。 a.慢性肝炎である。 b.代償性肝硬変(Child A)である。 c.非代償性肝硬変(Child B)である。 d.腹水を認める e.腹水を認めない。 1) a b 2)a e 3) b c 4) c d 5) d e 【解答】4 【解説】 a.× b.× c.○ 腹水(+)、血清ビリルビン、血清アルブミン、ヘパプラスチンテストより非 代償性肝硬変(ChildB)に分類される。 d.○ e.× 明らかな腹水を認める(参考文献:朝倉内科学) 問題22.αフェトプロテイン高値(500ng/ml)のC型肝硬変患者に腹部造影CTを施行した。図4左は動脈相(early phase)図4右は門脈相(delayed phase)である。最も考えられる診断はどれか。 a.大腸癌肝転移 b.胆管癌 c.肝細胞癌 d.胆嚢癌 e.肝血管腫 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e 【解答】 3 【解説】 αフェトプロテインは肝細胞癌のマーカーであること、造影CTにてhigh(early) . low (delay) patternを示していることより肝細胞癌であると考えられる。 問題23.正しい記述はどれか。 a.尾状葉は肝右葉に含まれる。 b.右肝静脈は前区域と後区域の境界を走行する。 c.Arantius管は肝前区域と内側区域の境界を走行する。 d.Couinaud分類のS6は前区域に属する。 e.中央二区域とは後区域および内側区域のことである。 1)a 2) b 3) c 4)d 5) e 【解答】2 【解説】 a.× 肝臓は解剖学的には肝鎌状間膜で機能的にはCantlie lineで右葉と左葉に分けられる。 b.○ 前区域と後区域の境界を走行するのは右間動脈と門脈である。 c.× 外側区域と尾状葉の間を走行する。Arantius管とは胎生期に臍静脈と下大静脈を結ぶ静脈管のことであり、出生後には閉鎖して静脈間索となる。 d.× Couinaud分類では尾状葉がS1、外側区域がS2・3、内側区域がS4、前区域がS5・8、後区域はS6・7である。 e.× 後区域ではなく前区域である。 (参考文献:朝倉内科学、日本人体解剖学) 問題24.正しい組み合わせはどれか。 a.Pringle法:肝臓の止血法 b.Couinaud:肝臓の区域 c.Cantlie:右肝静脈 d.S2とS3(外側区域):発生学的に同一 e.短肝静脈:門脈系へのシャント 1)a b 2) a e 3) b c 4) c d 5) d e B. 肝胆膵 B - 30 B - 30 【解説】 1 【解答】 a.○ 肝門部の血流を遮断する方法である。 b.○ 肝臓を尾状葉、外側区域、内側区域、前区域、後区域に分類する。 c.× 下大静脈―胆嚢窩を結ぶ線である。 d.? e.? (参考文献:朝倉内科学) 問題25.転移性肝癌について正しい記述はどれか。 a.大腸癌の肝転移の切除後の5年生存率は40%程度である。 b.肺癌や乳癌の肝転移は、肝切除の適応となることが少ない。 c.大腸癌の肝転移は、多発性であってもできる限り切除した方がよい。 d.転移性肝癌は、新生血管が発達した癌なので肝動脈塞栓(TAE)の良い適応である。 e.多発性の大腸癌肝転移は、肝移植の適応である。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 【解答】1 【解説】 a.○ b.○ 転移性肝癌で肝切除の適応となるのはほとんど大腸がんの転移の場合である。 c.× 多発性でも切除することはあるが一葉内に限るなどの条件がある。 d.× 転移性肝癌は血行に乏しい。 e.× 肝移植の禁忌として肝胆道系以外の悪性腫瘍、重症感染症、多臓器不全がある。 (参考文献:朝倉内科学、消化器疾患最新の治療2003~2004) 問題26.肝膿瘍について正しい記述はどれか。 a.感染経路は門脈系由来が多い。 b.起炎菌はグラム陰性菌が多い。 c.アメーバ性肝膿瘍は、細菌性肝膿瘍に比べ単発性が多い。 d.単発の肝膿瘍に対しては、肝切除が第1選択である。 e.肝膿瘍では、黄疸が初期から出現することが比較的多い。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 【解答】 3 【解説】 a.× 胆道系からのほうが多い。 b.○ E.coliが2/3を占める。 c.○ 95%が単発性。 d.× エコーガイド下のドレナージ、抗生物質の局注が第一選択である。 e.× 肝膿瘍の三主徴として発熱、右季肋部痛、肝腫大があるが黄疸が初期から出現することは少ない。 (参考文献:朝倉内科学) 問題27.肝血管腫について正しい記述はどれか。 a.肝血管肉腫の合併は約1%である。 b.MRIのT1強調画像において、境界明瞭なhigh intensityを呈する。 c.Kasabach-Merritt症候群は汎血球減少を伴い手術適応となる。 d.肝動脈造影ではcotton wool-like signを示す。 e.超音波検査ではbull's eye signを示す。 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e 【解答】 4 【解説】 a.? b.× T1ではなくT2強調画像で見られる。 c.× 巨大血管腫とDICを合併する症候群で血小板減少を伴う。 d.○ 造影剤のpoolingの所見である。 e.× 転移性肝癌で見られる所見である。 問題28.肝細胞癌の治療について正しい記述はどれか。 a.経皮的エタノール注入療法の適応は3cm以下の肝癌である。 b.マイクロ波凝固療法は3cm以上の肝癌に対して良い適応である。 c.カルチノイドの肝転移は化学療法が第一選択である。 d.門脈本管閉塞を伴う肝癌に対するTAEは有効である。 e.ICGが30%以上の場合、肝切除術はできない。 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e B. 肝胆膵 B - 31 B - 31 【解説】 1 【解答】a.○ 3センチ以下、3個以下が適応である。 b.× 3~4センチまでの肝癌に対して行われる。 c.× 化学療法は有効でないため手術が第一選択となる。 d.× 門脈本管閉塞を伴う場合TAEは禁忌である。 e.× 原則的にICGが30%をこえると手術は行わないが40%程度でも核出術を行うこともある。 問題29.肝細胞癌について正しい記述はどれか。 a.門脈から栄養されることが多い。 b.リンパ節転移が多い。 c.高分化癌では肝内転移がほとんどない。 d.高分化癌では被膜を持つことが多い。 e.高分化癌では血管新生を特徴とする。 1) a 2) b 3) c 4) d 5) e 【解答】 4 【解説】 a.× 肝動脈から栄養される。 b.× 血行性転移が多い。 c.×肝癌の転移は肝内転移が最も多い d.○高分化癌は比較的小さく、被膜を持つことが多い。 e.× 低分化癌によく見られる。 (参考文献:朝倉内科学) 問題30.リピオドリゼーションについて正しい記述はどれか。 a.肝機能にかかわらず行える。 b.初期の高分化型肝癌に十分な効果がある。 c.被膜浸潤部への効果はあまり期待できない。 d.脈管浸潤部への効果はあまり期待できない。 e.胆嚢炎、胃潰瘍を生じることがある。 1) a b c 2) b c d 3) c d e 4) a b e 5)a d e 【解答】? 【解説】a.× 門脈の閉塞や高度の肝不全があるときには行えない。 b.? c.○ d.○ e.? 問題31.32. 60歳女性、5年前に右肺癌にて右肺上葉切除を施行。今回、follow-upのため胸腹部CTを施行したところ、肝臓に径約2cmのSOLを指摘され入院となった。20年前に輸血歴有り。血算・凝固系:赤血球 385万, 白血球 2850μL, 血小板 8.5万/μL, プロトロンビン時間 70%。血液生化学:アルブミン 3.4g/dl, 総ビリルビン1.2mg/dl, AST 76IU/L, ALT 120IU/L, AFP 15ng/ml, PIVKA-II 35mAU/ml(正常40mAU以下), CEA 1.5 ng/ml(正常2.5以下), ICG(15分値) 20%, HBs抗原(-)、HCV抗体(+)。CTA、CTAP、MRI(T1強調)を示す(図5)。 問題31.次の中で可能性の最も高い診断はどれか。 a.肝血管腫 b.転移性肝癌 c.肝内胆管癌 d.肝限局性過形成 e.肝細胞癌 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e 問題32.処置として適切なものはどれか。 a.Lipiodolization b.経皮的ラジオ波焼灼術 c.肝亜区域切除 d.肝右葉切除 e.経過観察 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 問題31 解答 5 解説 a. × 造影CTにてlate phaseにおいてもhigh densityを示し、MRIにて著明なT2延長を示す。 b. × 多発性のことが多い。Low densityであり、LCの合併はまれである。 c. × ring状enhanceを示す。 d. × 若い女性に多く、星芒状の線維化やspoke wheel appearanceを示す。e. ○ CTAPで低吸収となり、plain CTでlow、造影CTでhighなSOLとなる。 問題32 解答 3 CTの画像がはっきりしないが、大きさとして大きくなく(3cm以下)、孤立性の病変であると考えられるので、解答を1)とした。肝細胞癌の手術適応として、ICG15分値が20〜29% なので亜区域切除可能。Lipiodolizationは壊死区域が不明確なので外科手術可能なら施行。 B. 肝胆膵 B - 32 B - 32 問題33/34.症例48歳、女性。生来健康であったが、検診のエコーにて肝に腫瘤を指摘され、入院。血算・凝固系:白血球 4200, ヘモグロビン 13.5g/dl, 血小板 24万, プロトロンビン時間 11.2秒(98%)。血液生化学:総タンパク 7.2g/dl, アルブミン4.5g/dl, AST 12 IU/L, ALT 10IU/L, ICGR15 6.5%, AFP 7.0ng/ml, PIVKA II 11mAU/ml, CEA 1.2 ng/ml, HBs Ag (-), HCV Ab (-)。CT(図6A)と血管造影を示す。(図6B) 問題33.正しい診断はどれか。 a.肝血管腫 b.肝細胞癌 c.肝内胆管癌 d.肝細胞腺腫 e.FNH(限局性結節性過形成) 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e 問題34.治療法として適切なものはどれか。 a.肝切除 b.経皮的ラジオ波焼灼術 c.肝動脈塞栓術 d.Lipiodolization e.経過観察 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e 問題33 解答 1) 解説 選択肢は問題31とほぼ同じである。造影CTにてhighなSOL、血管造影にてcotton-wool appearanceを認めるため、肝血管腫であると考えられる。(New外科) 問題34 解答 5) 解説 肝血管腫の治療方針として、10cm以下の病変に関しては経過観察でよいとなっている。しかし、背景に肝炎ウイルス感染をもち、かつ進行した肝繊維化を有するhigh echoic lesionは肝細胞癌の可能性が高く、厳重なfollow upが必要である。本問においては、背景となるような肝臓の機能低下を示すものはなく、経過観察でよいと考える。(朝倉・New外科) 問題35.次のうち正しい記述はどれか。 a.食道静脈瘤形成に最も関与している供血路は右胃静脈である。 b.肝硬変による門脈圧亢進は肝内前類洞性に分類される。 c.胃静脈瘤のほとんどは奇静脈系と交通している。 d.下肢静脈瘤の形成に門脈圧亢進は関与していない。 e.門脈圧亢進症の患者では循環血液量が増加している。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答 4) 解説 a. ×右→左 b. ×肝内前類洞性→肝内後類洞性 c. ○ d. ○ e. ×増加→減少(New外科) 問題36.次のうち正しい記述はどれか。 a.胃静脈瘤は主に胃の前庭部にできることが多い。 b.食道胃静脈瘤の治療の1つとして、内服薬による薬物療法がある。 c.食道胃静脈瘤出血の際にSB-tubeを使うのも1つの手段である。 d.正常健人の脾重量は約300gである。 e.門脈圧亢進症に起因する静脈瘤は食道と胃にしかできない。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答 3) 解説 a. × 前庭部→上部 b. ○ バゾプレッシンにより、腹腔内細動脈を収縮させ、門脈圧を下げる。 c. ○ d. × 300g→100〜150g e. × 痔核や腹壁皮下静脈にも出来る。(New外科) 問題37.下記の画像をみて以下の問いに答えなさい。 65歳男性。昨日、洗面器一杯の吐血をしたとのことで来院した。普段よりアルコール多飲歴があるとのこと。上部消化管内視鏡で図7のような所見が得られた。次のうち誤った記述はどれか。 a.食道静脈瘤よりの出血である。 b.RC signを認める。 c.内視鏡的食道静脈瘤結紮術は次に行う処置の一つの選択肢である。 d.肝機能を評価することが重要である。 e.上部消化管内視鏡は不用意に施行すべきでない。 1) a 2) b 3) c 4) d 5)e B. 肝胆膵 B - 33 B - 33 解答 5) 解説 上部消化管内視鏡の所見で、食道静脈瘤が確認できる。これは、長年にわたる飲酒歴から考えて、アルコール性の肝硬変から来る門脈圧亢進の影響であると考えられる。これにより、選択肢のうち、a・b・c・dは正しいと考えられ、出血部位やその状況の把握、内視鏡下での処置の必要性を考えると上部消化管内視鏡は必要な処置であると考えた。(New外科) 問題38.次の文章のうち誤ったものはどれか。 a.胆汁脂質は胆汁酸塩、コレステロール、およびビリルビンからなる。 b.ビタミンCの吸収には胆汁酸が必要である。 c.胆汁酸が欠乏するとコレステロール合成が増加する。 d.HMG-CoA還元酵素阻害剤により高コレステロール血症を治療することができる。 e.ケノデオキシコール酸の経口投与によりコレステロール胆石を溶解しうる。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答 1 解説a.×胆汁脂質=総胆汁酸、総コレステロール、リン脂質。b.×c.?腸管切除、炎症性腸疾患、コレスチラミン等により胆汁酸吸収が阻害されると、コレステロールからの胆汁酸合成が増加(Negative feedback regulation).d.○HMG-CoA還元酵素はコレステロール合成過程で、肝細胞内でアセチルCoA から合成されたHMG-CoAをメバロン酸に還元する。e.○ 問題39.次の文章のうち誤ったものはどれか。 a.クローン病では胆汁酸の吸収障害が起こる。 b.胆汁酸が欠乏すると難治性の下痢が起こる。 c.原発性胆汁性肝硬変では、ケノデオキシコール酸による治療が有効である。 d.ウルソデオキシコール酸はコレステロールを複合ミセルとして可溶化させる。 e.胆汁酸は主に回腸末端より吸収される。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答 4 解説 a. ○ 胆汁酸の吸収は回腸の末端で行われているために小腸に病変が及ぶと吸収障害が起こると 考えられる。 b.○ c. ×ケノデオキシコール酸→ウルソデスオキシオール酸 d. ×ウルソデオキシコー ル酸は利胆剤。胆汁量、流れをよくし、胆管・胆嚢の緊張を和らげる。 e. ○(New外科) 問題40.次の文章のうち誤ったものはどれか。 a.抱合型ビリルビンはUDP glucuronyl transferaseにより脱抱合される。 b.Dubin-Johnson症候群では直接ビリルビンが増加する。 c.ポルフィリンは分子の中央に鉄原子を1個含んでいる。 d.閉塞性黄疸では尿中ウロビリノーゲンが陰性となる。 e.間接ビリルビンはグロブリンと結合した形で血液中に存在する。 1) a b 2) a e 3) b c 4) c d 5)d e 解答? 2 解説a.×抱合する酵素 b. ○ c. ○ d. ○ e. ×アルブミン(New外科)