開発現場のコミュニケーションを高める方法


コミュニケーションの根本とは

コミュニケーションという言葉自体は、人によってさまざまなとらえ方があるようだ。 筆者はコミュニケーションという言葉の根本は

  • 相手が考えていることや望んでいることを察知し、それに応じた発言や行動を取ること

にあると考えている。

そのため、本当にコミュニケーションの上手な人は「話し上手」ではなく「聞き上手」であるとよくいわれる。相手の話の趣旨を理解し、それに対して適切な返答をする、これが本当の意味のコミュニケーションとされているからだ。

以上を踏まえ、筆者が考える開発現場におけるコミュニケーションの向上は、

  • (1)メンバー同士に興味を持たせる
  • (2)プロジェクト全体に興味を持たせる
  • (3)技術者の知識欲を煽(あお)る

メンバー同士に興味を持たせる

コミュニケーションとはつまり「相手が考えていることや望んでいることを察知する」ことが前提であり、「自分を知ってもらう」、そして「相手を理解する」ことがコミュニケーションの第一歩である。お互いを理解し興味を持つことによってコミュニケーションは自然と向上する。このことをPMやリーダー、われわれSEの観点からいい換えると、

いかにしてメンバー同士に興味を持たせるか

ということに尽きるのではないだろうか

われわれはこれを実現するために次のような方法を用いている。

 今回の開発では、XPで推奨されているスタンドアップミーティング(立ったままミーティングを行うこと)を毎朝15分程度実施し、現時点で完了したタスクや作業中に発生した問題点、当日実施するタスクなどを報告する場を設けている。その中で、十数人いるメンバーの中から立場を意識することなく、ミーティングの進行役を日替わりで指名してミーティングを実施するのだ。また、議事録担当も日替わりで指名し、いわゆるミーティング全体がラウンドロビン形式で実施されるようにしている。これはプロジェクトのリーダーと筆者が考えたコミュニケーションを向上させるための非常に効果的な方法である。

 メンバー全員の前である役目を負わせることによって、その人がどういう人物なのかといった情報を出力でき、ほかのメンバーはその人に対して興味や関心が生まれる。また、本人が周りから認知されていることを自覚することによって、さらにほかのメンバーに対する興味や関心が生まれるという、いわばコミュニケーションのチェイン(連鎖)が出来るのである。これは、メンバー間のコミュニケーションをより活発にする原理でもある。おとなしく自己主張をしない、いわゆる「オタク」が多いといわれるIT業界においては、各メンバー間に興味を持たせるにはこういった多少強引な方法でコミュニケーションのチェインをつくるのが適しているのではないかと筆者は考えている