3つの基本となる図解
名前 | 特徴 | 用途 |
マトリックス | タテ/ヨコのマス目に区切られたセルに 情報を整理する方法 | 複数のものを並べて見ることで、 不足や不整合に気が付きやすくする。 |
ピラミッド | 1つの主張や課題を頂点にして、 ツリー状に要素分解する方法 | 主張に対する根拠、課題に対する個別課題を もれなく分解していくことで、 堅牢な論理を組み立てることができる。 |
サーキット | 複雑な因果関係を表すループ状に チャートを書く方法 | マトリックスやピラミッドには収まらない複雑な因果関係を、 ありのまま知ることができる。 |
- マトリックスで考える(1)
- まずは、マトリックスを見て、どこかに空白がないかどうかをチェックします。
文章だと、一部書いていないところがあっても目立ちませんが、表にするとそれが目立つので、単純な検討モレを防ぐことができます。
- マトリックスで考える(2)
- 次に、作ったマトリックスを列や行の単位で見ていって、ひとつひとつの情報に間違いがないかどうかを確認します。
たとえば図5でいえば、Aさんが「几帳面」、Bさんが「おおまか」というのは本当か? ということを確認します。
そうすると、Bさんが「おいしい物が好き」ということ自体は事実だったとしても、それを「指導力」の項目に書くのは明らかにおかしいということに気がつきますね。
このような間違いがないかどうかをタテヨコに比べてみながらチェックするわけです。
文章にするとこのような間違いは埋もれてしまいがちなのですが、マトリックスの形にすると、
タテ・ヨコに目を動かせば、すぐ隣と比較できるため、チェックがしやすいのです。
文章で同じことをやろうとすると、そもそもどことどこを比較するべきかを確認するだけで大変です。
- マトリックスで考える(3)
- 次に、マトリックスそのものを広げることを考えます。
たとえば図6のように、計画性、指導力の他にも機敏さ・交渉力といった観点を検討に加えるわけです。
こうした新しい切り口を見つけるためには、そもそも何のために考えているのか、というテーマが明確であることが必要ですね。
たとえば図6でも、単に「計画性」、「指導力」と並んでいるところを見ても、それ以上のアイデアはなかなか浮かびません。
しかし、「リーダーに必要な資質」というテーマを設定すると、機敏さ、交渉力といった切り口が見つかってきます。
- マトリックスで考える(4)
- もうひとつ、マトリックスならではの方法として、並べ替えによる法則の発見があります。
マトリックスで図を作っておくと、それを行単位、列単位で簡単に並べ替えられるので、思いがけない法則を発見することがあります。
図7はその発見をした例です。
最初の例(左側)のままでは、とりとめもない列挙で終わってしまいそうなものが、並べ替えによって鮮やかな相関関係が見つかります。
これが法則の発見であり、その法則にそぐわないものがあればそこは「例外」として、また目立つようになります。
- マトリックス思考・まとめ
- 空白はないか?
- 評価は合っているか?
- テーマは明確か?
- 他の切り口はないか?
- 並び順はこれでいいのか?
- どんな問題に向いているか?
- 複数の似たような事例を比較検討していく場合
- マトリックス思考は表の形に問題を整理していく手法なので、複数の似たような事例を比較検討していく場合に向いています。
典型的なのは、
「AA ではSS によってZZ になった。
(だから)XX でもSS によってZZ になるだろう」
というようなロジックが出てくる場合です。
このような、「他の事例を元にした類推」というロジックはよく使われますが、実際のところ、ごく一部の現象のみをとらえた類推
誤った評価を元にした判断になっている場合は非常に多くあります。
そうした罠に落ちないためにはマトリックス思考が有効です。
- 用途
- ピラミッド構造は、何かを「主張」するときに、その主張に至った根拠をうまく構造化するために使います。論理思考の方法としては定番です。
本書では、ピラミッド構造の3つの鉄則、親子関係の4つの構造、攻撃ポイントを探す3つのキーワードについて説明します
- 「主張」するというの
はたとえば「国債を増発するべきである」のように、何らかの行動を求めるものがそのひとつ。
もうひとつは、結果を予測するものです。
- 一方、「主張しない」メッセージの場合はピラミッド構造を使おうとしてもあまり意味がありません。「主張しない」メッセージの例としては、下記のような単純明快な事実や、当事者性のない評論があります。
- ピラミッドをめぐる攻防
- ピラミッド構造は、「主張」するメッセージを組み立てるために使われる、と最初に書きました。
「主張」というのは多くの場合、現状に対して何かの「変化を起こす」ための行動になります。
「○×すべきである」というのは、放っておくとなにも行われないところに、変化を起こそうという主張なんですね。
ということは、変化に抵抗する、「現状維持派」がたいていの場合いるはずです。ピラミッド構造を使うときには、そうした現状維持派との論戦が起きることを想定しなければなりません
- 単純構造というのは、主張に対して根拠が1つしかないもの。
- 根拠がひとつだけですので、そのひとつの根拠を否定すれば、主張も否定できることになります。
たとえば、「(根拠)今食事をしたばかりだから、(主張)おなかは空いていないだろう」という単純構造の場合、「私は食べてません!」と言えば、根拠の否定による反論をしたことになります。
- 結合構造というのは、根拠が複数あって、その複数の根拠がすべて成り立つときに主張が成り立つというものです。
- 根拠のすべてが成り立っている必要があるため、根拠のうちどれかひ
とつを否定できればそれで十分です。たとえば上記の例で言えば、機体が故障していたら、あるいは燃料が足りなかったら、どちらがダメでもカナダまでは飛べません
- 合流構造というのは、根拠が複数あって、その複数の根拠のどれかひとつが成り立つときに主張が成り立つというものです。
- それに対して合流構造の場合は、複数の根拠のどれかが成り立てばよいので、主張を否定する
には根拠のすべてを否定する必要があります。
上記の例なら、郵便、宅配便、持参というすべての手段が使えないことを立証しないと、「3日後までに届けられる」という主張は否定できません
- 分裂構造はひとつの根拠に対して主張が複数あるものです。
- この場合は主張をひとつずつ分けてそれぞれ別なピラミッドを作って対処するのが基本です。
基本的に主張が複数あるだけで単純構造と同じですから省略します
- 攻撃のキーワードは許容性、関連性、強固性
単純構造は、主張と根拠がそれぞれひとつだけある構造です。この単純構造を攻撃する場合のパターンはおおまかに3通りあります。キーワードは、許容性、関連性、強固性
の3つです。もう少しくだいた言葉で言うと、「本当?」、「関係あるの?」、「それで十分?」という3つの質問です。
- 「本当?」という質問で、根拠そのものを攻撃します。
「関係あるの?」という質問で、根拠と主張に実は関係がないという趣旨で攻撃します。
「それで十分?」という質問は、根拠と主張の関係は認めつつ、それだけでは不十分だという趣旨で攻撃します。
サーキット構造は、複雑な機械のようにシステマチックに連動して動く現象や組織を記述し分析する手法の総称です。電子回路に似た循環するチャートになることが多いのでサーキット(回路型)構造といいます。その中でももっともシンプルで応用範囲の広いバルブ構造の使い方を身につけましょう。
バルブ構造
- もっともシンプルで応用範囲の広い
- 覚えることが「加速・減速・バルブ」の3つで済むわりに、多くの経済関係の論説に使うことができる
- たとえば経済現象のように、多くの変数がからんだ網の目のように複雑に影響
し合って、本質的にピラミッド型ではないような、ある種の因果関係を記述する場合に向いている
- 加速・減速・バルブがそれぞれ何を意味しているのかを理解するのがバルブ構造のポイント
- 「加速」モデル
- A 携帯電話のニーズ ====== (×) ======> + B 携帯電話の普及
↑+ ~
規制緩和C
- 「携帯電話が普及したため、携帯端末の多様化が進んだ」という現象を記述した例です。この場合、「A.携帯電話の普及」と「B.携帯端末の多様化」という2つの現象の間に「加速」という関係がある
- Aが進めば進むほど、Bのほうも進む、というわけです。統計学でいう「正の相関関係」があることを(+)という記号で表します
- 「減速」モデル
- 「減速」というのは負の相関関係になるので、(−)で表します。
- (+)は省略してもかまいませんが、(−)は省略しないようにしてください。単に矢印が書いてあるだけだと、それは「加速」関係であるほうが、人間にとっては直観的です。その直観とは逆になる(−)記号は省略できません。
- バルブ
- 携帯電話のニーズが高まっていたところに、規制緩和が行われたため、携帯電話が一気に普及した。
- 「A.ニーズ」から「B.普及」へ向かうパイプの途中にバルブがあって、Aの力をせき止めている様子をイメージしてください。そのバルブをちょっと開けるとAの力が少しBに流れていきます。大きく開けると大きく流れていきます。
- ただし、Aの力そのものがちょっぴりしかない(ニーズが高まっていない)ときには、バルブ(規制緩和)をいくら全開にしても「普及」に与える影響は微々たるものです。
- こうしたイメージを直観的に表すためには、上図のような「バルブ」という概念が非常に有効なのがおわかりでしょうか?
- バルブを開け閉めする力(図中のC)自体はごくごく小さいものですが、その小さな力で大きな力(図でいうAの力)をコントロールできるというのがこのバルブという概念の意味です。
- 現実の社会ではこのような関係は実は非常に多く見られます。たとえば税率を上げ下げすることで景気刺激や引き締めを図るといった財政政策が取られることがありますが、それは税率をCのバルブの役割で使っていることを意味します。
- こうした側面が非常に多くの場合に見られるため、バルブ構造をうまく使うと、たとえば経済誌に載っているような記事のほとんどすべてにおいて、複雑な因果関係、相関関係の網の目を非常にわかりやすく表現できるようになるのです。
- 二重否定を避ける
- 一般的な傾向として、マイナスが入ってくると混乱しやすくなるようです。特に、二重否定になる場合が問題です。どちらの矢印にもマイナスがついているようなケースです。こういう場合は、AがBを抑制するしかしそのAの抑制作用をCが抑制する
という関係で、結局のところC→B は加速関係になります。マイナスとマイナスをかけるとプラスになる、という数学の概念で考えるとそれでいいのですが、どうしても二重否定は混乱しやすいようですから、このような場合は箱の中に入る文言を変えることによって、マイナスのうちの片方または両方をプラスに変えてみるとよいでしょう。
- たとえば、コストが増えると利益が減る、という関係を「コストダウン」に言い換えると、プラスマイナスを逆に書くことができます
- 構造と状態を分けておこう
- バルブ構造を考える場合にひとつ注意しておくとよいのは、構造と状態を分けておくことです。たとえば、「現在、世界人口が増加し続けているため、食糧不足が懸念されている」という一文を考えてみましょう。これを単純にバルブ構造チャート化すると下記のようになります(「バルブ」は出てきませんが)
- 構造と状態が混ざった状態
人口 =====> 食糧不足が懸念(人口が増えると食料が必要になる。現在は人口の急増が続いているため、食糧不足が懸念される)
- このように書くと、「長期間変わらない基本的な構造」と「たまたま現在はそうなっている状態」が区別されていません。しかし実際の問題では「構造」が変わらなくても「状態」は変わるという場合が多いため、紙面スペースが許せばそれを分離して書いたほうが分かりやすくなります。
- もし上記の例で「構造」と「状態」を分離すると下記のようになります。
- 構造と状態を分けた例
世界人口は増加しつづけてる 食糧不足が懸念される (現在の)状態
人口 =====> 食糧需要 構造(人口が増えると食料が必要になる)
- 「人口が増えると、その分、食料が必要になる」というのは未来永劫変わらない真理です。これが「構造」にあたります。
その構造のもとで、現在は「世界人口が増加している」という状態にあることから、「食糧不足が懸念」されているというわけです。変わらない「構造」に対して、コメントを書き込むという形で「状態」を表しています。こうすることで、「構造」と「状態」を別々に考えられるようになり、場合によっては「構造」そのものの変革プランを描けるようになります。
- 数量ではない関係を表すバルブ
- 「バルブ」の働きを「コントロール」であると考えれば、単純な数量的関係ではない場合でもバルブを使うことが出来ます。たとえば下記の例は、スポーツチームの成績を左右する要因として、選手の力を監督の采配がうまく引き出すと良いプレーが生まれる、という関係を表現しています。選手の力も良いプレーも必ずしも数量では表せませんが、これは比較的自然に納得がいく例でしょう。
- A 選手の力 ====== (×) ======> + B 良いプレー
↑+ ~
監督の采配
- 補足
- コメントをつけているように、必要に応じて文章による補足説明はどんどん入れます
- 箱と矢印の連携ネットワークの中に入らないような説明が役に立つ場合は非常によくあります
- 加速・減速やバルブという枠組みには、文章化したときの順序に合わせて矢印を
引いても可
- 例
- 今は食事制限をしている だから、太らないだろう(現在の)状態
食べる =====> 太る 構造(たくさん食べると、太る)
*メニュー
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