みんなを幸せにするスコープマネジメント


みんなを幸せにするスコープマネジメント

スコープマネジメントとは

  • プロジェクトの目標を達成するために必要な成果物とタスクを定義する
  • プロジェクト期間を通じて、必要に応じてその定義を見直していく
  • 必要な成果物とタスクが完成されていることを保証する

本質的にプロジェクトの成功とは

「プロジェクトにかかわるすべての利害関係者に満足する結果をもたらすこと」

であると考えている。ここで利害関係者とは、顧客サイドの経営層、スポンサー、発注者、ユーザーなどに加え、受注サイドの営業部門、開発部門、協力会社などの人々を指す。

 すべての利害関係者に満足する結果をもたらすためには、「プロジェクト実施前に各関係者が期待するもの」と「プロジェクト実施後に各関係者が得るもの」を一致させなければならない。しかし、両者を一致させることは難しい。「期待」は常に変化するし、「得るもの」は思いどおりに提供できるわけではない。これを実現するためには、「何を」「どこまでやるか」を具体的に決め、実行し、常に見直していくしかない。すなわち、プロジェクトの目的と目標を明確にし、必要な成果物・作業を明確にし、実行計画を策定し確実に遂行するしかないのである。これは先に説明したスコープマネジメントそのものであることがお分かりいただけるだろうか。文字どおり、スコープマネジメントはプロジェクトの成功へ直結するのである。

スコープを可視化する

 ポイントは、スコープを「可視化」することにある。矢見雲マネージャの例の問題点は、要件定義の段階で、顧客と双方でスコープ(要件)を確認できる共通の成果物がないことだ。

実際によく見られるスコープコントロールのケースを紹介

出来杉:「今回ご指摘いただいた要件は3件あります。これら全部に稼働までに対応することは正直困難ですので、優先順位を付けて重要度の高いものから対応していき、そうでないものは稼働以降に対応させていただきたいと考えております」
顧客:「致し方ないな。それでお願いすることにしよう」
出来杉:「ありがとうございます。では、早速どういう基準で優先順位を付けるかということを検討させてください。まず、取引先など対外的に影響を与えるものは、やはり最優先かと考えていますがいかがですか?」
顧客:「そうだな。外に迷惑をかけることはできないな」
出来杉:「では、これを『重要度:高』としましょう。次にユーザーに与える影響ですが、これは、その要件により影響を受けるユーザー数と業務量に応じて影響の大きさは変わってくると思うので、影響の大きいものは『重要度:中』、そうでないものは『重要度:低』ということでいかがですか」
顧客:「分かった。それでいこう」
出来杉:「そうすると3つの要件はどうなりますか?」
顧客:「3番は『重要度:高』だな。あとの2つは『重要度:低』ということになるな」
出来杉:「分かりました。では、3番だけであれば何とかできる可能性はあるので、スケジュールを検討してみます。あとの2つは稼動後できるだけ早い時期に対応するということで、いつ対応するか別途検討しましょう」
顧客:「そうしよう」
出来杉:「それと対応する方向の3番については、仕様変更手順に基づき、ステアリングコミッティ(プロジェクト運営委員会)での承認が必要になります。仕様変更依頼書を作成しますので必要事項に記入をお願いします」
顧客:「分かった。ありがとう。よろしく頼むよ」