リッジレーサーV オフィシャルブートレッグ with DVD


  • ナムコ / namco
  • メディアファクトリー
  • 音楽CD/DVD
  • 2000.6-2000.12
  • 楽曲制作

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  • Euphoria sanodg remix
    • 後輩であった高橋コータ氏の楽曲のリミックスということで、大変プレッシャーを感じた。この時気付いたのは、先輩の曲よりも後輩の曲をリミックスするほうがはるかにプレッシャーがかかる、という事だ。
    • エレクトロな雰囲気に持っていこうと作り始めた。鉄拳タッグトーナメントでスキルが高まった「ブレイクビーツの単純化」を用いてエレクトロなビートに仕上げて行き、そこにModel-Eで鳴らした基本波形そのままなベースを、奇麗に絡む様にフレージングしていった。これらが大変良いグルーヴを出してきたので、そこから完成までは非常に早かった。
    • 鉄拳タッグトーナメントからの流れで、ミュートも多用、努めて音数を減らすようにした。
      • 外部スタジオでのTD(トラックダウン)だったので、プリプロであるこの時点でのミュートは本来必要無い。が、全体の音像を先に掴んでより良いリミックスにしたかったことと、ミュート自体が既に楽曲製作であると言う認識があったのでこのようにした。
    • 完成した当初はあまり自信が無かったのだが、今聴いてみるとシンプルでありながら心地よい厚みがあり大変良いと思う。元曲の良さの、別の側面に光を当てられたのではないかと思う。
  • Paris sanodg remix
    • 全てソフトシンセで作った曲。Halion、Pro52、PPG wave2.V、Model-E、という組み合わせは大変バランスが良く、この曲も含め、長い事新たにソフトを追加する事も無くこのセットを愛用していた。
    • 元曲のParisは、良い曲なのか悪い曲のなのかいまだに分からないと記述したが、このリミックス曲は大変気に入っている。極めて自然かつ、静かな高揚感がある点が良い。
    • 歌うように動くサブベースが特に好きだ。これと909系キックをどうしても同じバランスで共存させたかったのだが、音域的に極めて近いこの二つは自分のラフミックスでは全く奇麗にからまず困った。で、そのままエンジニアの大西慶明氏に投げたのだが、大変きれいに処理をしてもらい嬉しかった。
    • イントロのピアノ系コードは、元曲サビのピアノフレーズをサンプリングしたものをコードで鳴らしている。よってそれぞれのピッチの違いからフレーズがずれていきパラパラと収束する感じになっている。当初は単にHalionに読み込んで遊びで鳴らしていたのだが、あまりにも心地よいのでそのまま楽曲として作り上げて行った。
    • 途中ゲーム中に使用された環境音を使用している。これが想像以上に良い音場を作り上げている。
  • Paris (5.1ch Dolby Digital Audio mix)
    • ゲーム音楽では世界初と思われる、5.1ch対応楽曲。とにかく5.1ch用ミックスをしてみたかったので、三宅氏も煽って実現させた。
      • センタースピーカーから出すキックが、通常ステレオでのセンター定位のキックとは全く異なり強烈な存在感、実存感を与えることに驚いた。通常ステレオ時のキックがピンぼけで、センタースピーカーからのキックが完全にフォーカスが合っている感じ。
      • この違いを用い、LRスピーカーでのセンター定位とセンタースピーカーからのセンター定位とで奥行きの違いを出した。
      • 後日談だが、通常家庭用のセンタースピーカーは特性的にダイアログ(セリフ)用ということもあり実はキックやベース等の再生には向いていない。映画では楽曲をセンタースピーカーに送る事を禁じているという話も。
      • 当時まだPro Toolsが5.1ch対応されていなかったので、5.1chパニングはプラグインでカバーした。アウトプットは単にスピーカーごとにバスを分け対応した。
      • 5.1ch対応リバーブも使用してみたのだが、豪快な、ある意味素人臭い5.1chミックスを目指していたのであまりピンとこなかった。それよりもセンターLR用リバーブとリアLR用リバーブの二つを用意し、この二つをディレイで微小にずらした方が極めて分かりやすく自分がイメージする音になった。
      • またパニング用のジョイスティックの様なパンナーも使ってみたのだが、結局マウスで追い込んでいくほうがイメージする音に素早く到達できた。
    • 製作当初、市販されていた、5.1ch対応の楽曲(ミックス)は大人しいものばかりで全くつまらなかったので、これと相反するところを目指した。結果的にテーマパークでのサウンド系アトラクションの様な強烈なパニングとギミックに溢れたミックスになり、大変満足している。
  • Now Loading (5.1ch Dolby Digital Audio mix)
    • Paris (5.1ch Dolby Digital Audio mix) を作り終え満足はしたものの、まだまだ5.1chミックスをやりたい気持ちが大きかった。
    • もともと、前田氏が担当したリッジレーサーVにおける2D系のデザイン、陳腐な言い方だがフラッシュ風な、が大好きだったので、これを前面に押し出した、「映像リミックス」を提案、というかゴリ押しし、これ用に曲を新たに書き下ろした。
    • とは言え自分には全く映像エディットの知識も経験も無かったので、高橋コータ氏にリッジレーサーVのムービー編集を手掛けた糸見氏を紹介してもらった。彼は担当作業で多忙だったにも関わらず快く協力してくれた。大変感謝している。
    • 編集作業前はこれ用のラフBGMと、リッジレーサーVで使用した画像等を用いPV風にリミックスしていくという事しか決まっておらず、まずは作りはじめた。但し糸見氏のスケジュールを始めとし時間的に全く余裕がなかったため、夕方に始めて朝までにオフラインを作成しておかねばならなかった。
    • 前もって用意した、ラフBGMの小節区切りや展開タイミングのリストを元に、糸見氏が当時リリースされたばかりのベロシティーの検証も兼ね、横にペッタリと付いた高橋氏および佐野の勝手な物言いに極力対応、作業を進めていった。予定通り朝までに理想的な形になったのには驚いた。
    • この映像を元に、BGMを徹底的にエディットして行った。
      • 冒頭のNow loadingの映像の後ろで鳴っている音はPS2のロード音をスタジオで収録したもの。この音をリアにディレイで飛ばしていった。全方位からPS2のロード音が攻めてくるのはこのDVDが最初で最後だろう。
      • 特に気に入っているのは、映像でロゴのラインの一部が円状延びていくのに合わせて、楽音を360度パニングさせたものと、ムービー最終部、ホワイトアウトするタイミングに合わせて2mixにハイパスフィルターをかけ下から削って行くもの。どちらも映像との相乗効果で非常に刺激的だった。
  • CD、DVDともに、その出来には大変自信があったのだが、あまり話題にならなかったのが残念。

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