History / Chapter2


第二章 - 新たなる世界 - Chapter I:The New World

Quel'Thalas建国 - The Founding of Quel'Thalas -

 Warcraft I より六千八百年前のこと…

 Dath'Remarに率いられ、High Elf族はKalimdorを後にして大渦巻きに挑むことを決意した。High Elfたちは荒れ果てた世界を何年もの間渡り歩き、そしてとうとう謎多き失われた王国を発見した。Dath'Remar--Sunstrider:日歩く者という意味から名取られた--は彼らの母国を築くにふさわしい地を探し当てたのだった。

 High Elfたちは後にLordaeronと呼ばれることになるその王国に上陸し、静寂なる森、Tirisfal Gladesに居を構えた。ところが数年の後、なぜか彼らの多くが突然発狂し始めた。邪悪なる何者かがその地に潜んでいる、そんな噂が流れたが、結局真偽の程は定かにはならず、High Elfたちはその地を去って、さらに北へ向かって安住の地を探し求めることにした。

 Lordaeronを発った後の彼らの旅は、険しい山道が続くさらに危険なものとなった。生命の源たるWell of Eternityの力を失った今、彼らの多くは寒さの厳しい環境と飢えのために次々と倒れていった。以前のような不死の体と精霊への耐性を失ってしまったことは、彼らを大いにまごつかせた。また、彼らの身長は縮み、特徴的なスミレ色の肌も徐々に色あせていった。

 その苦難に満ちた旅の最中、彼らは祖国のKalimdorでは見かけなかった様々な生き物に遭遇した。彼らはまた、人間の祖先となる部族が、古くからの森の中で狩りをして生活しているのも発見した。しかし、彼らが出会った生き物の中で最も脅威となったものは、Zul'Amanと呼ばれる、獰猛でずるがしこいForest Trollであった。

 苔むした肌を持つその野蛮で邪悪なTrollたちは、ひどい傷を負ったり、手足を失うようなことがあってもそれを蘇らせることができる能力を持っていた。彼らのAmani帝国はLordaeron北部の多くを占めており、国境への侵入者に対して激しく攻撃を加えてきた。Elfたちはこの悪辣なTrollに対して激しい憎悪を抱き、彼らを見かけるごとに容赦なく殺していった。

 長い年月が経った後、High Elfたちはとうとう彼らの故郷Kalimdorによく似た土地を見つけ出した。大陸北部の森林地帯の奥深くに新しい王国Quel'Thalasを建設し、彼らのいとこに当たる種であるDwarf族が作り上げたものに比肩し得る、強大な国にすることを誓ったのだった。

 ただ不運なことに、彼らが王国を作ろうとしたその土地は、Troll族の古の聖地にあたる場所だった。彼らが街を築き始めたその直後から、Trollたちは集団で攻め入ってきた。

 強情なElfたちは彼らの新しい土地を決してあきらめようとしなかった。Well of Eternityより授かった魔力を利用して、Deth'Remarの指揮の元、10倍以上の勢力を持つAmani族の野蛮なTrollたちの侵入を決して許さなかった。

 何人かのElfは古のKaldreiの教訓を思い起こし、魔力を使用することによって一度は追い払ったBurning Legionの注意を再び惹きつけてしまうのではないかと恐れた。そこで彼らはその魔力を隠すための結界を彼らの王国の周りに張り巡らせた。一枚岩でできたルーンストーンを王国のいたるところに配置し、そこを魔法結界の境界線とした。この魔法結界は彼らの魔力を異次元の脅威から覆い隠すだけでなく、迷信深いTrollの部族を怖がらせて追い払うのにも役立った。

 緩やかに時は過ぎ、Quel'ThalasはHigh Elfたちの魔法の力を示す輝ける証となっていった。古のKalimdorの建物を模倣した美しい宮殿は、地形に溶け込むように建てられていた。Quel'ThalasはまさにHigh Elfが望んでいた通りの都市であった。7人の偉大な貴族から構成されるSilvermoon評議会が設立され、Sunstrider王朝の政権を取り仕切り、王国と民の安全と平和を保った。魔法の結界に守られる中、古のKaldoreiの教訓を忘れて彼らはその魔力を無尽蔵に浪費し続けた。

 約四千年もの間、High Elfたちは世俗から切り離された自分たちの王国で平和に過ごしていた。だがしかし、復讐心に燃えるTrollたちはいまだにHigh Elfたちから受けたその仕打ちを忘れたわけではなかった。彼らは深い森の中で部族の規模を着実に増大させ、そしてついに暗い影に覆われたその森から、輝ける尖塔聳えるQuel'Thalasへの侵攻を再び開始したのだった。

ArathorとTrollたちとの戦争 - Arathor and the Troll Wars -

 Warcraft I より二千八百年前のこと…

 High ElfたちがTrollたちと激しく争っている間、Lordaeronで遊牧生活を送っているHumanたちは部族間での争いを繰り広げていた。それぞれの部族は種族の結束や名誉といったことには微塵も注意を払わずに、ただただお互いを潰しあうために戦っていた。そんな中、Arathi族はTrollたちの勢力の増大に伴う脅威が無視できないほどになっていることに気がついた。Arath族は、すべての部族がひとつのルールの下で結束し、Troll族に対抗できるだけの勢力を持つべきだと考えた。

 6年間の間、Arathi族は知略に長けた戦術を用いて他の部族を次々と打ち破っていった。Arathi族は打ち負かした部族に対し、平和と今現在のArathi族と同等の権利を約束したため、Arathi族はその勢力をどんどん拡大して、最後には様々な部族すべてを統率し、強大な軍を持つことになった。

 強大なTroll族や、必要とあらば隠遁しているElf族にたいしても対抗しうるだけの勢力になったことを確信した後、Arathiの指導者はLordaeronの南部に強固な要塞を築くことを決意した。Stromと名づけられたその都市はArthi族の国、Arathorの首都となり、広大な大陸のいたるところからHumanたちが集い、彼らに安全を保障する場所となった。

 ひとつの旗の下に集いしHumanたちは、強く楽天的な文化を発展させていった。Arathorの王であるThoradinは、北方の謎多きElfたちが絶え間ないTrollたちの攻撃を受けていることを知っていた。しかし、遠く北に住む見知らぬ種族を守るために、彼自身の民を危険にさらすようなことはしなかった。

 数ヶ月経った後、Stromの街にはElf族がTroll族に敗れて北方から落ち延びてくるのではないかという噂が流れた。疲れ果てたQuel'Thalasからの使者の話を聞くたびに、ThoradinはいかにTroll族の脅威が深刻なものであるかということを実感した。

 Elfの使者はは、もしもTrollたちの軍はとても強大であり、もしもQuel'Thalasが攻め落とされた場合、次に彼らは南に向かって進軍を始めるだろうとThoradinに告げた。悲嘆にくれるElfは切実に援軍を欲しており、もしも助けを得られるのであれば、選ばれたHumanたちに魔法の使い方を教えるという約束を交わした。

 Thoradin自身はいかなる魔法も信用していなかったが、後々必要となるだろうと思いElfたちを助けることに同意した。約束が取り交わされた後すぐにElfの魔法使いがArthorにやってきて、Humanたちに魔法を教え始めた。

 やってきたElfの魔術師たちは、Humanたちはいまだその使用に関してはつたないながらも、魔法に対しての驚くべき適性を備えていることを発見した。100人ものHumanたちがごく基本的な、Trollたちと戦うに足るだけの魔術を教わった。彼らの生徒がTrollたちと戦う技量に達したことを確信したElfの魔法使いたちは、Thoradin王の強力な軍隊とともにStromを発って北へ向かった。

 ElfとHumanの連合軍は数を圧倒するTroll軍とAlterac山のふもとで相対した。戦いは何日もの間続いたが、疲れを知らないArthorの軍はTrollたちの猛攻撃に対して一歩たりとも退かなかった。Elf軍の将は彼らの魔法の力を敵に対して見舞うときが来たと考え、100人のHumanの魔術師と多数のElfの魔法使いは天の怒りを召喚し、Troll軍をその炎で包み込んだ。精霊の炎はTrollたちの傷を回復する能力を妨げ、肉体内部から彼らの体を燃やし尽くした。

 Thoradinの軍は敗走するTroll軍を追い詰め、兵士たちをひとりも残さずに虐殺した。この敗北の後、Trollたちはかつての勢いを取り戻すことは無く、その後の歴史のなかで再びひとつにまとまることは無かった。

 Quel'Thaarsが破滅を逃れたことを確信したElfたちは、Arathorの国とその王たるThoradinの血族との間に友好と忠誠の契りを結んだ。そしてHumanとElfはその後も長らく平和な関係を育み続けた。

Tirisfalの守護者 - Arathor and the Troll Wars -

 Warcraft I より二千七百年前のこと…

 Trollたちの脅威が消え去った後、Quel'ThalasのElfたちは栄華を誇った彼らの故郷の再建に勤しみ、勝利を飾ったArathor軍は南方の故郷、Stromへと戻っていった。Humanの国たるArathorは成長し、ますます繁栄していった。その一方で、Thoradinはもしもこのまま成長を続けていたら、いつしか分裂してしまうのではないかという恐れを抱いていた。そのような危惧をよそに平和な時代は何年も続き、ますます成長を遂げていく中、偉大なる王Thoradinは老衰に倒れ、Stromの地を越えたArthor国の自由な発展は若き世代へと受け継がれた。

 Elfたちより直接魔法を教わった100人の魔術師たちは、自らその魔法の力を増していき、魔法を紡ぐ術についてもより詳細に学習していった。その強い意志と高潔なる魂により選ばれたこれらの魔術師は、常に細心の注意と責任を持って魔法の学習を行っていたが、その魔法の力の秘密を受け継ぐ次の世代の者たちは、戦争の厳しさや自己を律することの大切さを知らなかった。これらの若き魔法使いは個人の欲求にもとづいて魔法の学習を進め、何の責任も負うことは無かった。

 帝国が成長し拡大するにつれ、若き魔法使いは大陸南方のあちこちに散らばっていった。魔法の力を用いて自然の生き物からの脅威を退け、新たなる都市国家を築く礎を作った。しかし、彼らは自分の魔法の力が強くなるにつれて次第に傲慢になり、社会から孤立するようになっていった。

 そして、Aratorの第二の主要都市となるDalaranがStromの北部に建設された。たくさんの若き魔法使いが束縛の多いStromを旅立ち、彼らの新たなる力を自由に試せるDalaranを目指した。これらの魔法使いは、魔法の力を使ってDalaranの街に魔力を賦与された尖塔を作り出し、魔術を追求することに喜びを見出した。Dalaranの市民は魔法使いたちが魔法を使うことに寛大で、彼らの魔法の力の庇護の下、経済を大いに発展させていった。しかしたくさんの魔法使いたちがそのの技術を磨き上げていくにつれ、彼らの周囲を織り成す現実は次第に弱まり、引き裂かれていった。

 先のWell of Eternityの崩壊により追放されていた悪意溢れるBurning Legionのエージェントは、Dalaranでの不注意な魔力の濫用により再び誘き出されてきた。いまだにこちら側の世界へ大挙して攻め入るほどの力を持たない彼らではあったが、Dalaranの街へ確実に混乱と無秩序をもたらしていった。悪魔が起こした事件のほとんどは散発的に発生し、Dalaranの街を統治するMagocratsはそれらの事件をできる限り公に明かさないよう腐心した。最も強力な魔法使いたちが逃げ出した悪魔の捕獲を試みたが、彼らのほとんどは単独のBurning Legionエージェントでさえ、彼らの力を絶望的なほど凌駕していることを発見するのみであった。

 数ヶ月の後には、迷信深い市民たちは彼らの統治者がなにか自分たちにとって恐ろしい災厄を隠しているのではないかと疑い始めた。革命の噂が市街を駆け巡り、妄想に陥った市民たちは、かつては賞賛していた魔法使いたちに対して、非難の声を上げ始めた。Magocratsは市民が蜂起し、Stromがそれに対して介入してくることを恐れた。そして彼らは今現在の彼らの問題を理解してくれそうな唯一の者、Elfたちに助けを求めた。

 Magocratから悪魔の活動に関する報告を聞いてすぐに、Elfたちは彼らの強力な魔術師たちをHumanの街に派遣した。派遣された魔術師はただちにDalaranの街のエネルギーの流れを研究し、彼らが見た悪魔たちについての詳細なレポートを作成した。

 そのレポートでは、彼らが見た悪魔は全体のうちのほんの一握りの数に過ぎないが、もしもHumanたちがこのまま魔力を使い続けた場合、その脅威は計り知れないものになるだろうと報告されていた。

 Quel'ThalasのElfたちを統べるSilvermoon評議会はDalaranの領主であるMagocratを密約を結んだ。ElfたちはMagocratsに古のKalimdorの歴史とBurning Legionのことを話した。それはElfたちにとっていまだに恐れを抱かせるものだった。もしこのままHumanたちが魔法を使い続けるのであれば、彼らの民を悪しきBurning Legionのエージェントから守る術が必要となるであろう、ということも話した。Magocratsはそれを受けてBurning Legionとの終わりなく、また知られざる戦いをこなすために、彼らの集約された力を駆使する屈強な戦士を育成することを提案した。あわせて、民衆の恐怖を煽らないようにするためにも、Burning Legionの脅威や、それに対する守護者の存在を知られないことが重要だ、ということが強調された。Elfたちは提案に同意し、守護者を監視するためと、混乱を抑止するための秘密結社が設けられることとなった。

 秘密結社の集会は影に覆われたTirisfal Glades、かつてElfたちがLordaeronで一番最初に定住した場所、で行われたため、結社の名前はGuardians of Tirisfalと呼ばれることとなった。結社に選ばれた戦士はHumanとElfの魔法の力で信じられない力をもたらされ、一時にたった一人しかいなくとも、世界中のいかなる場所にいる悪魔とも渡り合えるようになった。守護者は凄まじい力を与えられるため、Council of Tirisfalのみがその後継者を決めることができた。守護者が年老いたとき、また悪魔との戦いに疲れたとき、結社は新たな守護者を決定し、守護者としての力を継承させた。

 世代が移り変わるなか、守護者はAratorやQuel'Thalasの庶民たちをBurning Legionの目に見えぬ脅威から守ってきた。Arathorは魔法の力によってますます繁栄を遂げ、その一方では守護者が悪魔たちの活動に厳しく目を光らせていた。

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