リスクリバーサル


リスクリバーサル

スマイルカーブの形状

  • ATMがボラティリティスマイルカーブのY軸の高低位置を決める
  • RiskReversal?が、1次の傾きを決める
  • Butterflyが、2次の曲率を決める
  • ATM、RiskReversal?、Butterflyの3つのパラメータにより、スマイルカーブの形状を決定できる

プットとコールの価格差

リスクリバーサル

  • ある条件の下で通貨、行使期間、金額が同じプットと コールを同時に締結することです。(ある条件というのはまた後になって説明します。いろい ろ小出しにして申し訳ありません。前提となる説明を全て先にすると、それだけでいやになっ てしまうかもしれないので、あえてこのような形で進めます。)プットとコールを同時に締結す る時、両者の価格は必ずしも同じではありません。ここからはドル/円を例にとりますが、ド ルコールの方がドルプットよりも高ければ「ドル買い円売り」のニーズが高いことを意味し、 (ここでつまづいた方は、コールとプットの定義を確かめて下さい)市場がドル高円安に傾い ていることがわかります。
  • ここで、為替の見通しを反映するという点からオプションの価格についてもう一度考えてみ ます。 プット、コールというオプションの価格を決めるのは、「実勢レート、行使レート、行使期間、 金利水準、予想変動率」でした。よく見ると、これらの中で行使レートと行使期間は当事者 の間で決めることができます。また、実勢レートと金利水準は契約時にわかっています。 唯一の不確定要因は将来為替レートがどのように変動するかという、予想変動率だけで す。今後これを「ボラティリティ」というオプションの用語で呼びます。
  • ボラティリティは年率のパーセントで表され、過去の実際の相場の変動率に基づく市場参 加者の予想や需給を反映しています。ただしそれ自体は円高・円安といった方向性の見 通しを含んではいません。 重要なのは、対象となる為替レートの変動幅が大きいほど、予想変動率であるボラティリ ティも高くなることです。
  • ボラティリティが高くなれば、オプションが行使される状況が実現する可能性が高まります。 オプションが行使される状況では、オプションの売り手の損失は無限に拡大するリスクが ある、ということは前回ふれました。このため、ボラティリティが大きいと、オプションの売り 手はオプション料を高めに設定してリスクから自分を守ろうとします。このような形で、ボラ ティリティはオプション価格に反映されています。そして、リスクリバーサルでのコールとプ ットの価格差は、
  • 「コールのボラティリティ」ー「プットのボラティリティ」
  • によるパーセント表示で取引されています。 どうでしょう。何とかわかりやすく説明できているでしょうか

リスクリバーサルの条件

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  • は、ある条件のもとで通貨、行使期間、 金額が同じコールとプットを同時に売買すると書きました。しかしこれは正確には、
  • 『プットの売りとコールの買い、または プットの買いとコールの売り』
  • を同時に行なうことです。大事な点が欠けており、申し訳ありませんでした。なお、リスクリバー サルの水準は、コールとプットのボラティリティの差(コールからプットを引く)ということをお話し しましたが、このため表示はパーセントになっていることを補足します。 ところで、「ある条件のもとで」というのは行使価格に関するものです。ただし、同じ行使価格で はありません。例を挙げると、ドル/円の実勢レートが114円の時に、「行使期間1か月、行使価 格120円」のドルコールとドルプットならば、明らかにプットの方が行使可能性が高いため、オ プション料(プレミアム)も高くなります。
  • 我々の出発点は、リスクリバーサルでのコールとプットの高低が、市場参加者の為替の見方を 反映するということでした。そこに立ち戻ると、コールとプットの選好度合いが市場に対する見方 と結びつくためには、行使される可能性が等しくなければなりません。「ある条件」とはこのこと です。非常に大まかに言えば、ドル/円の実勢が114円ならば、行使価格が112円のドルコール と116円のドルプットといった組み合わせです。(実は、リスクリバーサルの本来の意義はそうし た指標性ではなく、ヘッジ手段としてのものですが、長くなるので省略します。「ゼロコストオプ ション」という呼び方でご存知の方も少なくないと思います。)

オプションのデルタ

  • オプションが行使される可能性は、「デルタ」という指標で表されます。これは、例えば為替レー トが1円動いた時に、オプションの価格が何円(何銭)動くかを示す数字、つまり為替レートの変 動に対するオプションプレミアムの変化率のことです。
  • 為替レートが1円動いた時に、オプションのプレミアムが50銭変わる場合を、デルタが50である といいます。これはオプションが行使される可能性が50%ということです。では、行使期間1か月、 行使価格200円のドルコールオプションを今締結した場合、これが期日に行使される可能性は どうでしょう。限りなくゼロに近いと言えますが、これをデルタ=0の状態と言います。実勢レー トが1円動いても、プレミアムが変化しないということです。逆に200円のドルプットの行使可能 性はほぼ100%ですから、デルタ=100です。これは、レートが1円動けばプレミアムも1円動く ということです。
  • このように、オプションのデルタは0から100の間で変化します。デルタ50、つまり行使の可能 性が50:50というのは、行使価格が実勢レートと同じ水準の場合です。これを「アット・ザ・マネ ー(At The Money)」略してATMと呼びます。それより行使の可能性が低い場合が「アウト・オ ブ・ザ・マネー(Out of The Money、OTM)」、高い場合が「イン・ザ・マネー(In The Money、ITM)」 です。言い換えれば、期日に行使して利益が出る場合がITM、損失が出る場合がOTM、損益 ゼロの場合がATMということです。
  • ATMS、ATMF(S=スポット、F=フォワード)
  • なお、ATM、ITM、OTMという用語は、オプションの行使場合を決定する時にも使います。約定 時に、実勢のスポットレート(取引の2営業日後に受け渡す取引。一般にいわれる為替相場は この取引でのレート)と同じ水準にするのが「アット・ザ・マネー・スポット(ATMS)」です。一方、 行使価格を期日の先渡し(フォワード)レートにするのが「アット・ザ・マネー・フォワード(ATMF) 」です。
  • これは単に行使価格決定の際の選択肢というだけでなく、オプションがヨーロピアンかアメリカ ンかの違いとも関係があります。少し難しいかもしれませんが、ご興味のある方は一度考えて みて下さい。ヒントは、損益分岐点の違いです。(この項まだ続きます)

アット・ザ・マネーの考え方

ヨーロピアンオプションの場合

  • オプションの行使価格をATMに設定したい場合、どの水準にすればいいのでしょうか。 今回はこの点から始めます。まずヨーロピアンタイプです。例として、約定日5月31日、ドル/円 のスポットレート(前回出てきました)が110.00円の状況で、3か月のドルコール(円プット)オプ ションを購入する例で考えます。この場合の期日は8月31日(受渡しは2営業日後=9月2日)に なります。この時のATM、つまり「オプション行使と同時に市場で為替の反対取引をした場合に、 損益がプラスマイナスゼロとなるような行使価格」はいくらでしょうか。
  • ヨーロピアンですので、オプションを行使できるのは満期日ただ1日です。ですから、約定時点で 考えられる理論的な3か月のレートがATM水準です。(オプション料は除外して考えています。) つまり3か月のフォワードレートがATMということになります。 ヨーロピアンのATM水準は、ATMF というわけです。(コール、プットとも同様です)
  • ところで「フォワードレート」という言葉は前回も出てきましたが、これは例えば日経新聞なら14ペ ージあたりの「マーケット総合」面の右端の欄(東京外為市場)に毎日出ています。上から4分の 1くらいのところに、「銀行間ドル直先スプレッド」が出ています。29日の新聞では
  • 3か月 (実勢)d0.375  (年率%)1.32

となっています。これは「3か月先に受け渡すレートを今決めると、その水準は今のレートより0.375 円低い(dはディスカウントのこと)。そしてこれはドルと円の3か月物の金利差を1.32%として計算 した」ということを表しています。ですからスポットレートが110.00円ならば、3か月先の受渡レート は109.625円となります。

  • 説明は省略しますが、ここでは「外貨1単位=〜円」というレート表示(1ドル=110円のように)の 場合には、円よりも金利の高い通貨のフォワードレートはスポットレートよりも低くなる、というこ とを覚えてください。このような場合を外貨が円に対して「ディスカウント」であると言います。 逆に金利の低い通貨の場合はフォワードレートの方がスポットレートよりも高くなり、円に対して 「プレミアム」であると言います。(オプション料を表す「プレミアム」とは全くの別物です。ややこ しくて申し訳ありません。ところで今はそんな通貨はほとんどありませんね。 イスラムの法律では「利息」を取ってはいけないことになっていますが、ゼロ金利ではありません。 銀行貸し出しにも「投資へのリターン」という形で実質的な金利が存在します。余談)

アメリカンオプションの場合

  • アメリカンでは少しややこしくなるので、結論を先に言うと、ATM水準は
  • ディスカウントの通貨:コールでは ATMS、プットでは ATMF
  • プレミアムの通貨  :コールでは ATMF、プットでは ATMS
  • になります。ここではドル/円を例に、ディスカウントである通貨の場合を説明します。 先ほどと同じ状況(スポット110円のドルコール、期間3か月)で、今度はアメリカンオプションを考 えます。アメリカンでは行使期間は「行使できる期間」ですから、満期の8月31日に行使すれば 勿論、購入当日に行使してもレートは同じです。(この場合の受渡は9月2日ではなく、行使の2 営業日後である6月2日になります。)
  • 購入したオプションの行使価格を、スポットよりもドル高(例えば112円)に設定した場合は、OTM になります。ドルコールの行使と同時に反対取引(ドル売り)を行うレートを、満期までのいずれ かの日のフォワードレートと想定するため、そのレートはスポットレートの110円よりも低くなりま す。反対に、行使価格をドル安に設定する場合、満期日のフォワードレート(109.625円)よりも低 くすれば、オプションはITMになります。満期日までのフォワードレート(110円から109.625円ま でのどこか)のどのレートで反対取引をしたと考えても利益が出るためです。
  • 行使価格をスポットレートと等しく設定した場合、反対取引の損益はゼロまたはマイナスになりま す。しかしマイナスの時はオプションを放棄できることを考えると、このオプションはATMとしての 価値だけを持ちます。この結果、ドルコールのATM水準となる行使レートは、ATMSということに なります。なお行使価格をフォワードレートの範囲内に設定すると、以上の考え方からはATM、 ITM、OTMのどれにもなり得ますが、これはITMオプションと考えます。
  • 反対にドルプットの場合は、行使価格を満期日のフォワードレートにすると、反対取引の損益が ゼロまたはマイナスとなるため、これがATM水準です。つまり、ドルプットのATM水準は、ATMF であるということです。プレミアム通貨の場合のコール、プットについては練習として確認してみ てください。なお、今回の説明はあくまで、行使価格としてATMをどこに設定するかということで す。約定の時点ではATMだったドルコールオプションも、翌日に円安になればその時点ではITM となり、円高になれば、OTMのオプションとなります。

身の回りにある通貨オプション

  • 通貨オプションについて、順不同ですがいろいろ書いて来ました。ご興味を持っていただいた方 も、何のために長々と書いているのか疑問に思われた方もいらっしゃると思います。後者の方 のために、最後に少し補足をしておきます。外貨預金の広告で、「円安になれば利回りが上昇し ます。円高になっても最低金利〜%(通常の円運用よりもやや低い)を保証します」といったも のがありますが、これは通貨オプションを利用した最も単純な商品です。
  • 仕組みは、まず外貨を買って預金として運用すると同時に、満期日の外貨売り予約を行うことに より円ベースでの運用利回りを確定します。(ここで確定する金利は、理論的には円運用と等し くなります。)そしてこれとは別にドルコールオプションを購入します。これにより、満期日に円安 になっていればドルコールオプションを行使し、市場で反対取引としてドルを売って為替の売買 益を預金金利に上乗せします。円高の場合はオプションを放棄します。購入したオプション料が コストとなるため、最低保証金利はその分低くなるわけです。このように、何かの条件付きで魅 力的となる商品には、裏にオプションが組み込まれていることが多いのです。

リスク・リバーサル

満期、想定元本が同一のOTMコール売りとOTMプットの買い(又はOTMコールの買い とOTMプットの売り)を同時におこなうこと。デルタが等しいコールとプットが必 ずしも同一の価格(プレミアム)にはならないため、プレミアムの相殺を行おうと する時は、必ずしも同一デルタにはならない。また、いくらかのコストを払う事 で、みずからに有利なストライク・プライスでの設定も可能になる。 通常、デルタ25のリスクリバーサルのコールとプットの価格差を使って、相場の偏 重(歪み)を表す。たとえば、ドル円で「リスクリバーサルが0.5の円プット・ オーバー」と言えば、ドル円の円プット・ドルコールの25デルタのボラティリティ が円コール・ドルプットの25デルタのボラティリティより0.5だけ高いことにな り、市場の需要がより円安方向に傾いている(歪んでいる)ことがわかる

Quater Delta

Quaterは、英語をはなす人が通常使用する表現で、「25」のことである。オプ ションの世界では、この25が50とともに頻繁に使われる。マーケットで表示され るボラティリティは通常はATMF(アット・ザ・マネー・フォワード)のものであ る。これはデルタが50、すなわち、満期日における勝ち負けが2分の1である。そ して、リスクリバーサル0.1/0.5などと表現されるのは、25デルタのオプション のコールとプットの価格の歪みである。英文のコメンタリーをごらんになってこの Quater Deltaと言うコトバを目にしたならば、専門用語というより、25デルタと の表現であったと思えばいいでしょう。