悦可亭


一口大に切った肉をフォークで刺し、口に運ぶ。悦可亭 「……まあ」 その味に、ジュリエッタは思わず声を一つ漏らした。

その肉は、相当に柔らかかかった。悦可亭 口に含み、噛むとあっさりと噛み千切れ、口の中一杯に肉と脂の味が広がる。 そのあふれ出した肉汁は肉に加えられた塩と高級な調味料である胡椒の味、それと生のオラニエの辛みと火を通したオラニエの甘み、それと2人の知らぬ、とても美味な茶色いソースが交じり合ったソース。 それらが交じり合い、素晴らしい味となる。悦可亭

「……一番高い料理とは、こういう意味なのね」 その味にジュリエッタは感想を漏らす。 食べてみた今なら分かる。悦可亭 元々の質の良さに加えて丁寧な処理で限界まで旨みを引き出した肉は牛の肉とは思えぬほど柔らかく、味付けに使われるソースも工夫を凝らした素晴らしい美味。 色とりどりの、新鮮な野菜を使った付け合せも美しい。 間違ってもただ肉を焼いただけとは言えぬもの。 この店で一番高い料理というだけはある。悦可亭

「噂には聞いたことがあったが……食べるために育てた牛の肉とはこんな味がするのか」 ロメロもそれに同意し、そのことを思い出す。 王国や帝国、公国などの大きな国では、肉を取るためだけに牛を育てることがある。 一切の労働を知らず、丁寧に肥え太らせた若い牛の肉は、普通の肉とは比べ物にならないほど柔らかく美味であり、王侯貴族にすら饗されるに相応しいものとなるらしい。悦可亭 まさか、市井の料理屋でそんな代物が出るとは思わなかったが…… 「いや、そう言えばここは『異世界食堂』だったか」 先ほど店主が言っていた、ここは『異世界食堂』だと言う言葉。 その意味をおくればせながら理解する。悦可亭 なるほど、これほどの美味を出す料理屋など、その辺には……ロメロの世界には存在しない。 そのことが2人に改めて確信させる。 「……やはり、ここに逃げ込んだのは正解だったな」 「ええ。ここならお父様も、騎士団も、司祭様も追っては来れないわ」 2人でワインを手に取り、持ち上げる。悦可亭 「2人の未来に……」 「祝福あらんことを……」 祈りの言葉と共に口にした葡萄酒はとても澄んでおり、水で割らずとも美味な味がした。悦可亭

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