ディズニーパークにおけるパレード音楽を創る作業には多くのクリエイティブなチャレンジがあります。その中でも特に最大のものは、パレードを観ているゲストが音楽に取り囲まれているように感じる‘‘音響空間’’を創ることです。多くのディズニーパークのパレードにはさまざまな音の発信源が使われています。パレードルート沿いにはそれぞれの区域をカバーする固定スピーカーが設置されており、そこからは「アンダーライナー」と呼ばれる音楽が流されます。その目的は、パレードの音楽が途切れることのないようにし、またゲストの前にフロートがない時でも絶えずワクワクした雰囲気を醸し出すということです。つまり「アンダーライナー」はパレード音楽の骨組みとしての役割をもち、かつパレードのテーマに対する編曲でもあるのです。
固定スピーカーのほかに、各フロート内には固有のサウンド・システムが装備されており、そこからは音楽や効果音、キャラクターのセリフが流れるようにプログラムされています。ここでもし、ある固定スピーカーがフロートからの音楽とまったく無関係な音楽を流していたら、どれほど不快な音になるかを想像してみてください。
魅力的なテーマ音楽を作曲し、それをアンダーライナーにアレンジしたり、そのテーマを補足的なバリエーションにしたり、他のディズニー映画などの音楽をアレンジし、それらをすべて一つの曲に調和させることが最大のチャレンジなのです。このようにフロートからの音楽はメロディー的にもハーモニー的にもアンダーライナーと融合し、途切れのない音楽の流れを創り出すのです。
『ブルース・ヒーリー』より
アンダーライナーとフロートからの音楽は秒単位で同期がとられており、各エリア毎に時間差でパレードのオープニングがプレイされるようになっています。こうすることによりパレードルート上のどの場所でどの時間帯に見ても、物語がオープニングで始まりクロージングで終わるように起承転結を構成することができ、一つのストーリーとして見る事ができます。 また、パレードルート上にはスピーカーと同様一定間隔にセンサーが埋め込まれており、フロートからの情報を地面の中にあるセンサーがキャッチすることで各フロートの現在位置をセンターで把握することができます。その情報を元にして、センターのパソコンがそのフロートのテーマにあったアンダーライナーを各ブロックごとの固定スピーカーに1ミリ秒という精度のタイミングで送出する事ができます。 この音響設備技術は世界でも有数の最先端技術として知られ、今や世界中のテーマパークのパレードではそんなことは常識。 技術はあくまでも手段にすぎませんが、その技術を使って夢と魔法を現実のものにし、人々に感動を与えられた事が最大のチャレンジとなるのですね。
東京ディズニーランドでは現在、「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」にアンダーライナーがユニットごとに切り替わるという手法が用いられています。