マネジメント層からすると、「ITにどれだけお金が掛かっているかよく分からん」「掛けたお金に見合うだけの効果が出ているのか見えない」というのが本音だろう。
まずは、前出のカテゴリにて、IT投資を区分して整理しておく。少し細かくなるが、携帯電話、PDAの出現で、電話はもはや総務部ではなく、IT部門の管轄になってきているし、FAXやコピー・スキャナの複合機でさえもネットワークを介するので、IT部門でその予算・効果を整理しなくてはならない、ということも忘れないでほしい。
戦略投資部分については、マネジメント層と今後の計画との整合性や、必要プロジェクト(=ビジネスの目的・目標からの落とし込み)の整理がなされていない限り、算出も難しいし、後々の効果の責任も難しくなる。マネジメント層とのひざを突き合わせた議論が必要だ。その額が妥当なものなのかどうかは、第3者的な意見を求める意味で信頼のおけるコンサルタントに分析してもらうのがよいだろう。
筆者がアドバイスさせていただいた事例を紹介しよう。その企業では、システム構築だけでなく、業務改革を含んだプロジェクトが進行していた。そこでシステム構築部分だけをSI会社に委託した。その際、ベンダからの見積もり3億5000万円について、筆者が検討・交渉した末、2億円強まで下がったことがあった。
このようなことはそんなに珍しくなく、似たような依頼・成果は枚挙にいとまがない。コスト削減のために、コンサルタントを自社側に組み込むのは良い手である。計画・見積もりのところだけではなく、プロジェクトの実施・推進時においてスケジュール延長やコスト増加を未然に防ぐには、第三者からのアドバイスは有効な方策の1つであろう。リスクマネジメントの一環とも考えられる。
ここまで整理してきたら、複数年にわたるであろうプロジェクトの投資・予算整理に頭を悩ませる方も多いはずだ。プロジェクトの予算の立て方も踏まえ、企業のIT投資・予算を
上記2項目「戦略投資」「恒常的運用・メンテナンス費用」は、IT部門、ひいては会社全体での投資予算としてマネジメントされなくてはならない。事業部制・カンパニー制を敷いている企業では、部分的に配賦も考慮される部分である。「部門通常投資」「部門通常投資(小額)」は、IT部門との情報共有を前提として、各部門で投資管理してもらう。当然、投資に見合う効果が見込まれなくては、投資は認められないし、効果がなければその部門の成績・評価に直結する。とにかく効果に対するコミットメントがなくては、投資はできない。
毎年ほぼ同じ額の予算が申請・承認・消化されるのはおかしい。毎年、役員とIT部門間で議論がなされるべきなのだ。この議論をないがしろにすれば、「こんなはずではなかった」「効果が出ないのはIT部門のせいだ」という攻撃を食らうことは目に見えている。どのようなビジネスでも多かれ少なかれ、もはやITは必要不可欠になっている。
だからこそマネジメント層には、「ビジネスを回すために、ITやIT構築を含むプロジェクトが必要である」と認識してもらう必要がある。同時に「その効果はプロジェクト後に、業務部門がいかにビジネスを推進できるかにかかっている」ことも理解してもらわなくてはならない。IT投資額を決定する場面で、マネジメント層と向き合い、こうしたことを議論できるITマネージャが必要なのだ。
さらにIT投資(プロジェクト構築費を含む)プロジェクト投資については、業務部門トップ層の判断やコミットメントが必要となる。この必要性を、ITマネージャや業務部門からのプロジェクトリーダー、メンバーと、マネジメント層との間で共有すること。これが重要な点だ。投資に見合う効果や変化を実現し、その恩恵に預かるのは業務部門であることを忘れないでほしい。