アレルギー / / 症例


11.以下の現病歴を読み、最も疑われる疾患名をそれぞれ一つ、語群のなかから選び記入せよ。

(1) 症例 : 35歳、女性 主訴 : 多関節痛、筋肉痛、手指の腫脹 現病歴 : 一年前から右膝、両肩の関節痛が出現。更に、レイノー現象、微熱、一年間に6kgの体重減少を認めた。2005年12月頃に右第三指指尖に小潰瘍が出現し、両側三角筋に筋痛を認め、軽度の息切れや手指の腫脹を自覚する為2006年2月に当科を受診した。 (2) 症例 : 41歳、女性 主訴 : 発熱、発疹、関節痛 現病歴 : 三週間前に咽頭痛が出現。近医を受診し、抗生物質を内服した。三日後には悪寒戦慄を伴う39℃台の発熱も出現し、NSAIDsが投与され、高熱は軽快した。しかし微熱と咽頭痛が続き、関節痛も出現した為他院を受診。抗生物質内服にもかかわらず、発熱は再び39℃台となり、二週間前から体幹部を中心に発疹が出現した為、当科に精査加療目的で入院となった。 (3) 症例 : 32歳、男性 主訴 : 外陰部潰瘍 現病歴 : 二年前から口腔内潰瘍が時々出現していたが、4〜5日で痛みは自然に治まるため口内炎と思い放置していた。一年前に右肘と左手が急に赤く腫れて痛んだ。近医を受診したところ、血清尿酸値が少し高いので痛風の疑いと言われた。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の内服で関節炎は10日ほどで軽快した。五日前から外陰部潰瘍が出現。痛みが次第に増悪してきたため、当科を受診した。不順異性交遊は無く、また今まで毛嚢炎や異常針反応には気付いていなかった。 (4) 症例 : 28歳、女性 主訴 : 発熱、頭痛、全身倦怠感 現病歴 : 十日前から38℃台の発熱、胸痛及び全身倦怠感が出現。同時に少量の喀血も認められた。近医を受診し、白血球減少と血小板減少を指摘され、抗生剤などによる治療を受けた。胸痛は徐々に軽快したが、発熱はその後も繰り返し出現していた。二日前から一過性に視力低下を認めたため、当科を受診し、精査加療目的で入院した。 (5) 症例 : 38歳、女性 主訴 : 頭痛、全身の痛み 現病歴 : 三ヶ月以上前から慢性の頭痛があり、常にあたまにもやがかかっている感じがしている。また肩こりがひどく、胸の上のあたりが張って痛く、腰や腕も痛い。指先はしびれ、手足が冷え、手足にも力が入らず、日常生活の支障が続く為、当科を精査加療目的で受診した。 (6) 症例 : 41歳、女性 主訴 : 口の乾燥感 現病歴 : 三ヶ月前より口の乾燥感があり、水分の摂取が多くなった。当初、糖尿病を心配して内科を受診したが、血液・尿検査の結果で特に問題を認めず、口内乾燥症の疑いにて当科を紹介された。

語群: ベーチェット病、成人スティル病、混合性結合組織病、抗リン脂質抗体症候群、シェーグレン症候群、線維筋痛症、オーバーラップ症候群、リウマチ性多発筋痛症

解答 1.混合性結合組織病 2.成人スティル病 3.ベーチェット病 4.抗リン脂質抗体症候群 5.線維筋痛症 6.シェーグレン症候群 解説 1. オーバーラップ症候群では膠原病各疾患の診断基準を完全に満たすものが重複するのに対し、MCTD(混合性結合組織病)では各疾患の診断基準は満たさない。今後の検査所見によりオーバーラップ症候群と診断される可能性もあるが、今のところMCTDが最も疑われる疾患名だろう。 2.咽頭痛、39℃以上の弛張熱、体幹部を中心に発疹(サーモンピンク様皮疹) 3.口腔内潰瘍、陰部潰瘍、異常針反応、毛嚢炎など。 4. 38℃台の発熱、胸痛及び全身倦怠感が出現。同時に少量の喀血も認められた→肺塞栓症:静脈血栓症 一過性に視力低下→網膜動脈血栓:動脈血栓症 5.頭痛、レイノー症状、四肢の痺れ、全身の痛み 6.口内乾燥症

21.関節リウマチの病態に基づく新しい治療方法を説明し、それらの治療の今後の問題点について説明しなさい。

解答 最近行われている治療として抗TNFα抗体(Infliximab)、TNF受容体-Fc融合蛋白(Etanercept)を用いた治療がある。

抗TNFα抗体は抗サイトカイン療法の一つであり、使用する抗体はネズミで作ったヒトのTNFαに対する抗体の結合部分をヒトの抗体の一部と結びつけたもので、2〜4週間ごとに静脈注射で投与する。これまでの薬剤抵抗性のRAにも有効性が認められている。しかし、抗サイトカイン療法にはサイトカインの本来の機能を阻害する、他の自己免疫疾患に移行する、抗体のヒト型化が必要である、注射投与が主流であるなどの問題点も存在する。抗TNFα抗体もその例外ではなく、元々腫瘍壊死因子として同定されたものであることに関して、短期では癌の発症は少ないが長期的な検討が必要であったり、投与中止後の跳ね返り現象(症状の悪化)、アレルギー反応の可能性があったり、結核などの感染症、呼吸困難などを引き起こす可能性があったりと今後解決されるべき問題点も多い。最近、免疫抑制剤MTXとの併用で副作用の軽減、効果の増強、持続が得られることが分かってきた。 TNF受容体-Fc融合蛋白は細胞表面のTNF受容体(p75分子)の一部と同じ構造の物質である可溶性TNF受容体を作り、ヒトの抗体の一部と結びつけたものである。この可溶性受容体がTNFαと結合して細胞上のTNFα受容体への結合を阻害する。皮下注射で週2回投与し、MTXが無効なRAに併用する。投与中止後の跳ね返り現象や感染症などの副作用も心配されており、日本ではまだ認可されていない。 解説 5/28大塚先生P2、6/1中島先生P6〜8、YN-F42。大塚先生のプリントにはCOX-2阻害薬やDMARDsなども挙げられていますが、ここでは生物製剤について書いてみました。