プライマリーケア / 05


一般病院におけるプライマリ・ケア 新小倉病院野村秀幸

1) 患者の権利( インフォームドコンセント) について述べよ。~

1. 医師がすすめる治療または処置に関する概要の説明
2. すすめる治療・処置の、リスクと便益の説明、とくに死亡や重大な身体障害のリスクについての説明
3. 別の治療法や処置を含め、すすめる治療・処置以外にどんな選択があるかの説明、およびそれらについてのリスクと便益の説明
4. 治療を行わない場合に想定される結果
5. 成功する確率、および何をもって成功と考えているのか
6. 回復期に予想される主要な問題点と、患者が正常な日常生活を再開できるようになるまでの期間
7. 信頼にたる医師たちが同じ状況の場合に通常提供している、上記以外の情報
■ 2) 医療の特性を5 つ述べよ。
科学性・個別性・緊急性・地域性・不確実性
■ 3) 病歴のポイントは? 4 つ述べよ。
1. どの臓器が関係しているのか?
2. 問題点の原因として可能性が一番高いのは何か?
3. どの様な危険因手が問題点に寄与しているのか?
4. 問題点によるどんな合併症が考えられるのか?
■ 4) 身体診察で気をつけることを5 つ述べよ。
1. 包括的な身体診察はしないこと
2. 患者の症状を基にした焦点を当てた身体診察を行うこと
3. 適切に診察手技を行うこと
4. 痛みを誘発する診察手技は繰り返さないこと
5. 患者の不快感に十分配盧すること

プライマリーケア消化器疾患(総合診療部 古庄)

■症例
30 才、女性
1 週間にわたるインフルエンザ様症候と2 日間持続する右上腹部痛を訴え受診した。
最終生理あり、薬物静注歴、不特定多数の性行為歴あり
発症1 週間前に友人とバーベキューの集まりに参加した。
近医でセフェム系抗菌薬5 目間処方を受けた。
悪心を伴い、軟便もある。痛みは右季肋部に強く、排便時下腹部痛もある。
身長163cm, 体重56kg, 意識清明
発熱38.3 度, 脈拍88/ 分・整, 血圧124/74mmHg
■ 1. どんな問診をしますか? 5 つ書きなさい。
1
解答
家族歴(家族やまわりに同じ症状の人はいるか?)
生食歴(最近食べたものは?)
妊娠歴
性感染症歴
職業
解説:
プリントには他に、最終月経、最終性交、性交パートナー、悪心嘔吐・吐血・下血・下痢の有無、痛みの性状、排尿異常
■ 2. 何を鑑別にあげますか? 5 つ書きなさい。
性感染症・感染性腸炎・胆道疾患・尿路結石・胸膜炎
■ 3. 何を中心に診察しますか? 5 つ書きなさい。
頭頸部:黄疸・貧血の有無。リンパ節腫大
腹部:圧痛、腸音、腹部腫瘤
四肢・皮膚:皮疹
胸部:心音、呼吸音
この中から5つ書けばいいでしょう。
■ 4. どんな検査をしますか? 5 つ書きなさい。
血算、生化学、腹部エコー、腹部CT、検尿、胸部X線、心電図、血液培養、性感染症マーカー、などから5つ
■ 5. 腹痛を主訴とした患者の場合、右季肋部、心窩部、側腹部、下腹部のそれぞれに頻度の多い鑑別疾患をそれぞ
れ1 つずつ挙げなさい。
右季肋部:胆石
心窩部:胃炎、胃十二指腸潰瘍
側腹部:尿管結石
下腹部:腸炎
解説:
プリントには若年女性の腹痛の頻度についてのグラフがありますが・・・それによると
右季肋部:Fitz-Hugh-Curtis 症候群 となっています。ただ、この問題では女性に限定してるわけではないので・・・微妙なところ
です。

生活習慣病のプライマリ・ケア 総合診療部澤山泰典~

■下記の空欄を埋めて文章を完成させなさい.
生活習慣病(life-style related diseases) は、以前は加齢に関連した成人病と呼ばれていたが、平成8 年公衆衛生審議会を経て、発病の
原因が日常生活のさまざまな部分にひそんでいるため、このように呼ばれるようになった、成人病が中高年になってから注意すべ
きというイメージがあったのに対して、生活習慣病は子どもも含めて一生にわたって健康的な生活を心がけ、病気になることを予
防すべきものという意味が含まれている。
2
生活習慣病とは「(食事)、(運動)、(喫煙)、(飲酒)、(ストレス) 等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」とされ、(高血圧)、肥満、(高脂血症)(家族性を除く)、(糖尿病)、循環器疾患(先天性を除く)、大腸癌(家族性を除く)、(脳血管疾患)、肺扁平上皮癌、慢性気管支炎、肺気腫、アルコール性肝障害、歯周病、(虫歯) などが含まれる。

感染症のプライマリ・ケア 総合診療部村田昌之~

以下の設問について、正しいものを解答群より選びなさい。
( 解答群)
( ア)(a),(b) が正しい
( イ)(a),(b),(c) が正しい
( ウ)(a),(c),(d) が正しい
( エ)(a),(b),(d) が正しい
( オ) すべて正しい
■ 1. 感染対策の基本について
(a) ○主な感染経路には、接触、飛沫、空気感染がある。
(b) ○診察前後の手洗いや、必要に応じてマスクや手袋を使用することは感染予防として重要である。
(c) ○患者同士の感染の予防のため、待合室の配置を変えることも考慮する。
(d) ○外来での感染症発生状況を把握しておく。
■ 2. 発熱患者の診察について
(a) ○本当に感染症かどうかを常に考えることが重要である。
(b) ○感染症の時は、次に感染部位を検討する。
(c) ○さらにその部位で感染を起こしやすい病原体を想定する。
(d) ×どのような種類の抗菌薬を使用しても、予後には影響しない。
 (d) × 病原体に合った抗菌薬を使わないとダメ。もっと言えば、発熱だけで抗菌薬ってのも安直すぎ。
■ 3. 細菌感染症について
(a) ○肺炎球菌やブドウ球菌などは、細胞外寄生菌である。
(b) ○結核菌や非定型細菌( マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ) などは細胞内寄生菌である。
(c) ○細胞外寄生菌による感染症の時は、血液データ上、好中球の上昇を認めることが多い。
(d) ×細胞内寄生菌による感染症の時は、血液データ上、好中球の上昇を認めることが多い。
 (c) ○ 細胞外寄生菌感染では好中球数増加、膿・痰の産生あり
 (d) × 細胞内寄生菌感染では好中球数正常、膿・痰の産生ほとんどなし
■ 4. ウイルス感染症について
(a) ○小児期に罹患する多くのウイルス性疾患は、初感染のみで終息することが多い。
(b) ○ヘルペスウイルスは、潜伏感染をきたす。
(c) ×C型肝炎ウイルスや後天性免疫不全ウイルス(HIV) は、持続感染を来すことはない。
(d) ○インフルエンザウイルスは再感染を繰り返す。
 (c) × 持続感染するから問題。
■ 5. 中枢神経系感染症について
(a) 髄液所見が、外観混濁、髄圧上昇、多核球増加、糖低下の時は、細菌性髄膜炎を疑う。
(b) 肺炎球菌や髄膜炎菌は、青壮年以降の細菌性髄膜炎起炎菌として頻度が高い。
(c) クリプトコッカス性髄膜炎を疑う時は、髄液の墨汁染色やクリプトコッカス抗原検査を行う。
(d) 髄液中のアデノシンデアミナーゼ(ADA) 高値の時は、結核性髄膜炎を疑う。
■ 6. 呼吸器感染症について
(a) 肺炎球菌やブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、クレブシエラ菌などは市中肺炎の起炎菌として重要である。
(b)MRSA や緑膿菌などは院内肺炎の起炎菌として重要である。
(c) 年齢60 歳未満、頑固な咳、胸部聴診上所見に乏しい、末梢血白血球数が10,000/ μ L 未満の肺炎の時は、細菌性肺炎を疑う。
(d) 喀疾検査を行う際、痰の中に扁平上皮細胞が多いものは検体不良である。
■ 7. 尿路感染症について
(a) 大腸菌やクレブシエラ菌は、膀胱炎の起炎菌として重要である。
(b) 膀胱炎症状に側腹部痛や腰痛を伴う時は、腎孟腎炎を疑う。
(c) フルオロキノロン系抗菌薬は、尿路感染症の治療に適している。
(d) 高齢者の無症候性細菌尿でも必ず治療すべきである。
■ 8. 消化器感染症について
(a) 感染性腸炎の診断には・最近の食事や旅行、抗菌薬の使用歴など病歴聴取が重要である。
(b) 感染性腸炎の治療は、症状が強くなくても抗菌薬が必要である。
(c)Clostridium difficile は、抗菌薬使用後に発生する偽膜性腸炎の原因菌である。
(d) カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ、ノロウイルスは感染性腸炎の病原体である。
■ 9. 感染性心内膜炎について
(a) 発熱以外に症状がないことがある。
(b) 発熱以外に血液培養陽性、心エコーで疣贅を確認することが重要である
(c) 起炎菌には、緑色連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌などグラム陽性菌が多い。
(d)2 週間以上の治療が必要である。
■ 10.HIV 感染症について
(a) 感染初期の急性期の症状は、感冒と区別がつかないことがある。
(b) 梅毒、B 型急性肝炎、尖圭コンジローマなどの性感染症患者を診察する時は、HIV 感染症も考慮した方がよい。
(c) 感染初期から抗ウイルス療法を開始すべきである。
(d) リンパ節腫脹は認めない。

プライマリ・ケアとは 総合診療部 林純~

■ 1. 臓器別診療が進む中で、総合診療医がプライマリ・ケアとして初期に診る疾患は不明熱が多い。
以下の発熱疾患について関連あるものを下から選んでください。
1. 脳腫瘍
2.Fitz-Hugh-Curtis 症候群
3. クラミジア肺炎(psittacosis)
4.Q 熱
5. 熱帯熱マラリア
6.EB ウイルス感染症
7. 成人麻疹
8. 松果体胚細胞腫
9. 成人スティル病
10. 脊椎カリエス
a. ヒトの唾液からの感染 b. 感染性心内膜炎 c. 赤血球寄生率 d. ペット鳥からの感染 e. 性感染症 f. 結核 g. ペット犬からの感染 h. 重
4
症肺炎 i. 多飲・多尿 j. 除外診断
解答
1.b? 脳腫瘍→脳膿瘍の間違いでは?
2.e Fitz-Hugh-Curtis 症候群は骨盤内感染症に肝周囲炎が合併した疾患。主な起炎菌はChlamydia tracomatis。
3.d トリから感染するC.psittaci による肺炎?別名オウム病。ただし、C.pneumoniae 肺炎はヒト→ヒト感染。
4.g Coxiella burnetii(リケッチアの一種)による感染症。家畜、ペット、野生動物などの尿などが乾燥し、エアロゾル化したもの
を吸入することで感染する。
5.c
6.a 別名Kissing Disease
7.h 成人の初感染では重篤化しやすい?
8.i 視床下部や下垂体後葉におけるADH 産生を障害し、尿崩症をきたす。
9.j 若年性関節リウマチに類似した症状。不明熱として発症しやすい。感染性心内膜炎などの感染症の除外が必要。
10.f


外来診療のプライマリ・ケア 総合診療部 金本陽子~

■ 1) 胸が苦しいといって外来受診された患者にまずチェックすべき項目を3 つ選べ。
a) 胸部X 線 b) 心電図 c) チアノーゼの有無 d) 上気道閉塞症状の有無 e) 呼吸数、呼吸パターン
解答
c,d,e
解説:まず、身体所見だけで分かることをチェックすべき!特に、c,d が有れば緊急性があるので、即座に判断する必要がある。
■ 2)50 歳主婦。
全身倦怠感、頭痛、肩こりを主訴に受診した。最近、転居した後、気分が憂麓でしかたがないという。うつ病を疑ったが、うつ病
で認められる頻度のもっとも低い症状はどれか1 つ選べ。
a) 不眠 b) 自殺念慮 c) 意欲の低下 d) 体重増加 e) 自己に対する無価値感
解答
d
解説:うつ病では体重減少がみられることが多い。
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