自社のビジネスのスピードにITを合わせる


例えば、標準を決めながら事実上“なし崩し”になっている企業もある。その理由は「日進月歩の技術に追従するためだ」という。しかし、数多くの種類の機器やソフトを持てば、それなりに手間もコストも掛かる。「情報システム部門の人的資源は不十分」ということが普通なので、仕事量が増えれば必然的に業務の質の低下は否めない。また、ほかのもっと重要な仕事での機会損失も生じているかもしれない。こうまでして“最新”を追いかける必要性が本当にあるだろうか?

 1年前に開発したシステムを、同じ目的でいまの技術で作れば経営上の“効果”は、何がどれほど違うであろうか。3年前のシステムならどうであろうか。こんな検討を粗くでもやってみれば、自社のビジネスにおける“最新技術の追求によるメリット”と“手間やコスト負担”のおおよそのバランス点の見当がつくと思う。時間をかけて「詳細に検討しないとその差が分からないというのは、差が少ないから分からない」ということが多い。自社の情報化はIT業界のスピードに合わす問題ではなく、自社のビジネスのスピードに合わせるべき問題である。