肝胆膵 / 概説 / 03 / 前半


肝胆膵

2003年度概説試験(復元) 問題1 現在ワクチンが有効な肝炎ウイルスはどれか。 a.A型肝炎 b.B型肝炎 c.C型肝炎 d.D型肝炎 e.E型肝炎 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 1 解説 HAV…不活化ワクチンがある HBV…ワクチンあり、母子感染の予防など HCV…escape mutantが起こりやすく、ワクチン開発は困難 HDV…HBVによるヘルパー作用を必要とする不完全ウイルス。HBVワクチンが有効。 問題2.A型肝炎に関して正しい記載はどれか。 a.ALT上昇後に便中にウイルスが排泄される。 b.日本では若年層での感染率が高い。 c.肝機能正常のキャリアが存在する。 d.感染の流行に季節性がある。 e.一度感染すると終生免疫を得る。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 5 解説 a…× 潜伏後期に大量のウイルスを排泄。→ALT上昇期に低下し、ピーク時には排泄停止。 b…× 不顕性感染率が高いが、加齢とともに顕性感染比率が上昇。 c…× 決して慢性化しない。→キャリアも存在しない。劇症化することは稀だがある。 d…○ 1〜4月に好発。3、4月にピーク。ただ季節性の変動は少なくなってきている。 問題3.B型肝炎に関して誤っている記載はどれか。 a.肝機能正常のキャリアが存在する。 b.最近は急性肝炎の原因としては性行為が多い。 c.母子感染による垂直感染以外では一過性感染に終わる。 d.HBs抗体陽性になると,体内から完全にウイルスは排除される。 e.HBe抗原陽性からHBe抗体陽性に変わることをseroconversionと言う。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 ? 解説 a…○ 母子感染により免疫寛容が成立し、ヘルシーキャリアとなる。 b…○ c…× 免疫の未熟なうち(〜3歳くらい)の感染は慢性化する。 d…○ e…× seroconversionは抗原が消失してそれに対応する抗体が出現する現象。「HBs抗原」を「HBe抗原」に変えれば○。 問題4.慢性肝炎に関して誤っている記載はどれか。 a.6ヶ月以上の肝機能異常とウイルス感染性が持続している病態である。 b.慢性肝炎で全く症状が無いことは稀である。 c.組織学的には門脈域の好中球浸潤と肝小葉の細胞変性・壊死が特異的である。 d.新犬山分類でのF4A2は肝硬変である。 e.慢性肝炎の状態からの発癌は肝硬変より低い。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 3 解説 a…○ 非ウイルス性肝炎もあると思うが、プリントにそう書いてあるし…。「慢性肝炎」というのがウイルス性のもの、と定義する教科書もあるらしい。 b…× 多くは自覚症状を認めない。(肝臓の予備能は非常に大きいため。) c…× リンパ球が浸潤細胞の中心。肝実質細胞に種々の程度の変性、壊死が起こるのは正しい。 d…○ F4=肝硬変、A2=中等度の壊死・炎症。FはフィブリンのFで0〜4、Aは0〜3。 e…○ HCVでは慢性肝炎からの発癌はないが、HBVではあり得る。 B. 肝胆膵 B - 79 B - 79 問題5.アルコール性肝障害で正しい記載はどれか。 a.アルコール5合10年間の大酒家は肝硬変になる可能性が高い。 b.女性は男性より同じ摂取量の場合、アルコール性肝障害は軽くなる。 c.一般に抗生物質ではAntabuse作用は認められない。 d.アルコール性肝障害の特徴はALTがASTより高くなりγGTPが上昇する。 e.アルコール硝子体はアルコール性肝炎で認められる。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 2 解説 a…○ 常習飲酒家は3合・5年以上(脂肪肝になる可能性が高い)、大酒家は5合・10年以上。 b…× 女性は男性の2/3の量で肝障害が現れるといわれる。 c…× セフェム系抗生物質で認められる。アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害する嫌酒作用のこと。 d…× ASTが優位。 e…○ アルコール硝子体=Malloly体。細胞核周辺部に認められる不整形の好酸性物質。アルコール性肝炎の代表的所見だが常に出現するわけではない。 問題6.自己免疫性肝炎に関して誤っている組み合わせはどれか。 a.持続性または反復性の血清トランスアミナーゼの高値 b.組織学的には慢性肝炎あるいは肝硬変(時には急性肝炎像) c.男女比は1:2 d.血清アルブミン値またはIgA値の高値 e.自己抗体(特に抗核抗体、抗平滑筋抗体など)が陽性 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 4 解説 c×圧倒的に女性に多い。1:9くらい。 d×著明な高γ-グロブリン血症。血清アルブミンは低下。 問題7.原発性胆汁性肝硬変に関して誤っている記載はどれか。 a.抗ミトコンドリア抗体が陽 b.胆道系酵素(ALP,γGTP)の上昇 c.Chronic non-suppurative destructive cholangitis d.Onion-skin Fibrosis e.発症は中年女性に多い 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 4 解説 b○ 胆汁鬱滞の所見を示す。c○ 慢性非化膿性破壊性胆管炎。原発性胆汁性肝硬変は病理学的にはこう呼ばれる。d× 全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴的所見。 e○ 男女比は1:9。 問題8.Wilson病と関係しないものはどれか。 a.銅 b.セルロプラスミン c.偏光顕微鏡 d.D−ペニシラミン e.溶血発作 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 3 解説 Wilson病=全身の組織、特に肝、脳、腎、角膜などに銅が過剰に蓄積する常染色体劣性遺伝病。 b○ 肝臓でのセルロプラスミン合成が低下→銅が消費されにくくなる。d○ Wilson病の第一選択薬。重金属をキレートする。e○ 血中に大量放出された銅が赤血球膜を障害→溶血。 問題9.肝臓の解剖でただしいものはどれか。 a.肝臓は右葉と左葉の2葉より構成されている。 b.臨床的に肝右葉と左葉はCantlie’s lineで分けられる。 c.臨床的肝区域は、尾状葉、左葉外側区域、左葉内側区域、右葉前区域、右葉後区域に分けられる d.Cantlie’s lineは解剖学的肝円索(肝鎌状靭帯)と一致する。 e.Cantlie’s lineは頭側は大動脈、足側は胆嚢(底部)で結ばれたものである。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de B. 肝胆膵 B - 80 B - 80 解答 3 解説 a×尾状葉を入れて3葉。 d×解剖学的左葉は外側区域と一致。e×大動脈ではなく下大静脈。 問題10.肝臓における代謝について正しいものはどれか。 a.肝硬変症が進行すると糖尿病が合併してくる。 b.アミノ基転化などで生じたアンモニアは主に肝臓の尿素回路で尿素窒素に変換される。 c.I型糖原病であるvon Gierke病は1−4結合したグリコーゲンを分解する酵素が欠損しており、全身特に筋肉でのグリコーゲンの蓄積が著明で低血糖は示さない。 d.中性脂肪(トリグリセライド)は1個のグリセロールと4個の脂肪酸より構成される。 e.アポ蛋白とは、リン脂質で覆われた粒子内にコレステロールや中性脂肪を内包したもので、そこに存在(突き刺さった)する蛋白をリポ蛋白という。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解説 1 解説 a○ 肝臓での取り込みが低下し、血中に糖が増える。c× これはII型(Pompe病)。I型はグルコース6−フォスファターゼの欠損でグルコースが不足する。低血糖とグリコーゲン蓄積による肝腫大がみられる。 d× 脂肪酸は3個。 e× アポとリポが逆。 問題11.以下の記述で正しいものはどれか。 a.胆汁酸は中性脂肪を原料に作られ、7α hydroxylaseにより1次胆汁酸である、コール酸とケノデオキシコール酸が生成される。 b.脾臓で破壊された老廃赤血球に由来する直接型ビリルビンは肝臓で抱合(主にグルクロン酸抱合)を受け、間接型ビリルビンになり胆汁中に排泄される。 c.総胆管の完全閉塞による黄疸の場合、直接型ビリルビンが優位に上昇し、検尿では、ビリルビン、ウロビリノーゲンともに陽性となる。 d.Gilbert症侯群では、絶食によりビリルビン値が上昇する。 e.Dubin-Johnson症候群では、黒色肝、BSP試験での再上昇が認められる。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 5 解説 a× 中性脂肪ではなくコレステロール。 b× 直接型と間接型が逆。c× ビリルビンは強陽性になるが、ウロビリノーゲンは陰性。 d○ 間接型上昇。e○ 直接型上昇。 問題12.黄疸のある患者が来院した。検尿を施行したところ、尿中ウロビリノーゲン(N)[正常]、尿中ビリルビン(+++)[強陽性]であった。この結果より考えられる病態はどれか。 a.完全閉塞性黄疸 b.溶血性黄疸 c.重症肝炎 d.非代償性肝硬変症 e.新生児黄疸 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 1 解説 閉塞のせいでビリルビンが腸管に排出されず、血中ビリルビン濃度が増加したことを反映。この場合ウロビリノーゲンは陰性となり、尿中にビリルビンが出現。(ウロビリノーゲンは0も正常範囲のはずなのでこれを正解と考えました。) ちなみに溶血黄疸、新生児黄疸はウロビリノーゲン高値でビリルビン低値。これらはビリルビンが増えても腸管に出て細菌による還元を受け、ウロビリノーゲンに代謝されるから。 B. 肝胆膵 B - 81 B - 81 問題13.肝機能(血液)検査において正しいものはどれか。 a.肝硬変症になってくると脾機能亢進のために血小板数が減少し10万/mm3を切ってくることが多い b.AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇はいずれも肝障害(肝細胞破壊)を意味しているが、ASTは肝特異的である。 c.急性肝炎において、(1)AST/ALT=1000/2000と(2)AST/ALT=2000/1000では、(1)の方がさらに病状(肝炎)が悪化する可能性がある。 d.ALPはアルコールの常用において誘導され、上昇する。 e.ALP、γ−GTPの上昇は胆道系の障害を意味している。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 2 解説 b× 逆。ASTは心筋や骨格筋、赤血球にも含まれている。c× ASTがはじめに上昇し、ALTはそれに遅れて上昇。つまりASTが優位なうちはまた病状がピークを迎えていない、と考えられる。d× それはγ−GTP。 問題14.肝疾患と免疫グロブリンの関係で正しい組み合わせはどれか。 a.IgE高値:急性A型肝炎 b.IgM高値:原発性胆汁性肝硬変症 c.IgG高値:自己免疫性肝炎 d.IgA高値:アルコール性肝硬変症 e.IgG高値:薬剤性肝炎 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 2 解説 肝臓ノート33ページ以降を読みましょう。 a…× A型肝炎に特徴的なのはIgMの上昇。 b…○ 血中抗ミトコンドリア抗体、慢性非化膿性破壊性胆管炎と共に特徴的な所見。 c…○ 最も特徴的な所見は自己抗体で抗核抗体、抗平滑筋抗体があることが多い。 d…○ ほかにAST優位の血清トランスアミナーゼ上昇、γGTP上昇、ALPの上昇など。 e…× 薬剤性肝炎はIgE高値。(アレルギー反応の関与するもの) 問題15.肝炎ウイルスに対する記述で正しいものはどれか。 a.B型肝炎ウイルスは血液や性交を介して感染する。 b.肝障害で運ばれた患者のHBs抗原陽性、IgM−HBc抗体(強)陽性であった。B型急性肝炎と診断される。 c.AST,ALT等の肝機能検査は正常であったが、HBs抗原陽性,HBe抗原陰性,HBe抗体陽性,HBc抗体(200倍希釈)陽性であった。HBe抗体、HBc抗体陽性であるので、B型肝炎既感染と考えられた。 d.肝障害の患者で、HCV抗体陽性であった。この抗体は中和抗体であるので、既感染はありC型肝炎ウイルスが今回の肝障害の原因である可能性は低い。 e.肝障害はないが、HCV抗体陽性、HCV−RNA陰性であった。抗体陽性であり、HCVが存在する可能性が高い。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 1 解説b…○ まずHBs、HBe抗原が陽性となり、続いてIgM−HBc抗体が陽性となる。肝炎の終息とともにHBe抗原は陰性化しHBs抗原が陽性化。問題文の条件で確定診断。 c…×? HBs抗体陽性ならB型肝炎既感染。 d…× HCV抗体はHBs抗体と異なり中和抗体ではなく、持続感染患者ほど抗体価は高くなる。 e…× HCV抗体が陽性というだけではウイルスが存在する証拠にはならない。HCV−RNA陰性=HCVが存在する可能性が低い。 B. 肝胆膵 B - 82 B - 82 問題16.以下に記述するもので、その判断として正しいものはどれか。 a.C型肝炎の患者でALT 60IU/l、AST 50IU/lであった。これらトランスアミナーゼの値が低いので肝硬変症は考え難い。 b.肝障害を指摘され外来を患者が受診した。診察上、黄疸は認めなかったが、明らかな手嘗紅班、クモ状血管腫を認めた。肝硬変症を念頭に諸検査を進めるべきである。 c.AST 60IU/l、ALT 50IU/l、血小板5万/mm3、γグロブリン22%であった。肝硬変の可能性は低いと考えられる。 d.C型肝硬変患者のエコー検査はAST,ALT等の肝機能が落ち着いていれば1年に1回で十分である e.腹部エコー検査で直径約1cmのSOLを認めたが、AFP(αフェトプロテイン)は、全くの正常範囲内であり肝癌の可能性は低いと考えられた。 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 2 解説 a…× ALT、ASTは40以下を正常と考える、とのことなので低くない。 e…× 肝細胞癌の3〜4割でしか陽性にならない。 問題17.以下の記述で正しいものはどれか。 a.弁置換術を受け、その際輸血によりC型肝炎に罹患した患者が来院した。患者はワーファリンを服用している。PIVKAIIを測定すると異常高値であり、肝癌の可能性が考えられる。 b.劇症肝炎とは、症状発現後8週間以内に高度の肝障害に基づいて肝性脳症II度以上の脳症を来し、プロトロンビン時間40%以下を示すものである。 c.劇症肝炎で発症後10日以内に脳症を発現する急性型のほうが、それ以降に脳症が発現する亜急性型より予後が良い。 d.A型肝炎のほうがB型肝炎より、劇症化しやすい。 e.劇症肝炎は肝移植の対象とならない。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 3 解説 a…× ビタミンK依存性でワーファリン投与では上昇。 e…× 肝移植の対象は大きく急性の劇症肝炎と慢性肝不全(肝細胞癌を含む)に分けられる。 問題18.肝硬変の重症度の判定に有用な検査項目はどれか。 a.コリンエステラーゼ b.プロトロンビン時間 c.γ-GTP d.トランスアミナーゼ e.ICG試験 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 4 解説 a…○ 非特異的コリンエステラーゼは肝機能の中で合成機能と相関し、肝硬変での低下は特徴的。 b…○ 現在の肝臓の蛋白合成能を知るための指標。Child-Pugh分類の項目の一つ。 c…× 胆道系の障害、アルコール性肝障害で上昇。 d…× ASTとALT。上昇するが、肝硬変の末期では逆に低下。 e…○ インドシアニングリーン。肝機能全般の指標。30%を超えると肝硬変を考える。 問題19.肝性脳症について正しいものはどれか。 a.肝性脳症II度以上では羽ばたき振戦を認めることが多い。 b.肝性脳症では、尿素回路がうまく働かないために血中のアンモニアが上昇している。 c.肝性脳症ではフィッシャー比が上昇してくる。 d.肝性脳症では、アミノ酸の異常バランスを補正するために、芳香族アミノ酸の輸液を行う。 e.肝性脳症では、合成2糖類(ラクチュロース等)を経口、または注腸を行う。 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 4 B. 肝胆膵 B - 83 B - 83 解説 c× フィッシャー比=分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸、は低下。d× 分岐鎖アミノ酸の輸液を行う。 問題20.肝硬変患者において定期的に行うべき検査でもっとも必要なものはどれか。 a.腹部エコー検査 b.上部消化管内視鏡検査 c.心エコー検査 d.大腸内視鏡検査 e.腹部単純レントゲン検査 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 1 解説 aは肝癌発生の有無を、bは門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤の有無を調べる。 問題21.48歳女性が肝機能異常を指摘され来院した。AST、ALTは正常であったがALP(700U/l)、γ−GTP(200U/l)と異常高値を示しており、抗ミトコンドリア抗体強陽性、免疫グロブリンIgM異常高値であった。もっとも考えられる疾患はどれか。 a.アルコール性肝障害 b.ウイルス性肝炎 c.原発性硬化性胆管炎 d.胆石症 e.原発性胆汁性肝硬変症 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 5 解説 ALPとγ−GTPの高値からは胆道系の疾患が疑われる。また抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性肝硬変症(PBC)患者の約9割に陽性となり、診断的価値が高い。同時にIgMも上昇するのが特徴で、IgMの上昇では他にA型肝炎が疑われる。 問題22.検診にて肝機能障害とHCV抗体陽性を指摘された患者が来院した。自覚、他覚症状ともにない。当院での検査結果はAST 80IU/l、ALT 60IU/l、ALP 380U/l(正常115−359)、γ−GTP 50、総蛋白 8.0g/dl、アルブミン 3.6g/dl、ヘパプラスチンテスト 60%(正常80%以上)、血小板7万/mm3、AFP 350ng/mlであった。今後進めていくべき検査はどれか。 a.脳波検査 b.腹部エコー検査 c.腹部CT検査 d.上部消化管内視鏡検査 e.心電図検査 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 2 解説 C型肝炎による肝硬変、肝癌が疑われる(血小板↓↓とAFP↑↑から)。上部消化管内視鏡検査は食道・胃静脈瘤の有無を調べるため。 問題23.肝十二指腸靱帯に存在しないものはどれか。 a.動脈 b.胆管 c.門脈 d.短肝静脈 e.リンパ管 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 4 問題24.Cantlie線に関連するものはどれか。 a.胆嚢床 b.下大静脈 c.右肝静脈 d.左肝静脈 e.中肝静脈 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 4 解説 Cantlie’s lineは下大静脈と胆嚢(底部)を結んだ線。臨床的には肝臓を血管支配で分ける。右肝静脈は前区域と後区域の間、左肝静脈は外側区域と内側区域の間を通る。 B. 肝胆膵 B - 84 B - 84 問題25.症例19歳男性 現病歴:バイクで走行中バランスを崩して転倒し、ガードレールに右下腹部を強打し救急車で搬送された。現症:意識清明、血圧 100/50mmHg、脈拍75/min。血液検査:(CBC)WBC 12,420/μl,Hb 11.2g/dl,Ht 32.5%,Platelets 18×10^4/μl、(生化学)T.P 4.9g/dl,Alb 3.2g/dl,BUN 19mg/dl,Cr 0.8mg/dl,AST 478U/L,ALT 492U/L,LDH 1,577U/L,ALP 91U/L,Amylase 48U/L,T.Bi 0.8mg/dl,CPK 526U/L,CRP 0.1mg/dl 胸腹部単純X線検査:右第8肋骨骨折を認めた。CTでは肝右葉の中心性肝破裂を認めた。 治療方針として適切ものはどれか。 a.肝庇護薬投与 b.輸液と抗生物質投与 c.輸血と抗生物質投与 d.肝縫合とドレナージ e.肝右葉切除 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 2 問題26.肝血管腫について正しいものはどれか。 a.肝血管肉腫の合併は稀である。 b.MRIのT1強調画像で明瞭なhigh intensity areaとして描出される。 c.Kasabach-Merritt症候群は汎血球減少を伴い手術適応となる。 d.超音波検査ではbull’s eye signを示す。 e.肝動脈造影ではcotton wool-like poolingを示す。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 2 解説 b× T2強調画像で著明な高信号域。 c× Kasabach-Merritt圧迫症状などの見られる5cm以上の症例に対しては肝切除術。 d× 転移性肝癌の所見。 問題27.限局性結節性過形成(Focal Nodular Hyperplasia:FNH)について正しい記述はどれか。 a.慢性肝疾患を背景にすることが多い。 b.血管造影での車軸様所見が特徴である。 c.99mTc−phytateが集積する。 d.central scarを有することが多い。 e.腫瘍内出血を起こし外科切除になることがある。 1)abc 2)bcd 3)cde 4)abe 5)ade 解答 2 解説 a× 非肝硬変肝にみられる。b○ c○ 肝細胞癌との鑑別に有効である d○ e× 悪性化することはなく、多くは真の被膜を持たないことが多いので、摘出は危険である。 問題28.血清PIVKA−IIが上昇しないのはどれか。 a.慢性活動性肝炎 b.長期の胆汁ドレナージ c.肝細胞癌 d.ビタミンK欠乏 e.ヘパリン投与 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 2 問題29.次の中で正しい記述はどれか。 a.肝細胞癌は近畿から東海地方に多く、東北・北海道には少ない。 b.肝細胞癌のAFP陽性率は80%−90%である。 c.アルファフェトプロテインの糖鎖構造の違い、特にレクチン親和性分画は、肝炎活動性の強い症例での陽性率が高く、肝細癌の偽陽性の確定に有用である。 d.食道静脈瘤や脾機能亢進症を併発している肝硬変合併肝細胞癌は手術適応とならない。 e.肝癌は福岡県の男性の死因の第1位である。 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 3(5?) 解説 a…× 西高東低。 b…× 3〜4割。 B. 肝胆膵 B - 85 B - 85 問題30.肝腫瘍について誤っている記述はどれか。 a.肝良性腫瘍の中でもっとも多いのは肝血管腫である。 b.異型性結節や早期の肝細胞癌はMRIのT1強調画像でしばしばhigh intensityとなる。 c.胆汁産生を伴う肝細胞癌は細胞分化度の低いものに多い。 d.胆管細胞癌の組織像では乳頭状腺癌の頻度がもっとも高い。 e.胆管細胞癌では神経周囲浸潤を来すことが多い。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 3 問題31.65歳の男性。1ヶ月前から全身倦怠感と右季肋部痛があり来院した。赤血球480万、Hb 13.0g/dl、白血球3,600、血小板8.2万。血清生化学所見:総蛋白6.7g/dl、アルブミン3.3g/dl、γ−グロブリン25%、総ビリルビン1.1mg/dl、ICG(15分値)28%、AFP 7,200ng/ml(L3:31%)、PIVKA−II 10,500mAU/ml。HBs−Ag(−)、HCV−Ab(+)。CTで肝左葉に複数の衛星結節を伴う径6cmの腫瘍ならびに左門脈一次分枝を完全閉塞する腫瘍栓を認める。妥当な治療法はどれか。 a.肝左葉切除術 b.ラジオ波腫瘍焼灼術 c.経皮的アルコール注入療法 d.リピオドリゼーション e.肝動脈塞栓療法 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 4 解説 赤血球、Hbに異常なし。白血球はやや減少、血小板は減少。総蛋白(T.P.)は正常域6.5〜8.0のため正常、Albは3.8〜5.1なのでやや低下。総ビリルビンは1以下を正常とするため経度上昇。ICG(15分値)は10%以下が正常なので異常(肝予備能の低下)。全体に肝機能の低下を示唆する所見。 腫瘍マーカーのAFP(特に腫瘍特異性の高いL3分画)、PIVKA−IIが異常に上昇していてHCV−Abが陽性なのでC型肝炎から肝細胞癌に至ったと考えられる。治療法としては複数の衛星結節と6cmの大きさからラジオ波、アルコールは困難。さらにICGが25%を越え、肝臓の半分を切除してしまうのも無理があり、左門脈の一時分枝を完全閉塞する腫瘍腺の存在から肝動脈塞栓も不可能なのでリピオドリゼーション。 ※ついでなので画像検査所見と治療法についてのまとめ。 肝血管腫:超音波ではほぼ均一な高エコー腫瘤、CT検査では周辺から造影され造影効果が数分以上持続。MRIはT1強調画像で肝実質より均一な低信号、T2強調画像で均一、著明な高信号。血管造影では動脈分枝の周囲にいくつか円形の造影剤貯留(=綿花様)が長く持続。球形に見える。 ・肝細胞癌:超音波エコーでハローとモザイクパターン、結節内結節(nodule in nodule)。球形に見える。造影CTでhigh-low pattern、MRIのT1強調画像では一定せず、T2強調画像で高信号。肝内胆管癌・転移性肝癌:両者の画像鑑別は非常に困難。カリフラワー状。エコーでbull’s eye sign。造影CTでlow-low pattern(乏血管)、MRIのT1強調画像では低、T2強調画像で高信号。 ・肝切除:肝予備能(ICG試験を参考にする)と相談して切除範囲決定。肝内胆管癌、転移性肝癌では背景となる肝臓が正常な場合が多いので、最大80%を切除可能。転移性肝癌では転移巣が肝臓のみで原発巣がよくコントロールされていれば切除適応となる。 ※ICG15分値と肝切除の術式 15%以下:3区域以内の切除、25%:2区域以内、35%:1区域以内、45%:亜区域切除 肝動脈塞栓療法=TAE:カテーテルを肝細胞癌の栄養動脈に挿入、塞栓物質を動注して腫瘍のみを選択的に壊死させる。 経皮的エタノール注入療法=PEI:迅速な蛋白凝固作用のある99%エタノールを超音波ガイド下に腫瘍内に注入、腫瘍を壊死させる。適応は3cm以下で3個以内。 ラジオ波腫瘍焼灼術:マイクロ波凝固療法の発展版。熱によって腫瘍組織を焼くのは同じだが、マイクロ波のように急激に高温にならない。より適応範囲が広い。 Lipiodolization:化学療法併用油性造影剤の肝動脈注入療法。油性造影剤にとかした抗癌剤(リピオドール)を注入し、腫瘍のみを選択的に壊死させる。TAEと併用されることも多い。 B. 肝胆膵 B - 86 B - 86 問題32.58歳の男性。人間ドックで肝機能障害を指摘されて来院した。30才時に交通事故にて輸血歴あり。血計:赤血球は433万、白血球 5,800、血小板12.7万。生化学所見:アルブミン4.2g/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、GOT 94IU/L、GPT 105IU/L、プロトロンビン時間 92%、ICG(15分値)15%。 腫瘍マーカー:AFP 480ng/ml(L3:25%)、PIVKA−II 1,500mAU/ml、CEA 2.0ng/ml、CA19-9 26U/ml。MRIでは肝S8に右肝静脈を強く背側に圧排する4.5cmの腫瘍と門脈前区域枝の腫瘍栓を認めた。次の中で治療として妥当なものはどれか。 a.ラジオ波腫瘍焼灼療法 b.リピオドリゼーション c.肝内側区域切除 d.肝S8亜区域切除 e.肝右葉切除 1)a 2)b 3)c 4)d 5)e 解答 5? 解説 31の解説参照。GOTとASTは同じ、GPTはALTと同じで基準値はGOTが5〜30、GPTが1〜25なので、どちらもかなり上昇。血小板が減少、他はおおむね正常。腫瘍マーカーと輸血歴からすると肝細胞癌と考えてよいでしょう。 治療法ですがラジオ波には大きすぎると思われ、切除ではないかと思います。切除範囲ですがcが「前区域」ならそれを選びたいところですが全く関係のない内側区域なので…肝予備能には余裕があるので右葉切除としました。 問題33.肝内胆管癌について正しい記述はどれか。 a.多中心発生が特徴的である。 b.肝細胞癌よりも予後は良好である。 c.胆汁産生を認めることがある。 d.主たる進展様式はリンパ行性である。 e.画像診断で転移性肝癌と鑑別が難しい。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 5? 解説 a× 肝細胞癌の特徴。 b× 第一選択は手術だができるのは50%程度。c×? 問題34.次のうち誤った記述はどれか。 a.肝硬変症患者の吐血は、ほとんどの場合食道静脈瘤からの出血である。 b.食道狭窄は食道静脈瘤硬化療法(EIS)の合併症である。 c.内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)はEISに比べ合併症が少ない。 d.食道静脈瘤の治療として遠位脾腎静脈吻合術は有効である。 e.食道静脈瘤より活動性出血を認める場合EVLは無効である。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 5 解説 d…×? 食道静脈瘤圧を下げる、とあるがプリントには記述なし。 問題35.次のうち正しい記述はどれか。 a胃静脈瘤の治療としてHassab手術は有効である。 bB−RTOは胃腎短絡路を閉塞する治療である。 cサイズの大きな胃静脈瘤ほど出血しやすい。 d内視鏡的生検による組織診が胃静脈瘤診断の決め手となる。 1)acd 2)ab 3)bc 4)dのみ 5)すべて 解答 2 解説 b○ 経静脈的逆行性胃静脈瘤閉塞術。胃静脈瘤には左腎静脈に還流する経路があり、B-RTOでも使われる。c× 胃静脈瘤は出血可能性を判定しづらい。d× 内視鏡はしても生検はしないでしょう。 B. 肝胆膵 B - 87 B - 87 問題36.次の文章の内誤ったものはどれか。 a.クローン病や小腸結核では胆汁酸の吸収障害が起こる。 b.ビタミンKの吸収には胆汁酸が必要である。 c.コレスチラミンにより胆汁酸合成は増加する。 d.HMG−CoA酸化酵素はコレステロール合成の律速酵素である。 e.ウルソデオキシコール酸の経口的投与によりビリルビンカルシウム胆石を溶解しうる。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 4 解説 c× 胆汁酸合成には関与しない。 d× 酸化ではなく還元酵素。 問題37.次の文章の内誤ったものはどれか。 a.胆石症の三主徴は上腹部の疝痛・黄疸・発熱である。 b.下部胆道系悪性腫瘍ではCourvoisier徴候がみられることがある。 c.Mayo-Robson点は胆石症の圧痛点であり、臍の右下方に位置する。 d.心窩部中央をHead胆嚢圧痛点と呼び、胆石症の所見として重要である。 e.閉塞性黄疸ではビタミンKの吸収障害があり、出血傾向をきたす。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 4 解説 b○ 胆嚢より下方の胆管に発生した胆管癌でみられる。c× 臍の右上方。d× それはSolar点。Head胆嚢圧痛点は右季肋部で第9肋軟骨付着部と臍を結ぶ線と右腹胸骨縁線との交点。 問題38.次の文章の内誤ったものはどれか。 a.門脈圧>20cmHgを門脈圧亢進症と定義する。 b.経皮経肝的胆管造影の合併症の一つに気胸がある。 c.Caput medusaeは門脈圧亢進症の所見である。 d.急性閉塞性化膿性胆管炎患者では内視鏡的逆行性胆管造影等による緊急胆道ドレナージが必須である。 e.Crigler-Najjar症候群ではビリルビンの抱合障害があり直接ビリルビンが増加する。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 2 解説 a× HgではなくH2O。 b○ 出血も。胆嚢に感染があれば胸水貯留や膿胸も起こりうる。 c○ 臍を中心とする皮下静脈の怒張。e× 抱合障害は○、抱合障害では間接型優位の高ビリルビン血症。 問題39.次の文章の内誤ったものはどれか。 a.赤血球の平均寿命は120日である。 b.Rotor症候群では直接ビリルビンが高値となる。 c.閉塞性黄疸では尿中ウロビリノーゲンが陽性となる。 d.溶血性黄疸では直接ビリルビンが優位となる。 e.閉塞性黄疸時には直接ビリルビンが優位となる。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de 解答 4 解説 b○ 体質性黄疸では他に間接型の上昇するCrigler-Najjar症候群、Gilbert症候群と直接型の上昇するDubin-Johnson症候群を覚える。c× ビリルビンが腸管に出て細菌によってウロビリノーゲンになる。腸管に出られない閉塞性黄疸では陰性。d× 赤血球由来の大量のビリルビン。抱合が間に合わないので間接型。 e○ 抱合能力には支障がないため。 問題40.次の文章の内誤ったものはどれか。 a.欧米では黄疸患者の術前には、閉塞性黄疸の解除は一般的ではない。 b.黄疸解除には、胆汁内瘻が胆汁外瘻より優れている。 c.腹水を伴った閉塞性黄疸患者では、経皮経肝的胆道ドレナージ術の適応ではない。 d.肝門部胆管癌では経皮経肝的胆嚢ドレナージが有効である。 e.閉塞性黄疸時には、一般的にビタミンKを経口的に補給する必要がある。 1)ab 2)ae 3)bc 4)cd 5)de