感染症 / 04 /


平成16年度 「感染症・中毒」 卒業試験

呼吸器感染症  担当:鍋島 茂樹

1.語群より適切な語句を選び、文章内の( )に記号で記入せよ。

(1)胞内寄生菌は主として(   )内で増殖する菌のことであり、殺菌の免疫担当細胞となるのは(    )である。代表的な菌種は(   )である。

 A.結核菌 B.肺炎球菌 C.リンパ球 D.食細胞 E.インフルエンザ菌

(2)呼吸器においては鼻腔から肺胞に至るまで(  )なバリアがあり、病原微生物に対応している。最終的に(  )ミクロン以下の大きさの物質が肺胞に侵入できると言われている。肺胞内には(  )が常在しており侵入微生物に反応して(   )などのシグナルを出し、炎症細胞を誘導する。

 A.2 B.10 C.好中球 D.マクロファージ E.サイトカイン F.細菌 G.間歇的

 H.連続的 I.アドレナリン J.リンパ球

解答)(1)D、C、A  (2)H、B、D、E   2002年度概説と同じ

2.関係が深いと思われるものを線で結べ。

浸潤影・            ・中葉

間質影・            ・結節影

肺癌・             ・肺尖

心とのシルエットサイン陽性・  ・びまん性小粒状影

成人型肺結核症・        ・気管支肺炎

解答)浸潤影―気管支肺炎、間質影―びまん性小粒状影、肺癌―結節影、

心とのシルエットサイン陽性―中葉、成人型肺結核症―肺尖      2002年度概説と同じ

3.(  )内より適切な語句を選び○で囲め。

 代表的な市中肺炎の原因菌として(肺炎球菌・溶連菌・緑膿菌)があげられる。また、細菌は(肺炎クラミジア・嫌気性菌・結核菌)などによる非定型肺炎が増加しており注意が必要である。肺炎の抗生剤治療を開始するにあたり最も重要なことは(喀痰グラム染色・末梢血白血球数・CRP)である。院内肺炎は何らかの基礎疾患を持った入院患者が罹患する肺炎であり、原因菌として(グラム陰性桿菌・グラム陽性桿菌)が多く、(抗菌薬耐性・消毒剤耐性)を認めることが多い。

解答)肺炎球菌、肺炎クラミジア、喀痰グラム染色、グラム陽性桿菌、抗菌剤耐性 2002年度概説と同じ

永淵 正法先生:一内科、医学部保健学科 担当分

1.以下の設問につき○×で答えよ。(10点)

(1)ウイルス抗体測定では赤血球凝集抑制(HI)試験を用いて、IgM、IgGのクラスを判定する。

(2)補体結合反応(CF)抗体は既感染のスクリーニング抗体として有用である。

(3)サイトメガロウイルスはカポジ肉腫と関連がある。

(4)恙虫(ツツガムシ)病にカナマイシンが有効である。

(5)単純ヘルペスウイルス感染症にバラシクロビルが有効である。

(6)伝染性単核症では、CD8陽性細胞障害性T細胞が著明に増加している。

(7)伝染性単核症患者に細菌感染症の合併予防目的でアンピシリンの投与が推奨されている

(8)ヒトヘルペスウイルス6は突発性発疹の病原体である。

(9)エンテロウイルス70は急性出血性結膜炎を起こす。

(10) コクサッキーウイルスは無菌性髄膜炎と関連がある。

解答) 例年類似問題出題

(1)× (2)× (3)×

(4)×ペニシリン系・セフェム系・アミノ配糖体系(カナマイシン)は無効。テトラサイクリン系・クロラムフェニコール・リファンピシンが有効。

(5)○アシクロビルの経口腸管吸収率を改良する目的で開発された。

(6)○EBVによってトランスフォームしたBリンパ球を排除するため細胞傷害性リンパ球が出現する。

(7)×アンピシリンは禁忌 (8)○HHV-6・7両方に突発性発疹が認められる。 (9)○ (10)○

衛生学 槇田先生担当分

I.次の文章について正しいものには○を、間違っているものには×を解答欄に記せ。

1)我が国ではアルコール依存症の患者数は男女いずれにおいても増加している。

2)エタノールパッチテストはアルコール脱水素酵素の活性の度合いを反映している。

3)血中アルコール濃度が1mg/mlを超えたところで意識障害が出現する。

4)慢性アルコール中毒の関連臓器障害として最も多いものは肝障害である。

5)近年、多量飲酒人口は減少傾向にある。

解答)1)? 2)? 3)×…>0.3mg/dlで泥酔、>0.4mg/dlで昏睡 4)? 5)?

II.A群と最も適切なものをB群より選びその記号を解答欄に記せ。

A群            B群

パラコート         あ)血清コリンエステラーゼ活性低下

ヒ素            い)皮膚糜爛

イペリット   う)肺線維症

サリン え)呼吸麻痺

青酸カリ お)ボーエン病

解答)1-う 2-お 3-い 4-あ 5-え

・イペリット=マスタードガス

・サリンの作用機序は全身の神経末端のシナプスに存在するコリンエステラーゼを阻害することであり、その結果アセチルコリン(ACh)が分解されず神経内に過度に蓄積され,全身の臓器に影響を及ぼす。治療薬は、アトロピンとPAMが代表。

・青酸カリ(KCN)は、-CN基が一瞬のうちに細胞内呼吸で必要な酵素に含まれる鉄イオンと結合体を作ることで、細胞内呼吸が出来なくなる。

消化器感染症 古庄 憲浩先生担当分

1.細菌性食中毒について正しいものを2つ選びなさい。

(1)細菌性食中毒は、発症様式の違いによって、感染型、毒素型、混合型(中間型)に分類される。

(2)食中毒の起炎菌では、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌が多い。

(3)初診時は原因菌が不明であるため、抗生物質にニューキノロン経やホスホマイシンが使用されることはない。

(4)毒素型食中毒は、食品の過熱処理により多くは予防可能である。

解答)(1)(2)  2002年度概説同じ

(1)○細菌性食中毒には生体外毒素型(黄ブ菌など)、生体内毒素型(コレラなど)、細胞侵入型(腸炎ビブリオなど)がある。

(2)○腸炎ビブリオ、サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクター、黄ブ菌の順に多い。

(3)×基本的には輸液による電解質、体液管理で抗生物質を用いないが、患者の状態によってはエンピリカルにニューキノロンなどを用いる。  (4)×黄ブ菌や腸炎ビブリオの毒素は耐熱性。

2.ヘリコバクター・ピロリ感染症について正しいものを3つ選びなさい。

(1)菌は胃十二指腸潰瘍との関連が報告されるが、生検組織から検出されることはない。

(2)胃癌において、疫学的な研究から本菌感染により慢性萎縮性胃炎外前庭部に発生し、長い年月に渡って炎症が続くことが胃癌発生の危険因子となるとされている。

(3)一般に、加齢とともに本菌感染率は低下する。

(4)本菌感染の有無の診断には尿素呼気テスト、血清抗体測定など非侵襲的方法がある。

(5)本菌による消化性潰瘍については、制酸薬と抗菌薬の併用療法が勧められている。

解答)(2)(4)(5)  2002年度概説同じ

(1)×生体組織の培養、組織像がGolden standard。 (2)○ (3)×増加する。

(4)○尿素呼気テストは感度95%、特異度100%。血清抗体は感度80〜90%、特異度90%。

(5)○PPI+マクロライド+アモキシシリンの三剤併用療法を行う。

3.胃アニサキス症について正しいものを3つ選びなさい。

(1)刺身、寿司、バッテラ、しめ鯖など、生食後数日して胃痛、悪心、嘔吐などを呈することが多い。

(2)胃アニサキス症が疑われた場合は、速やかに胃透視検査を行い、虫体の証明をする。

(3)胃粘膜は浮腫状に隆起し、出血斑などを伴った粘膜に胃アニサキス幼虫が刺入しつつある所見が観察される。

(4)鑑別診断としては、消化管穿孔、イレウス、急性虫垂炎などの急性腹症などがある。

(5)治療は、内視鏡的に病変部を摘出する方が望ましい。

解答)(3)(4)(5)  2002年度概説同じ

(1)×生鮮魚摂取後平均3〜8時間で発症することが多い。 (2)×GIFによる。 (3)○ (4)○ (5)○

4.腸管出血性大腸菌について過っているものを1つ選びなさい。

(1)腸管出血性大腸菌感染症は、Vero細胞に致死的に働くVero毒素を産出する。

(2)腸管出血性大腸菌感染症の主症状は、血便と激しい腹痛である。

(3)血便を訴えて数日後に溶血性尿毒症症候群や脳症を続発することがある。

(4)感染初期は補液のみの対症療法に徹し、決して抗生物質の投与は行わない。

解答)(4)  2002年度概説同じ

(1)○Vero細胞というサル由来株化細胞に作用する毒素。 (2)○水溶性血便と腹痛が主訴。

(3)○10%にHUSや脳症の可能性。 (4)×3ヶ月以内に抗菌薬を投与すれば、HUSの発症が低下する。       

5.ウイルス性肝炎について誤っているものを1つ選びなさい。

(1)A型肝炎は高率に慢性化する。 (2)B型肝炎において性行為は重要な感染経路である。

(3)C型肝炎は高率に慢性化し、原発性肝臓癌の主因である。

(4)Epstein-Barr virus(EBV)感染は成人の場合、一過性の肝障害やリンパ節腫脹をきたす。

解答)(1)  2002年度概説同じ

(1)×A型肝炎は慢性化しない。 (2)○血液、垂直(産道)、性交による。

(3)○慢性化率70%、原発性肝癌の75%。

(4)○伝染性単核症。弛張発熱、全身リンパ節(肝、脾)の系統的腫脹、異型リンパ球の増加が三徴

細菌・真菌感染症 下野先生担当分

1)20才の女性。生来健康。家族歴、既往歴には特記すべきことはない。現病歴として、3月末から4月はじめにかけてネパールに新婚旅行。4月21日、38℃台の発熱。近医で感冒薬、抗生物質の処方を受けるも解熱しなかった。4月28日、精査・加療目的にて入院した。

体温38.8℃、脈拍84/分、貧血・黄疸なく、皮膚に発疹などは認めなかった。口腔内、胸部、腹部に特記所見認めなかった。検査所見では、検尿に異常なし。血沈は1時間値26mm、2時間値54mm。末梢血でHb13.3g/dl、RBC466×10^4/mm3、WBC 6900/mm3、LDH529IU/l、CRP4.4mg/dl。その退場認めず。入院時に施行した血液培養でグラム陰性菌が検出されたと2日後連絡があった。

問題1 最も考えられる起炎菌を次の中から選べ。(2)

a)Escherichia coli b)Shigella sonnei c)Vibrio parahaemolyticus

d)Vibrio cholerae e)Salmonella typhi

問題2 この時点で考慮すべき抗菌薬は以下のうちどれか。(1)

a) Cefmetazole b) Cefazoline c) Ciprofroxacin d) Minocycline e) Clarithromycin

解答)

問題1(a),(c) S.typhiは初発症状としてバラ疹、比較的徐脈があり除外できる。Vibrio choleraeはむしろ体温が低下するためこれも除外できる。Shigella sonneiは血中に侵入しないため血液培養ではでないと思われるため否定的。

問題2(c) 問題1より選ばれた二つに有効なのはニューキノロン系。

2)生来健康な23才女性。4日前から全身倦怠感、乾性咳嗽、微熱が出現し、近医を受診。ペニシリン系抗生物質を処方されたが、咳嗽は増強し、38.5℃の発熱が見られたので来院した。右前胸部にcoarse crackleを聴取。胸部X線写真上右中下肺野に浸潤影を認めた。喀出痰は痰白色でやや粘稠、グラム染色では少量の多核白血球を認めたが、細菌の貪食像は認められなかった。

WBC 6500/μl、AST 128IU/l、ALT 241IU/l、CRP 7.6mg/dlであった。

ペットの飼育はない。最も考えられる微生物の組み合わせを以下の中から選べ。(2)

1) Pneumocystis carinii 2) Mycoplasma pneumoniae 3) Chlamydia pneumoniae

4) Streptococcus pneumoniae 5) Hemophilus influenzae

a(1, 2) b(1 , 5) c(2 , 3) d(3 , 4) e(4 , 5)

解答)肺炎球菌では痰が鉄錆色であるため否定的。インフルエンザ菌も痰の色は黄色のため否定的。

カリニとマイコプラズマでの肺炎では咳は強いがラ音は(‐)であるので、否定的。よく分かりません。

3)我が国の食中毒について正しいものの組み合わせはどれか。

1最も患者数の多いのはカンピロバクターによる食中毒である。

2腸炎ビブリオによる食中毒は、鶏肉、鶏卵が原因であることが多い。

3ブドウ球菌による食中毒は通常毒素型である。

4ウェルシュ菌による食中毒は肉の入ったカレー、スープ、肉団子、チャーシューなどが原因食となることが多い。    5サルモネラによる食中毒は、海産物が原因であることが多い。

a(1, 2) b(1 , 5) c(2 , 3) d(3 , 4) e(4 , 5)

解答)d 患者数が多いのはサルモネラで、これに次ぐのが腸炎ビブリオか大腸菌。腸炎ビブリオは魚、サルモネラは肉・卵・乳製品。 2003年度卒試と同じ

4)感染症と疾患の関係について次の記述で間違っているものはどれか。(2)

1リポポリサッカライド(リポ多糖)はグラム陰性菌感染症に伴い菌体から遊離し、エンドトキシンショックをひき起こす原因となる。

2グラム陽性球菌感染症は、グラム陰性菌感染症と異なりショックをひき起こすことはない。

3マイコプラズマはベロ毒素を産生し、関節炎、異型肺炎、脳炎の原因となる。

4Guillan-Barre症候群に先行して、カンピロバクターによる感染が見られることがある。

5胃炎や胃潰瘍の1つの原因として、Helicobacter pyloriが考えられている。

 a(1, 2) b(1 , 5) c(2 , 3) d(3 , 4) e(4 , 5)

解答)c マイコプラズマは関節炎、肺炎、脳炎を引き起こすが、その原因はベロ毒素ではない。ベロ毒素は赤痢菌や腸管出血性大腸菌などが産生する。Guillan-Barre症候群には先行感染としてカンピロバクター、マイコプラズマなどがある。

5)細菌の真菌感染症に関したいかの記述の中で正しいものの組み合わせはどれか。(2)

1クリプトコッカスを検鏡する際には墨汁法を用いると墨汁に染まらない近視用の菌体を検出できる。

2アスペルギルス症は免疫不全の患者に発症しやすく、中でも侵襲型アスペルギルス症は進行も早く致死的であることが多い。

3剖検患者の中で最も多い真菌症はアスペルギルス症である。

4ムコール症はアスペルギルス症と比較すると抗真菌薬が効きやすく、致死率は低い疾患である。

5抗真菌薬は現在開発も盛んで、新規の薬剤も多数出てきており、以前使われていたアムホテリシンBは耐性菌の出現とともに使われなくなってきている。

 a(1, 2) b(1 , 5) c(2 , 3) d(3 , 4) e(4 , 5)

解答) c  クリプトコッカスはどちらかというと球体。墨汁染色で菌糸様なのはスピロヘータ。ムコール症はアスペルギルス以上に効く薬が少なく、重篤なものも多い。

6) 72才男性。一昨日から39℃の発熱、咳嗽、喀痰が出現。食欲も低下し、元気がなくなってきたため、家族に連れられて来院。右胸部でラ音を聴取し、胸部レントゲン写真では右中下肺野に浸潤影を認めた。喀痰は錆色でグラム染色を施行したところ、好中球を多数みとめ、グラム陽性の双球菌を認めた。最も考えられる起炎菌は何か。以下の中から1つ選べ。(2)

1) Pseudomonas aeruginosa  2) Escherichia coli 3) Methicillin-resistant Staphylococcus aureus

4) Streptococcus pneumoniae 5) Hemophilus influenzae

解答)(4) 喀痰は錆色。グラム陽性の双球菌。といえばこれしかない。

7)以下の文で正しいものには○、誤りには×をつけよ。(4)

(1)( )黄色ブドウ球菌感染症では、抗生物質に耐性であるMRSAが問題であり、保菌者であればすぐに治療を行うべきである。

(2)( )髄膜炎菌による髄膜炎を疑う場合には採取した髄液は冷蔵して検査室に提出しなければならない。

(3)( )炭疽菌による感染症の約半分が腸炭疽であり、ヒト–ヒト感染に注意しなければならない。

(4)( )腸管出血性大腸菌は旅行者下痢症の原因菌として知られ、赤痢様の症状を呈する。

(5)( )コレラの中で、現在、世界的にはエルトール型コレラ菌が流行している。

(6)( )コレラの症状として重要なのは高熱、脱水とアルカローシス、腹痛である。

(7)( )腸球菌は腸管に常在する偏性嫌気性のグラム陽性球菌である。

(8)( )若い女性にはクラミジアによる骨盤内、肝臓周囲の感染症を起こし、不妊の原因となりやすい。

(9)( )カンジダは呼吸器感染を起こしやすく、肺に空洞を形成しやすいのが治療上問題である。

(10)( )真菌症は抗真菌薬の開発によって多種多様となり、治療が容易となったので、患者数も次第に減少している。

解答)  2003年度卒試と同じ

(1)(×)MRSAは医療従事者の間で広く蔓延している。

(2)(×)髄膜炎菌は低温に弱く、25℃以下では死滅するので検体は冷蔵しない。

(3)(×)炭疽菌感染の90%は皮膚感染である。またヒト‐ヒト感染もしない。

(4)(×?)旅行者感染の原因ともなるが、施設などにおける大量食中毒のほうが有名。また、赤痢状の粘血便というよりは鮮血便であろう。

(5)(○) (6)(×) (7)(○) (8)(○)

(9)(×?)アスペルギルスの説明か。深在性カンジダ症として肺にも感染するが、カンジダといえば皮膚感染という気が。

(10)(×?)micafunginの登場により真菌症にも投薬がしやすくなっているが、治療が容易になったとはいえないのではないか。患者数の動静はわからない。

8) 55才男性。発熱している。感染症が疑われるので診て欲しいと言って外来受診した。悪性腫瘍、膠原病なども念頭に置く必要があるが、ここでは感染症に限って考えることにする。起炎菌を推定するためにあなたは何をして、どのように考えていきますか。病歴で何を尋ねていくか?診察で何に注意していくか?検査ではどのようなことを行うか?などについて述べていきなさい。(3)

解答)

・問診 熱型、随伴症状(咳、痰、発疹、消化器症状、不定愁訴など)、尿・便の回数性状、海外渡航歴、周囲の発熱者の有無、食事内容、ペット

・身体診察

・検査 (1)採血 WBC(細菌性:WBC↑、特に好中球↑、核の左方移動

ウイルス性:WBC不変または減少。相対的リンパ球優位)

         CRP(細菌性で上昇)、赤沈、血液培養に提出

    (2)胸部X線写真(呼吸器感染症) (3)喀痰塗沫(グラム染色)

    (4)尿培養(尿路感染症が疑われる場合) (5)便培養 (消化管感染症が疑われる場合)

ウイルス感染症総論、輸入感染症 林 純先生担当分

以下の設問について、解答群より選びなさい。

 a. (ア)のみ正しい   b.(エ)のみ正しい   c.(ア)(イ)(ウ)が正しい

 d. 全て正しい  e. 全て誤っている。

1.コレラについて、正しい記述の組み合わせを選びなさい。

ア)米のとぎ汁様便 イ)潜伏期は1週間である。 ウ)高熱をきたす。 エ)腹痛が著明である。

解答)a コレラの潜伏期は通常一日内外。発熱・腹痛はきたさず、米のとぎ汁様便と嘔吐を主徴とする。

2.マラリアについて、正しい記述の組み合わせを選びなさい。

ア)熱帯熱マラリアでは、悪寒・戦慄は激しくない。

イ)熱帯熱マラリアの赤血球感染率は10〜40%である。

ウ)メスのハマダラカの媒介により感染する。

エ)四日熱マラリアは感染後72時間以内に発症する。

解答)c 四日熱マラリアの潜伏期は2〜3週間。熱型が72時間毎。

3.インフルエンザについて正しい組み合わせを選びなさい。

ア)インフルエンザB型に抗原変異が見られる。 イ)トリインフルエンザはC型である。

ウ)潜伏期は2週間である。

エ)ノイラミニターゼ阻害薬はインフルエンザウイルスの感染細胞からの遊離を阻止する。

解答)b 抗原変異がみられるのはA型。トリインフルエンザはA型。潜伏期は1〜3日。

    ノイラミニダーゼは出芽を終えたビリオンを感染細胞から遊離させ、周囲に感染を広げる役割を果たすので、その阻害薬はウイルスの感染細胞からの遊離を阻止する。

4.HTLV-1について正しい組み合わせを選びなさい。

ア)HTLV-1の感染様式としては細胞間感染である。 イ)成人病T細胞白血庄の原因ウイルスである。

ウ)HAMやぶどう膜炎の原因となる。 エ)CD8陽性細胞に感染する。

解答)c  HTLV-1はCD4陽性細胞に感染する。

5.持続感染症について、正しい記述の組み合わせを選びなさい。

ア)EBVは血液により感染する。 イ)ペストはペスチウイルス感染症である。

ウ)胃・十二指腸潰瘍はキャンピロバクター感染と関連がある。

エ)Burkitt腫、上咽頭癌はHIV8の感染と関連ある。

解答)e EBVは唾液を介して感染する。ペスチウイルスは牛下痢症ウイルスをはじめとする家畜のウイルスであり人に感染するものはなく、ペストはペスト菌による。位・十二指腸潰瘍に関連があるのはヘリコバクターである。Burkittリンパ腫、上咽頭癌に関連があるのはHHV-4(EBV)である。

小児科担当分

問16才男児。2日前より発熱が見られ頭痛を訴えていた。本日、頭痛が増強し、数回嘔吐したため受診した。身体所見では、意識は清明。項部硬直とKernig徴候がみられた。他の神経学的所見には異常を認めなかった。髄液検査では、細胞数185/mm3(多核球23%、単核球77%)、糖48mg/dl、蛋白20mg/dlという所見であった。

本症例の原因微生物として可能性が高いものを2つ選べ。(2点)

1) Mycobacterium tuberculosis 2) アデノウイルス 3) ムンプスウイルス

4) Mycoplasma pneumoniae 5) エンテロウイルス

解答)3,5  無菌性髄膜炎のなかではムンプスウイルスとエンテロウイルス。

問2 下記の症状、検査の中で、単純ヘルペスウイルスによる急性脳炎とそれ以外の病原体による急性脳炎を鑑別する上で有用なものを2つ選べ。(2点)

1) けいれん 2) 発熱 3) 髄液細胞数 4) 頭部CT 5) 脳波

解答)3,5 臨床症状では他の急性脳炎を鑑別するのは困難である。ヘルペスによる脳炎を疑う上で参考となるのは頭部CT(前側頭葉のlow density area)と脳波(periodic lateralized epileptiform discharges : PLEDS)。他には頭部MRIやPCR法などがある。

問3 病原体と胎内感染による症状/所見の組み合わせで誤っているものを2つ選べ。(2点)

1)風疹ウイルス – 発疹  2)水痘帯状疱疹ウイルス – 小頭症

3)Toxoplasma gondii – 脳内石灰化  4)Treponema pallidum – 脳室周囲石灰化

5)サイトメガロウイルス – 点状出血

解答)1,4

問4 伝染性紅斑について正しいものを2つ選べ。(2点)

1)病原ウイルスは赤芽球系の前駆細胞に強い親和性を有する。

2)発疹が消失するまでは感染性がある。  3)成人では関節痛を伴いやすい。

4)胎内感染により胎児水腫の危険があるので、妊娠前にワクチン接種を受けることが推奨されている。

5)発疹時には発熱を伴うことが多い。

解答)1,3  排ウイルス期間は感染後一週間後から発熱期に最高となり、発疹出現の頃には急速に減退する。感染後、発熱するのが6~11日、発疹を伴うのが16~18日経ってからである。

問5 麻疹について正しいものを2つ選べ。(2点)

1)潜伏期は2〜3週間である。  2)血液検査ではLDHが高値をとる。

3)発熱と発疹は同時期に出現する。

4)乳幼児の罹患は、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)のリスクファクターである。

5)Koplik斑は発症時から見られる。

解答)4、?  潜伏期は焼く10日。LDHがあがるかは不明。発熱があって、一時下がって再発熱時に発疹出現。コプリック斑は発疹出現前の2~3病日に出現。

問6 新生児髄膜炎の起炎菌として頻度の高いものを2つ選べ。(2点)

1)Streptococcus pneumoniae  2)Haemophilus influenzae type b

3)Group B Streptococcus  4)Staphylococcus aureus  5)Escherichia coli

解答)3,5

問7 次の(  )にあてはまる適切な語句を答えよ。病原体名、病名は、日本語、英語どちらでも可。ただし、病名は略号不可。

主に冬季に細気管支炎をひき起こす( a )ウイルス感染症は2歳未満、特に乳幼児が罹患すると短時間のうちに呼吸困難をきたし、人工換気が必要となることがある。

溶連菌感染症罹患後は、定期的に検尿を行い、( b )の発症に注意する必要がある。

年長児の肺炎の中でもっとも頻度が高いのは( c )肺炎で、マクロライド系抗生剤が有効である。

腸管出血性大腸菌感染症の小児の6〜7%に出現する合併症に( d )があり、重症例では輸血や透析療法が必要となることがある。一部は脳症に進展する。

( e )ウイルス感染症は主に冬季に流行し、白色調の下痢、嘔吐、発熱などをきたす。一般に乳幼児ほど症状が強い。

小児の細菌性髄膜炎の多くは、( f )症に続発して起こる。

免疫グロブリンのうちIg( g )は分子量が比較的大きく、母体から胎児に移行しないため、新生児が20mg/dl以上の値を示す時は、胎内感染の可能性を考えて検索をすすめる必要がある。

突発性発疹の主な病原ウイルスは( h )である。

解答)a:RS b:急性糸球体腎炎 c:マイコプラズマ d:溶血性尿毒症症候群 e:ロタ

f:頭蓋内圧亢進? g:M h:HHV-6